2019年04月29日

ローファーを購入する人が失敗するサイズ選びあるある。

サイズ調整して下さいというお問い合わせがありますが
「かかとに1.0cmくらいの隙間ができてぱかぱかしています」
この場合はサイズ調整というか、外で履いていなければ返品交換を
お勧め致します。
そもそも選択されたサイズが大幅に間違っている状態です。

ぱかぱかシューズに多い靴種は主にローファー。
ローファーは紐靴と同じような感覚で購入してしまうと
だいたいサイズを間違ってしまいます。

パターンとしては、甲の部分がきつく感じるのでワンサイズ、ツーサイズ
大きめを購入してしまうというあるある。
その結果、歩くたびに靴の中で足が前に滑るし、蹴り上げると
かかとが付いてこずぱかぱか…。
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そもそも紐靴と違って足を入れるだけの構造なので
甲の部分で抑えるだけで基本的にはスリッパと同じように
つっかけて履いているような状態です。
更に、足入れがし易いように履き口周りもあまり内側に倒されておらず
トップラインが低めに設定されています。

ではそのつっかけて履いている状態で脱げないようにするには
どうすればいいでしょうか?
紐靴であれば紐を縛れば抑えられますが、ローファーの場合は
調節が出来ません。
ですので、そもそも甲の部分を窮屈に設定してあります。
甲の部分でのみで足が抜けないように押さえつけているわけです。
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*黄色点線部分が絞ってあり、紐靴の靴型より甲も低く設定されています。

なので紐靴と同じ感覚で試着してしまうと、甲の部分はきつく感じるでしょう。
きつく感じないワンサイズ大きめを購入してしまうと甲は楽にはなりますが…。
歩いてみると、甲で抑えられずワンサイズ大きめなので
縦方向にも緩くなっているので足が前に滑ってしまうというわけです。
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紐靴と比べて足を覆う部分の少なさ、この少ない面積で
抑えなければならない靴なのでそもそもが窮屈な設定なわけです。

この逆なパターンもあります。
窮屈だけどかかとがぱかぱかならないので購入して履いてみたけど
甲の部分がきつくてしばらくすると足がしびれる…。

「甲の部分を広げてほしいのですが…」

ローファーは甲の部分にだいたいベルト状のパーツが付いていますが
この部分を伸ばす事はできません。
この部分で抑える為にしっかりと作られておりますし
伸ばそうとすると、ベルトパーツの付根部分の縫製や革に負荷が掛かって
裂けてしまいますので。

ベルト状のパーツがなく、甲からベロまで繋がってるタイプのモデルは
反り上がる付根部分でそもそも裂け易いデザインなので走ったり、
階段を駆け降りたり、しゃがんだり、立った状態で履こうとしない方が
宜しいかと思います。

ローファーの壊れ易い箇所あるあるでは、甲の付根以外だと
かかと部分内側になります。
紐靴のように甲の部分とかかとの芯材で足と靴を固定できないので
歩行の際にかかとが浮かび上がり履き口でひっかかるという動きを
繰り返す結果、内側部分が擦れ易い傾向にあります。
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こんな感じで擦れていきます。
ローファーは履き口部分にはイタリアンテープが施されていて
トップラインに縫い目がない場合がほとんどです。

その場合、内側に革を宛てて縫製する際にトップラインに縫い目がないので、
新たに縫い目が出来てしまいます。
縁取りのイタリアンテープを分解して行なえば、
元通りに補修は可能だと思いますがあまり現実的ではありません。

ですので擦れているようであれば、レザーローションで保湿しておくことで
擦れの進行を遅らせる事が出来ると思います。
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ちなみに女性が履くパンプスでは、ほぼ指先のみで脱げないように
なっていますので、その指周りの窮屈さはローファーでひいひい云っている
男性には耐えられないでしょう。
解剖学の先生が云うには、女性は子供を産む時の痛みに耐えられるように
男性より痛みには強くできている、ということを聞いた事がありますが
それはパンプスを履くのにも役立っているのかもしれません。

高校生になって学校指定でローファーを履かなければならない
学生は多いようですが、それまで革靴を余り履いた事がない子供が
初めて履く革靴がローファーというのは酷な事のように思います。
学生ローファーは主に、ガラス加工された硬い革で出来ていますので
なおさら履きづらいでしょうに…。

初めての革靴でそれまで履いていたスニーカーのような柔らかなフィット感で
サイズ選びを行なえば、おのずとサイズオーバーに陥り易いかと思います。
そして日常の脱ぎ履きでは、かかとを踏んづけてしまう生徒も多いでしょう…。
(かかとを踏み潰してしまうと靴としてはお役目終了です)

ローファーではなく外羽の紐靴が初めての革靴には、
また骨格形成される成長期の子供には健康にもいいのではないかと思います。

ちなみに私の高校は学ランでしたが、靴は自由でしたので
「学ランにエンジニアブーツを履く」という謎の高校生でした。
下駄箱には入っていたのでしょうか?記憶にありません…。
その後、エンジニアブーツを履いた事は無く、
特別エンジニアブーツが好きだったわけでもなさそうですので、
若気の至りというやつだったのでしょうか…。

ローファーに関連して以前ユニークな修理をした事がありましたので
宜しければこちらもどうぞ。
「ALDENのリジェクト品を正規品に…。」

次回、
「ウェルテッド製法の靴を半年後に後悔しない為のサイズ選び篇」
になります。


ampersandand at 21:58│ 靴修理