2016年12月02日
靴の小指のところが裂けるのには訳がある。
通常の小指裂け補修の方は、以下のリンク先の記事を参照ください。
今回の記事はボンドでひび割れを酷くさせてしまった場合の
特殊な事例になります。
あまりこの修理は他店では行っていないようで修理不可と云われて
当店に廻ってくることが多い裂け補修。
当店でも当初は行っていなかったのですが、というのもやはり
外観に新たに縫い目が出来てしまうので需要はないだろうと…。
しかし、チャールズ皇太子も初任給で購入した革靴の裂けた部分を
補修して履いているとのことで、ありなんじゃないかということで
行っている次第であります。
このように痛み易い人の理由はこちらの記事を参照下さい。
本日は、そのメカニズムについてのご案内となります。
患者さんはこちら。
BEFORE
両足の小指部分が完全に逝ってしまっております…。
しかもリペアDIYにて接着剤を塗布されており鱗状に革が硬化…。
常々お伝えしておりますが、その後、修理に出されるのであれば
DIYはしない方がよいです(費用も割り増しになり、仕上りも悪くなりますので)
そしてそもそも裂けた部分を接着にて補修するというのは無理がありますので。
こちらが上面から補修部位を見た図、赤矢印部分が裂けている部分になります。
履いた状態のイメージ、足の形は主とは異なりますので
小指の長さが多少短いですが、おおよそこんな感じで収まっています。
青い部分は先芯になります。
先芯とは、つま先部分の形状を保つ為に入れております芯材です。
これは溶剤や接着剤にて革と密着して硬化されております。
ですのでこの部分の革は伸びません。
という構造ですので、これを履き込んでいくと…
先芯部分の革は伸びず、しかし指周りの革は左右に押し広げられます。
足は通常、歩行の際に外側へと加重が掛かり易いので
小指部分が外へと押し出される形となります。
しかし、芯材の入っている部分は一緒になって広がってはくれませんので
芯材が入っている硬い部分と、柔らかい革の部分、
その境目で革が裂けてしまうようになります。
つま先が細くなっている靴のデザインの場合は、
おのずと小指の外への押し出しは強くなりますのでより痛み易いかと思います。
また、足の指の長さは人それぞれですので、例えば指が長い人で
先芯部分まで小指が到達している方などは、歩行の際に
小指が芯材に当たってしまい痛みが生じる事もあります(補修不可)
親指側も同様に加重は掛かりますので、同様に痛む方もいらっしゃいます。
以上が小指のところが裂けるメカニズムの一例となります。
では補修となります。
接着剤の塗布により、鱗状に革が硬化してしまっておりますので
この部分は残せません、ですので刳り貫いてしまいます。
このようにDIYしてしまうと、余計に補修範囲を広げかねませんのでご注意です。
*裂けているだけであれば裂け目部分の縫製のみで済みます。
(リンク先補修事例を参照)
まずは内側から革を宛てがい補修致します。
裂けている部分の周辺も、革が伸ばされ痛んでおり、
またライニングも擦切れている場合が殆どですので、
周辺(黄色点線)に革を宛てがい補強を行います。
宛てがう革は革端を薄く漉き、靴の内部で補修の革の厚みに
段差がでないようにしています。
穴が塞がりましたので、今度はアッパーの革の段差を埋め戻します。
同じ形状に革をカットしまして象眼致します。
そして縫製。
ぐるりと縫製。
ときどき裂け目補修で、表面に革を接着しているだけの靴を
見かけますが、見た目は縫い目もなく仕上りますが、
やはり裂けるぐらいの加重が掛かっている部分ですので、
耐久性を保って治すには縫製が必要かと思います。
AFTER
今回の事例は、小指の裂け補修でも最悪のケースとなります。
接着剤はくれぐれも使用しないでください。
このような痛みの予防をするには日々のお手入れが重要となります。
まずは乳化性のクリームにて定期的な保湿。
革の乾燥を防ぎ、色褪せもにも効果的です。
面倒であれば、屈曲部分だけでも充分です。
そしてシューキーパー。
入れておく事で、靴皺を伸ばす事が出来ます。
そのままにしておくと、靴の皺が深くなってゆき、ひび割れの原因となります。
木製のものは数千円しますので、100均のプラスチックのものでも
充分かと思います。
木製のものを購入される場合は、塗装がされていない生地仕上げのものが
湿気もよく吸ってくれますので宜しいかと思います。
日々のお手入れが、3年後、5年後、10年後…
にと、影響をしてゆきますので、
今日のお手入れもお忘れなきよう…。
今回の記事はボンドでひび割れを酷くさせてしまった場合の
特殊な事例になります。
あまりこの修理は他店では行っていないようで修理不可と云われて
当店に廻ってくることが多い裂け補修。
当店でも当初は行っていなかったのですが、というのもやはり
外観に新たに縫い目が出来てしまうので需要はないだろうと…。
しかし、チャールズ皇太子も初任給で購入した革靴の裂けた部分を
補修して履いているとのことで、ありなんじゃないかということで
行っている次第であります。
このように痛み易い人の理由はこちらの記事を参照下さい。
本日は、そのメカニズムについてのご案内となります。
患者さんはこちら。
BEFORE
両足の小指部分が完全に逝ってしまっております…。
しかもリペアDIYにて接着剤を塗布されており鱗状に革が硬化…。
常々お伝えしておりますが、その後、修理に出されるのであれば
DIYはしない方がよいです(費用も割り増しになり、仕上りも悪くなりますので)
そしてそもそも裂けた部分を接着にて補修するというのは無理がありますので。
こちらが上面から補修部位を見た図、赤矢印部分が裂けている部分になります。
履いた状態のイメージ、足の形は主とは異なりますので
小指の長さが多少短いですが、おおよそこんな感じで収まっています。
青い部分は先芯になります。
先芯とは、つま先部分の形状を保つ為に入れております芯材です。
これは溶剤や接着剤にて革と密着して硬化されております。
ですのでこの部分の革は伸びません。
という構造ですので、これを履き込んでいくと…
先芯部分の革は伸びず、しかし指周りの革は左右に押し広げられます。
足は通常、歩行の際に外側へと加重が掛かり易いので
小指部分が外へと押し出される形となります。
しかし、芯材の入っている部分は一緒になって広がってはくれませんので
芯材が入っている硬い部分と、柔らかい革の部分、
その境目で革が裂けてしまうようになります。
つま先が細くなっている靴のデザインの場合は、
おのずと小指の外への押し出しは強くなりますのでより痛み易いかと思います。
また、足の指の長さは人それぞれですので、例えば指が長い人で
先芯部分まで小指が到達している方などは、歩行の際に
小指が芯材に当たってしまい痛みが生じる事もあります(補修不可)
親指側も同様に加重は掛かりますので、同様に痛む方もいらっしゃいます。
以上が小指のところが裂けるメカニズムの一例となります。
では補修となります。
接着剤の塗布により、鱗状に革が硬化してしまっておりますので
この部分は残せません、ですので刳り貫いてしまいます。
このようにDIYしてしまうと、余計に補修範囲を広げかねませんのでご注意です。
*裂けているだけであれば裂け目部分の縫製のみで済みます。
(リンク先補修事例を参照)
まずは内側から革を宛てがい補修致します。
裂けている部分の周辺も、革が伸ばされ痛んでおり、
またライニングも擦切れている場合が殆どですので、
周辺(黄色点線)に革を宛てがい補強を行います。
宛てがう革は革端を薄く漉き、靴の内部で補修の革の厚みに
段差がでないようにしています。
穴が塞がりましたので、今度はアッパーの革の段差を埋め戻します。
同じ形状に革をカットしまして象眼致します。
そして縫製。
ぐるりと縫製。
ときどき裂け目補修で、表面に革を接着しているだけの靴を
見かけますが、見た目は縫い目もなく仕上りますが、
やはり裂けるぐらいの加重が掛かっている部分ですので、
耐久性を保って治すには縫製が必要かと思います。
AFTER
今回の事例は、小指の裂け補修でも最悪のケースとなります。
接着剤はくれぐれも使用しないでください。
このような痛みの予防をするには日々のお手入れが重要となります。
まずは乳化性のクリームにて定期的な保湿。
革の乾燥を防ぎ、色褪せもにも効果的です。
面倒であれば、屈曲部分だけでも充分です。
そしてシューキーパー。
入れておく事で、靴皺を伸ばす事が出来ます。
そのままにしておくと、靴の皺が深くなってゆき、ひび割れの原因となります。
木製のものは数千円しますので、100均のプラスチックのものでも
充分かと思います。
木製のものを購入される場合は、塗装がされていない生地仕上げのものが
湿気もよく吸ってくれますので宜しいかと思います。
日々のお手入れが、3年後、5年後、10年後…
にと、影響をしてゆきますので、
今日のお手入れもお忘れなきよう…。
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