靴修理

2020年12月31日

MAGNANNIは始めから併用仕様がいいかも篇

初めのお問い合わせではビンテージスチールのみだったので
その時点では一度お断りしたのですが、その後ハーフソールのみでも
付けられないか、というご相談になり、ならばビンテージスチールも
付けられますよ、ということで最終的にハーフソールスチール併用仕様で
仕上がっています。
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では何故スチールのみだと付けられないか?ですが、このモデルは
ボロネーゼ製法でできているので前側に中底がありません。

中底が革でできている場合は既製品だとに3.5mmから4.0mm厚くらいの
革が使われています。
ボロネーゼ製法というのは端折って説明すると、前側の本体の
アッパーが靴下(袋状)のようになっていてその中底がありません。
柔らかいアッパーの革1.5mmぐらいに革底が直接取り付けられ
底縫いされている感じです。

なのでボロネーゼ製法で作られた靴というのは前側には中底がないので
その分、ソールの屈曲が良くしばしば雑誌などで紹介されるときは靴を
手でぐにゃっと曲げられて紹介されていたりします。

でですが、今回スチールだけだと何故付けられないかですが、
付けられるんですが、革底に直接スチールを取り付ける場合は、革底にそのまま
スチールを載せるのではなく革底にスチールが収まるようにその厚み分、
革底を凹ませて削る必要があります。
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なのでそうなると底縫いが縫われている深さにもよりますが、
底縫いの糸が切れてしまう場合があります。
ウェルテッド製法の靴ではスチールを固定するビスが革底やウェルトや
中底面に到達して固定できるので底縫いの糸が切れても問題ないのですが、
(当店ではビスは通常のものではなく、確実に固定できるように一般的な
スチールのビスではなく長めの腐蝕しないステンレスのビスを使用しています)
ボロネーゼ製法の場合は、周囲のウェルトは飾りなので(違う場合もあります)
ウェルテッド製法のように本体には縫われて固定されていません。

そして中底も無いのでビスが固定される硬い層は凹ませて残った革底の厚みのみ
となりますので、それでは少しビスが固定されるには心もとないので
心配性の私としては一旦お断りさせていただきました。

ビスを打つ部分にもラバーが埋め込まれている範囲がかかるので
その箇所のビスの固定が甘くなるのでは?と中底が無いのである程度
履き込んでいった際に路面や荷重の圧で革底の変形が起こりやすいので、
その時にスチールの固定が若干不安というのもありました。
ちなみにラバーソールではそもそもビスが固定できないので取り付けは不可です。

では次にハーフソールを併用する場合はなぜOKなのか?ですが、
ハーフソールを取り付けた場合はスチールの厚み分凹ませる段差が
ハーフソールの厚み分で相殺されますので革底部分を加工せず(凹ませず)
に済みます。スチールを固定するビスはそのまま厚みが残っている革底に
がっつり食い込んで固定されます(底縫いも切れずにそのまま残りますし)。

別の靴ですがこんな感じです。
ハーフソールの厚みでスチールの厚みを吸収できます。
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そもそも初めの段階でハーフソール併用であればスチールも取り付けられますよ、
とご案内すべきだったのですが、スチール単体でお問い合わせされる方の場合は
そもそもハーフソールを取り付けたくない、という方が多く、
こちらから営業トークのようにハーフソールも一緒にどうですか?
ポテトとセットでどうですか?ばりに、押し売りする感じになるのも嫌だなぁ
という私の営業下手なところが影響しているわけでもありますが。
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そもそも今回ご依頼の靴は、見ての通り踏まず部分がオパンカ(オパンケ)
仕様ですので革底のまま履かれていずれオールソールとなった際に
だいぶ困るだろうということが予想されるので、ハーフソール併用仕様で
オールソール回避仕様にはじめからご案内すれば良かった訳ではあるのですが。

以前この仕様の靴のオールソールのご依頼があったのですが、
その靴は革底のまま履かれていて、雨の日も構わず履かれていたようで
路面の雨水を革底が吸い上げてオパンカ部分の革も硬化し、
アッパー側の革もやはり同様に硬化し縫い目で裂け始めていました。

この側面の縫い目は硬い革底を無理やり捲り上げてアッパーで縫い留めてるので
常にそこそこテンションが掛かっています。なので革が硬化してしまうと
そのテンションに堪えきれずオパンカ部分の縫い目でアッパーの革が
裂け始めてしまいます。

革底側は裂けていても交換するので問題はないですがアッパー側が
裂けてしまうと元の見栄えでの修理は難しいです、というか
見栄えを変えて修理しても強度を保たせて修理は無理かもしれません。

踏まず部分のオパンカですが、これは底面の型取りを行い革底を切り出し、
踏まず部分の捲り上げる革を薄く漉いておき、その革底のみで一旦靴型に
取り付けて踏まず部分に捲り上げる癖付けをし(メーカーだとしていないかも
しれませんが)そしてアッパーを釣り込んでからその癖付けした革底をセットし、
アッパーと革底をすくい縫いしていきます。

オールソールとなった時にはオリジナルの靴型はもちろん無い訳ですので
革底に同様の癖付けができません、でもこの程度であれば手で癖付けしても、
または他の靴型でも代替えできそうですが、革底とアッパーのすくい縫いの時に
靴型が近いものを使用しても踏まずの膨らみ(フィット感)が変わって
しまいそうです。

それよりも前側の中底が無いので、古い革底を取り外した時に本体が
フニャフニャで形状を保てないと元通りの形状とサイズ感で新たな革底を
取り付けることができないのだろうと思いますので、極力オールソールを
回避する方向で補強補修しておいた方が宜しいかと思います。

もちろん近い靴型を入れてそれなりにソール交換することもできるとは思いますが
形状の差異やサイズ感の違いが生じてしまいそうです。

ボロネーゼ製法ではないですが、同じようにソールを外すと抜け殻のようになる
ステッチダウン製法のクラークスを、とある修理店だったかメーカーに
ソール交換に出され、違う靴型を入れて修理された結果、靴のつま先形状が
変わって仕上がってきた〜というお客さんがいらっしゃいました。

当店にその靴を元の形状に戻せないかというご依頼だったのですが・・・。
過去記事で画像とともに掲載がありますのでご興味ある方は
探してみてください。

前置きがだいぶ長くなりましたが、
ではではハーフソールスチール併用仕様の補修を。
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メーカーも恐らくオールソールしたくないのか(本国に送ってもオールソール
してくれるかも怪しいですが)摩耗に耐えるようにわざわざ革底にウレタン系の
ラバーを埋め込んでいて中央部分が2.0mm程度凸形状で盛り上がっています。
(一番摩耗し易いつま先が無防備なので残念な補強ではあるのですが)

もちろん出っ張っていてはハーフソールが取り付けられないのでこの段差は
削り落とします。次に問題なのが踏まずからの境目がない底面形状。
これではどこでハーフソールに切り替えればいいのか・・・。

通常の底面の場合は革底の角があるので以下の様にハーフソールの境目は
直線で繋げられますがオパンケの場合はどうしましょうか。
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こんな感じで円弧で繋げてみました。
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ハーフソール取り付け位置というのはその境目が地面に接地しないように
接地位置から1.0cm程度下がった位置設定になりますが、今回はウレタンが
埋め込まれてるのでそれを覆う為に少し深めの設定になっています。

これもしばしば尋ねられるのですが、革底を削るのですか?と。
削るという表現が適切ではないのですが、画像で見ると削ったように
見えてはしまいますが。
特に今回は出ているウレタン部分は確かに削っていますがこれは異例です。
出っ張ったままだと取り付けできませんので。
革底部分も白くなっていますが、これは仕上げ材の塗装やワックスを
取り除き、接着剤が食いつきやすい様に表面を「ザラザラに荒らしている」という表現が適切だと思います。
表面を紙やすりでザラザラにした程度、といえば分かりやすいでしょうか。

といっても中には不思議なお店もある様で、とあるお客様が言うにはそのお店では
ハーフソールの厚みが2.0mmあるので取り付ける際は革底も2.0mm均等に全体を
削ります!と言われたのですが・・と。
まぁそんなこと聞いたらちょっと恐怖ですよね修理に出すにも。
そして底縫いの糸が切れない様に表面を荒らすのが基本ですが、あまり考えず
ザクザク削ってしまい底縫いの糸が擦れ切れてしまった状態でハーフソールを
取り付けられている修理店も時々あります。

なんぜそれが分かるかと言うと、その靴が次回修理の時に当店に持ち込まれ
古いハーフソールを剥がしてみると底縫いの糸がすでに切れている靴が
しばしばあるからなんですが・・・。

その様な靴は場合によっては古いハーフソールを剥がすときに底縫いの糸が
切れているので、ウェルトと革底が剥がれて(浮いてきて)きてしまう
場合があります。
お客さんにしてみれば、その状態で私が「剥がれてきました」といっても
当店でその様にされた、と思われてしまうでしょうから人知れず追加補修を行い
ハーフソールを取り付けている靴もあったりします。
なので、できれば初めから当店で補修して欲しいという希望はあります。

寄り道が長くなりましたが完成です。
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先ほど表面を荒らした境目のラインと全く同じ形状にハーフソールを
加工し、境目はハーフソールを漉いて段差が生じないように取り付けています。
表面を荒らしていないところを覆っても剥がれてきてしまうのでその点が
この補修では難しいところです。

オパンカの捲り上がっている部分に影響がない様に側面からはほとんど見えない
ライン設定になっています、というかこの目線で他の人の靴を見ることは
ないでしょうからあまりこだわってもしょうがなかった訳ではありますが。
20201207001
逆半カラス状態という感じでしょうか。
半カラス仕上げといえば踏まず部分を黒く染めるのですが、今回は逆に
前側をラバーで黒く覆っています。
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今回のハーフソールの境目が円弧のライン設定は別料金となります。
通常は以下の様に直線のライン設定になります。
20201207000
この記事は12月のはじめ頃に書き始めたのですが、バタバタしていて
放置していたら2020年度最後の記事になりそうです。

今年はコロナに始まりコロナで終わらずに来年も引き続きの様相ですが
ダイアモンドプリンセス号騒ぎが昨日の事のようです。
早かった〜今年は特に1年が。

多忙だったり修理内容の複雑化により数年前からあまりお店を開けて
店頭営業していなかったのですが、コロナ騒動でより余計に今年は
「本日営業日です!」と云ってお店をちゃんとオープンした日は帳簿を
見てみましたら4日間だけでした。

4.5.6月頃は商店街自体が自粛ムードでしたので飲食ではない当店も
わざわざ開店しない方がいいのか?ということもありましたが。

もちろんその間休んでいたわけではなく、ひたすら郵送修理だったり予約で
ご来店された方の依頼品を修繕していたわけでありますが。
飲食でデリバリーが増えたように修理も郵送でのご依頼が
より増加した年でした。
そこそこ近場の方でも4.5.6月頃は外出されるのが怖いので郵送します、
というお客さんもいらっしゃいましたし。

来年はどうなるのでしょうか・・・。
みなさま変わらずにお体ご自愛くださいませ。
みかんを食べて免疫力向上を試みる店主より。

ampersandand at 12:01|Permalink

2020年11月11日

ブーツのサイズ調整。 あるあるじゃないよ篇

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この手のブーツは履きこなせるまでに数年かかるようですが、
なので皆さん履き始めの段階でギブアップされる方も多いようです。
履きこなせるというのはファッション的な話ではなく、
快適に足に馴染んで歩行ができるか、ということになります。

今回のブーツもアッパーの革が3.5mmとのことですが、
実際にはもっとあるように見えます。(一般的な靴は1.0から1.5mmくらい)
ソールも鬼厚ですのでほとんど曲がらないんじゃないかと思えます。
この手の靴に私はもうチャレンジする気力と体力はない感じです・・。

厚みのある良質な革が手に入らなくなったということで、この靴の
製造メーカーではすでに廃盤にされているモデルとのことでした。

牛が育つには餌となる飼料が必要で、飼料が育つには天候が
良くなくてはいけないのですが、近年の異常気象により穀物の成育不良や
不作により餌の値段が高騰し、その結果、牛に与える餌の質や量が制限され、
そうなると栄養が少なければ牛が健康に育たないので革の質も悪くなる、
ということで以前に比べ革の質は悪くなってきている、と革屋さんに
聞いたことがあります。
(といっても革はあくまでも食用で屠殺される際の副産物ではありますが)

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今回はこの手の靴のあるある、硬くて痛くて履けないのでなんとかならないか?
案件ではなく、すでにこの手の靴を履きこなされてきた
ブーツマスターなお客さん。
しかしワンサイズ大きいのを購入してしまったのでサイズ調整をとのこと。
確か廃盤になるので大きいけど買ってしまった・・とかだったと思います。

これはあるあるになりますが、この手のごついブーツに
「ミンクオイルを塗れば少しは柔らかくなりますかね?」
としばしば尋ねられますが、この手の靴以外でもそうですが、
私としては靴全般にミンクオイルはオススメしておりません。

ミンクオイルの油分は他のオイルに比べ浸透しやすい為、革の繊維深くまで
行き渡りその結果、適量を間違えると(だいたい多量に塗布してしまう)
革に含有するオイルが飽和状態になり、常にふやけた状態となってしまい
最悪、繊維がほぐれて革の表面が割れてきてしまう事もあります。
紙を水で濡らしているとほぐれていく感じと例えると分かりやすいでしょうか。

そして常に油分で湿っているので日本の高温多湿の環境では
カビの繁殖にはもってこいの状態となります。
それと湿っているので磨いても艶が出ないんです。
そしてこうなってしまうともう元の状態には戻せません・・・。

昔、ブーツが日本に紹介された際に一緒にミンクオイルも合わせて紹介された
ようで、そのイメージが強く今でもブーツといえばミンクオイルとなっている
ようですが、アメリカ大陸の乾燥した地域であれば適しているようですが、
日本のような高温多湿ではレザーローションや乳化性の靴クリームでの
メンテナンスで十分だと思います。

ブーツマスターにも伺ったところ、やはり昔ミンクオイルを使われていた頃に
カビだらけになって終了した靴があったとのことでした。

初回ご来店の際に通常のサイズ調整用のインソールで確認したのですが、
それだと甲の部分が余っているとのことで、
(通常は踏みつけあたりの屈曲部を嵩上げするので前側だけになっています)
新たに踏まずあたりから持ち上げるようにインソールを用意し
確認していただくと、
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いい感じということでインソールでの調整はOK。
全敷と調整用の革二枚合計で、つま先側はだいたい6.0mmぐらいの厚みに。
足囲にしたら計算上はEEEからEに2サイズダウンな感じです。
通常こんなに底上げしたら指先が上部に当てってしまうのですが
ごついブーツなのでもともとゆとりがあるのか指あたりは大丈夫との
ことでした。(もともと敷かれていた市販のスニーカータイプ系の
インソールが同じくらいの厚みでしたのでそれを目安にしました)

それと今回のブーツはヒールが高いので前側のインソールを6.0mmと
厚く入れても許容できる範囲ですが(もちろん初めの設定から変更しない
のがベストですし、許容できるかどうかご本人次第ではあります)
ヒールが低い靴の場合はつま先側をインソールで底上げすぎてしまうと
その分前後の高低差がなくなっていきバランスが悪くなってしまうので
靴によってそれぞれ限度はあります。

指周りの具合はOKなのですが、できれば踵部分をもう少し
左右からフィットさせたいとのこと(踵の横幅を窮屈にするイメージ)
通常の短靴の場合にも右足だけかかと内側に革を一枚追加して
補修されたことがあり、それでいつも丁度いいとのことでした。
こんな感じでかかとのパーツの形状に合わせて革を内側に追加する
イメージです。(黄色線)
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それではということでお預かりして型採りをして腰革を準備していたのですが
実際にこの革を手で持って筒に突っ込んでジャストな位置に皺なく綺麗に
貼り込められるのだろうか?という疑念が・・・。

しかも業務用の接着剤は貼る面と貼られる面の両側に接着剤を塗布して
貼ることで接着強度が高く仕上がるのですが、ブーツの内側の窪んだ部分に
適正な範囲で接着剤が塗布できるのか?
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しかも接着が強いので貼り直しはできずワンチャンス、まあ無理だろうな
ということでかかと中央部分で左右にパーツを分割し接着することに。
20201022037
しかしこの分割は結果的にはよかったんですが。
今回右足だけ緩いので右足だけかかと内側を狭めるのですが、
かかと部分にぐるっと革を回してしまうと、僅かですが右足だけ革の厚み分
かかとが前に押し出されます。

なので当初の予定では踵中央部分周辺の革を漉いて(斜線部)厚みを薄くする
予定でしたので、中央部分を薄く漉くというのは作業的にどの程度薄くなって
いるのか判断し難かったので、左右に分割したことで端を薄く漉くので
厚みの確認がし易く適正な厚みに加工できました。
こんなイメージです。
パーツ周囲を漉いているのは革の厚みがそのままだと足入れの際に
その段差で引っかかりめくれていきやすいので漉いています。
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そしてこれを内側に仮固定して履いていただくと、
踝下あたりをできればもう少し窮屈に・・ということですが
塩梅が難しいですがやってみましょうということに
(画像のこの面が靴本体との接着面になります)
20201022042
取り付けるとこんな感じになっています。
斜線部分に革を追加して踝下がフィットするようなイメージです。
イメージとしては斜線部分を出っ張らせることで歩行の際に踵が上に
抜けないようなイメージです。
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ファスナーがついていないブーツということは足がそのまま入るように
形状としてはくびれのない寸胴形状で、甲から足首周辺もゆったりできています。
ですので歩行の際には甲の部分が抑えられずに踵が靴から抜けがちです。
ソールも重く分厚く曲がらないので余計にそうなりがちです。

ただブーツに限らずですが、がっちりと作られた靴というのは馴染むまで
難儀ですが、追々、自分の足に馴染んできてしまうとその頑丈さが今度は
足をしっかりとホールドしてくれるということになります。
逆に初めからやわやわな靴というのは靴下のようにどこもアタリがなく
楽チンではあるのですが、その分へたりやすかったり足を支えてくれる
強度がないので足なりに靴も変形しやすかったりもします。

数年前のヤフーニュースで確かアメリカの論文で発表されたかで
「ビーチサンダルは足に悪い」というニュースがありました。
それはビーチサンダルはソールが柔らかいので、体重が重い人が履いていると
ソールが片側に潰れた状態で歩行することになるので、その結果、
骨格や筋肉に影響が生じる・・みたいな論文だったかと思います。

それと細いストラップで固定しているだけなので脱げないように
無意識に指先を掴むように曲げていたりする為に足底筋膜炎などに
なりやすいとのことでした。

これはビーチサンダルに限らずサイズが合っていない靴や
あまり足を支えない構造の靴は同じなんだと思います。
ただ柔らかい靴がダメかというとそうでもなくて、要は時と場合による
ということでもあると思います。
海水浴にブーツは履きたくないわけですし。

ちなみにサイズが合っていない場合ですが(そもそも試着して
店内をちょっと歩く程度で合う合わないがわかる訳もないのですが)
目安としては指周りが若干きついのであれば履いていくことである程度は
革の伸びと(革の種類と靴のデザインによってはあまり期待できない場合もある)
中底の沈下で後々アジャストしてくる可能性はありますし、緩いのであれば
今回のようにインソールで調整もある程度は可能です。

根本的にダメなのは靴の縦方向が長い場合、
「足が前に滑ってかかとに1.0cm隙間があるんですけど・・・」みたいな
お問い合わせがしばしばありますが、これは残念ながら当店では基本的に
ご対応不可となります。ローファーでよくありがちなのでご注意ください。




それと前に滑るからといってつま先にティッシュを詰めない方がいいです。
パンプスを修理していると時々指先に詰められたティッシュの塊が
落ちてくることがあります。おそらく足が前にずれてかかとがパカパカ
するので詰めているのだと思いますが、それだと指先がぶつかってしまい
靴内部で指が浮いている、折り曲がった状態で歩行することになるので
ハンマートゥなどの疾患になる場合もありますのでお気をつけください。

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最後にもともとある踵周辺の縫い目を利用して縫製できる部分は
縫製して内側に貼り付けた革を縫い留めて完成となります。
(縫い目に重ねて縫製しているの見栄えは変わりません)
履いていただくとブーツマスターから「いい感じです」いただけました。

今回のごつい靴に限らずですが、新しい靴は履き慣らし期間が必要だと思います。
しっかりと作られた靴は尚更ですが、すぐにギブアップせず靴に自分の足の形を
覚えさせる猶予を与えていただければと思います。
(もちろん炎症や激痛がある場合は違いますが)

ampersandand at 11:23|Permalink

2020年10月12日

ローファーのかかとは傷みやすいのかもしれない。予防と対策篇

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今回のご依頼品は頂き物だというGUCCIのビットローファー。
前の持ち主さんによってかかと内側が擦り切れ放題にされており
ローファーによくある仕様の履き口にイタリアンテープ(巻革)と
言われる仕様になっていますがその部分も同様に擦り切れています。
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この場合、内側の擦り切れ補修の他に履き口のイタリアンテープ(黒い巻革)も
補修しなければならないので、それなりに補修費用がかかってしまいます。

補修方法としてがっつり直すのであればイタリアンテープを全て外して
新しく巻き直す必要がありますが、その場合はこの部分の縫製も全て解いて
甲部分の革パーツも取り外す必要があります。
黄色矢印部分の縫い目も分解。
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そうなると必然的に費用が嵩んでしまいます。
なのであまり見栄えが変わらず費用も抑えられる補修方法をご提案。
イタリアンテープは分解せず、かかとの痛んでいる部分のみ
新たに革を巻いて補修します。

画像はすでに革を巻いてテープを縫製した状態です。
反対側から踵を回ってぐるっと青矢印部分まで革を継いでいますが
あまりわからないと思います。
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履き口のイタリアンテープを補修しそれと同じ範囲の内側に
革を宛てがい補修していきます。
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一般的な方法では内側に革を宛ててそのまま縫製するのですが、
擦り切れさせてしまうような履き方の場合、縫い目の糸も擦り切れさせて
しまいますので一手間かけて縫い目を内側に隠す方法で補修を行なっています
(靴の状態や仕様にもよりますが)
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画像の青矢印部分に縫い目がありますが、これは本体にもともとある縫い目に
一針ずつ針を落として縫製しているので新たな縫い目が外観にはできていません。
縫い目から下部分は革を薄く漉いています。
これはあとで縫い付けた革を内側に折り返した時に重なるので
その時に段差が出ないように加工しています。
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縫い付けた革を内側に倒して接着。
これで先ほどの縫い目が革の内側に隠れるようになるので、
踵で擦れて縫い目を擦り切ってしまうことが予防できます。
縫い糸が擦り切れて革がずれグチャグチャになっている方もいますので。

ローファーの場合は紐靴と違い甲の部分で足の動きをしっかりと固定できない為、
歩行の際に踵がパカパカと浮き易い構造の靴かと思います。
その結果、今回のように踵周辺の革が擦れてしまいやすいと思います。

ですので革の表面が白く擦れてきたようであれば、
サフィールレザーローションで定期的に保湿することをお勧めします。
(こちらは店頭でも1.500円で販売しています)

また、毎回ひどく擦れてしまうようであれば市販の革パッドを
はじめに貼り付けてしまうの一考かと思います。
靴底をハーフソールで事前に保護するように踵内側も擦れるのが
分かっているならば、サフィール・ヒールグリップで保護するのもありでしょう。



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2020年05月25日

ズボンのシルエットを綺麗に見せるには。ブーツのシャフト詰篇

この修理はそんなに頻繁にご依頼があるわけではないのですが
年に何回かご依頼いただくブーツのシャフト詰め。
シャフトというのは筒の部分になるのですが、靴のサイズは選べても
シャフトのサイズ(太さ)までは選べませんので必要になる場合が
あるようです。

しかも今回のようにサイズというよりは履きこなし方によって
補正が必要になる場合も多く、というかこの丈の場合はそれが主な理由ですが。
細身のズボンで履く場合にシャフトが太いとズボンのシルエットが綺麗に
出なくなってしまうということ。
BEFORE
052420001
052420002
膝下がすっといきたいところが、シャフトが太いとブーツの履き口でズボンが
弛んでしまし、だぶついてすっと落ちてくれなくなります。
なので今回はシャフトを詰めて細くし、ズボンのシルエットを崩さないように
する補修になります。

ただシャフトを詰めるといっても単純に細くしてしまうと、そのシャフトに
繋がっている本体との距離の整合性が取れなくなってしまいます。
例えば、本体との合わさりめの周囲寸法が200mmなのに、シャフトを詰めて
周囲を180mmにして本体と接合すると、20mm本体側の距離が
余ってしまいます。

それでも出来なくはないのですが、シルエットが崩れたり新たなサイズ調整が
必要になる可能性があるなどリスクが高くなります(費用も高くなる)。
ですので今回は履き口が引っかからないようにすれば良いというお題でしたので
履き口に向かって細くなるように補正していきます。
052420004
ぱかっと。
詰める場合にどの程度詰めるか一番確実なのはブツ合わせなので
今回詰めるセンター部分をとりあえず裁断し、実際にこの状態で
履いていただいてどの程度寄せれば良いか確認。

だいたいトップで25mm詰めれば良い感じになりそうで、また寸法を変えない
本体接合部分におかしな皺も入らないようなのでGOですと。

今回はセンターで詰めましたが、ご依頼品はバックファスナーということもあり
バックでは詰められない、サイドで詰めるとなると両側で詰めないとセンターが
ずれてしまうの綺麗ではない、で今回はセンターでの補正となっています。
靴のデザインや補正具合によって詰める部分は靴それぞれで
違ってくるかと思います。

シャフトを分離。
今回は当初、シャフトを分離せず加工する予定でしたが、裏革は
シャフト部分に無く、またかかとに入っているカウンター(芯材)の影響も
受けていないようでしたのでシャフトを分離して加工することになりました。
分離できない場合は、詰める部分の縫製方法は今回とは異なってきます。
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052420007052420008
この靴は履き口が斜めになっていますので、センターを詰めると
合わさりめの高さにずれが生じてしまいます。
で、高さも詰めて良いという事でしたので、オーソドックスな水平ラインに
修正します。ですので今回はシャフト詰めと丈詰めという内容です。
水平といっても直線でカットしてしまうと筒にした際には水平になりません。
青いラインのように緩やかな円弧を描くことで水平になります。
052420009
丈を詰める前にファスナーの処理を行います。
分解してエレメントを一つづつ摘んでカットし、テープの長さを修正し
またエンド処理を行います。

今回のようにすでに履きこまれた靴の丈詰めというのは難しいです。
履きジワが入っているので置いた状態でもすでに左右で高さが異なります。
伸ばしたところで伸ばし具合でも違ってしまいますし。

また今回は履き口のラインを水平に補正するのでより厄介です。
そもそもブーツの場合は新品でも左右で高さが異なっていることが多く
既製品で誤差は当たり前なのですが履きこまれると基準となる
ラインがどれも不確かな・・・。

こういう場合は左右でそれぞれ近似値を取るより、片側をカットしたパーツで
反対側も合わせるのがベターかと思います。
なのでカットした丈を反対側に載せてラインどりをしてカットします。
052420010
ようやくシャフト詰めです。
トップで25.0mm詰まるように傾斜をつけて約11.0mmずつカットします。
11.0mmだと左右合わせて22.0mmにしか詰まりませんが、
縫い割代で2.0mm(計4.0mm)ぐらい詰まるので片側11.0mmでカットになります。
052420011-2


カット面を縫い割。
縫い割部分はあとで革の帯で補強しておきます。
052420012052420013
これでシャフトが詰め終わりましたのであとは本体と接合していきます。
元の縫い穴を一つずつ拾い、ひと針ひと針と縫製していきます。
052420014
052420015
で、完成となります。
オリジナルは履き口部分の表側に革帯を当てて補強(デザイン)していましたが
革がタンニン鞣しの染料仕上げでしたので経年のエイジングで徐々に
色が変わっていきます。
ですので現在の色に合わせた色の近い革で同様の加工を行っても
後々に色の違いが出てきてしまうと思われるので、内側に革を当てて
補強を行ってあります。
AFTER
052420018052420020052420021

ampersandand at 18:18|Permalink

2020年03月20日

コロナの影響でイタリアから材料が入ってこない?件。

イタリアやヨーロッパに感染が広がって外出禁止になったので
そうなるかなとは思っていましたが…

当店で主に使用している部材は主にイタリアやフランス、ドイツに
イギリスからの輸入品です。
ですので感染状況が悪化し製造業がストップしてしまうとまずいかなと
思っていたところ材料問屋からご案内が…。

イタリアのvibram社の工場が1週間稼働が停まると。
再稼働予定が読めない状態と。
他の国の工場は今のところ稼働しているが稼働停止の想定ですと。

ただ急ぎ注文していた材料を先上げで空輸して入荷させるとの事なので
夏頃までの在庫はあるので安心して下さいと…
なんだかこのアナウンスが買いだめを促しているような気もしますが
わたし的には今月はいつもの注文分プラス1ヶ月分程度で注文を
しておきましたがどうなるのでしょうかねこの先…。

仮に材料が無くなってしまった場合は、vibram社の製品にこだわらなければ
同程度の性能の国産品の調達は問題ないと思いますので、
お客様が問題なければそちらで凌げるのですが、または無いものは
仕様が無いということで、しばらく鞄修理専門で営業するか、
という選択肢もあるのかなと。

ちなみにわたし的には今回の靴材料の入荷危機よりは
コロナと関係はないのですが、LULU社がビンテージスチールの製造を終了
というほうが痛かったですね…。

これは問屋からアナウンスがあった直後に買い占めされてしまったようで
すぐに手に入らなくなってしまいましたね。
ただ当店はもともと在庫である程度ストックしていたので当面は大丈夫ですし、
オールデンでよく使うサイズ#70に限っては別ルートから2年分くらいを
入手できたのでとりあえず安心です。

問屋さんの方で国内で代替品を製造するとのことなので
今後、ビンテージスチールが無くなるという事はないのですが、そもそも
LULU社のスチールはネジ穴が小さ過ぎたり形状がロットで少し違っていたりと
海外あるあるの製品だったので、国内製造で品質の良いものが出来上がった方が
結果的によいものになりそうですが、後は価格次第と云うところでしょうか。

ちなみにつま先用のスチールで扇状のトライアンフスチールというのも
あるのですが、これは当店では取り扱っていません。
取り付けた感じはかっこいいのですが、必要以上につま先がスチールで覆われる
範囲が広いので(加工面積が広い)音鳴りの懸念と、
他店で取り付けられた靴でしばしば外れてしまっている事が多いという理由です。
外れてしまっている原因は、形状の理由というよりはビスの長さが短すぎるのが
理由なのですが。

今日のニュースでは、イタリアは医療崩壊が始まっているので、
80歳以上の感染者は集中治療を行なわないとするガイドラインを作成し
今後実施するということにまでなってしまったようです…。
「誰を生かし誰を死なせるかは患者の年齢と健康状態で決まる」
とイタリアの医師。

日本は今のところ感染爆発は大丈夫なんじゃない?という雰囲気が
何となくありますが、あるボーダーラインを超えてしまうと感染は
抑えきれずにすぐにイタリアのようになってしまうのだろうと思います。

イタリアの感染者数は2/21日は3人だったのに、3/19日の時点で35.713人…
人口比率だと医師の数はイタリアより日本の方が少ないらしいので
同様の推移で感染していってしまうと日本も医療崩壊なのでしょう…

個人でできることは自己免疫力を高めて、
(とりあえずみかんを毎日食べてみています)
手洗いしてマスクして、なんとか日々を凌いでいくしかないのでしょう。

そして何より月6億枚製産されているという噂のマスクはいずこに…
と思う今日この頃…。

・東京都コロナウィルス感染症対策サイト
・神奈川県コロナウィルス感染症対策サイト
・山中伸弥先生の新型コロナウイルス情報発信サイト
・新型コロナウイルス国内感染の状況



ampersandand at 17:56|Permalink

2020年01月28日

ALDENと指二本とヒートテック靴下と。

先日メールにてお問い合わせ頂いた件。

某セレクトショップにてALDENを購入されたというお客様。
一日履いてみると指二本分以上の隙間が踵に開いてしまい困った。
ベロの部分にスポンジ宛てる補修でどうにかサイズ調整できませんか?
というお問い合わせを頂きました。

そもそも試着の際にすでに指が一本入る隙間が開いていたので、
お客さんも少し大きいかなと思われたそうなのですが、
某ショップスタッフ曰く、
「横幅があっているから大丈夫」
「同じくらい隙間が開いて履いている人もいる」
から大丈夫とのアドバイスを受けたので購入したとの事。

やられてしまいましたね…。
その某セレクトショップというのは、ほかのお客様からも
あまりいい噂は聞いていませんでしたので。

伝聞にはなりますがそのお店の売り方は、
お客さんにそのサイズが合っているかどうかより、
そのお店で在庫が多いサイズや売りたいサイズを売りつけるらしいと…。

そもそもですが、試着の際に踵に指が入る隙間が開いているという
試着の仕方自体が間違っているのではないかと思います。
隙間が開いている状態で横幅が合っているとは?と。

靴の履き方についてはこちらを参照願います。


隙間が開いている状態で横幅が仮に合っていても、その履き方では
歩けば足は靴の中で前後してしまいますので、おのずと合っていたとされる
横幅の位置はずれてしまいますので。

なので靴を履く際にはまず踵をぴったりと密着させ、
靴紐を締め付けていくのが基本です。
踵基準なのでこの場合ちゃんと踵で合わせて試着していれば
靴の横幅が一番広いところより実際は指二本分、足は後方にずれる
はずなので横幅すら合っていない事が分かったかと思います。

仮に少し大きい具合であれば、今回の靴は特に編み上げのブーツでしたので
踵にちゃんとホールドさせて紐を編み上げれば踵と足首と甲の三点で
足が固定されるので履けない事もないのですが、
今回は大き過ぎたようで紐をかなりきつく締め上げても緩く、
仕舞いには脛も痛みだす始末に…ということです。

ではサイズ調整ですが、残念ながら指が入る程度ゆるゆるですと
合わせようがありません。
ベロにスポンジを入れる方法というのは、サイズがある程度合っているが
甲の部分が緩く、靴紐を締めても羽が閉じてしまってそれ以上
絞める事ができない場合に有効な手段となります。

今回の様に大きすぎる場合の方法としては、秋冬であれば
ユニクロのヒートテック靴下が有効かもしれません。
厚手で何度洗濯してもへたり難いですしなにより暖かいですので。
靴下を厚手にすると簡単にワンサイズ程度は足が大きくなります。

そして厚手の靴下がクッション代わりになって紐の締め上げの
痛みが軽減できるかもしれません。
実際、私も秋冬の冷える季節には、ヒートテック靴下でも履けるように、
ワンサイズ大きめの靴を作って合わせていますので。

ちなみに、リブソックスよりヒートテックパイルソックスのほうが
厚手でいいかもしれません。
ソックス
ユニクロHPより

サイズ調整ですが郵送でのご依頼は原則受付しておりません。
実際に靴を履いて頂いて、その場でクッションなどを仮に宛てた状態で
具合を見ながら素材や厚みを調整する必要がありますので。

ですのでベロ裏のクッションであれば市販品でも
貼付けるタイプ(タンパッド)があるので、短靴の場合はそのほうが
費用的にも抑えられるので宜しいかともいます。



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ampersandand at 20:06|Permalink

2019年12月14日

私の話は長い? 冬の丈詰め篇

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「俺の話は長い」
五話あたりから見始めた「俺の話は長い」、始めから見ればよかった…。

人が殺されるんでも難しいオペがあるんでも難解なトリックも無く、
特別な事は何も起きないのですが、なにかおかしみのあるドラマ。

どうだ、ホームドラマ!みたいなドラマは忘れた頃にありますが
肩に力が入っていて、だいたいつまらない。

俺の話は長い、はほとんど身内の会話劇だけで進んでいく。
縁側で、こたつで、台所で、居間で…。
なので人によってはつまらないな、と感じるだろうなとも。
そして主人公のへりくつも長いし説得力があるんだかないんだか。

と、そんな主人公を見ていて私の話も長い?と。
最近の記事は昔の記事に比べて2話分くらいになっているのは
気づいているのですが、どうも色々と気になって書いてしまう次第です。
なので今回はなるべく手短にまとめてみたいと思います。

BEFORE
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ロングブーツは靴のサイズは選べても、筒の長さや太さは選べないので
女性は困るだろうなと。
ちょうど端っこが膝裏に当たって痛いとか、ちょい太さが足りないとか。

丈詰め依頼の4割ぐらいはニーハイブーツを通常の丈に詰める補修が多いです。
ニーハイブーツを履いた事がないので、どんな感じなのか分かりませんが
購入される時は慎重に検討されたほうが宜しいのかもしれません。

今回は5.0cmカット。
丈詰めの際のカットラインは基本的に現状のラインに平行して
トレースしカットしますが、ラインを変更する事も可能です。
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ただそもそも左右で履き口のラインが若干異なっていたり、
左右で高さが5.0mmから10mmくらい誤差が生じて狂っている事もあります。

また履いてしまうと筒や足首部分に皺が寄るので、見た目の高さが
変わってしまいますので、何処を基準にすれば…となってしまうので
基本的には現状の履き口から均等に計測してラインを決めていきます。

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今回はこのぐらい丈が短くなります。
カット断面は革包丁でカットしたままではなく、綺麗に削ってラインを整えます。
切り口断面も毛羽立ちを抑える処理を行ない、革と同系色で染めます。
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そして縫製。
このとき左手はヒールを持ってくるくると回しながら縫製していくのですが
ニーハイブーツなど丈が長い場合は、左腕を目一杯伸ばしてくるくるくる…
となります。

AFTER
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丈詰めって映えないですね…
これだけ見ると修繕したのかどうか全く分かりませんね。

余談を書くとまた長くなりそうですが少しだけ。
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このようなヒールの形状の靴はちょっと注意して履かれた方が
宜しいかと思います。
形状は踏まず側に繋がるような部分が無く、柱が付いているような形状。
*ヒールが低い場合は関係ありません。
このような形状ですと矢印側に負荷が掛かった場合に
付根部分で踏ん張ってくれる(点線部分)ところがないので
倒れ易く(ヒールが外れる)なっています。

イメージとしては梃の原理です、内側に倒れるような力が加わる事で
付根でヒールを固定しているネジや釘を引き抜くような動きになります。

また太さが細いと、靴の中底側から通常は釘5本とネジ1本で
ヒールは固定されていますが、それを打ち込めるスペースがないので
本数も少なくなっていますので余計に外れ易い構造になります。

ヒールが外れた際は再固定はできますが、このようなヒール形状の場合は
当店ではお断りさせて頂いております。
ヒール固定は確実に行なわないと、万が一再び外れてしまった際に
そこが階段であったりしたら大怪我になってしまう事もありますので。

ではなんで確実に再固定できないか説明しますと、
いつもの様に話が長くなってしまいますので今回は割愛させて頂きます。

ちなみにロングブーツでファスナーが無い靴もヒールの形状に関わらず
再固定はできません、打ち具が届きませんので。

こちらは珍しい筒の太さ詰め事例。
できるものとできないものがありますがご参考に。


ampersandand at 07:00|Permalink

2019年11月12日

何度もお伝えしておりますが、ドライビングシューズで路上を歩いてはいけないと思っています。

ドライビングシューズは運転用なので路上を歩くには適していません。
アクセルやブレーキ操作がし易いようにソールは屈曲し易い構造に
なっているので履き易いという事もあり歩いてしまう訳なのですが。
メーカーもその構造で歩けばどうなるかは分かっているのでしょうが…。
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そもそも運転に適したソールの構造をしているので、
言い換えれば路上を歩くことは考えていないので
それを街歩きようにそのまま仕様を踏襲してしまえば
おのずとつま先に穴が開いてしまう訳です。
車の中ではつまはアスファルトに擦り付けないですから無防備な状態な訳です。
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擦らないのでつま先先端までにはそもそもラバーソールがありませんし
靴底も通常の靴と違い中底もないのでぺこぺこしています。
ですので歩行により足のお肉が横に膨張すると革も横に膨らみます。
結果、サイド部分もラバーソールがないのでぺこぺこした
靴底は地面に擦れてしまう訳です(ですので側面に穴が開いてしまう方もいます)
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次にかかともですが、ペダル操作はつま先が上がってかかと後方は床に
つくようなポジションになるのでドライビングシューズのかかと部分は
かかと後方に競り上がってラバーが敷設されています。
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よく尋ねられるのですが、
「かかとの外側ばかり摩耗している私は足癖が悪いのでしょうか?」と。

普通に歩かれていれば足のローリング運動により必ず
かかと後方部分が摩耗し易くなります。
逆にかかと内側が摩耗していると、歩行の際に足が内反しているので
注意されたほうが宜しいかと思います。

かかと外側が摩耗するのにドライビングシューズには
その部分にラバーがありませんのでおのずと本体の革が擦れてしまいます。
よってつま先もかかとも路上を歩行するには適していないということが
お分かり頂けたかと思います。

ですのでドライビングシューズの補修のご相談の際には
修理しても構造自体に問題があるのでまた同様に痛んでしまいますから
補修はお勧めしませんよ、とまずはお伝えしております。

ソールを交換すれば?ということも可能な場合もありますが、
ドライビングシューズのソールは特殊でして、凹凸のあるラバーは
本体に同様に穴をあけられた部分に内側から嵌め込まれている形状に
なっています。

ですので交換というのではなく、凸部分を平らに削り落とした状態で
新たなソールを取り付ける方法になります。
そうなるとそもそもこの靴が履き易い!という靴底の屈曲性が
少なからずは損なわれてしまいますので、それはありなのか、無しなのか…
ということになります。
そしてかかと部分に競り上がっているラバーをどのように
処理するかも問題ですね。

今回は補修の際のデメリットもご案内致しましたが、補修でお願いしますと。
ご依頼されましたら出来る限りの事はさせて頂きますが…。

まずはぱっくりと開いたつま先部分を縫合。
糸を引き過ぎるとつま先が潰れてしまうので裂け目が閉じる程度に。
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このままでは見た目も悪いですし、そもそもまた地面に擦れてしまいます。
つま先部分の摩耗した凸ラバーを三つ削り落とします。
次にモカの縫い目部分から縫合した部分とその他擦れている範囲を
同系色の革で覆い隠します。
そして本体のモカ縫い部分の縫い穴を利用して同様に縫合していきます。
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底面に巻込んだ革を抑えるように、先程削り取った凸3つ部分に
新たなラバーを取り付けますが、この時に地面に擦れてしまう範囲まで、
つま先側までラバーソールを延長し取り付けます。
元の形状が形状だけにあまりしっくりした感じにはならないのですが
見えない部分ですし強度優先での補修となります。
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もう少し厚いラバーを取り付けたいのですが他の面とのレベルを揃えないと
つまずいてしまうのでしょうがないですね。
かかと部分もラバーで嵩上げして本体が擦れないように補修しておきます。
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以上な感じの補修となります。
私としては今現在、出来うる限りの補修を致しましたので、
あとは日々、アスファルトと靴の距離を常に意識して履いて頂ければと思う
今日この頃…。

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2019年10月27日

小指の居場所。 

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中敷交換。

小指って肩身が狭いな…。

人差し指もそこそこか。

靴の中で山手線の朝の通勤ラッシュのように、
踏ん張りたくても踏ん張れず、身体を浮き上がらせ、
揺れに身を任せている感じ。

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ヒールが高くなるほど、指は狭い方へ、狭い方へと潜り込んでいく…。

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ヒールの高さは程々に…と思う、肩身の狭い小指より。



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2019年08月20日

小指のところが裂ける人へ。

オールソールで持込まれる靴の40%くらいは、だいたい小指のところが
裂け始めている、または裏革が薄く擦り切れている場合が多いです。
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小指以外でも指の付根周辺、歩行の際に屈曲する部分の履き皺で
ひび割れてきている靴もやはり多いです。
アッパーの革で痛むと云えばほぼこの屈曲部分の革と云っていい感じです。
ですのでお手入れが面倒な方は最悪、この屈曲部分にレザーローションを
定期的に塗布して頂ければ宜しいかと思います。

つま先とかかと部分というのは芯材が入っていて革が固められていますので
通常の使用ではまず革は裂けません。
(かかとを踏みつけたり指を掛けて履いているとすぐ壊れますが)

水色が先芯が入って革が硬くなっている範囲。
赤い線が屈曲位置、屈曲位置は人により位置が異なります。
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その前後に革が余っていれば革がたるみます。
ときどき靴をおろす時に棒を当てて恣意的な位置に履き皺を作る、
という方法があるのですがどう思いますか?と尋ねられます。
どうなんでしょうか、自分の足が曲がる位置、踏みつけ位置というのは
決まっているので、その位置と違う希望の場所に皺を作っても余計に
皺だらけになってしまうのでは?と思います、
やった事がないので分かりませんが。

また市販の靴は左右で革の質が異なる事がしばしばありますので
革の繊維の締まり具合によっても皺の入り方は違ってきますので
どうなのでしょうか。

今回のご依頼品は小指の腹部分で右足はすでに革が裂けています
(黄色矢印部分)
先芯部分は革が広がらず、小指部分は外へと押し出されていきますので
革が伸びないところと伸びるところの境目で革が裂けるという
「小指の革が裂ける症候群」の典型的事例となります。

先芯の深さや捨て寸により小指が先芯部分まで到達している場合は
どうなるか?この場合革が伸びず、または硬質な部分ですので小指に
痛みが生じてしまう場合があります(これは残念ながら改善できません)

内側の状態。
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小指部分が裂ける場合は表革が乾燥して割れる場合と
内側からどんどん擦り切れていってしまい表側まで貫通してしまう
場合があります(またはその併用)。今回は後者になります。
小指から指の付根周辺にかけて裏革が摩耗して無くなっています。
まずはこの部分に内側から革を当てて補強を行ないます。

革の漉き加工。
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表革まで薄くなっているので少し厚めの革を用います。
ライニングがブラックなので黒革で。
革の端は段差があると脱ぎ履きの際にめくれ易くなりますので
段差がでないように床面(裏面)を薄く漉いて加工します。
(実際に靴内部に見えるのは銀面(表面)になります)
お店によっては漉かずにぺらぺらな薄い革を貼付けるだけで処置している
ようですが、それですと耐久性に乏しいように思います。

補強範囲
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右足は完全に裂けているので縫製をして裂け目を閉じていきます。
ですので革の表面に縫い目が新たにできます。
これも縫わずに内側に革を接着するだけのお店もありますが、
裂けるぐらいに負荷が掛かっていますので始めの見た目はいいですが
直に裂け目は開いていってしまいますので縫製は必須かと思います。

左足は表革は裂けていなかったので縫製はせず内側からの補強に留まりました。
表革が裂けていず内側から指で触って革がえぐれているだけの方は
早めに補強を行なえば外観に縫い目を作らずに補強が出来ます。
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補修後
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履き皺に添って縫製しているのでそんなに目立たないかなと思います。
この治し方もお店によっては表面から同様に革を貼付けてその周囲を
パッチワークにように縫い付ける方法がありますが、革の質や色合わせなど
条件が揃えば有効な場合もありますが、基本的に当店は内側からの
補強で行なっております。

表面に縫製しても実際に縫い目を眼前で凝視する人はいないので
足元となるとあまり気にならないのかもしれません、特に黒靴は。
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ちなみに今回の靴はウィングチップでパーフォレーション(穴飾り)が
開いていますが、ウィングチップの場合はデザイン状、屈曲部分まで
穴飾りが開けられていますので、その部分に履き皺が重なりますと…
革のメンテナンスを怠っていると、穴と穴が繋がり革が裂けていきやすい
状態になってしまいますのでご注意ください。
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↓こちらのブログ記事も合わせてご参考にされてください。
裂けた部分をボンドで固定してしまった方の補修案件となります。



ampersandand at 08:00|Permalink