2013年10月01日
最初で最後の修理 グランパブーツ篇*その参
ボタンブーツで大変なのは、このボタンホールのかがり縫いです。
その昔、ボタンが多いほどエレガントといわれていたようですが、
今回は、両足で14箇所を手縫いしていかなければなりませぬ…。
結構大変です、でもボタンホールをかがると、強度もアップしますし、
見た感じもきりりとした表情になってきますね。
下部の本体の裏地は、底面に釣り込まれていますので交換できません。
端が解れてきますが、これは上部パーツを組み合わせた際に、
その裏革を上から被せまして、縫製しますので、綺麗にまとまります。
また、組み合わせる前の段階で、下部本体のボールガース付近の革が
だいぶ痛んでいましたので、裏面から裏打ちしたり、弱っている部分は
革を宛てがい縫製して強度を持たせています。
そうしまして次に謎の底面です。
結局どうなっていたかといいますと、これまでに修理された段階で、
恐らく、ウェルテッド製法だったものを、前側だけウェルトの厚みを残して
本底を削り落とし、その部分にハーフソールを埋め込んでいるという
なんとも無意味な手の込み用です。
(なので、レザーハーフソールを貼っているにも関わらず、
貼っていない部分と厚みが変わっていないのです)
その上、コバはウェルトの出し縫いまで攻めて削り落としてしまう…
しかも、底を削り落とした際に、漉い縫いの糸も擦り切ってしまうという
というなんとも乱暴な修理でした。
結局、ウェルトが使えないので、
新たにウェルトを掬い縫いする必要があるのですが、
掬い縫う為の中底の土手といわれる部分が、硬化して脆くなっている為、
漉くい針をさしますと、穴が裂けてしまいます。
ウェルテッド製法の場合は、掬い縫いが切れてしまうと、
本体と底面が分解してしまう…
掬い縫いは、本体と中底を横方向に縫っていますので、
縫われていないと、こんな抜け殻な感じになってしまいます。
掬い縫いが出来ないとなると… まずい… 非常にまず〜い…
新たなぷちパニック!
夜な夜な、ボタンホールをチマチマかがり縫いした光景が、
走馬灯のように思い出されてきました… せっかく…
ここまでなのか…。
しかし、ここで日頃のカンペール修理で鍛えられた
あの革巻製法を用いれば、なんとかなるのではないかっと。
カンペールの場合ですと、ソールに本体が深く埋まっている場合、
その部分をソール交換の際に隠さなければならず、
革を周囲に巻き付け縫製するのですが、今回の場合は、
それを応用して、釣り込みシロを作ることにします。
こんな感じです。
掬い縫いの穴を隠すように、革帯を縫い付けましてシロを作成。
そして、これを底面に釣り込んでいきます。
通常の靴の場合は、このシロの部分があるのですが、
ウェルテッド製法の場合は、釣り込むまではあるのですが、
ウェルトを掬い縫った段階で、このシロの部分は
カットしてしまう為ないのです。
釣り込みましたら、表面を荒らして接着し易いようにします。
マッケイ製法に変更して、底縫いをかけようと思いましたが…
以前に、カカトの部分の画像を掲載した際に、
釘がやたらに打ち込まれていたのを、ご記憶だと思います。
その部分が、ヒールを外したところ、釘を抜きますと、
ポロポロと崩壊し始めるではありませんか…
釘が集中して同じ場所に打ち込まれているのと、
中底が硬化していて弾力が失われている結果、脆くなっておりました。
この部分は、芯材と革で補強を行い事なきを得たのですが、
この状況からして、マッケイで中底に底縫いを行った場合、
最悪、割れてくるか、もしくは縫い目がぼそぼそして足当たりが
悪くなってしまうことが考えられますので、
底付けは、セメンテッド製法で行うことに。
もともとは、預かった状態では、セメンテッド、接着ということもありまして。
また、追々オールソールをすることを考慮しますと、
今の時点で底縫いを掛けてしまうと、その時には中底が、
もう保たなくなっていることも考えられますので、
中底に負担が掛からない、セメンテッド製法が
ベターな選択ではないかと思います。
文章が長くなりましたので、途中で癒し系の画像を挟んでみました。
以前ご紹介しました、当店のカンペール担当大臣です。
最初で最後の修理 グランパブーツ篇 1
最初で最後の修理 グランパブーツ篇 2
最初で最後の修理 グランパブーツ篇 4
その昔、ボタンが多いほどエレガントといわれていたようですが、
今回は、両足で14箇所を手縫いしていかなければなりませぬ…。
結構大変です、でもボタンホールをかがると、強度もアップしますし、
見た感じもきりりとした表情になってきますね。
下部の本体の裏地は、底面に釣り込まれていますので交換できません。
端が解れてきますが、これは上部パーツを組み合わせた際に、
その裏革を上から被せまして、縫製しますので、綺麗にまとまります。
また、組み合わせる前の段階で、下部本体のボールガース付近の革が
だいぶ痛んでいましたので、裏面から裏打ちしたり、弱っている部分は
革を宛てがい縫製して強度を持たせています。
そうしまして次に謎の底面です。
結局どうなっていたかといいますと、これまでに修理された段階で、
恐らく、ウェルテッド製法だったものを、前側だけウェルトの厚みを残して
本底を削り落とし、その部分にハーフソールを埋め込んでいるという
なんとも無意味な手の込み用です。
(なので、レザーハーフソールを貼っているにも関わらず、
貼っていない部分と厚みが変わっていないのです)
その上、コバはウェルトの出し縫いまで攻めて削り落としてしまう…
しかも、底を削り落とした際に、漉い縫いの糸も擦り切ってしまうという
というなんとも乱暴な修理でした。
結局、ウェルトが使えないので、
新たにウェルトを掬い縫いする必要があるのですが、
掬い縫う為の中底の土手といわれる部分が、硬化して脆くなっている為、
漉くい針をさしますと、穴が裂けてしまいます。
ウェルテッド製法の場合は、掬い縫いが切れてしまうと、
本体と底面が分解してしまう…
掬い縫いは、本体と中底を横方向に縫っていますので、
縫われていないと、こんな抜け殻な感じになってしまいます。
掬い縫いが出来ないとなると… まずい… 非常にまず〜い…
新たなぷちパニック!
夜な夜な、ボタンホールをチマチマかがり縫いした光景が、
走馬灯のように思い出されてきました… せっかく…
ここまでなのか…。
しかし、ここで日頃のカンペール修理で鍛えられた
あの革巻製法を用いれば、なんとかなるのではないかっと。
カンペールの場合ですと、ソールに本体が深く埋まっている場合、
その部分をソール交換の際に隠さなければならず、
革を周囲に巻き付け縫製するのですが、今回の場合は、
それを応用して、釣り込みシロを作ることにします。
こんな感じです。
掬い縫いの穴を隠すように、革帯を縫い付けましてシロを作成。
そして、これを底面に釣り込んでいきます。
通常の靴の場合は、このシロの部分があるのですが、
ウェルテッド製法の場合は、釣り込むまではあるのですが、
ウェルトを掬い縫った段階で、このシロの部分は
カットしてしまう為ないのです。
釣り込みましたら、表面を荒らして接着し易いようにします。
マッケイ製法に変更して、底縫いをかけようと思いましたが…
以前に、カカトの部分の画像を掲載した際に、
釘がやたらに打ち込まれていたのを、ご記憶だと思います。
その部分が、ヒールを外したところ、釘を抜きますと、
ポロポロと崩壊し始めるではありませんか…
釘が集中して同じ場所に打ち込まれているのと、
中底が硬化していて弾力が失われている結果、脆くなっておりました。
この部分は、芯材と革で補強を行い事なきを得たのですが、
この状況からして、マッケイで中底に底縫いを行った場合、
最悪、割れてくるか、もしくは縫い目がぼそぼそして足当たりが
悪くなってしまうことが考えられますので、
底付けは、セメンテッド製法で行うことに。
もともとは、預かった状態では、セメンテッド、接着ということもありまして。
また、追々オールソールをすることを考慮しますと、
今の時点で底縫いを掛けてしまうと、その時には中底が、
もう保たなくなっていることも考えられますので、
中底に負担が掛からない、セメンテッド製法が
ベターな選択ではないかと思います。
文章が長くなりましたので、途中で癒し系の画像を挟んでみました。
以前ご紹介しました、当店のカンペール担当大臣です。
最初で最後の修理 グランパブーツ篇 1
最初で最後の修理 グランパブーツ篇 2
最初で最後の修理 グランパブーツ篇 4
ampersandand at 21:29│
│オールソール
この記事へのコメント
3. Posted by ampersand 2013年10月06日 00:37
maedaさんこんにちは。
コメントありがとうございます。
ボタンホール… 今回の修理ではなにより大変でした。
いつもやらないことですので、くじけそうになりました。
しかし、おっしゃる通り満足感はありますね。
ピッチが細かいので、針を通す穴が小さくしか開けられず、
針を通すのにひと苦労でした。
指貫を購入しようかと、いまさら思いました…。
コメントありがとうございます。
ボタンホール… 今回の修理ではなにより大変でした。
いつもやらないことですので、くじけそうになりました。
しかし、おっしゃる通り満足感はありますね。
ピッチが細かいので、針を通す穴が小さくしか開けられず、
針を通すのにひと苦労でした。
指貫を購入しようかと、いまさら思いました…。
2. Posted by maeda 2013年10月04日 23:45
お直しにもいろんな事例があるのですねー。
そして作業工程がたくさん。。。
ボタンホール手かがりは、針目と針間をきれいに揃えて刺す事ができると達成感・満足感があります。でもそれは布の場合。革に刺すのは大変そうです。。。完結編までとても読み応えのある記事でした。
そして作業工程がたくさん。。。
ボタンホール手かがりは、針目と針間をきれいに揃えて刺す事ができると達成感・満足感があります。でもそれは布の場合。革に刺すのは大変そうです。。。完結編までとても読み応えのある記事でした。