2017年10月09日

ローファーがコリコリして、痛いんですけど案件

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本日のコリコリ案件はこちらのローファー。
ローファーという靴種も、色々と問題が発生し易いデザインです。
よくあるのが、甲の部分の締め付けが痛い、かかとがスポスポなど。

本日はコリコリ案件。
革が内側にタブついていて、コリコリと堅くなっているとのこと。
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一見普通に見えるのですが、矢印部分が張り出しています。
張り出した部分が、骨に当たり痛いんですと。
外側(靴の外側)は大丈夫だけど、内側(踏まず側)だけが痛いと。

痛くない反対側はこんな感じ。
弛んでいません、ほんと微妙な差ですがこれで痛みが生じてしまうのです。

似たような事例で、ワークブーツなどでベロが羽部分と繋がっていて
折り畳まれ重なっている仕様がありますが、
これも時々同じような症状が発生致します。
この場合は、コリコリではなくゴリゴリ案件となりますが。

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この靴を製造する際の型紙の段階で、甲の部分のパーツを
もう少し狭く設定していれば、内側のたるみは生じなかったのですが、
型紙がちょっと悪かったのかなと思います。

ときどき、サイズがキツくて伸ばしてくださいと
ご来店される事がありますが、実際に履いて頂いた状態で触診しますと、
革は余っているしゆるい感じ、では実際に痛い部分を指して頂くと
コリコリ…
ということが時々あります。

キツいのではなく、コリコリが当たって「痛い」が「キツい」に変換。
この場合、残念ながらコリコリは伸びませんし改善のしようがありません…。
(今回のような場合は除去できる位置ですが、指周りなどは分解できないので)

コリコリ部分というのは、革が重なり合っていて、
その部分が縫製されますとコリコリと堅くなります。
それが人により、当たる方と当たらない方、または当たっていても
気にならない方など場合によりけりです。

ですので製作する場合には、革が重なる部分というのは
そうならないように漉き加工を行いますし、
なるべく内側に段差が生じないように致します。

または、そのような部分が可動域や骨部分にこないように
避けてデザインを行ったりしますが、痛みの感じ方や骨格は
人それぞれですので、完全には不可避かと思います。

また、そればかり気にしていますと、
デザインのバランスも悪くなります。
痛くないけど、可愛く、かっこ良くない…
どこかで折り合いをつけるしかないのですが。

とりあえず現状確認しますので、甲ベルトを外します。
モカシン部分の縫目も解いて、もたついている部分を広げてみますと
革が折れているのが確認できます。

この折れている分だけ、型紙を修正して製造していれば
このようなコリコリ現象は生じなかったのですが…。
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これにより、折れて重なっている部分が内側に押し出されますので
出っ張っていると云う事になります。
(制作時は靴型につり込んでいますので、出っ張ていた訳ではないのですが)

ちなみに、痛くない外側はと云うと、こんな感じで折り込まれておらず
サイド部分とツラで縫い合わされています。
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改善方法ですが、折り重なっていた部分を取り除き、
再度縫製する事で「改善できるのではないかと思います」
畳まれていたピンクの点線部分をカット致します。
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そして、元と同じようにサイド部分のパーツと縫製致します。
モカ縫い部分を閉じて、そのまま甲パーツをかがり縫いしてゆきます。
そして、最後に甲ベルトを本体と縫製しましたら完成となります。
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すでに完成した靴の状態で縫製するには、
靴の中で針を動かし抜き差ししないとならないので
手縫いするにも、サクサク縫えずもどかしい…。
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最初に弛んでいた部分が無くなったのが確認出来ると思います。
分かりますかね、微妙ですよね見た目では。
両足とも外側をコリコリ除去加工致しました。
このちょっとしたことが、靴では命取りになったりまします。

私もときどき、似たようなコリコリ痛があるのですが、
すでに数年履きならした靴でもそれは突然やってきます。

ある朝、家を出ましたら小指部分がずきっと。
とりあえず駅のベンチで脱いでみますと、なんていうことはない
靴下の指先部分の縫目の固まりのコリコリが、
ちょうど小指の腹の位置にきていて、
それが痛みの原因になっているなんてことが。

靴下の僅かな縫目の固まりでも、丁度よいところ(悪いところ)に
きてしまえば痛みが生じてしまいます。

知人に、
「今まで修理してきたもので一番難しかったのは何?」
と聞かれた事がありました。

答えは、今回のような修理です。
色々と技術的に難しい修理は他にも色々とありますが、
それらは原因があって理由もあり、そして修繕結果も確認できます。

例えば、鞄の持ち手が千切れた修理の場合は、
千切れた原因を探し、作りが悪ければ壊れ難い仕様で製作し、
素材が悪ければしっかりしたもので作り替えます。

補修後は、ちゃんと縫製されているか目視することは当たり前ですが
負荷を掛けてみて、縫目が緩んでいないかなど状態を確認します。

今回のような補修の場合は、原因は分かりましたし
問題の部分も取り除きました、が、
その結果は、ご本人が履いて状態を確かめてみるまで分かりません。
(今回は郵送でのご返却でしたし)

もうちょっと取り除いた方がよかったか… 
サイズが窮屈になっていないか…
まだ痛いと云われやしないか…
なんてと、もやもや…。

なので、結果を自分で確認できない、
相手(感覚)任せな修理というのは、
すべて難しいというか、不安な感じです。

それは知り合いにプレゼントを贈る、あの感じでしょうか。
好みは重々分かっているけど、これ気に入ってもらえるかな…
なんていう感じです。

ちなみに今回のプレゼントは、痛みもなく喜んで頂けたようです。
(痛みのあるプレゼントとって…)

ampersandand at 10:23│ 靴修理