2016年11月06日

TUMI修理専門店ではないのだけれど…。 まとめ篇

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TUMIの修理の時は、なぜだかパタパタパタと連続して全国の方から
ご依頼が舞い込みます。
なにか法則があるのでしょうか…。

まずは持ち手。
TUMIは鞄自体が重く、またそれに荷物を入れますのでなかなかの重量。
それを日々持ち歩きますので、おのずと持ち手の革が痛みます。

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持つ部分の外側が痛む方。
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付根部分が擦切れる方。
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ほぼ同じ形の鞄を持っているのに、痛み方は人それぞれ。
鞄のデザインに裏表がある場合は、
表面の持ち手革部分が痛み易かったり致します。(形状によります)

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この持ち手の補修はご依頼頻度が高いので、持ち手革の型を
作っておこうと以前思ったのですが、モデルによって微妙に
長さが異なっており断念、幅やデザインは同じなのに…。

同モデルでも伸びているのか、長さが数ミリ違う場合もあるので
その都度、一つ一つ型採りをしてから合わせて革を切り出しています。
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これは断面を黒く染めて乾燥中の様子。
載せている台、気付いた方はいらっしゃいますでしょうか。
これは猫よけのイガイガ。

100均で見つけました、これに乾燥中の断面を黒く染めたパーツを載せると
点で支えてくれるので、染めた部分が台に付いて汚れないので
使ってみています。
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本体にセッティング。
製品は持ち手が別パーツの状態で、しかも平らな状態で革を
セットして縫製しているのですが、修理のときはすでに本体の鞄は
くっ付いていますし、持ち手が湾曲している状態で
革を元々の位置にセットしなければなりません。

その場合、湾曲していますので内側外側の距離の違いが生じます。
しかしそれは型紙では生じていません。
ですので、ナイロンベルトに革パーツを合わせる際に
革の外側を微妙に引きつつ合わせてゆくなどのさじ加減が必要になります。
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そして縫製。
この時も修理の際には重たい本体の鞄がくっ付いていますのでしんどいです。
この場合の縫製は、八方ミシンで一目一目縫製してゆきます。
動力は右手で車輪を回して針を進めていますので、
鞄を持つのは左手の指先のみ、ん〜ぷるぷる。

本体が付いていますので、縫い進める方向は限られます。
バックで縫い進めたり、カニ歩きのように横にずらしながらなんてことも。
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受付の後ろにありますのが八方ミシン。
古めかしいのでオブジェだと思われ写真を撮ってゆかれる方も。
確かに数十年前のミシンにはなりますが現役で稼働中です。
ちなみにこのモデルは現在生産停止になっているようです。

HPの修繕事例目次のアイコンのミシンもSINGER社の八方ミシンです。
1919年頃に製作されたもののようです。
(現在は動作不安定につき自宅押し入れに待機中)

このミシンを模倣して国産したものが、先ほどの
SEIKO社の八方ミシンになります。
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八方ミシンはその名の通り、四方八方に縫い進められます。
抑え部分を右斜めに向ければ右斜め、左にむければ左に。
なので、無茶な箇所を縫製する修理には無くてはならないミシンになります。
もちろんTUMIの修理にも不可欠です。

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そうしまして完成。

続いてこちら、肩パッドの合皮面の劣化部分を革に交換。
劣化して黒い塗装のカスがポロポロとワイシャツに…。
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皆さんそのカスカス地獄にしばらく耐えられてからご依頼頂いているようで
カスがきれいに落ち切っている場合が多いです。

革へ交換の際には合皮面を取り外し、新たな革パーツを宛てがいまして
表面のオリジナルの革パーツの元の縫い目に、ひと針、ひと針と
針を落として縫製してゆきます。
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完成。
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ぱつんぱつん。
肩パッドも色々な形状のものがありますので、
それぞれだいたい対応しております。

続きましてはこちら、根革の裂け補修。
ショルダーストラップを引っ掛ける金具を固定している革部分。
経年劣化により加重を支え切れず裂けてしまいます。
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しかし、モデルにもよるのかもしれませんが、見た目は厚みがある感じですが
分解してみますと、芯材に圧縮した紙の芯材を挟み込んでいます。
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このブログでも度々登場しますが、この紙の芯材は使い初めは
良いのかもしれませんが、徐々に劣化して千切れてしまいがちです。
ただ、今回はこの芯材の影響ではなく本体に差し込んでいる部分の
仕様が問題でした。

差し込まれる部分は、薄くなだらかに漉いて挟み込むのですが
今回のものは、本体と縫製される部分に薄く漉いた部分がきてしまっていたので
耐え切れずに縫製部分が切り取り線のようになり千切れてしまっていました。
もう少し差し込んで、厚みが充分にあるところを縫製していれば
問題は無かったのですが。
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作り替えの際は厚みのある革を二重に合わせ伸び留めのナイロンを挟み込みます。
そして充分に厚みのある所を縫製して固定してあります。
完成
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引き続きこんな補修も。
持ち手のまとめパーツ。
BEFORE
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裏地が生地でできており、包んだ際にその生地がたるみますので、
そのダブつきの凹凸の影響で表面の革も擦切れているようです。

製作の際は、裏も革で製作します。
形を包んだ状態で裏革をセット裁断していますので、
内側のたるみの発生は最小限になっております。

革は、持ち手などに使う革で製作してしまうと、持ち手をまとめた際に
張りがあり過ぎるのでくるっと纏まりづらく、
持ち難くなりそうなので、もう少しソフトな黒革にて製作。
AFTER
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裏革にテンションをかけて製作していますので、
ボタンを開けても開き切らずに閉じ易い形状に維持出来ています。
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