2017年10月20日

昔のCOACHが好きなんです。 擦り切れと補色篇

先日「コーチ」が、社名を「タペストリー」に変更するというニュースが
ありましたが、ブランドも生存競争が大変なようです。
「COACH」という名前は残りますが。

今回のご依頼品はそんなコーチの鞄になります。
母親の鞄だったものを、娘さんが新たに使い始めるにあたって
綺麗にしたいとのこと。

BEFORE
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ご覧のように、今のコーチとは違いレザーレザーしております。
80年代に製造されていたグローブレザーの鞄になります。
内装の生地もなく、革のみで製作されています。

COACHは、もともとこのような肉厚のグローブレザーを
用いた、革製品の製造から始まったブランドのようです。

創設者のマイルス・カーン、リリアン・カーン夫妻は、
野球のグローブが、使えば使い込むほど味が出て、
かつ丈夫なので、そんなグローブを参考にして
革製品を作り始めたらしいのです。
*ただし、ブランド名のCOACHは、野球などのコーチとは関係が無いとのこと。

いまでは、モノグラム生地を使った鞄などをよく見かけますが
80年代の、このグローブレザーを用いていた頃の
COACHの鞄がお好きな方が、ご依頼にしばしばご来店されます。

そして皆さん口を揃えて
「今のCOACHは、好きではないのです」と。
確かにこの当時と、今のCOACHとではテイストが異なっておりますし。

そんな昔のコーチがお好きな方々の鞄は、
革の乾燥、色褪せやフチの擦り切れ補修が定番となっております。
製造から3、40年近く経過しておりますので、その間
一切お手入れを行っていなければ、しょうがない感は否めませんが。

使用されているグローブレザーは、今時の婦人鞄に使われているような
表面を厚く顔料で塗装されている革と違い、染料で軽く自然な感じで
仕上げられているので、お手入れしないでおりますと、
色褪せ乾燥は生じ易いかと思います。
その分、ナチュラルな「革らしさ」に富んでいる訳ですが。

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「野球のグローブが、使えば使い込むほど味が出て、かつ丈夫なので…」
と、カーン夫妻のブランド創設話がありますが、
これはお手入れしてのことですので、何もお手入れしなければ…。

ご依頼品もご多分に漏れず表面はカサカサで色褪せています。
そして、外縫いの鞄には宿命的な症状になりますが、
フチが擦り切れております。
擦り切れも、結局はお手入れ不足に起因するところも大きいです。

人の皮膚も、冬の乾燥時期にはカサカサと乾燥しますと
粉が吹いてあかぎれしてしまうと思います。
乳液や保湿剤にて皮膚に潤いを与えることで
擦れてもカサカサし難くなります。

革も皮膚と同じく乾燥しますと同様です。
ただ皮膚のように新陳代謝がないので、痛み初めてから
お手入れを行っても完全には元通りになることは難しくなります。
ですので、「痛んでから」というよりは日々のお手入れが重要となります。

ちなみに、レザーの場合は、「皮」ではなく「革」の表記かと思います。
雑誌などでも、レザーに関して書かれている文章で
しばしば、「皮」の文字が何度も使われていたりしますと、
「校閲さ〜ん、どうした〜」と思ってみたりしています。

そんな記事を読んでおりますと、私の頭の中では
皮膚で出来た、鞄や靴が無意識に想像されてしまいますので…。
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内側の革部分は、やや乾燥しておりましたが
昔のままに近い色合いででキープされていました。
染料仕上げの革は、紫外線により色褪せが生じ易いので
内側部分はそれを免れていた感じです。
この部分を参考に補色は行いたいと思います。

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擦り切れているフチ部分は巻き直すしかありません。
今回の場合は、全体的に擦り切れている箇所がいくつか
点在しておりますので、全周交換となります。

巻き直す際には、耐久性を考えてオリジナルより
気持ち厚めの革で巻き直すことにします。
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「赤」といっても、カーディナル、ワインレッド、スカーレット、
マゼンタなどなどと、いろんな赤色がありますので
色合わせが難しい色のひとつです。

今回は、ちょうど同じ色味の赤色の革の在庫がありましたので
そのまま使用できそうです。
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まずはフチ巻きから補修してゆきます。
長年の使用により、鞄のフチはイレギュラーに変形していて、
均等にフチを巻き付けていくのには梃子摺ります。

製品の段階では、このように手作業で巻いているにではなく
ダダダダっと縫製と同時に自動で巻き付けながらできるのですが
補修の場合は、アナログでちまちまとひと辺ずつ巻いてゆきます。

巻き付けながら縫製するアタッチメントを
以前注文しようと思い、治具メーカーに問い合わせたのですが、
巻き付ける素材や厚み、縁取りの幅によって、
ひとつひとつオーダー製作となるとのこと。

修理では依頼品によって、その都度設定が異なりますので、
オーダーなんてしてられないということで
地道に手作業となっています。
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縫製、補色を行い保湿ケアも幾度か繰り返しまして
完成となります。

AFTER
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製造からおよそ30年ぐらい経過しておりますが、
表面の痛みはありましたが、補色と保湿も行い
これからも十分活躍できる状態となりました。

母親が使い、その後、娘に受け継がれてまた数十年…。
30年後に私がまだ生きておりましたら、
ふたたび、フチ巻き交換で孫の方にご依頼を受ける日も
くるのでしょうか…。

その時は、すでに隠居しているかと思いますが、
ご依頼とあらばお受け致します。
ただ、恐らくその頃には手は震えているでしょうし、
目がかすんで、針に糸が通せるかも怪しいかなと思います
今日この頃…。
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ampersandand at 22:12│ 鞄と小物修理