鞄と小物修理
2020年11月19日
TUMIの3wayリュックの持ち手が傘をさしても雨に濡れる案件。
今回のご依頼はいつも通り現行品のTUMIの持ち手が痛んでいるので
旧モデルの丈夫な仕様に変更のご依頼でしたが、実は傘をさしても
持ち手が庇からはみ出て雨に濡れるのでどうにかなりませんか?
というお題も追加された案件となります。
そもそも飛び出ている持ち手については常々私も思っていた次第でした。
雨に濡れる、ではなく何かに引っ掛けて転倒しないのだろうか?と
安全面での心配でしたが。
それにデザイン的にもどうなんでしょう、自分では見えないのでそこまで
気にならないのかもしれませんが。
それに持ち手が飛び出て雨に濡れてしまいやすい状態であれば
革は濡れて乾いてを繰り返し、乾燥、硬化、擦り切れという
悪循環にまっしぐら、それに芯材のスポンジも劣化してしまいますので
悪く考えれば、持ち手の寿命を縮めて買い替えてもらおうキャンペーン
設定なのかもしれませんね。
この考えは、TUMIが旧モデルの丈夫な持ち手から現行品の柔な持ち手へと
仕様変更した時点で私はそうなんだろうなと思っていましたが。
本体のバリスティックナイロンは軍事用に開発されたナイロンなので
摩擦や引裂にとても強いのでなかなか痛まない、ということは
なかなか新しいカバンに買い替えてくれないということです。
旧モデルのナイロンベルトに革が巻いてある仕様であれば傷んだ革だけ
巻き変えれば使えてしまうので、じゃあ持ち手ごとしか交換できないように
すれば、という感じだったのでしょうか。
といっても当店みたいなお店が交換していってしまうのですが。
ちなみに、TUMIのリュックで使用されているナイロンはそれを踏まえて
裂けやすい設定になっているかもしれません。
ナイロン生地が裂けた、というお問い合わせがしばしばありますので。
とりあえず今の持ち手の状態で収まるのか試してみました。
正面の持ち手は内側に倒すとすんなり収納できました。
で、ここには隠しマグネットが仕込まれているのでこれが抑えになって
飛び出してこない感じです。
親指先端あたりにマグネットがあります。
では背面の持ち手はどうなんでしょうか。
付け根の連結金具がポケットの外側についているので縁が邪魔をして
内側に折りたためない状態です。
それにこれはもう交換する持ち手なので無理やり折り曲げていますが
新しい状態でこのようにするのは気が引けますね、付け根が折れるので。
なのでオリジナルの持ち手では収納することができない、ということになります。
3wayリュックを企画した時にTUMI社のデザイン会議でこの点は問題に
ならなかったのでしょうかね?
リュックのストラップは収納できるようになっているのだから
持ち手は?と誰も気づかなかったのでしょうか。
ではまずはいつも通り旧モデルのナイロン革巻き仕様の持ち手を製作し
取り付けから。
現行品の持ち手は芯材にスポンジを使っていて、スポンジを革で包んでいる
だけですので使っていくうちに手のグリップで雑巾を絞るようにどんどん
捻れていきます。
最終的には革も擦り切れてスポンジも破断して終了・・・。
丈夫な旧モデルの持ち手仕様の場合は、ナイロンベルトに革を縫製し
巻き込んでいるので、持ち手が伸びることもなくまた握り部分は
二つ折りにしているのでナイロンと革が4重に重なり適度な硬さもあり
ヘタリにくく変形もし難い仕様になります。
TUMIの重い鞄にはこのくらいでないと釣り合わないと思います。
本体の連結金具に固定して持ち手完成です。
持ち手の長さはそれぞれの鞄で設定が異なるのでオリジナルの
設定に倣って製作しています。
この鞄は一番長い設定になっていました。私が統計を採ったところ
TUMIの持ち手の長さはだいたい3パターンあるようです。
ただどうみても伸びたにしては中途半端な長さの持ち手もあったりするので
設定として6パターン用意しています。
当店でTUMIの持ち手巻き革交換(旧モデル)、または現行品から旧モデルへの
仕様変更で使用する革はタンニン鞣しの革で適度にオイルを含ませた革を
使用しているので乾燥しにくくなっています。
(それでも定期的にはレザーローションで保湿して頂くと寿命が伸びます)
そして握りにくくならない程度にオリジナルより革の厚みも増して
耐久性を高めています。革の質はオリジナルより上等ではないかと思います。
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では追加のお題の持ち手の収納の件ですがこんな感じです。
これが・・
こうなって
背面ももちろんスッキリ。
ナイロンベルトは負荷が掛かる連結金具部分は耐久性を増すために二重に
重ねて通しているので固いのですが、ちょうどポケットの淵の部分では
折り曲がるのですんなり内側に倒すことができます。
これはわざわざ今回の為の仕様ではなく通常の設定でこうなりますので
以前当店で同様の交換をされたお客様の鞄は同じように収納できるように
なっています。
正面は隠しマグネットでポケットを抑えていましたが背面のポケットには
それがありません。背負うと背中と鞄で抑えられ収納した持ち手は
出てこなそうですが確約はできません。
ですのでポケットを抑える留パーツが必要でしたが、もともとの持ち手に
ついていた両手の持ち手を纏めるループが巧いこと再利用できましたので
追加の製作費用を抑えることができました。
もともとついていたオリジナルのパーツだけあって
馴染んでいるな〜と思う今日この頃・・・。
ampersandand at 11:30|Permalink│
2020年11月04日
パイピングを巻き替える。 ETTINGERのMARSTON篇
今回のご依頼品はETTINGERのMARSTON
とても伝統的な飾り気のない質実剛健なザ・ブリーフケースといった佇まいです。
剛健ではありますが、やはり物理的な擦れには日々晒されていきますので
パイピングやその他に痛みが生じてきてはしまいます。
今回補修する範囲は、パイピング外周の両面交換/ハンドル交換/
ポケットのパイピング両面交換となります。
水色の範囲が今回交換する部分になります。
すでにポケットの付け根部分は一度他店にて補強補修がされているのですが
ポケット側のパイピングは補修していないのでそちら側が裂けてきて
しまっています。当初はポケットの付け根付近の四カ所の補強でしたが、
パイピング全体が割れてきていましたので全体交換に切り替えました。
外周はお約束の擦り切れです。
この部分は地面に置いたりしますので靴のかかと同様に擦れる宿命なのです。
ただこのパイピング仕様の場合は擦れてはしまいますがメリットがあります。
他の内縫い、外縫い構造の鞄と違ってパイピングが施されていることで
今回のようにパイピングを交換すれば本体を加工せず、元通りに
戻すことができます。
靴の革底の摩耗を予防するのにハーフソールを取り付けますが、
同様に鞄のパイピングとは地面から鞄本体を守るバンパー的な役割
なんだろうと思います。
もしこの鞄にこのパイピングが付いていなければ、今頃は本体自体が削れてしまい
穴が空いているか、角が潰れているかになっていて元通りの補修は難しく
外観は変わっていただろうと思います。
このような鞄の場合、一般的には本体は本体でまとめて縫製されています。
で、そこへパイピングを巻き付けて縫製しているので、パイピングを取り除いても
鞄自体は分解せず自立しています。
ナイロン製の鞄の場合は全てまとめて縫製されていることもあるので
交換不可の場合もあります。
ポケット付け根の外周側のパイピングはしばしば裂けてしまいがちです。
ポケットに荷物を入れれば重さで付け根は自ずと引っ張られます。
その荷重をパイピングの縫製一箇所だけで受け止めているので、
どうしてもその部分に負荷がかかり過ぎてしまいます。
ですので今回は縫い目に掛かる負荷を分散させるために外観からは
見えないようにステッチを脇の部分に追加して縫製してあります。
この手の伝統的なブリーフケースはほとんど同じ縫製の仕方で
どれも作られているので、いつも壊れる部分は同じ場所です。
少しだけ縫製箇所を増やすとか、隅をカシメで固定するとかで
強度は変わってくると思うのですが。
以前修理した鞄で、底部分の四隅のパイピングが始めから二重に
巻かれているメーカーのものがありました。
これはこれで工夫なんだと思います。
擦れる部分だから始めから補強しておく、という。
これは私も考えたことがありますが、あとは見栄えの好みかと思います。
パイピングはメーカーであればミシンに専用のアタッチメントを付けて
縫製していけば縫い進めると同時に縁取りされていくのですが、
修理の際はコツコツと二つ折りして巻き付けていき、ひと目ひと目を
八方ミシンの車輪を廻しながら縫っていきます。
なので片手で鞄を支えて膝も使いつつ回転させながら、
片手は車輪を廻してと雑技団的縫製になりがちです。
パイピング完成
革は通常の革より乾燥しにくいオイルレザーを使用していますので
擦れにも強くなっていますが、定期的にレザーローションでお手入れして頂くと
それだけ寿命が伸びますので必ず行なってください。
革が痛んでから熱心にお手入れする方が多いいですが、痛んでからでは
歯磨きと同じで革が元に戻ることはありません。
50代、60代のアンケートで若いうちからもっとしっかり
行なっておけば良かったことは?みたいなアンケートで
歯磨き、口腔ケアが一番だったという報道を聞いたことがありますが、
革のメンテナンスもそれに追加していただければと思います。
10年前からのメンテナンスが10年後には活きてきますので。
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じゃあ痛んでいたらお手入れしても意味がない?
かといえばそんなこともありませんが、挽回は難しいです。
しかしそれでも現状維持はできます。
なので痛んでも痛んでいなくても、使い始めから定期的に保湿を行なって
頂くことが重要です。(ミンクオイルはオススメしません)
続いてハンドル。
付け根部分が乾燥により裂けてきてしまっているので新しく作り直しです。
丸いハンドルの芯材には硬めだと樹脂のチューブかロープが使われています。
市販品で樹脂のチューブが使われているハンドルですと経年劣化により
しばしば割れていることがあるので当店では用いておりません。
Felisiも確かロープ芯を使ったハンドルだったと思います。
樹脂とロープでは仕上がった時の硬さが若干違うのと
今回、オリジナルは太さが少し太めなので、硬さと太さを
近づける為に試作を行いました。
ロープの太さは市販品で色々あるのですが、私がお気に入りの編み方と素材の
ロープだと種類が少なく、6.0径と9.0径しかしありません。
ご依頼品ですと9.0径を使用しても少し太さが物足りない感じなので
革を二重巻きにすることで太さの問題は解消。あとは硬さなんですが
硬くするには革を巻いていく際に接着剤でロープと革を全面貼り合わせながら
巻くことで硬質になることが何本目かの試作で発見。
通常は革の端の部分のみ接着剤を塗布し、ロープを巻き込みながら
最後に端を接着し、隙間が出ないようにヘラで合わさり目を追い込んで
いくのですが、今回は前面に接着剤を塗布しているので巻いている途中で
どこかに隙間が空いてしまうと、その部分がプカプカしたまま仕上がって
しまうので、ワンチャンスで密着させて隙間なく巻く、というのは
難しいところでした。
オリジナルは本体の金具を通す部分は革一枚でしたがそれでは徐々に伸びて
痛んでしまいがちですので、革を貼り合わせ二重にし、間には伸び留めに
ナイロンシートを挟み込んで縫製してあります。
ハンドルの痛むところは手に触れる部分か、この本体との連結部分なので
痛むとわかっているところは強度を高めて製作しています。
AFTER
パイピング全部とハンドルも交換すると費用はかなり高額になります。
保湿メンテナンス用のレザーローションは1.500円(当店税込店頭価格)なので、
それ1本でもし擦れや乾燥の進行度合いが変わるのであれば使わない手はないと
思います。
革のお手入れは一日にして成らず、といったところでしょうか。
とても伝統的な飾り気のない質実剛健なザ・ブリーフケースといった佇まいです。
剛健ではありますが、やはり物理的な擦れには日々晒されていきますので
パイピングやその他に痛みが生じてきてはしまいます。
今回補修する範囲は、パイピング外周の両面交換/ハンドル交換/
ポケットのパイピング両面交換となります。
水色の範囲が今回交換する部分になります。
すでにポケットの付け根部分は一度他店にて補強補修がされているのですが
ポケット側のパイピングは補修していないのでそちら側が裂けてきて
しまっています。当初はポケットの付け根付近の四カ所の補強でしたが、
パイピング全体が割れてきていましたので全体交換に切り替えました。
外周はお約束の擦り切れです。
この部分は地面に置いたりしますので靴のかかと同様に擦れる宿命なのです。
ただこのパイピング仕様の場合は擦れてはしまいますがメリットがあります。
他の内縫い、外縫い構造の鞄と違ってパイピングが施されていることで
今回のようにパイピングを交換すれば本体を加工せず、元通りに
戻すことができます。
靴の革底の摩耗を予防するのにハーフソールを取り付けますが、
同様に鞄のパイピングとは地面から鞄本体を守るバンパー的な役割
なんだろうと思います。
もしこの鞄にこのパイピングが付いていなければ、今頃は本体自体が削れてしまい
穴が空いているか、角が潰れているかになっていて元通りの補修は難しく
外観は変わっていただろうと思います。
このような鞄の場合、一般的には本体は本体でまとめて縫製されています。
で、そこへパイピングを巻き付けて縫製しているので、パイピングを取り除いても
鞄自体は分解せず自立しています。
ナイロン製の鞄の場合は全てまとめて縫製されていることもあるので
交換不可の場合もあります。
ポケット付け根の外周側のパイピングはしばしば裂けてしまいがちです。
ポケットに荷物を入れれば重さで付け根は自ずと引っ張られます。
その荷重をパイピングの縫製一箇所だけで受け止めているので、
どうしてもその部分に負荷がかかり過ぎてしまいます。
ですので今回は縫い目に掛かる負荷を分散させるために外観からは
見えないようにステッチを脇の部分に追加して縫製してあります。
この手の伝統的なブリーフケースはほとんど同じ縫製の仕方で
どれも作られているので、いつも壊れる部分は同じ場所です。
少しだけ縫製箇所を増やすとか、隅をカシメで固定するとかで
強度は変わってくると思うのですが。
以前修理した鞄で、底部分の四隅のパイピングが始めから二重に
巻かれているメーカーのものがありました。
これはこれで工夫なんだと思います。
擦れる部分だから始めから補強しておく、という。
これは私も考えたことがありますが、あとは見栄えの好みかと思います。
パイピングはメーカーであればミシンに専用のアタッチメントを付けて
縫製していけば縫い進めると同時に縁取りされていくのですが、
修理の際はコツコツと二つ折りして巻き付けていき、ひと目ひと目を
八方ミシンの車輪を廻しながら縫っていきます。
なので片手で鞄を支えて膝も使いつつ回転させながら、
片手は車輪を廻してと雑技団的縫製になりがちです。
パイピング完成
革は通常の革より乾燥しにくいオイルレザーを使用していますので
擦れにも強くなっていますが、定期的にレザーローションでお手入れして頂くと
それだけ寿命が伸びますので必ず行なってください。
革が痛んでから熱心にお手入れする方が多いいですが、痛んでからでは
歯磨きと同じで革が元に戻ることはありません。
50代、60代のアンケートで若いうちからもっとしっかり
行なっておけば良かったことは?みたいなアンケートで
歯磨き、口腔ケアが一番だったという報道を聞いたことがありますが、
革のメンテナンスもそれに追加していただければと思います。
10年前からのメンテナンスが10年後には活きてきますので。
[サフィール] スムースレザーにしっとり潤いを与える ユニバーサルレザーローション 保湿 ツヤ 汚れ落とし 靴磨き バッグ 無色 レザークリーム メンズ free 150ml
じゃあ痛んでいたらお手入れしても意味がない?
かといえばそんなこともありませんが、挽回は難しいです。
しかしそれでも現状維持はできます。
なので痛んでも痛んでいなくても、使い始めから定期的に保湿を行なって
頂くことが重要です。(ミンクオイルはオススメしません)
続いてハンドル。
付け根部分が乾燥により裂けてきてしまっているので新しく作り直しです。
丸いハンドルの芯材には硬めだと樹脂のチューブかロープが使われています。
市販品で樹脂のチューブが使われているハンドルですと経年劣化により
しばしば割れていることがあるので当店では用いておりません。
Felisiも確かロープ芯を使ったハンドルだったと思います。
樹脂とロープでは仕上がった時の硬さが若干違うのと
今回、オリジナルは太さが少し太めなので、硬さと太さを
近づける為に試作を行いました。
ロープの太さは市販品で色々あるのですが、私がお気に入りの編み方と素材の
ロープだと種類が少なく、6.0径と9.0径しかしありません。
ご依頼品ですと9.0径を使用しても少し太さが物足りない感じなので
革を二重巻きにすることで太さの問題は解消。あとは硬さなんですが
硬くするには革を巻いていく際に接着剤でロープと革を全面貼り合わせながら
巻くことで硬質になることが何本目かの試作で発見。
通常は革の端の部分のみ接着剤を塗布し、ロープを巻き込みながら
最後に端を接着し、隙間が出ないようにヘラで合わさり目を追い込んで
いくのですが、今回は前面に接着剤を塗布しているので巻いている途中で
どこかに隙間が空いてしまうと、その部分がプカプカしたまま仕上がって
しまうので、ワンチャンスで密着させて隙間なく巻く、というのは
難しいところでした。
オリジナルは本体の金具を通す部分は革一枚でしたがそれでは徐々に伸びて
痛んでしまいがちですので、革を貼り合わせ二重にし、間には伸び留めに
ナイロンシートを挟み込んで縫製してあります。
ハンドルの痛むところは手に触れる部分か、この本体との連結部分なので
痛むとわかっているところは強度を高めて製作しています。
AFTER
パイピング全部とハンドルも交換すると費用はかなり高額になります。
保湿メンテナンス用のレザーローションは1.500円(当店税込店頭価格)なので、
それ1本でもし擦れや乾燥の進行度合いが変わるのであれば使わない手はないと
思います。
革のお手入れは一日にして成らず、といったところでしょうか。
ampersandand at 11:30|Permalink│
2020年10月29日
ストラップを10cm長くしたい人と、15cm短くしたい人。GUCCI篇
海外製品ですとショルダーストラップの長さが中途半端な長さだったり
(トートバックのハンドルの長さも同様に)異常に長かったりとムラがあります。
設定が外国人の体格で設定されている場合にそんなことがしばしば起こります。
短くするならば案外簡単だったりします。
まずは15cm短くされたい方のGUCCI篇。
長さが調節できる美錠仕様のストラップの場合は美錠がついている
短いベルト側の調節で見栄えを変えずに調節できます。
こちら側。
金具に通された折り返し部分の縫製を分解します。
そして折り返す分を加味してカット。
断面を同じブラウンに染めて同様に縫製すればストラップの長さ詰めは完了です。
AFTER
ちなみにですが数万円するブランドものでもストラップは途中で継いで
作られている場合もしばしばあります。
こんな感じ。
長い方のベルトで100cmはないのですが継いで作っています。
継いでいても継ぐ位置を間違えなければ強度的には問題はありません。
続いて10cm長くしたい方の場合。
この場合は基本的に作り直しになります。
今回の革の色はココアミルクのような色なので、微妙な色ですが
そんな色でもあったりします。
数年前の一時期にやたらと革を買い漁った時期がありまして、その時に
その色使う?というような色も買っていたのが時を経て活用できています。
今は革棚が一杯なので整理するまで買い控えていますが。
今回10cm長くし、調節できる範囲が110から120cmで使用できるように
設定するのですが、その際、最短の110cmで使用した時にエンド部分の
余ったベルトがぶらぶらしないようにとのこと。
最短の110cmで使用した時には穴4個分の10cmプラスαの長さは必ず余ります。
ですのでそのままでは現状のように固定するものがない為
ぶらぶらしてしまいますので追い輪っかが必要ですね。
基本的に当店ではストラップは継いで製作することはありません。
先ほどのGUCCIでは継いでいましたが、継ぐのは継ぐで手間がかかるので
100cmぐらいであれば革が足りれば無駄が出ますがそのまま通しで裁断します。
革は天然なので牛が生きていた頃の小傷や血管の跡、虫食いの跡などや
皮から革への製造工程でできた傷などなど小傷がそれなりにあります。
その傷を避けつつ100cm直線で裁断するとなると・・・。
量産品ですとそんなことをやっていてはコストが掛かり売値が高くなります。
かといってストラップが継いでいないことに気づく人はいないでしょうから
そこにコストをかけるのは無駄なんだと思います。
補修で製作する場合は1本だけ作ればいいのでそんな贅沢もできてしまいます。
AFTER
追い輪っかとは美錠部分以外にもう一つ輪っかを追加して二点留めすれば
余ったベルトがぶらぶらせずにすみます。
この輪っかは勝手にずれていかないようにきつめの設定にしてあります。
ストラップの穴は一般的に25mm間隔で5穴あります。
ですので長さ調節できる範囲は10cmとなります(変更は可能です)
10cm長さが違うと最短最長で鞄の位置はどうなるかですが、
鞄の位置が5.0cm下がります。
腰の位置にあった鞄がお尻の位置にまで下がる感じでしょうか。
短めで90cm、通常で100から110cm、長めで120cmぐらいの感じでしょうか。
といっても鞄の大きさによってポジションは全く違ってくるので
なんともいえませんが、ご依頼の際は他にお持ちのストラップの鞄を
ご参考にご希望の長さをお伝えいただければと思います。
以上、ストラップの長さ調整編でした。
(トートバックのハンドルの長さも同様に)異常に長かったりとムラがあります。
設定が外国人の体格で設定されている場合にそんなことがしばしば起こります。
短くするならば案外簡単だったりします。
まずは15cm短くされたい方のGUCCI篇。
長さが調節できる美錠仕様のストラップの場合は美錠がついている
短いベルト側の調節で見栄えを変えずに調節できます。
こちら側。
金具に通された折り返し部分の縫製を分解します。
そして折り返す分を加味してカット。
断面を同じブラウンに染めて同様に縫製すればストラップの長さ詰めは完了です。
AFTER
ちなみにですが数万円するブランドものでもストラップは途中で継いで
作られている場合もしばしばあります。
こんな感じ。
長い方のベルトで100cmはないのですが継いで作っています。
継いでいても継ぐ位置を間違えなければ強度的には問題はありません。
続いて10cm長くしたい方の場合。
この場合は基本的に作り直しになります。
今回の革の色はココアミルクのような色なので、微妙な色ですが
そんな色でもあったりします。
数年前の一時期にやたらと革を買い漁った時期がありまして、その時に
その色使う?というような色も買っていたのが時を経て活用できています。
今は革棚が一杯なので整理するまで買い控えていますが。
今回10cm長くし、調節できる範囲が110から120cmで使用できるように
設定するのですが、その際、最短の110cmで使用した時にエンド部分の
余ったベルトがぶらぶらしないようにとのこと。
最短の110cmで使用した時には穴4個分の10cmプラスαの長さは必ず余ります。
ですのでそのままでは現状のように固定するものがない為
ぶらぶらしてしまいますので追い輪っかが必要ですね。
基本的に当店ではストラップは継いで製作することはありません。
先ほどのGUCCIでは継いでいましたが、継ぐのは継ぐで手間がかかるので
100cmぐらいであれば革が足りれば無駄が出ますがそのまま通しで裁断します。
革は天然なので牛が生きていた頃の小傷や血管の跡、虫食いの跡などや
皮から革への製造工程でできた傷などなど小傷がそれなりにあります。
その傷を避けつつ100cm直線で裁断するとなると・・・。
量産品ですとそんなことをやっていてはコストが掛かり売値が高くなります。
かといってストラップが継いでいないことに気づく人はいないでしょうから
そこにコストをかけるのは無駄なんだと思います。
補修で製作する場合は1本だけ作ればいいのでそんな贅沢もできてしまいます。
AFTER
追い輪っかとは美錠部分以外にもう一つ輪っかを追加して二点留めすれば
余ったベルトがぶらぶらせずにすみます。
この輪っかは勝手にずれていかないようにきつめの設定にしてあります。
ストラップの穴は一般的に25mm間隔で5穴あります。
ですので長さ調節できる範囲は10cmとなります(変更は可能です)
10cm長さが違うと最短最長で鞄の位置はどうなるかですが、
鞄の位置が5.0cm下がります。
腰の位置にあった鞄がお尻の位置にまで下がる感じでしょうか。
短めで90cm、通常で100から110cm、長めで120cmぐらいの感じでしょうか。
といっても鞄の大きさによってポジションは全く違ってくるので
なんともいえませんが、ご依頼の際は他にお持ちのストラップの鞄を
ご参考にご希望の長さをお伝えいただければと思います。
以上、ストラップの長さ調整編でした。
ampersandand at 11:30|Permalink│
2020年09月10日
TUMIのリュックは壊れやすいのか? らしく篇
気づけば2ヶ月ぶりの補修記事になりますが、サボっていた訳でも
ネタがない訳でもなく、コロナの影響か郵送でのご依頼が増加し
その場合、メールでのお見積もりやご相談になるので、その回答に
時間を取られてしまいなかなかブログ更新できないというのが
今の現状であります。
ただ店頭もなかなかお店も開けず、ブログも更新していないと
コロナ禍ということもあり閉店したんじゃないかと思われてしまうので
生存証明としてブログは更新していかないとと、この度
筆をとった次第であります。
で、書きやすいTUMIの話からで筆慣らしをしていこうかと。
TUMIのリュックはナイロン生地部分が裂けるというお問い合わせが多いですね。
定番のブリーフ鞄の場合はナイロン生地が裂けるという補修は
今までにあったかどうかという感じです。
ブリーフの場合は持ち手の革が痛んだりショルダーストラップの引っ掛ける
金具を固定している革が裂けたり、底部分の角が擦れたりと経年劣化によるもので
致し方ない痛み方なのですが、リュックに関してはそもそもの設定や仕様や縫製が
それで本当にいいのでしょうか?という場合が多いいです。
今回はストラップ付け根のナイロン生地の裂けになります。
一般的なリュックでもこのストラップの付け根というのは
一番痛いやすい部分になります。(次にファスナーです)
痛みやすい原因としては片側のストラップだけで背負ったり、
荷物を取り出すときに片側で背負ったり手に持ったりすることが
しばしばあると思います。
そうすると付け根の縫製部分に鞄の荷物の負荷が全てかかってしまうので
縫製部分やナイロン生地が裂けてしまうという訳です。
今回のナイロン生地のほつれ具合を見てみるとストラップ側のナイロン生地は
ほつれておらず、付け根本体側の生地がほつれてきています。
恐らくストラップで本体の生地が引っ張られ、しかし縫い目の方が
強いのでナイロンが引き裂かれてしまったのだろうと思います。
縫い目の方が強いというのは洋服などを縫製する糸は綿の糸ですが
一般的な革製品やナイロン製品などを縫製する糸はポリエステル素材の
糸でできています。
なので細い糸でも両手で引っ張っても切れないくらい強いので
糸がほつれる前に縫製されている素材の方が縫い目で引き裂かれてしまう
ということがしばしばあります。
ナイロン生地が裂けてしまうと、ほつれは取り留めもなく
するすると広がってしまいます。
革のように裂け部分を貼り合わせて縫製してなどということはできません。
ではどのように治すかですが・・・。
部位によっては強度不足の不安だったり縫製が不可だったりで
治せない場合もあるのですが今回は大丈夫です。
まずストラップの付け根部分で負荷がかかる部位を手縫いにて確実に
本体のベース部分に縫い付けます。
次にボサボサとほつれているナイロン生地を処理していきます。
デニムの膝が擦り切れたりした場合に、当て布をしてステッチを細かく
掛けているのを見たことがあると思いますが、そんな感じでボサボサ部分を
抑えるようにミシンでジグザグと縫製しつつ、またこれで縫製部分が
硬くなるので強度も増します。
ジグザグといっても家庭用のコンピューターミシンのように自動で縫ってくれる
わけでもないので一目一目抑えの方向を変えつつ縫っていきます。
話が前後しますがこのリュック背中部分に小さなポケットがあります。
両側のストラップの半分から半分までの範囲が本体から浮きます。
今回補修の際にこの部分のポケットが縫い付けられてしまうので
使えなくなりますが?とお尋ねしたところ、
使っていないので大丈夫ですということになっています。
で、ジグザグに縫製する際に本体共々縫製するには1.0cmぐらいの厚みが
あるのでジグザグに縫うには恐らく糸調子が狂ってしまうだろうし、
内装側の見た目も綺麗じゃないのでこのポケット部分を浮かせて縫製しています。
お店によってはナイロンのほつれ補修でこのジグザグの縫製で
修理完了したことになるようですが、ちょっとそれでは見栄えも強度も心配です。
ではどうするかですが、ちょうど背中の部分でナイロンパーツが
分かれているのでこの部分に革を当ててらしくしていきます。
この「らしく」というのが当店のこだわりかもしれません。
今回のように元のオリジナル通りには修理できないのであれば
それらしく仕上がるように努めます。
知らない人が見ればもともとそうなんでしょ?という感じになるように。
このパーツは先ほどの背中のポケットを浮かせて縫製できないので
本体共々貫通して縫製していきますが、厚みが1.0cmありスポンジも背中面に
入っているのでなかなか縫製するのも一苦労です。
AFTER
黒い革部分が補強兼、ジグザグ縫いの目隠しパーツになります。
ほつれてボサボサになっていた部分のジグザグ縫いも隠れて
どうでしょうか、「らしく」ないでしょうか?
内装側には貫通した縫い目が出てきます。
リュックの背中面やストラップの内側に使われてるメッシュ生地、
これもどう見ても耐久性があるように見えませんが、やはり擦り切れて
補修依頼が時々ありますが、まず補修が無理な場合がほとんどです。
見栄えや内装側への縫い目などを気にしなければ
どうにかなるかもしれませんが。
リュックを背負うときにはあまりストラップを片側で扱うようなことが
ないようにお気をつけください。
ネタがない訳でもなく、コロナの影響か郵送でのご依頼が増加し
その場合、メールでのお見積もりやご相談になるので、その回答に
時間を取られてしまいなかなかブログ更新できないというのが
今の現状であります。
ただ店頭もなかなかお店も開けず、ブログも更新していないと
コロナ禍ということもあり閉店したんじゃないかと思われてしまうので
生存証明としてブログは更新していかないとと、この度
筆をとった次第であります。
で、書きやすいTUMIの話からで筆慣らしをしていこうかと。
TUMIのリュックはナイロン生地部分が裂けるというお問い合わせが多いですね。
定番のブリーフ鞄の場合はナイロン生地が裂けるという補修は
今までにあったかどうかという感じです。
ブリーフの場合は持ち手の革が痛んだりショルダーストラップの引っ掛ける
金具を固定している革が裂けたり、底部分の角が擦れたりと経年劣化によるもので
致し方ない痛み方なのですが、リュックに関してはそもそもの設定や仕様や縫製が
それで本当にいいのでしょうか?という場合が多いいです。
今回はストラップ付け根のナイロン生地の裂けになります。
一般的なリュックでもこのストラップの付け根というのは
一番痛いやすい部分になります。(次にファスナーです)
痛みやすい原因としては片側のストラップだけで背負ったり、
荷物を取り出すときに片側で背負ったり手に持ったりすることが
しばしばあると思います。
そうすると付け根の縫製部分に鞄の荷物の負荷が全てかかってしまうので
縫製部分やナイロン生地が裂けてしまうという訳です。
今回のナイロン生地のほつれ具合を見てみるとストラップ側のナイロン生地は
ほつれておらず、付け根本体側の生地がほつれてきています。
恐らくストラップで本体の生地が引っ張られ、しかし縫い目の方が
強いのでナイロンが引き裂かれてしまったのだろうと思います。
縫い目の方が強いというのは洋服などを縫製する糸は綿の糸ですが
一般的な革製品やナイロン製品などを縫製する糸はポリエステル素材の
糸でできています。
なので細い糸でも両手で引っ張っても切れないくらい強いので
糸がほつれる前に縫製されている素材の方が縫い目で引き裂かれてしまう
ということがしばしばあります。
ナイロン生地が裂けてしまうと、ほつれは取り留めもなく
するすると広がってしまいます。
革のように裂け部分を貼り合わせて縫製してなどということはできません。
ではどのように治すかですが・・・。
部位によっては強度不足の不安だったり縫製が不可だったりで
治せない場合もあるのですが今回は大丈夫です。
まずストラップの付け根部分で負荷がかかる部位を手縫いにて確実に
本体のベース部分に縫い付けます。
次にボサボサとほつれているナイロン生地を処理していきます。
デニムの膝が擦り切れたりした場合に、当て布をしてステッチを細かく
掛けているのを見たことがあると思いますが、そんな感じでボサボサ部分を
抑えるようにミシンでジグザグと縫製しつつ、またこれで縫製部分が
硬くなるので強度も増します。
ジグザグといっても家庭用のコンピューターミシンのように自動で縫ってくれる
わけでもないので一目一目抑えの方向を変えつつ縫っていきます。
話が前後しますがこのリュック背中部分に小さなポケットがあります。
両側のストラップの半分から半分までの範囲が本体から浮きます。
今回補修の際にこの部分のポケットが縫い付けられてしまうので
使えなくなりますが?とお尋ねしたところ、
使っていないので大丈夫ですということになっています。
で、ジグザグに縫製する際に本体共々縫製するには1.0cmぐらいの厚みが
あるのでジグザグに縫うには恐らく糸調子が狂ってしまうだろうし、
内装側の見た目も綺麗じゃないのでこのポケット部分を浮かせて縫製しています。
お店によってはナイロンのほつれ補修でこのジグザグの縫製で
修理完了したことになるようですが、ちょっとそれでは見栄えも強度も心配です。
ではどうするかですが、ちょうど背中の部分でナイロンパーツが
分かれているのでこの部分に革を当ててらしくしていきます。
この「らしく」というのが当店のこだわりかもしれません。
今回のように元のオリジナル通りには修理できないのであれば
それらしく仕上がるように努めます。
知らない人が見ればもともとそうなんでしょ?という感じになるように。
このパーツは先ほどの背中のポケットを浮かせて縫製できないので
本体共々貫通して縫製していきますが、厚みが1.0cmありスポンジも背中面に
入っているのでなかなか縫製するのも一苦労です。
AFTER
黒い革部分が補強兼、ジグザグ縫いの目隠しパーツになります。
ほつれてボサボサになっていた部分のジグザグ縫いも隠れて
どうでしょうか、「らしく」ないでしょうか?
内装側には貫通した縫い目が出てきます。
リュックの背中面やストラップの内側に使われてるメッシュ生地、
これもどう見ても耐久性があるように見えませんが、やはり擦り切れて
補修依頼が時々ありますが、まず補修が無理な場合がほとんどです。
見栄えや内装側への縫い目などを気にしなければ
どうにかなるかもしれませんが。
リュックを背負うときにはあまりストラップを片側で扱うようなことが
ないようにお気をつけください。
ampersandand at 11:30|Permalink│
2020年06月29日
牛1頭から鞄を1つ作るの巻。 コピー編
今回は合皮の鞄を革で作り治すというお題になります。
作り治す、とはですが外装が合皮で劣化している鞄のその外装を全く同じ
デザインで革で作り治す、というかコピーするといったほうが適している
かもしれません。
使い勝手が良く似たような鞄を探したが見つからないので革で作れないかと。
本体の胴部分が合皮で劣化しているのでその部分だけ革で作り直して
持ち手とか他の革のパーツと生地でできた内装は流用で構いませんと。
BEFORE
本体の部分に合皮素材が使われています。
劣化して表面の塗膜が剥離してきていますし、角部分などは擦れて
下地の生地が露出してきています。
合皮というのは使っても使わなくても必ず劣化していきます。
製造から2〜3年で劣化すると言われています。
製造というのは鞄を製造というのではなく、その素材が作られてからなので
鞄になるまで1年経過していれば消費期限は残り〜2年ということになります。
合皮の構造としてはガーゼや不織布のような生地の表面に革の色をした
サランラップが乗っていると考えていただくと分かりやすいかと思います。
劣化してくるとそのサランラップが剥がれてくるという感じです。
また水分を含むとシールが剥がれるようにサランラップがふやかされて
剥離や水ぶくれのように浮いてもきます。
底面も接地部分が擦れて剥離してきています。中央部分に底鋲がないので
荷物が入れば垂れ下がりこれでは構造的にも擦れてしまいますね。
持ち手や根革やエンドパーツはレザーが使われているので流用します。
今回製作する部分は合皮素材が使われているピンク色の部分になります。
金具を連結する根革部分は革でしたが華奢でしたので再製作します。
ファスナーエンドパーツを側面に固定するこのパーツは、
一度でぐるっと縫製できるのですが、わざわざ二回に分けて縫製しています。
鍵穴が空いている手前の部分と奥の部分では翻るところで縫い繋げています。
ミシンの縫い目というのは裏表がありまして、表の縫い目が綺麗なのですが
このパーツを一度でぐるっと縫製してしまうと、奥の部分に見える縫い目は
裏面が見えるようになります。ですので縫い目が隠れる翻る部分で一度縫い留め、
そこからひっくり返して縫製しています。
私もこういうのが気になるタチなので設計者の気持ちが分かります。
ただ消費者の方にはほとんど気づかれない部分になるのですが。
このような見え方になってしまう場合も気にせず縫製してしまうメーカーも
かなりありますし、というかこういったところを気にするのになぜ胴体部分に
合皮を使いますかね?という気もしますが・・・。
ファスナー両側のダブルステッチのパイピング部分も革が使用されていますが
作業の段取り的に交換したほうが綺麗に仕上がるのでこの部分も再製作です。
今回使用する革がこちら。
キップでスムースとシュリンク両方の表情があるタンニン鞣しの黒革になります。
キップとは生後1年以内の子牛の革、なのであまり大きくありません。
ステアなど生後2年を経過した成牛の革だと畳2畳ぐらいの大きさなので
通常は半裁といって背中で半分にされていますが、キップの場合は
丸革(一頭)になります。
背中にコブがあるので広げるとその部分が丸く穴が空きます。
載っている定規は1メートル定規なので大きさがなんとなく伝わるかと思います。
全面が使用できるわけではなくて赤線の枠内が概ね使用できる範囲です。
周囲の部分は脇腹や足の方なので繊維が荒く表面も荒れているので
使用する場面が限られます。
奥側の矢印部分のピヨっと出ている部分が足の部分というのが分かります。
奥が首側で手前がお尻側です。
で赤い枠内でも無傷というわけではありません。
人間も生きていれば転んだり引っ掻いたり蚊に吸われて掻いた跡が
皮膚表面に残っていると思いますが、牛も虫刺されや柵に当たったり
隣の牛にぶつけられたりした傷がありますが、これは生きていた証である
「ナチュラルマーク」とも呼ばれたりもする様です。
生きていた証しではあるのですが、鞄にマークだらけでは困るのでその部分を
マーキングしておいて裁断するときに拾わないようにします。
そういう部分が点々とあるので鞄などの大きいパーツを
型入れするときは難しいです。
今回の鞄は、底面まで繋がっていますがパーツはセンターで縫い割られているので
胴体部分は同じサイズで4パーツ採る必要があります。
載っている型紙が1パーツサイズ。これを4個採ります。
面積に余裕があるので簡単に取れそうですが、実はギリギリなのです。
4パーツカットした跡がこちら。
とても無駄な採り方をしているように見えますがこれ以外には
配置できないという状態なのです。
というのは、先ほどの「ナチュラルマーク」が所々にあるのでその部分を避けつつ
配置するとこのような状況になってしまいます。
右下部分の斜めの配置なんか絶妙なんです。
角度をずらすと傷跡があるのでそれを回避しつつという感じです。
残った中央部分などはファスナー両側のパイピングに使用したり、
内装に大きめのポケットを追加ということなのでそれに利用したりします。
靴を作るときは一つ一つのパーツが小さいのでこのような型入れ作業に
時間はあまり費やしませんが、今回は時間がかかりましたね、失敗すると
もう一頭牛を連れて来なければなりませんから。
話は前後しますが分解し内装を外したところ。
分解するとこの鞄はどの程度しっかり作られているのか分かります。
見えない部分ですので手を抜いても消費者には分かりませんので。
この鞄は先ほどのパーツの縫製具合を見ればしっかり作っているだろうと
思いましたが、やはりちゃんと負荷がかかりそうな部分は補強していますし
荷物が入った時には鞄全体で重さを分散できるような工夫もされています。
ここでもやはりなぜ合皮?という感じなのですが。
長く使えるように作られているのに長く使えない合皮素材を使うって・・・。
内装には忘れないうちにご希望の大きめのポケットを取り付けておきます。
生地がグレーっぽい黒色のなのでポケットだけ違う色の生地もおかしいので
余っている革でポケットを誂えます。
本体を組み立てていきます。
胴体側の付け根のパーツは流用になります。
ファスナー取り付け部分のダブルステッチは、一列は縁取りの縫製になります。
二列目でファスナーと内装を縫製することになります。
外装にある外ポケットは内装を取り付ける前に構築しておかないと
縫製できなくなりますので忘れずに。
ここの縫い目は他の縫い目と違って黒色です、危うくベージュでいきそうに。
持ち手も平たい状態で取り付けます。
いつもの修理ではすでに鞄になっている状態で取り付けているので
やり易いですね。金具を連結する革が鞄の大きさに比べると貧弱でしたので
革の厚みを増して芯材を巻き込んだもので取り付けてみたらミシンでうまく
縫製できない事になってしまったので手縫いで四箇所
縫い留める事になりました。
広げると90cmぐらいの幅になるので重いし縫製するのも大変です。
この鞄だと恐らく平ミシンで全て縫製できると思いますが所有している
工業用のミシンは全て腕ミシンなので、縫製するものが大きくなると
支える台がないので鞄を左手で持ち上げながら縫製するので大変です。
膝も使いつつ縫い進めるという感じです。
工業用の平ミシンを導入しようとこれまでに何度か思いましたが、
すでにミシンが二階の作業場に大小7台設置しているので手狭で
置き場所がありません。
まぁ無い物ねだりでもあるので、無いなら無いで工夫すればいいだけです。
中表にして左右と底のマチを縫い割ります。
これで胴体が袋状になります。
これを丸まった靴下をひっくり返すように内側を表になるように
くるりんぱっします。
ファスナーは痛んではいなかったのですがあとあと壊れて交換となると
二度手間なので新しいファスナーに交換しておきます。
スライダーを入れてみて問題なく開閉できることを確認し
二列目のステッチを行います。
ファスナーエンド部分のパーツに本体を畳んで挟み込むので
革が二枚に生地も二枚、計4枚が重なるので厚みがかなりあります。
ミシンで縫製すると表面の縫い穴は元の穴を拾って針を落とせるのですが
厚みがあると針が貫通して出てくる裏面の縫い穴は元の穴から
ずれてしまいがちです。
今回も位置を確認したところかなりずれてしまうので、
手縫いにて表と裏の穴を探りながら縫製する事になりました。
でようやく完成となります。
AFTER
完成!といってもデザインは全く同じなので映えはしないのですが。
底鋲は新しい鋲に交換し中央にも追加。四隅の鋲も1.5cm
外側に鋲をずらしました。
底鋲が内側気味に付いている鞄が多いのですが、それですと角が
垂れ下がりがちですので、角に位置どりさせた方が良いのではないかと考えます。
底板も、もともと一枚入っていましたが小さかったので、底面ぴったりの底板を
作成し入れてあります。そうする事で四隅の革の垂れ下がりを軽減し、
中央部分も追加した底鋲で支えて垂れ下がらないので、底面の革が地面と擦れず
痛みにくいようにしてあります。
革で製作すると一つの鞄を作るのに牛一頭を使うとなると
その鞄の値段はそれなりに高くなってしまいます。
合皮であればロールの壁紙のように端から端まで均一の素材ですので
無駄なくパーツを裁断することができますが革ではそうはいきません。
今回一頭から胴体のパーツは4パーツしか採れませんでしたが、
例えばその牛がナチュラルマークも一切無く、端まで均一の質であれば
面積的には6〜7パーツは採れたと思います。
革製品というのは実際に製品で使われないそういった面積の製造コストも
価格に含まれてしまうので必然的に販売価格は高くなってしまいます。
今回の製作では残った革は他の小物の修理でも無駄なく使いますので、
それを加味しての製作費用にはなっておりますが、
それでもそれなりにはしてしまいます。
それでは皆さん、合皮製品(または一部使われている製品)を購入する際には
くれぐれも消費期限は3年、ということをお忘れなきよう・・・。
作り治す、とはですが外装が合皮で劣化している鞄のその外装を全く同じ
デザインで革で作り治す、というかコピーするといったほうが適している
かもしれません。
使い勝手が良く似たような鞄を探したが見つからないので革で作れないかと。
本体の胴部分が合皮で劣化しているのでその部分だけ革で作り直して
持ち手とか他の革のパーツと生地でできた内装は流用で構いませんと。
BEFORE
本体の部分に合皮素材が使われています。
劣化して表面の塗膜が剥離してきていますし、角部分などは擦れて
下地の生地が露出してきています。
合皮というのは使っても使わなくても必ず劣化していきます。
製造から2〜3年で劣化すると言われています。
製造というのは鞄を製造というのではなく、その素材が作られてからなので
鞄になるまで1年経過していれば消費期限は残り〜2年ということになります。
合皮の構造としてはガーゼや不織布のような生地の表面に革の色をした
サランラップが乗っていると考えていただくと分かりやすいかと思います。
劣化してくるとそのサランラップが剥がれてくるという感じです。
また水分を含むとシールが剥がれるようにサランラップがふやかされて
剥離や水ぶくれのように浮いてもきます。
底面も接地部分が擦れて剥離してきています。中央部分に底鋲がないので
荷物が入れば垂れ下がりこれでは構造的にも擦れてしまいますね。
持ち手や根革やエンドパーツはレザーが使われているので流用します。
今回製作する部分は合皮素材が使われているピンク色の部分になります。
金具を連結する根革部分は革でしたが華奢でしたので再製作します。
ファスナーエンドパーツを側面に固定するこのパーツは、
一度でぐるっと縫製できるのですが、わざわざ二回に分けて縫製しています。
鍵穴が空いている手前の部分と奥の部分では翻るところで縫い繋げています。
ミシンの縫い目というのは裏表がありまして、表の縫い目が綺麗なのですが
このパーツを一度でぐるっと縫製してしまうと、奥の部分に見える縫い目は
裏面が見えるようになります。ですので縫い目が隠れる翻る部分で一度縫い留め、
そこからひっくり返して縫製しています。
私もこういうのが気になるタチなので設計者の気持ちが分かります。
ただ消費者の方にはほとんど気づかれない部分になるのですが。
このような見え方になってしまう場合も気にせず縫製してしまうメーカーも
かなりありますし、というかこういったところを気にするのになぜ胴体部分に
合皮を使いますかね?という気もしますが・・・。
ファスナー両側のダブルステッチのパイピング部分も革が使用されていますが
作業の段取り的に交換したほうが綺麗に仕上がるのでこの部分も再製作です。
今回使用する革がこちら。
キップでスムースとシュリンク両方の表情があるタンニン鞣しの黒革になります。
キップとは生後1年以内の子牛の革、なのであまり大きくありません。
ステアなど生後2年を経過した成牛の革だと畳2畳ぐらいの大きさなので
通常は半裁といって背中で半分にされていますが、キップの場合は
丸革(一頭)になります。
背中にコブがあるので広げるとその部分が丸く穴が空きます。
載っている定規は1メートル定規なので大きさがなんとなく伝わるかと思います。
全面が使用できるわけではなくて赤線の枠内が概ね使用できる範囲です。
周囲の部分は脇腹や足の方なので繊維が荒く表面も荒れているので
使用する場面が限られます。
奥側の矢印部分のピヨっと出ている部分が足の部分というのが分かります。
奥が首側で手前がお尻側です。
で赤い枠内でも無傷というわけではありません。
人間も生きていれば転んだり引っ掻いたり蚊に吸われて掻いた跡が
皮膚表面に残っていると思いますが、牛も虫刺されや柵に当たったり
隣の牛にぶつけられたりした傷がありますが、これは生きていた証である
「ナチュラルマーク」とも呼ばれたりもする様です。
生きていた証しではあるのですが、鞄にマークだらけでは困るのでその部分を
マーキングしておいて裁断するときに拾わないようにします。
そういう部分が点々とあるので鞄などの大きいパーツを
型入れするときは難しいです。
今回の鞄は、底面まで繋がっていますがパーツはセンターで縫い割られているので
胴体部分は同じサイズで4パーツ採る必要があります。
載っている型紙が1パーツサイズ。これを4個採ります。
面積に余裕があるので簡単に取れそうですが、実はギリギリなのです。
4パーツカットした跡がこちら。
とても無駄な採り方をしているように見えますがこれ以外には
配置できないという状態なのです。
というのは、先ほどの「ナチュラルマーク」が所々にあるのでその部分を避けつつ
配置するとこのような状況になってしまいます。
右下部分の斜めの配置なんか絶妙なんです。
角度をずらすと傷跡があるのでそれを回避しつつという感じです。
残った中央部分などはファスナー両側のパイピングに使用したり、
内装に大きめのポケットを追加ということなのでそれに利用したりします。
靴を作るときは一つ一つのパーツが小さいのでこのような型入れ作業に
時間はあまり費やしませんが、今回は時間がかかりましたね、失敗すると
もう一頭牛を連れて来なければなりませんから。
話は前後しますが分解し内装を外したところ。
分解するとこの鞄はどの程度しっかり作られているのか分かります。
見えない部分ですので手を抜いても消費者には分かりませんので。
この鞄は先ほどのパーツの縫製具合を見ればしっかり作っているだろうと
思いましたが、やはりちゃんと負荷がかかりそうな部分は補強していますし
荷物が入った時には鞄全体で重さを分散できるような工夫もされています。
ここでもやはりなぜ合皮?という感じなのですが。
長く使えるように作られているのに長く使えない合皮素材を使うって・・・。
内装には忘れないうちにご希望の大きめのポケットを取り付けておきます。
生地がグレーっぽい黒色のなのでポケットだけ違う色の生地もおかしいので
余っている革でポケットを誂えます。
本体を組み立てていきます。
胴体側の付け根のパーツは流用になります。
ファスナー取り付け部分のダブルステッチは、一列は縁取りの縫製になります。
二列目でファスナーと内装を縫製することになります。
外装にある外ポケットは内装を取り付ける前に構築しておかないと
縫製できなくなりますので忘れずに。
ここの縫い目は他の縫い目と違って黒色です、危うくベージュでいきそうに。
持ち手も平たい状態で取り付けます。
いつもの修理ではすでに鞄になっている状態で取り付けているので
やり易いですね。金具を連結する革が鞄の大きさに比べると貧弱でしたので
革の厚みを増して芯材を巻き込んだもので取り付けてみたらミシンでうまく
縫製できない事になってしまったので手縫いで四箇所
縫い留める事になりました。
広げると90cmぐらいの幅になるので重いし縫製するのも大変です。
この鞄だと恐らく平ミシンで全て縫製できると思いますが所有している
工業用のミシンは全て腕ミシンなので、縫製するものが大きくなると
支える台がないので鞄を左手で持ち上げながら縫製するので大変です。
膝も使いつつ縫い進めるという感じです。
工業用の平ミシンを導入しようとこれまでに何度か思いましたが、
すでにミシンが二階の作業場に大小7台設置しているので手狭で
置き場所がありません。
まぁ無い物ねだりでもあるので、無いなら無いで工夫すればいいだけです。
中表にして左右と底のマチを縫い割ります。
これで胴体が袋状になります。
これを丸まった靴下をひっくり返すように内側を表になるように
くるりんぱっします。
ファスナーは痛んではいなかったのですがあとあと壊れて交換となると
二度手間なので新しいファスナーに交換しておきます。
スライダーを入れてみて問題なく開閉できることを確認し
二列目のステッチを行います。
ファスナーエンド部分のパーツに本体を畳んで挟み込むので
革が二枚に生地も二枚、計4枚が重なるので厚みがかなりあります。
ミシンで縫製すると表面の縫い穴は元の穴を拾って針を落とせるのですが
厚みがあると針が貫通して出てくる裏面の縫い穴は元の穴から
ずれてしまいがちです。
今回も位置を確認したところかなりずれてしまうので、
手縫いにて表と裏の穴を探りながら縫製する事になりました。
でようやく完成となります。
AFTER
完成!といってもデザインは全く同じなので映えはしないのですが。
底鋲は新しい鋲に交換し中央にも追加。四隅の鋲も1.5cm
外側に鋲をずらしました。
底鋲が内側気味に付いている鞄が多いのですが、それですと角が
垂れ下がりがちですので、角に位置どりさせた方が良いのではないかと考えます。
底板も、もともと一枚入っていましたが小さかったので、底面ぴったりの底板を
作成し入れてあります。そうする事で四隅の革の垂れ下がりを軽減し、
中央部分も追加した底鋲で支えて垂れ下がらないので、底面の革が地面と擦れず
痛みにくいようにしてあります。
革で製作すると一つの鞄を作るのに牛一頭を使うとなると
その鞄の値段はそれなりに高くなってしまいます。
合皮であればロールの壁紙のように端から端まで均一の素材ですので
無駄なくパーツを裁断することができますが革ではそうはいきません。
今回一頭から胴体のパーツは4パーツしか採れませんでしたが、
例えばその牛がナチュラルマークも一切無く、端まで均一の質であれば
面積的には6〜7パーツは採れたと思います。
革製品というのは実際に製品で使われないそういった面積の製造コストも
価格に含まれてしまうので必然的に販売価格は高くなってしまいます。
今回の製作では残った革は他の小物の修理でも無駄なく使いますので、
それを加味しての製作費用にはなっておりますが、
それでもそれなりにはしてしまいます。
それでは皆さん、合皮製品(または一部使われている製品)を購入する際には
くれぐれも消費期限は3年、ということをお忘れなきよう・・・。
ampersandand at 20:30|Permalink│
2020年06月18日
ボッテガヴェネタの内装交換。 なぜ合皮を使うのですか?
BOTTEGA VENETAの内装交換
ボッテガヴェネタ、何かの呪文のような響きですが日本語に訳すと
ヴェネトの工房という意味らしいですね。
なので例えば、BOTTEGA YAMADA であれば 山田工房という感じでしょうか。
編んだように見えるイントレチャートで有名なイタリアのブランドです。
編んだように見えるとは、革に切れ込みを入れて革紐を上下に通しているので
実際には編み物のように格子状に編み込まれてはいない、ということです確か。
20年ぐらいに前に購入されたお母様の鞄ということですが、御多分に洩れず
内装の合皮が劣化して使えないので交換というのが今回のお題です。
なぜ鞄メーカーは合皮を内装に使うのでしょうか?
外装が合皮で内装も合皮ならば分かりますが、外装は革なのに内装に
合皮を使えば内装が劣化し今回の事例のように外装は問題ないのに内装が・・。
ブラックなんでしょうねきっと、そうなるのが分かって使っているのですから。
外装はほぼ新品なので内装を交換すれば問題なく使用できます。
同じ感じのBOTTEGA VENETAの鞄を今購入すると、
当時より2倍くらいの価格になっているとのことでした。
ならば治すに越したことはないですね。
合皮がベトベトです。
ベトベトになるパターンと粉粉になるパターンがありますね。
内装は三層に分かれているのでその分費用は掛かってしまいます。
しかも今回は三層とも微妙にパターンが違っているのでむむっ。
分解
三層とも内装のパターンは同じかなと思ったのですが微妙に異なっているので
一層ごとに裏表の型紙が必要になりました。なので袋の部分で6型必要です。
内装の生地は何色か見ていただきましたが、即決で落ち着いた感じの
気持ち臙脂の赤色に、華やかな感じになりそうです。
三層あるので組み立てる順番と組み合わさる裏表を間違えないように注意です。
ファスナーの引き手に使われているブランドパーツやロゴなどオリジナルパーツで
傷んでいないものは移植していきます。
内装が完成したのであとは本体に組み合わせて口元を縫製すれば完成です。
口元の縫製は元の縫い穴にひと針ひと針と針を落としていき縫製します。
完成です。
内装に使用する素材は革だと重くなりますし、カビの危険もありますし、
値段も高くなりますので、しっかりめの生地やナイロン素材が内装には
適しているのではないかと思います。
くれぐれも合皮の内装にはお気をつけください。
ボッテガヴェネタ、何かの呪文のような響きですが日本語に訳すと
ヴェネトの工房という意味らしいですね。
なので例えば、BOTTEGA YAMADA であれば 山田工房という感じでしょうか。
編んだように見えるイントレチャートで有名なイタリアのブランドです。
編んだように見えるとは、革に切れ込みを入れて革紐を上下に通しているので
実際には編み物のように格子状に編み込まれてはいない、ということです確か。
20年ぐらいに前に購入されたお母様の鞄ということですが、御多分に洩れず
内装の合皮が劣化して使えないので交換というのが今回のお題です。
なぜ鞄メーカーは合皮を内装に使うのでしょうか?
外装が合皮で内装も合皮ならば分かりますが、外装は革なのに内装に
合皮を使えば内装が劣化し今回の事例のように外装は問題ないのに内装が・・。
ブラックなんでしょうねきっと、そうなるのが分かって使っているのですから。
外装はほぼ新品なので内装を交換すれば問題なく使用できます。
同じ感じのBOTTEGA VENETAの鞄を今購入すると、
当時より2倍くらいの価格になっているとのことでした。
ならば治すに越したことはないですね。
合皮がベトベトです。
ベトベトになるパターンと粉粉になるパターンがありますね。
内装は三層に分かれているのでその分費用は掛かってしまいます。
しかも今回は三層とも微妙にパターンが違っているのでむむっ。
分解
三層とも内装のパターンは同じかなと思ったのですが微妙に異なっているので
一層ごとに裏表の型紙が必要になりました。なので袋の部分で6型必要です。
内装の生地は何色か見ていただきましたが、即決で落ち着いた感じの
気持ち臙脂の赤色に、華やかな感じになりそうです。
三層あるので組み立てる順番と組み合わさる裏表を間違えないように注意です。
ファスナーの引き手に使われているブランドパーツやロゴなどオリジナルパーツで
傷んでいないものは移植していきます。
内装が完成したのであとは本体に組み合わせて口元を縫製すれば完成です。
口元の縫製は元の縫い穴にひと針ひと針と針を落としていき縫製します。
完成です。
内装に使用する素材は革だと重くなりますし、カビの危険もありますし、
値段も高くなりますので、しっかりめの生地やナイロン素材が内装には
適しているのではないかと思います。
くれぐれも合皮の内装にはお気をつけください。
ampersandand at 11:30|Permalink│
2020年05月24日
在宅勤務中にTUMIの鞄を修理する方が増加していました。
明日から自粛解除となりそうですがリモートワークも終了という
感じなのでしょうか?
2020オリンピックの際の電車の混雑緩和の目的で、
政府はリモートワークを盛んに推奨していましたが導入はいまいち、
しかしこんな形で導入されることになるとはです。
ただ実際にはそこまで導入もされていない、という報道もあるようですが。
ちなみに私の仕事は全く在宅ではできないので日々通いでしたが。
さて日頃は毎日毎日持ち歩いている鞄なので、ほころびが気になってはいたけど
なかなか修理に出せなかった鞄。
在宅勤務中に治してしまおうとする方が多いようで、自粛期間中には
鞄の修理が急増したように思います。
持ち手革交換
補修後
革はタンニン鞣しのオイルレザーを使用していますので、使用により徐々に
しっとりと手に馴染んでいき、オリジナルの革よりは乾燥し難くい仕上がりに
なっています。といっても革なので時々は保湿クリームでメンテナンスして
頂くと宜しいかと思います。
こちらのモデルは持ち手仕様変更補修。
この現行モデルのスポンジ入りの持ち手は、芯材がスポンジなので使っていくと
持ち手が徐々に捻れ始めて伸びていき、最終的には破断してしまうという
改悪モデルとなっております。
ですので補修の際は、旧モデル仕様のナイロンベースの持ち手に付根から変更し
巻き革もTUMI定番の三角モデルでの仕上げとなっています。
補修後
現行モデルのスポンジ入りの持ち手は、長さが三段階あるようなので
ご依頼品の持ち手の長さに合わせてそれぞれ製作しています。
他にも色々と修理は可能です。
こちらもよくある肩掛けストラップの金具を固定している革パーツの破断。
補修後
使用する革を少し厚めにしナイロンを内側に貼り付けて縫製したパーツを
使用することで、荷重が加わった際に革が伸び難くなるように考慮して
補修しています。
こちらは肩当て合皮面の交換。
TUMIの七不思議の一つ、なぜか裏面に合皮素材を用いています。
ですので劣化してくるとスーツに黒い粉が拡散されてしまいます。
交換の際はもちろん革を使用し、封入されているへたったスポンジも入れ替えて
パンパンにしています。
とりあえずコロナ第一波はこのまま落ち着いてくれるといいのですが、
秋冬はインフルにコロナと、かなりカオスな状態になるという
専門家の方の意見もあるようです。
なのでなるべく引き篭もれるよう秋冬に向けて在宅ワーク環境を検討するか、
もしくは多摩川超えの自転車通勤にすれば、誰とも濃厚接触はしないので
電動自転車導入も要検討かなと思う今日この頃…。
感じなのでしょうか?
2020オリンピックの際の電車の混雑緩和の目的で、
政府はリモートワークを盛んに推奨していましたが導入はいまいち、
しかしこんな形で導入されることになるとはです。
ただ実際にはそこまで導入もされていない、という報道もあるようですが。
ちなみに私の仕事は全く在宅ではできないので日々通いでしたが。
さて日頃は毎日毎日持ち歩いている鞄なので、ほころびが気になってはいたけど
なかなか修理に出せなかった鞄。
在宅勤務中に治してしまおうとする方が多いようで、自粛期間中には
鞄の修理が急増したように思います。
持ち手革交換
補修後
革はタンニン鞣しのオイルレザーを使用していますので、使用により徐々に
しっとりと手に馴染んでいき、オリジナルの革よりは乾燥し難くい仕上がりに
なっています。といっても革なので時々は保湿クリームでメンテナンスして
頂くと宜しいかと思います。
こちらのモデルは持ち手仕様変更補修。
この現行モデルのスポンジ入りの持ち手は、芯材がスポンジなので使っていくと
持ち手が徐々に捻れ始めて伸びていき、最終的には破断してしまうという
改悪モデルとなっております。
ですので補修の際は、旧モデル仕様のナイロンベースの持ち手に付根から変更し
巻き革もTUMI定番の三角モデルでの仕上げとなっています。
補修後
現行モデルのスポンジ入りの持ち手は、長さが三段階あるようなので
ご依頼品の持ち手の長さに合わせてそれぞれ製作しています。
他にも色々と修理は可能です。
こちらもよくある肩掛けストラップの金具を固定している革パーツの破断。
補修後
使用する革を少し厚めにしナイロンを内側に貼り付けて縫製したパーツを
使用することで、荷重が加わった際に革が伸び難くなるように考慮して
補修しています。
こちらは肩当て合皮面の交換。
TUMIの七不思議の一つ、なぜか裏面に合皮素材を用いています。
ですので劣化してくるとスーツに黒い粉が拡散されてしまいます。
交換の際はもちろん革を使用し、封入されているへたったスポンジも入れ替えて
パンパンにしています。
とりあえずコロナ第一波はこのまま落ち着いてくれるといいのですが、
秋冬はインフルにコロナと、かなりカオスな状態になるという
専門家の方の意見もあるようです。
なのでなるべく引き篭もれるよう秋冬に向けて在宅ワーク環境を検討するか、
もしくは多摩川超えの自転車通勤にすれば、誰とも濃厚接触はしないので
電動自転車導入も要検討かなと思う今日この頃…。
ampersandand at 21:19|Permalink│
2020年04月27日
TUMIのリュックを購入する前に知っておくべき事。
これから購入する数万円するリュックが、2年後には劣化して
ジャケットの肩をべたべたと黒く汚してしまうと分かっていたら
あなたは購入しますか?
常々お伝えしておりますが、合皮は使っても使わなくても
必ず劣化してしまう素材になります。
私の個人的な意見ではなく「合皮 劣化」で検索するといくらでも
確認できると思います。
記事によれば1から2年、遅くとも5年で必ず劣化してしまいまうと
書かれています。
この年数はあなたが購入してからではもちろんありませんし
その鞄を製造してからでもありません。
その合皮素材を作ってからの期間になります。
ですのでときどきお客様が
「一度使っただけなのに表面がべろべろと剥離してきた」
というのはすでに購入した時点で賞味期限切れということなんだと思います。
バーゲンや型落ちの製品であれば、店頭に並んでいる期間だけでも
1から2年は経過しているでしょうから。
で今回のTUMIのリュック。
ナイロンと部分的に革があしらわれているリュック。
いったい何処に合皮が使われているのでしょうか?
この部分、ストラップの裏側、しかも肩に触れる部分にピンポイントで
あざとくわざわざ合皮が用いられています。
すでに表面の塗膜がボソボソと剥離している状態です。
合皮の塗膜って恐らく生地に付くと洗濯ではなかなか落ちないんじゃ
ないかと思います、劣化するとクレヨンみたいにベトベトする素材なので。
わざわざ身体に接する部分に合皮を配置してくるなんて確信犯?
ではないのかと疑いたくなりますが、どうなんでしょうか。
この部分がこのような状態になってしまうと使うに使えませんから
買い替え需要作戦の一環なんでしょうか?
私が高校生か大学生ぐらいの頃は、SONYが全盛期でしたので
コンポやMDプレーヤーなどなど電化製品を購入するときには
デザイン性からSONYを選びたくなりましたが、SONY製品は
故障という名の時限爆弾がしこまれていて、しばらくすると必ず壊れる、
という噂を聞いていたので、結局は安いAIWAのミニコンポで
手を打ったのを思い出します。(KENWOODも熱かったですね)
(コンポのイコライザーが上下に跳ね上がるビジュアルに、
あの時なぜあそこまでときめいていたのか私は…)
TUMIの場合はそんな都市伝説ではなく確実に劣化する合皮がわざわざ
仕込まれている訳ですからどうなんですかね、メーカーは確実にその事を
分かって合皮を使用しているのですから罪深いですね。
そんなメーカーの悪巧み?にも負けずになんとか使い続けられるように
今回は補修をしていきます。
ご依頼主さんは以前修理したこちらの記事をご覧になられて
お問い合わせ頂きました。
以前修理したこの記事のリュックはストラップに付属物がないので靴下を
履かせる様に革のカバーを下から差し込んで覆えたのですが、
今回のリュックは途中にポケットがくっついているので
革のカバーを下から履かせることができません。
残念ながら修理不可でした、とメールを打っていたところ…
なにやら、もやもやもやと修理方法が降りてきたのでした…。
同じ方法で考えていたのですが他の方法でならば可能か?…と。
右脳でシュミレーションしつつ、でもリュックがくっ付いているから
縫えるか?カット面を削れるか?とか右脳をフル回転でシュミレーション。
頭の中では可能という判断でしたので、早速試作を行い
これならば、という解決方法に辿り着きました。
カバーをするすると下から履かせるのは無理なので、
ホットサンドにように上下から革でストラップを挟み込んで
両サイドを縫製するのではどうだろうかと。
ただその時に、ストラップの両側にパンの耳のように縫い代が
出来てしまうのはありなのか、無しなのか?
両側はやぼったいな〜、ということで片側だけで済ませられる様に方針転換。
S字カーブを描いているストラップを型採りして革を裁断。
結構、革を使いますね。
で、片側を縫い割りするとこんな感じ。
バットマンスーツのパーツみたいなのができます。
でこれをストラップに巻き付けます。
ちなみに片側にできる縫い代を外側か内側、どちらが目立たなくて
「らしく」仕上るだろうかと一晩思案した結果、内側がよいだろうと
いうことになっています。意外にこういう些細なところが悩むのです。
左右のストラップの太さなのか幅なのかが意外と違くて焦りましたが
巻き付ける塩梅で調整してバランスを整えます。
挟み込みましたら縫い代部分をミシンで縫製していきます。
この時に、リュック本体がぶら下がった状態で果して綺麗に縫えるのかどうか?
これはやってみないと分からないところでしたが、無理ならば手縫いだな、
と思いつつなんとか縫製することができました。
で縫い終えたら余分は縫い代をカットし、断面をグラインダーで
削ってコバを整えて染色して完成となります。
AFTER
内側にできた縫い代、「らしく」ないですか。
ストラップ付根部分は本体背面に縫製されている部分がありましたので
その部分は構造的に覆えないとご依頼主にお伝えしておりましたが、
やはりはみ出てしまうのは格好悪いので、その部分は包まずに(平らな部分)
覆うだけで処理をすることで付根部分から革で始まる様に仕上っています。
付属のポケットとの境目ですがこんな感じです。
自然な感じでらしくなっていると思います。
革で覆っているので使い始めは少しごわつくかもしれませんが、
荷物も入って荷重が掛かり重さで皺が馴染んできますので、
後は高級感がじわじわと醸し出される事でしょう。
今回のリュックはこのモデル。
すべてのモデルのストラップに合皮が使われているのか分かりません。
それと使われていないモデルでもメッシュ生地の場合は弱いので
しばしば縫製部分で裂け始めてしまう事例もお問い合わせ頂きます。
ただその場合は構造的に補修できなかったりする場合もありますので
TUMIのリュックを購入の際にはストラップの裏面は要チャック!です。
私としては合皮が使われている製品の購入をお勧めしませんが、
知らずに購入してしまったら劣化するまで使って終了かと思いますが、
(合皮が使われている製品は所々合皮が使われているので一箇所治しても
次から次へと補修費用が嵩んでしまうと思われるので)
TUMIのリュックは使い捨てに出来るような値段ではないようですので
(60.000〜200.000円)購入する際は要ご検討下さい。
ジャケットの肩をべたべたと黒く汚してしまうと分かっていたら
あなたは購入しますか?
常々お伝えしておりますが、合皮は使っても使わなくても
必ず劣化してしまう素材になります。
私の個人的な意見ではなく「合皮 劣化」で検索するといくらでも
確認できると思います。
記事によれば1から2年、遅くとも5年で必ず劣化してしまいまうと
書かれています。
この年数はあなたが購入してからではもちろんありませんし
その鞄を製造してからでもありません。
その合皮素材を作ってからの期間になります。
ですのでときどきお客様が
「一度使っただけなのに表面がべろべろと剥離してきた」
というのはすでに購入した時点で賞味期限切れということなんだと思います。
バーゲンや型落ちの製品であれば、店頭に並んでいる期間だけでも
1から2年は経過しているでしょうから。
で今回のTUMIのリュック。
ナイロンと部分的に革があしらわれているリュック。
いったい何処に合皮が使われているのでしょうか?
この部分、ストラップの裏側、しかも肩に触れる部分にピンポイントで
あざとくわざわざ合皮が用いられています。
すでに表面の塗膜がボソボソと剥離している状態です。
合皮の塗膜って恐らく生地に付くと洗濯ではなかなか落ちないんじゃ
ないかと思います、劣化するとクレヨンみたいにベトベトする素材なので。
わざわざ身体に接する部分に合皮を配置してくるなんて確信犯?
ではないのかと疑いたくなりますが、どうなんでしょうか。
この部分がこのような状態になってしまうと使うに使えませんから
買い替え需要作戦の一環なんでしょうか?
私が高校生か大学生ぐらいの頃は、SONYが全盛期でしたので
コンポやMDプレーヤーなどなど電化製品を購入するときには
デザイン性からSONYを選びたくなりましたが、SONY製品は
故障という名の時限爆弾がしこまれていて、しばらくすると必ず壊れる、
という噂を聞いていたので、結局は安いAIWAのミニコンポで
手を打ったのを思い出します。(KENWOODも熱かったですね)
(コンポのイコライザーが上下に跳ね上がるビジュアルに、
あの時なぜあそこまでときめいていたのか私は…)
TUMIの場合はそんな都市伝説ではなく確実に劣化する合皮がわざわざ
仕込まれている訳ですからどうなんですかね、メーカーは確実にその事を
分かって合皮を使用しているのですから罪深いですね。
そんなメーカーの悪巧み?にも負けずになんとか使い続けられるように
今回は補修をしていきます。
ご依頼主さんは以前修理したこちらの記事をご覧になられて
お問い合わせ頂きました。
以前修理したこの記事のリュックはストラップに付属物がないので靴下を
履かせる様に革のカバーを下から差し込んで覆えたのですが、
今回のリュックは途中にポケットがくっついているので
革のカバーを下から履かせることができません。
残念ながら修理不可でした、とメールを打っていたところ…
なにやら、もやもやもやと修理方法が降りてきたのでした…。
同じ方法で考えていたのですが他の方法でならば可能か?…と。
右脳でシュミレーションしつつ、でもリュックがくっ付いているから
縫えるか?カット面を削れるか?とか右脳をフル回転でシュミレーション。
頭の中では可能という判断でしたので、早速試作を行い
これならば、という解決方法に辿り着きました。
カバーをするすると下から履かせるのは無理なので、
ホットサンドにように上下から革でストラップを挟み込んで
両サイドを縫製するのではどうだろうかと。
ただその時に、ストラップの両側にパンの耳のように縫い代が
出来てしまうのはありなのか、無しなのか?
両側はやぼったいな〜、ということで片側だけで済ませられる様に方針転換。
S字カーブを描いているストラップを型採りして革を裁断。
結構、革を使いますね。
で、片側を縫い割りするとこんな感じ。
バットマンスーツのパーツみたいなのができます。
でこれをストラップに巻き付けます。
ちなみに片側にできる縫い代を外側か内側、どちらが目立たなくて
「らしく」仕上るだろうかと一晩思案した結果、内側がよいだろうと
いうことになっています。意外にこういう些細なところが悩むのです。
左右のストラップの太さなのか幅なのかが意外と違くて焦りましたが
巻き付ける塩梅で調整してバランスを整えます。
挟み込みましたら縫い代部分をミシンで縫製していきます。
この時に、リュック本体がぶら下がった状態で果して綺麗に縫えるのかどうか?
これはやってみないと分からないところでしたが、無理ならば手縫いだな、
と思いつつなんとか縫製することができました。
で縫い終えたら余分は縫い代をカットし、断面をグラインダーで
削ってコバを整えて染色して完成となります。
AFTER
内側にできた縫い代、「らしく」ないですか。
ストラップ付根部分は本体背面に縫製されている部分がありましたので
その部分は構造的に覆えないとご依頼主にお伝えしておりましたが、
やはりはみ出てしまうのは格好悪いので、その部分は包まずに(平らな部分)
覆うだけで処理をすることで付根部分から革で始まる様に仕上っています。
付属のポケットとの境目ですがこんな感じです。
自然な感じでらしくなっていると思います。
革で覆っているので使い始めは少しごわつくかもしれませんが、
荷物も入って荷重が掛かり重さで皺が馴染んできますので、
後は高級感がじわじわと醸し出される事でしょう。
今回のリュックはこのモデル。
すべてのモデルのストラップに合皮が使われているのか分かりません。
それと使われていないモデルでもメッシュ生地の場合は弱いので
しばしば縫製部分で裂け始めてしまう事例もお問い合わせ頂きます。
ただその場合は構造的に補修できなかったりする場合もありますので
TUMIのリュックを購入の際にはストラップの裏面は要チャック!です。
私としては合皮が使われている製品の購入をお勧めしませんが、
知らずに購入してしまったら劣化するまで使って終了かと思いますが、
(合皮が使われている製品は所々合皮が使われているので一箇所治しても
次から次へと補修費用が嵩んでしまうと思われるので)
TUMIのリュックは使い捨てに出来るような値段ではないようですので
(60.000〜200.000円)購入する際は要ご検討下さい。
ampersandand at 16:43|Permalink│
2020年01月30日
GUCCIの持ち手交換とコバの塗装剥離。
鞄の修理のご相談でしばしばあるのですが、コバ部分の塗装の剥離。
コバというのは断面部分になります。
その部分は革の断面になるので色がついていません。
なので製品ですと通常は塗装がされています。
革の断面は裁断したり削ったりしているので毛羽立っています。
ですのでそのまま塗料を載せても綺麗なつるっとした塗膜になりません。
ですのでクロム鞣しの革の場合は削った後には毛羽立ちを抑える溶剤を施し、
乾燥させて表面を硬化させ、また削る。
その後、また塗料を塗布し削り、また塗料を塗布し…。
と既製品では量産しなければいけないので、
こんな手間が掛かる事はしていられません。
なので毛羽立ちも貼り合わせた革の段差も何もかも一度で覆ってしまえる様に
分厚い樹脂性の塗料をこんもりとコバに一度塗布させて仕上げています。
で、そのような仕上げの持ち手やストラップを使用していると
どうなるか…
ご想像がつくと思うのですがやはり剥離してきてしまいます。
分かり易く云うとかさぶたのような感じで塗料がコバにくっ付いているので
持ち手のように手で常に触れる部分でぐりぐりされたり、
屈曲している部分というのはより剥離してき易いと云えます。
この塗料が剥離してくると大変見苦しい感じになります。
色が徐々に剥げてくるのではなく、ぼろっとかさぶたが取れる様に
部分的に色のかさぶたがこそげ落ちてしまいます。
かさぶたであればある意味快感かもしれませんが、
こちらはとても不快感でしょう、剥離してきた部分はささくれ立って
見苦しいですし。
で、今回のご依頼品ですが一見問題がなさそうですが、
コバの塗膜が剥離していたり、その部分をDIYされたようで黒いボンドのような
樹脂がコバにぐにゅぐにゅと塗布されています。
でよくご相談されるのですが、この塗装を綺麗に治して欲しいと。
残念ながら当店ではそのような補修は行なっておりません。
その理由としては幾つかあるのですが、そもそも同じような
剥離してきてしまう樹脂塗料を使用していないという点でしょうか。
仮に補修するとしても塗装をやり直すには、持ち手を本体から外して
グラインダーでコバの樹脂塗料をすべて削り落とす必要があります。
(部分的に補修を行なったとしても、あちこちいずれ剥離してきてしまうので)
しかし形状によって残らず削り落とせなかったり分解する際に
分厚い塗料が剥がれずに革にダメージが生じる場合もあります。
綺麗に落とせたとして同じ塗料で仕上げてしまうと意味が無いので
地道に下地を仕上げて塗料を載せて仕上げていく方法になりますが、
既製品のように樹脂塗料でコバを仕上げている製品というのは
そもそも芯材などに樹脂塗料で仕上げないとコバが綺麗にまとまらない
生地や不織布などの素材が挟み込まれている場合がありますので
その点でも補修不可となってしまいます。
ですので当店で出来る事といえば持ち手を作り直すという事になります。
で、今回も作り直しです。
途中経過を撮影するのを忘れてしまって3分クッキング的な流れになりますが
オリジナルは中心にやや硬めのスポンジが配されていましたが、
少し頼りないので硬めのヌメ革を用いて中央を同様にこんもり
するように仕上げています。
この方が使用していても持ち手がへたる事もありません。
柔らかくへなへなとへたってくると、それだけコバ部分も捩れて
痛み易くなりますので。
持ち手がかちっとしてより高級感が出たのではないかと思います。
AFTER
コバの仕上げも下地から仕上げまで地味な作業になりますが
塗装しては削りを繰り返して表面は綺麗になるように仕上げました。
この仕上げ方法では使用していても樹脂塗料のようにごそっと
剥離してくることはありません。
ただどうしても革製品ですので経年で擦れたり色褪せてくる事はありますが
その場合は部分的にもコバの再塗装は可能ですのでご安心ください。
その他の持ち手補修事例はこちら
コバというのは断面部分になります。
その部分は革の断面になるので色がついていません。
なので製品ですと通常は塗装がされています。
革の断面は裁断したり削ったりしているので毛羽立っています。
ですのでそのまま塗料を載せても綺麗なつるっとした塗膜になりません。
ですのでクロム鞣しの革の場合は削った後には毛羽立ちを抑える溶剤を施し、
乾燥させて表面を硬化させ、また削る。
その後、また塗料を塗布し削り、また塗料を塗布し…。
と既製品では量産しなければいけないので、
こんな手間が掛かる事はしていられません。
なので毛羽立ちも貼り合わせた革の段差も何もかも一度で覆ってしまえる様に
分厚い樹脂性の塗料をこんもりとコバに一度塗布させて仕上げています。
で、そのような仕上げの持ち手やストラップを使用していると
どうなるか…
ご想像がつくと思うのですがやはり剥離してきてしまいます。
分かり易く云うとかさぶたのような感じで塗料がコバにくっ付いているので
持ち手のように手で常に触れる部分でぐりぐりされたり、
屈曲している部分というのはより剥離してき易いと云えます。
この塗料が剥離してくると大変見苦しい感じになります。
色が徐々に剥げてくるのではなく、ぼろっとかさぶたが取れる様に
部分的に色のかさぶたがこそげ落ちてしまいます。
かさぶたであればある意味快感かもしれませんが、
こちらはとても不快感でしょう、剥離してきた部分はささくれ立って
見苦しいですし。
で、今回のご依頼品ですが一見問題がなさそうですが、
コバの塗膜が剥離していたり、その部分をDIYされたようで黒いボンドのような
樹脂がコバにぐにゅぐにゅと塗布されています。
でよくご相談されるのですが、この塗装を綺麗に治して欲しいと。
残念ながら当店ではそのような補修は行なっておりません。
その理由としては幾つかあるのですが、そもそも同じような
剥離してきてしまう樹脂塗料を使用していないという点でしょうか。
仮に補修するとしても塗装をやり直すには、持ち手を本体から外して
グラインダーでコバの樹脂塗料をすべて削り落とす必要があります。
(部分的に補修を行なったとしても、あちこちいずれ剥離してきてしまうので)
しかし形状によって残らず削り落とせなかったり分解する際に
分厚い塗料が剥がれずに革にダメージが生じる場合もあります。
綺麗に落とせたとして同じ塗料で仕上げてしまうと意味が無いので
地道に下地を仕上げて塗料を載せて仕上げていく方法になりますが、
既製品のように樹脂塗料でコバを仕上げている製品というのは
そもそも芯材などに樹脂塗料で仕上げないとコバが綺麗にまとまらない
生地や不織布などの素材が挟み込まれている場合がありますので
その点でも補修不可となってしまいます。
ですので当店で出来る事といえば持ち手を作り直すという事になります。
で、今回も作り直しです。
途中経過を撮影するのを忘れてしまって3分クッキング的な流れになりますが
オリジナルは中心にやや硬めのスポンジが配されていましたが、
少し頼りないので硬めのヌメ革を用いて中央を同様にこんもり
するように仕上げています。
この方が使用していても持ち手がへたる事もありません。
柔らかくへなへなとへたってくると、それだけコバ部分も捩れて
痛み易くなりますので。
持ち手がかちっとしてより高級感が出たのではないかと思います。
AFTER
コバの仕上げも下地から仕上げまで地味な作業になりますが
塗装しては削りを繰り返して表面は綺麗になるように仕上げました。
この仕上げ方法では使用していても樹脂塗料のようにごそっと
剥離してくることはありません。
ただどうしても革製品ですので経年で擦れたり色褪せてくる事はありますが
その場合は部分的にもコバの再塗装は可能ですのでご安心ください。
その他の持ち手補修事例はこちら
ampersandand at 19:30|Permalink│
2020年01月29日
ロンシャンの角擦れ補修 インスタ始めたってよ篇
ときどきですが、この色のロンシャンを補修した場合にどんな感じに
なるか参考の画像はありますか?とお尋ねされる事があります。
ご存知の通りロンシャンの色バリエーションは無数にありまして
当店でも相当数補修していますから画像を探せばあると思うのですが
膨大な撮影ファイルからその色のロンシャンを探し出すというのは…
なのでインスタはじめました。
ロンシャンのみしか掲載していないので、他の方がご覧になっても
面白くないのですが、修繕事例のカラーチャートとして利用しています。
治したものを全部載せるというよりは、補修したもので新しい色のモデルや
サイズ違いのものがあれば掲載する感じです。
色バリエーションはHPに掲載もしていますが、更新するのには
画像のサイズやら調整が必要なのでなかなか手間ですので
撮ってすぐに掲載ができるインスタグラムにロンシャン修繕事例の
最新画像は掲載していますのでご参考にされてください。
ちなみにですが、スマホで文字入力は苦手なのでどの投稿も
文章は同じ内容をコピペしたものですのであしからず。
またお問い合わせもインスタ経由ではなくHPからお願いしております。
フォローですが、始めた際にはフォローしてくれた方にぽちぽちと
フォローをしていたのですが、掲載している画像のせいなのか、
中東の偽ブランド商みたいな方々から同業者と思われてか
フォローされ始めてしまいました。
なのでそれをフォローしているとまずいのでは?と思いまして、
一旦すべてのフォローは外し、とりあえず今は一番始めにフォローして頂いた
バイヤーの方?と修理依頼が多いブランドのTUMIとCAMPERのみ
とさせて頂いております。
ですので折角フォローして頂いてもこちらからのフォローは現状
行なっておりませんのでご了承願います。
といってもフォローして頂くのはありがたいですし、
フォロワーが多い方がご依頼される方も安心かと思いますので
フォローはウェルカムでございます。
ちなみにロンシャンはフォローしないのか?ですが
逆にロンシャンから見るとわたしは中東の業者と同じような見え方なのでは?
と思いまして怪しまれると困るので自粛している次第であります。
なるか参考の画像はありますか?とお尋ねされる事があります。
ご存知の通りロンシャンの色バリエーションは無数にありまして
当店でも相当数補修していますから画像を探せばあると思うのですが
膨大な撮影ファイルからその色のロンシャンを探し出すというのは…
なのでインスタはじめました。
ロンシャンのみしか掲載していないので、他の方がご覧になっても
面白くないのですが、修繕事例のカラーチャートとして利用しています。
治したものを全部載せるというよりは、補修したもので新しい色のモデルや
サイズ違いのものがあれば掲載する感じです。
色バリエーションはHPに掲載もしていますが、更新するのには
画像のサイズやら調整が必要なのでなかなか手間ですので
撮ってすぐに掲載ができるインスタグラムにロンシャン修繕事例の
最新画像は掲載していますのでご参考にされてください。
ちなみにですが、スマホで文字入力は苦手なのでどの投稿も
文章は同じ内容をコピペしたものですのであしからず。
またお問い合わせもインスタ経由ではなくHPからお願いしております。
フォローですが、始めた際にはフォローしてくれた方にぽちぽちと
フォローをしていたのですが、掲載している画像のせいなのか、
中東の偽ブランド商みたいな方々から同業者と思われてか
フォローされ始めてしまいました。
なのでそれをフォローしているとまずいのでは?と思いまして、
一旦すべてのフォローは外し、とりあえず今は一番始めにフォローして頂いた
バイヤーの方?と修理依頼が多いブランドのTUMIとCAMPERのみ
とさせて頂いております。
ですので折角フォローして頂いてもこちらからのフォローは現状
行なっておりませんのでご了承願います。
といってもフォローして頂くのはありがたいですし、
フォロワーが多い方がご依頼される方も安心かと思いますので
フォローはウェルカムでございます。
ちなみにロンシャンはフォローしないのか?ですが
逆にロンシャンから見るとわたしは中東の業者と同じような見え方なのでは?
と思いまして怪しまれると困るので自粛している次第であります。
ampersandand at 19:30|Permalink│