オールソール

2018年03月20日

いい加減な修理店 B オールソール篇 その壱

長野県からのご相談案件

「近くの修理店で修理してから履き心地がおかしい、違和感があるんです」

というようなご相談をいただきメールにて画像を確認。
しかし裂けたり割れたりであればどこが原因だか分かるのですが
このような「なんだか違和感がある」という主観的案件は
実際に作業を初めて見なければ分かりませんし、
画像ではもちろん分かりません。

そして履かれている方の主観的(履き心地の感じ方など)な部分ですので
分解しても特に靴として壊れているところはない、という場合もあります。
では届いた靴の現物確認となります。

BEFORE
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20180319022018031905
外観からでは特に問題がありそうなところはありませんし
現状ではオールソールする必要もない感じに見えます。
強いて云えばハーフソールの取付け方がやばいですね…
ほとんど浮いちゃっています、接着不良というかなんか、変です。
ハーフソールの位置も深すぎる感じでしょうか…
嫌な予感…。

まずは分解

右足から。
ハーフソールを剥がしたところです。
でもまだもう一枚ハーフソールが残っていますね…。
予感的中…。
2018031903
画像矢印01ライン/ハーフソールが貼られていた境目
画像矢印02ライン/ハーフソールを剥がして現れた旧ハーフソールのライン

それでは引き続き左足…。
半分だけまだハーフソールが残っていますね…。
2018031908
画像矢印01ライン/ハーフソールが貼られていた境目
画像矢印02ライン/ハーフソールを剥がして現れた旧ハーフソールのライン
画像矢印03ライン/旧ハーフソールを途中まで剥がして面倒になったライン

分かりますかこれ、どういことか。
お客さんのお話では、いつも使っていた修理店Aが閉店してしまったので
最寄りの修理店Bにハーフソールの交換修理に出したところ、
それ以来なんだか履き心地がおかしくなったとのこと。

修理店Bでは何をしたのか(していないのか)?

もともと靴にはハーフソールが修理店Aで取付けられていました。
それが摩耗したので修理店Bに修理に出しました。
修理店Bは左足の古いハーフソールを剥がし始めましたが
なかなか剥がれない(修理店Aがしっかりと施行しているからです)
で、途中まで剥がして剥がすのが面倒になりました(矢印03ライン)

右足は古いハーフソールを剥がすのは始めからやめておきます、面倒だから。
で、新しいハーフソールを取付けたいけど旧ハーフソールと
同じ境目で貼るのはできないので、それより深い位置(境目)で貼ってしまえ。

 深い位置というのは、旧ハーフソールを覆って隠す必要があるので
 それより深い位置(01ライン)で貼るということです。

2枚重なっているのがバレないように、周囲だけ一枚目を薄く削っておこう。
 
 これによって周囲の浮きが生じてしまっています。
 (これでもちゃんと接着すれば浮かずに付くのですが…)

以上が私の仮説となりますが、だいたいそんなところだと思います。
嫌な予感…というのは、年間で一件ぐらいですが
これに似た案件はやってきます。
2018021692
「ちゃんと剥がせや〜」

ハーフソールの境目がやけに深かったり、周囲の貼り合わせ面が
浮いていたりなど外観からの兆候はなんとなくあったりするものですから。

しかし今回のように片足は途中まで剥がしてやめるというのは
かなり悪質だと思います。

あっても古いハーフソールを全く剥がさずに、その上に新しいハーフソールを
貼ってしまうお店がときどきあるぐらいな訳ですから。
それを修理する私は貧乏くじな訳ですが。
その2枚剥がさなければなりませんからね…ちゃんとやってくれよ…。

仮に「ハーフソールを2枚重ねて厚くしたんだ私は!」
という修理店の主張もあるかもしれませんが、
だったら剥がしてからその厚みに該当する厚めのハーフソールを
貼れば言い訳です。

古いハーフソールの上に貼るというのは、それだけ一枚目が剥がれる
リスクもありますし、部分的に摩耗した状態の一枚目のハーフソールに
二枚目を貼り込むというのはなにも合理的理由にはなりませんから。

その弐へ続く…
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ampersandand at 00:08|Permalink

2017年09月06日

悲しくなるけど磨きます… オールソール*カラス仕様

確か、こちらはEnzo Bonafeだったと思います。
BEFORE
09051020905103

ヒドゥンチャネル仕様でしたので、底縫いは見えてきていますが
完全に擦り切れてはいない状態。
ですので、もう少し履けそうに見えますが…。

まずはぞれぞれのピースを分解してゆきます。
ソールを剥がします。
矢印の白と黒のだまは、底縫いの上糸と下糸になります。
この糸も一つずつ抜いてゆきます。
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まれに、不届きな修理店ではこの糸を抜かずにそのまま
底縫いを掛けてしまう輩もいるようです。
それ、次に修理する人が困りますから〜。
そしてウェルトも痛みますから〜。

この状態でも糸が効いていますので、白い下糸を
だまからちまちま引き抜いていかないと、
上糸の黒い糸が抜けないようになっています。

この出し縫いの糸が、漉い縫いの糸を貫通していると
なかなか抜けないのでイライラ…イライラ… 
設定が悪いな〜なんてぼやいてみたりします。

こちらは、ハンドソーンウェルテッド製法のようです。
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ちなみにこちらがグットイヤーウェルテッド製法。
0905101
矢印部分の段差が確認できると思います。
だいたい5.0から6.0mm程度あります。
白い綿テープのようなリヴと云われるパーツを中底面に
接着するので段差ができます。
このリヴを取り付けることで機械でウェルトが
縫製できるようになっています。

上段画像のハンドソールの場合は、
ほぼフラットになっているのが分かると思います。

実際は2.5mm程度の段差があったかと思うのですが、
履き込んでいくうちに革中底が沈み込んで
よりフラットに近くなっています。

昔、ハンドソーンの靴が日本に入りたての頃は、
履き古された海外の靴を分解すると、このように中底加工面が
へたっていますので、これがもともとの設定だとしばらく勘違いしていた、
みたいな話を何かで読んだ事があります。
0905110
ハンドソーンはその名の通り、ウェルトを手縫いにて革中底に
漉い縫いされています。
革中底を加工して直接縫っていますので、ウェルトとの
段差が余りできない為、分厚いコルクを敷き詰めるスペースはありません。
ですので、オリジナルは申し訳なさ程度に
薄いスポンジが施行されておりました。

コルクがたくさん入っている方が凄い!と思われている雑誌編集者の方が
ときどきいらっしゃるようですが、コルクをたくさん入っているという事は
柔らかい分厚いマットレスで寝ているようなものです。
当店では、コルクを再度敷き詰める際には、目の細かいコルクを使用し
適度な堅さを保つように一応考慮して施行しております。

コルクが厚いという事は、それだけ履き込んでいくとコルクが圧縮され、
その分、中底面が沈み込みますのでサイズの弛みなどの変化が
起こり易くなる場合があります。

ですので、靴を購入される際には、始めの段階で羽が完全に閉じきった
サイジングで購入されてしまうと、後々中底が沈み込んだ時に困ってしまいます。
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履き込んだソールは通常、踏みつけ部分の中央が一番薄くなっています。
そこでカットしてみますと、中心部分は残り1.0mm程度。
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この靴はハンドソーンですので、中底とソールとの空間が僅かですので
ソールに穴があいてしまうと、ダイレクトに中底面が痛んでしまいますので
このタイミングでのオールソールがベストかと思います。
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先日のクロケットジョーンズの記事でもありましたが、
ウェルトを削り過ぎ…矢印部分の縫い穴に亀裂が…。
すでに今の状態でウェルトに亀裂は入っていますし、
端からの距離も一部で1.0mmを切っています…。

このような現象は意外と高級靴に多い傾向があるように思います。
それだけ仕上げを攻めているということか、やり過ぎているという事か…。

ではではソール交換に。
今回はヒドゥンチャネル仕様(革を起こして底面に縫い目が見えない仕様)。
ヒドゥンチャネルはオプションですので、私としてはオプションするならば
ハーフソールビンテージスチール仕様のほうが費用も安く、
耐久性もメンテナンスも優れているのでお勧めでありますが、
こちらのオーナーさんは、いつもヒドゥン。

Hidden/隠された チャネル/溝? と云う感じでしょうか。
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そして今回は底面がカラス仕様
「カラス」は烏なんだと思います、真っ黒ですから。
こちらは半カラス仕様、半分黒いバージョン。
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半カラス仕様の記事こちら。

全面真っ黒に染めてゆきます…。
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染めますと、塵やインクの気泡や刷毛跡などなどのムラができますので
それを#800や#1000番手の紙ヤスリで研いでゆきます。
そして最後にメンチュウロウを溶かし込み、気が済むまで磨きましたら
完成となります。
AFTER
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がんばって磨きましたので、いつもより多めの靴底ショット。
黒く染めますと、通常は気にならない凹凸も目立ってしまいますので
仕上げるには、いつもよりも手間が掛かります。

そしてこの磨き上げました靴底も、
ひと足アスファルトに踏み出してしまえば…。
そんな悲しみを堪えつつ、黒く、そして黒く…黒のその向こう側へ…
と磨く、今日この頃…。
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ampersandand at 11:49|Permalink

2017年09月05日

瀕死のCrockett&Jonesをなんとかする。 オールソール篇

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オールソールでご依頼頂く靴は、それなりに履き込まれておりますので
痛みがある靴は多い訳ではありますが、ここまで瀕死な靴はなかなかです…。
まずはホールカットのCrockett&Jones。
BEFORE
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ご覧のようにかかとが…これでもかというぐらいに傾斜、傾斜しています。
15.0mmあるヒールが完全に摩耗しており、ハチマキまで摩耗しています。
よくどの程度まで減ったらリフトを交換したらいいのか尋ねられますが
だいたい6.0から10.0mm程度、付いているリフトの厚みにもよりますが
一段分減った際が交換目安かと思います。

というのは、構造的に一段分で交換できる仕様になっているということも
ありますし(なっていない靴もありますが)、減りすぎた状態で
履いていますと、靴がどんどん変形してしまいます。

そしてその状態で履いておりますと、身体にも知らず知らずに
影響が出てしまいます。
足首、膝、股関節、骨盤、背骨…それぞれの可動域でその傾きの帳尻を
合わせようとしますので、いずれ…。

摩耗している部分に革を積んで、かかとを正常な位置に置いてみます。
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正常な位置で、つま先側から見てみますと…
すると前側の外側は浮いた状態になります。
かかとが15.0mm以上外側へ傾斜していますので、必然的に歩行の際には
外側へ傾いて歩いていますので、靴がこのように変形しております。

客観的に画像で見てみますと、この状態で履き続けるというのは
身体にまずいという事がお分かり頂けると思います。
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ちなみに、通常のオールソール時期の靴(YANKO)と並べてみますと
履き口を見てみても変形具合が分かると思います。
足は外側に傾いているのに、履き口は内側にひしゃげています。
なかなか興味深い現象です。
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靴底は穴が空き、詰めているコルクが流出しております。
この状態も補修目安の時期を逃している状態です。
(もう一足のクロケットに比べれば、まだ良い方なのですが…)
コルクが流出した状態で、履いてしまいますと中底が割れてしまったり
陥没してしまいます。
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つま先部分も、どこまで摩耗したらまずいかもよく尋ねられます。
ウェルテッド製法の場合、水色の線のラインが
ウェルト部分(3.0から4.0mmぐらい)で、それ以下がソールの厚みとなります。

ですので、こちらのCrockett&Jonesは、つま先に限ってはぎりぎりとなります。
では、ウェルト(漉い縫い)まで完全に摩耗してしまうと
オールソールする場合には、ウェルト交換も合わせて必要になります。
ウェルト交換費用は、10.000から15.000円程度かと思います。
(プラス、オールソール費用と云う事になります)

ウェルトは、ソールを縫い付ける縫い代と云う役割ですので、
その部分を擦り減らしては、そもそもウェルテッド製法の靴の意味が…。
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靴ひもを結びっぱなしで脱ぎ履きされているようでしたので
腰革も必然的に痛んでしまいます。

続いて内羽のCrockett&Jones。
こちらで一番の問題なのは…これは履き方が悪いのではなく、
Crockett&Jones の検品レベルに問題があると思うのですが。
(この状態の靴は最近、多くなってきたような気がします)
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土踏まず部分のコバがギザギザしているのが確認できるかと思います。
これはどのような状態かといいますと、「削り過ぎ」です。
Crockett&Jonesでコバを削っている時に、削りすぎて底縫いの糸が
表出してしまっている状態となります(縫い穴の断面が見えている)。

販売している時点では、もう少しギザギザが目立ってはいなかったと思いますし
ウェルトとソールも隙間が開いていなかったと思います。
ですが、履いていくうちに加重により今の状態になったかと思われます。
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このモデルはヒドゥンチャネル仕様といいまして、
底縫いが見えないように仕上げております。
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画像のように革の端に革包丁を差し込み、革を10mm幅ほどめくります。
その状態でめくった底面に溝を堀り、底縫いを行い
再びめくった革を元に戻す方法となります。

ですので、ギザギザ部分は糸が縫われている位置、
端から5.0mmぐらい余計に削ってしまっている状態ということになります。

またCrockett&Jonesの場合、ウェルト面の出し縫いが、
ウェルト部分に切り込みを入れ、その溝に縫っています。
溝はウィールをあてて、糸が見えないように仕上げています。

ですので、底面とウェルト面、両面において出し縫いの
糸の位置(端からの距離)が確認できない状態ですので、
コバを削る職人さんが、気づいたら… 「やべ!削り過ぎたっ…」
というプロセスなのかも知れません
でも検品でギザギザは気づいているのでしょうから…
どうなんでしょうかね。

また、ウェルテッド製法なのにコバの張り出しを極力少なく仕上げる
という傾向も一部にありますので、それも影響しているのかもしれません。

靴雑誌などで、
「ウェルテッド製法なのに、このコバの張り出しの少なさ!凄い!」
「踏まず部分のえぐりの深さ!凄い!」
みたいな文章を読みますと、
「まぁ、ギザギザしてなきゃいいけど…」と思う、
立ち読みのわたしが…。

ちなみに、踏まず部分をそんなにえぐりたいなら、
ウェルテッド製法とマッケイ製法を併用すればいくらでも
踏まず部分を細くできるのですが…。
Enzo Bonafeの参考記事はこちら

John Lobbですとこんな感じの仕上げ。
矢印部分でウェルトが終わり、踏まず部分はマッケイ製法。
こちらは、踏まず部分を深くえぐりたいというよりは、
ウェルトの厚みを省き、踏まずを華奢に見せたいと云う感じでしょうか。
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ほか、踏まずを攻めるならば、ベベルドウェストという仕様もありますが
履いていくうちに下がって隙間が開いたり、オールソールの際に
ウェルトの質や加工が悪いと強度が心配だったりします。

ギザギザ部分は、ウェルト部分の縫い穴まで削ってしまい、
穴が側面に貫通している状態ですので、その部分は縫えません。
ですので、一般的な補修方法ですとウェルト交換が
必要にもなってしまいます。

なお、現在当店では業務の都合上ウェルト交換は行っておりません。
部分的な漉い縫いなどでの対応であれば可能ですが。
ちなみにウェルト交換はこんな感じです。

ですので、今回の状態ですとウェルト交換が必要ですが、
本体の革の痛み(硬化)具合や、靴の変形など全体的な状態を鑑みますと
ウェルト交換/オールソールの高額な費用を費やすには
ちょっと状態が悪過ぎるということもあり、
ウェルト交換からはお勧めできないかと。

また、お客様的にも「おまかせで」ということでしたので、
以下の補修方法にて対応させて頂きました。

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こちらは靴底が酷い事に…。
コルクが完全に損失しております。
0827-165
この位置からみてみますとよくわかると思いますが、コルクがないので
その部分が空間が開いています、その状態で中底を踏みつけて
歩いてしまいますと、コルクがない部分の中底が陥没ということに。
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Crockett&Jonesの中底は靴底の屈曲を良くする為に、中底裏面に切り込みが
入れてあります、牛肉に筋を入れて柔らかくするのと同じでしょうか。
ただし、この筋がかえって中底の割れに繋がる場合もありますので
善し悪しの分かれるところかと思います。
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ウェルト(黄色矢印)がほぼ擦り減ってしまっています。
ただし、ぎりぎり漉い縫いの糸(赤矢印)は効いていましたので、
ビンテージスチールも取り付けるので、つま先の固定にはなんとかなるかと。

それでは、ここまで痛んでいる靴をどこまで挽回できるのか…
果たして結果は。
AFTER
0827-1300827-1510827-144
かかとの傾斜は、靴のねじりを矯正しながら革を積み上げて修正。
つま先部分のウェルトの摩耗は、革でアタッチし元の厚みに戻し
底縫いを行い、ビンテージスチールにてビス固定。0827-1390827-134
土踏まずのウェルトが削り過ぎでギザギザの部分は、
縫える部分は底縫いを行い、念の為にビス固定併用。

ヒドゥンチャネル仕様(オプション)であればビス跡も
分からないように仕上げられます。
ウェルト部分の削りすぎていたギザギザは、そのまま一部残ります。
0827-1330827-131
ビスの跡は残りますが、これでウェルト交換費用〜15.000円節約できます。
続いてこちら。
0827-1450827-146 0827-1530827-1430827-152できるだけ丈夫にということで、おまかせしますと云う事でしたので、
レザーソール/ハーフソールビンテージスチール併用仕様
リフトも通常より厚いvibramラバーリフト仕様となります。

腰革を擦り切らしてしまう方の場合は、補修をしても再度、
縫製の糸を擦り切らして革がめくれてしまう場合がありますので、
縫い目を表に見えないように仕上げています。

ちなみにかかとを酷く減らしている場合、ちゃんとした位置に
補修し戻しますと、「なんだか、かかとが突き上げる感じがする」と、
おっしゃられる方が稀にいらっしゃいます。

傾いた状態に身体が慣れてしまっていると云う事だと思います。
そうなってしまうと、すでに身体の歪みがでている場合がありますので
お早めの補修をお勧めしております。

こちらの記事もご参考までに。
「Crockettt & Jones  Connaughtのオールソール 理想と現実篇」はこちら
「Crockett&Jonesのシャンクは折れ易いのか?」はこちら
「悲しくなるけど磨きます…*カラス仕様」
「オールソール作業工程詳細はこちら」
「そのほかオールソール修繕事例はHPはこちら」
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ampersandand at 23:39|Permalink

2017年04月27日

オールソールするんです。 DANNER LIGHT篇  vibram#148

前回のダナーは、かかと部分補修のご案内でしたが、
今回のダナーは、オールソールの修繕事例となります。
前回の部分補修記事はこちら。

before
0912-700912-71
土台部分のスポンジに問題がなければラバーソールのみでの
交換ができますが、今回はミッドソールやスポンジソールの間に
水が侵入したりして、剥がれたり浮いてきてしまっておりますし、
またその隙間から、禁断の「市販の接着剤の注入!」がされておりますので
すべて交換となります。
0912-740912-73
ミッドソールにも浸水の跡が。
0912-77
ステッチダウン製法ですので、ミッドソールを剥がすとこんな感じ。
中底ありのタイプですので、剥がしても抜け殻状態にはなりません。
ちなみに中底なしタイプのステッチダウン製法は剥がすとこんな感じ。
0927-41
画像はクラークス。

ミッドソールを取り付け、底縫いを掛けます。
その後オリジナル通りにスポンジの土台を削りだしまして
vibram#1220を取り付け完成となります。
AFTER
0912-45
0912-690912-670912-650912-680912-64


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2016年07月25日

Crockettt & Jones  Connaughtのオールソール 理想と現実篇

クロケットジョーンズのコノートのオールソールとなります。
彼氏さんの靴を彼女さんがお持ちになられたのですが、
仕様について色々と電話にて彼氏さんに確認をとって頂きました。

旦那さんのを奥さんがと云う場合ももちろんですが、
紳士靴ですと色々と仕様があります。

リフトはダヴリフトかvibramリフトか、チャネルかヒドゥンチャネルか、
半カラスか、ビンテージスチールか…などなど
女性にとっては費用が抑えられて耐久性が高い仕様が、となりますが
紳士の場合ですとそういう訳にも…と。

ですので、相手方に確認をとっていただいてからご持参して
頂けるとよろしいかと思います。
before
0715-360715-310715-23
ソールが摩耗しきって穴が開き始めておりますが、
注目すべくはコバ部分のソールとウェルトの隙間です。
底縫いの糸が完全に切れるとこうなります、パカッと。

常々このブログにてハーフソールのメリットをお伝えしておりますが、
革底のまま履き込んでいきますとこのような状態に
最終的にはなります。

今回は、ちょうど穴が開き始めたタイミングでぱかっとですので
今回は理想的ですが、これがあまり靴底が減っていない状態で
底縫いの糸が擦切れてぱかっと開いてしまうと…

この状態になると接着で固定してもすぐに開いてしまいます。
ですので当店ではオールソールになってしまいます。
(つま先部分であればビス固定で可能な場合もあります)

例えばまだパカッと開いていない状態で、ハーフソールをと
ご依頼される時がときどきありますが、
底縫いの糸が切れている状態ですので、ハーフソールを取付けても
その後、ぱかっと開いてしまう可能性がありますので、
その点をご了承して頂ければハーフソールも可能です。
(開いてしまった場合は再接着不可)

通常は中央部分が摩耗し易いのですが、歩き方によっては
周囲の底縫い部分がいち早く摩耗してしまう方もいらっしゃいます。
ですので、靴底を見て頂いてそんな具合であれば新品時に
ハーフソール/ビンテージスチールがお勧めであります。
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底を剥がした状態です。
何をしているのか云いますと、同じ縫い穴に縫い直す為に
だし縫いの糸をすべて取り除いた結果、
つま先部分の漉い縫いが切れていましたので
部分縫製する為に漉い針で穴を確認している所です。

漉い縫いが切れていたのは出し縫いの位置が悪かったからとなります。
靴学校時代のウェルテッド製法の授業では、
出し縫いで漉い縫いの糸を切らないように注意することと…
と指導があったことを記憶しておりますが…

市販の靴でこのようなパターンが、
だいたい2割ぐらいの靴で生じていたりします。
経験的には、高級紳士靴での頻度が高いような…。

検品するにも、靴の内部の事なので確認のしようがないですし。
ときどきランダムに抽出して靴底を剥がすなどを行えば
発見出来るかもしれませんが…そこまではやらないでしょう。

なので、靴底の設計の段階で寸法に余裕を保たせることと、
出し縫いの職人さんに、ちゃんと指示をしておくことだと思います。

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ピンク線が漉い縫い
黄色点線が出し縫い

上段画像の設定が理想で、下段画像が現実、今回の状態です。
黄色点線がピンク線に掛かってしまっているのが分かるかと思います。
出し縫いは革底を取付けてから最後に縫製するのですが
この時に、内側を縫い過ぎると漉い縫いの糸を貫通してしまいます。

*コノートが全部このようになっている訳ではなく、
 この靴の出し縫いを行った職人さんの、その時の手加減でなっています。

この状態で履いていても通常は大丈夫なのですが、
(稀に糸切れし、ウェルトが外れてしまっている靴もあったり致します)
しかしオールソールの際には、出し縫いの糸を引き抜く作業時に
貫通してしまっている漉い縫いの糸が切れてしまいがちです。

このようになっているかどうかを購入する際に見極めるのは
無理なのですが、例えばウェルテッド製法なのに
極端にコバ(黄色矢印部分)の張り出しが少ない場合などは
起っている確率が高いような感じがします。
(張り出しが少なくても、そうならないように設計されている場合もあります)
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コバの張り出し幅が少ないと、外にはみ出さないように
必然的に内側に出し縫いを掛けるようになりますので、そうしますと
漉い縫いに掛かってしまうようになります。

高級紳士靴で起っている確率が高いかも…というのは
コバ部分の幅を抑えめがちになってきていたり、
手製の場合には、ぎりぎりまで攻込んで仕上げている場合などが
要因だと思います。

ウェルテッド製法でコバを攻め過ぎるという事に
矛盾も感じたりもします。
ウェルテッド製法はそもそもソール交換を前提にした設計なのですが
繰り返し縫い加工する部分の縫いシロ(ウェルト)を、
始めに自ら削って無くしてしまうというのはどうなんでしょうか…。

今回の靴は問題ありませんでしたが、コバの縫いしろが
交換前の段階で殆どないような状態の靴は、
修理不可(またはウェルト交換)になったり、
つま先部分であれば、出し縫いを一部掛けずに
ビンテージスチールを取付ける際のビスで、本底に固定したりする
方法になる場合があります。

無理に縫うと、縫い目が「落ちる」、コバから針が外れて(逃げて)しまい
コバが凸凹になってしまいますので。

ですのでそのようなシビアな設定になっているような靴は
オールソールが必要にならないように、
始めにハーフソール/ビンテージスチール併用仕様の
処置をしておくのも一計だと思います。

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糸に絡ませている黒い糸は、つま先部分は糸のピッチが
細かくなるので、糸を強く引き締めるとその加減で縫い目を引き裂いて
しまう場合もあり、また履いて行く段階でも縫い目に食込みすぎないように
する為の役目を担っています。
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漉くい縫いの補修が済みましたらコルクを充填。
ちなみに、底がぱかっと開いてしまったら再接着不可という理由ですが
ご覧のように殆どがコルクで占められております。

コルクには本底が剥がれないように留めておく硬度はありませんので
その周囲に見えるウェルト部分幅の約1.0cm弱の帯状の革部分と
革底を接着する訳ですから、固定出来る訳がありません。
しかも、空いた隙間からちょこちょこ塗布する程度ですし。
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革底を貼付けてウェルトをガイドに削りだします。
つま先は、サービス仕様の強化ラバー埋め込み仕様ですので
出し縫いを掛ける前に一段落としておきます。

こうした状態で底縫いを行えば、かかとのリフト交換同様に
ラバーが摩耗した段階で、底縫いの糸を切らずに部分交換が可能となります。
リフトは耐久性を考慮し、ラバーリフトの選択となっております。
AFTER
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*追記*
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このように靴の踵を踏んづけてしまいますと、
店主主観となりますが、靴の戦闘力が40%ほど落ちてしまいます。
靴は踵で履くものというぐらいですので。
短靴には靴べらを使ってみてください。

結び目をみると、恐らく靴ひもを結びっぱなしで
脱ぎ履きされている結果だと思われますが、
それですと、どんなにしっかり作られている靴でも…。

毎年のことながら、夏場のわたしの戦闘力も
52%ほどに低下している次第であります。

ampersandand at 21:00|Permalink

2016年06月13日

不適切ではあるが違法ではない修理 by 舛添

シルクの中国服が経費になるのであれば
私もなにか購入しようかな… 

「この眼鏡を掛けると、凄く綺麗にハーフソールが貼れるんです!」

税務署には、「不適切ではあるが違法ではない」
と、確定申告の際にお墨付きがもらえるだろうから…。
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ブーツは重いので修理作業は大変です。
重いので、靴底が擦り減りオールソールするところまで
辿り着く方は、通常の靴に比べ少ないかも知れません。

当店にも痛いとか重いとかでご相談頂きますが、
その改善方法は…
一に我慢、二に我慢、三四がなくて…

重さだけでの問題であれば、スポンジ系の素材にオールソールすれば
軽量化はできますが、革の硬さもその履き難さのかなりのウェートかと
思いますので抜本的な改善策にはなりません。

そんな過酷な試練を乗り越え、オールソールまで辿り着いた
忍耐の強い方のエンジニアブーツ。

二足とも元は同じ仕様のラバーソールですが、
グレーのエンジニアは、既に他店にて一度
vibram#2021にてソール交換されております。

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同じ靴ですがヒールの高さが異なるのが画像にて分かるかと思います。
カカト部分の角度が結構違っております。

オールソールの際にしばしば問題になるのですが、
ご希望のソールが依頼品には適さない場合があります。

全体が一体のソールの場合は、ヒールの設定(高さ)が問題になります。
ヒールの高さとは、カカト部分の厚みから踏付け部分の厚みを
引いた数値がそのソールにヒールの高さになります。
ヒールブロックの場合はその高さ(踏付け部分の厚みの違いがなければ)

ですので、グレーのエンジニアに使われている#2021は
踏みつけ部分11.0mm/カカト部分26.0mmとおおよそなりますので
ヒールは15.0mmの設定となります(誤差はあります)

元々の黒いエンジニアのオリジナルのヒールの設定は、
約30.0mmとなっております。

ですので、#2021を取付けるには、15.0mmほど高さが厚みが
足りておりません。
一応、カカト部分には一段レザーにて5.0mm足されておりますので
足りない高さは10.0mとなります。
高さが足りない事を説明されてソール交換されたのかは不明です。
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並べてみるとこんな感じ。
0613
10.0mmリフトを挟んでみるとこんな感じ。
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10.0mm低くなると靴はどうなるかですが
つま先部分が高く持ち上がります、こんな感じ。
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0613-5
そして踏付ける部分は本来の靴の設定より手前部分を踏付けるようになります。
手前部分を踏付けるようになると、場合によっては
靴の背骨となるシャンクという金属のパーツが
折れてしまう可能性もあります(今回は大丈夫そうです)

ですので当店では基本的に、オリジナルのヒール設定で適する
ソールをご提案させていただいておりますが、
ご希望であれば注意点をご理解の上で、使用することも可能です。

今回は同じ#2021でのご依頼でしたのでそのまま進めております。

靴の規格というのは電化製品などと違い、
国の規制/規格がある訳ではないので、その靴が壊れ易いのか
設定が狂っているのかなどはメーカー次第、修理店次第となります。

また、今回も10.0mm低いのですが、履かれている方が
それで問題なければ良いのかもしれません。
現に、オールソールするところまで履き込んで、
また同じソールでご依頼頂いている訳でありますし。

昔、70mmピンヒールを24mmに削って欲しいと云われ
注意点をご説明して加工致しましたが、その後
また同じ設定でご依頼頂いた事もあります。
「意外と大丈夫なんだぁ…」と。

これは特異ですが、結局は
「不適切であるが、履いている方が良ければそれで善し」
という事なのかもしれません。

通常はここで、仕上ったAFTER画像ですが、
修理は現在進行中となります。
今日がヤマ場のこのタイミングで、
「不適切ではあるが違法ではない」をタイトルで
使いたく書いてみました。
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ある意味、歴史に名を残した舛添さん、進退は如何に…。

舛添さんがどうのより、政治資金規正法を改正しないと
次の方も同じだったら(だろうし)また無駄な税金が…。

辞任によって、東京オリンピックの時に選挙というのは構わないが、
(なんなら競技会場に投票箱を置けば手っ取り早いかとも)
選挙カーで自分の名前を連呼しているだけの選挙活動を、
海外の方に見られるのが恥ずかしいなと思う
今日この頃…。

ampersandand at 18:00|Permalink

2016年06月07日

ウェルテッド製法あれこれ 私のアモーレ篇

エンツォボナッフェのオールソール。
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前回のエンツォボナッフェ 半カラス仕様
今回もウェルテッドとマッケイ製法の併用仕様になっております。
二つの製法を組み合わせているので、その分、手間はかかります。

マッケイ製法を踏まず部分に用いる事で、中底と本底を貫通して縫製しますので
それらに挟まれる踏まずを支えるシャンクの落ち込みも
多少軽減出来ているかもしれません。

ウェルテッドの場合は、革底を縫い付ける縫いしろとなるウェルトの幅が
靴の周囲に張り出しますが、マッケイの場合は、
本体中底面と直接貫通して縫い合わせるので
ある意味、本体より小さく革底の幅を設定することもできます。
(踏まず部分にウェルトを張出さないベベルドウェストと云う方法もあります)

まずは分解。
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底縫いの糸を一目ずつ外してゆきます。
これはそこそこ面倒だったりします。

なので稀に、この底縫いの糸を抜かずにオールソール
されてしまっている靴に出くわします。
これ困るので、面倒ですがちゃんと抜いてから交換を行ってください。
新旧の底縫いの糸が絡み合ってしまい抜けないですし、
そもそも縫い目を痛めてしまっておりますので。

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靴は意外に釘が多量に使われております。
この釘は抜けないようにスクリューになっていたりします。
ですので、抜け難い場合は無理に引き抜くと靴が歪むので
ネールピンサーを使い、釘を熱し抜きます。

ネールピンサーとは、二つの電極を釘などの金属に触れさす事で
直流電流?のような回路になり、金属を高熱にさせる器具になります。
高熱になった釘は、周囲を少し焦がすことで抜け易くなります。

画像の釘は、積上げ革を中底面から打ち込んだ釘で固定しています。
この他にもカカト部分には、ハチマキを固定するビスや
本底を固定するビスなども仕様により打ち込まれております。

婦人靴のプラヒール交換の際もこのネールピンサーを用います。
実質、ネールピンサーは主にこの時ぐらいの出番で
あまり活躍の機会がない割には割高な機械です。
少し電気に詳しければ、自分で作れそうな簡単な仕組みな気がします。
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靴底は主につま先部分か、踏付ける中央部分が薄くなります。
なので、減り具合を確認するには、端の厚みではなく
中央部分を指で押して、ぺこぺこかどうか確認されてください。


グットイヤーウェルテッド
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ちなみにウェルテッド製法はハンドソーンウェルテッド製法と
グットイヤーウェルテッド製法とがあります。

前者は革中底を加工し、中底/アッパー/ウェルトを
まとめてすくい縫いますが、
後者は、中底面に縫いシロになるリブを接着などで固定し、
それにアッパーとウェルト縫い付けます。

このように文字で記載しますと似ていますが、
構造は似ていますが別物と云う感じです。

分かり易い違いは中ものの厚み。
中ものとは革底と中底の間にできるすき間を埋めるモノ、
主にコルクになります。
グットイヤーのほうは5.0mm程度段差が出来ているのが
確認出来るかと思います。

これは、縫いしろとなるリブが別パーツになる為、
取付けるために出来てしまう段差です。
ですので、グットイヤーの場合は必然的にすき間が出来てしまうので
コルクを敷き詰める必要があります。

ウェルテッド製法の靴は、「中底が沈んで足に馴染む」というのは
このコルクの部分から来ているかと思います…。

雑誌などで時々、靴の分解写真が掲載され、このコルクが一杯入っていて凄い!
的な旨が記載されていたりしますが、入れようと思えばいくらでも入れられます。

ただし、必要最低限の厚み(盛り)にしておいた方が良いかと思います。
柔らかすぎるマットレスは沈み過ぎて腰を痛めるように、
あまりコルクを入れ過ぎても良くはありません。

それだけ中底が沈み易く(沈む加減が多い)なりますので、
後々にサイズ感の変化が大きくなります。(緩くなってしまいます)
それでなくてもアッパーの革も馴染み伸びますので
履き込むにつれ緩くなりがちです。

また、コルクを詰め過ぎて靴底中央をこんもりと膨らませてしまうと、
接地面が点になってしまうので、歩行の際には安定せず、
履き始めは歩き難かったり致します。

ハンドソーンウェルテッド
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それに比べ、ハンドソーンはと云いますと、
画像で分かるように、殆ど段差がないのが分かるかと思います。
ハンドソーンの場合は、革中底を加工し、掬い縫いが出来るように
加工しておりますので段差は2.0mm程度になります。

画像の状態は、履き込んでいるので、中底が沈んで段差が
少し分からなくなっていることもありますが、殆ど段差はありません。
ですので、コルクも殆ど入りません(今回は1.5から2.0mm)
(手製の場合は、その段差を作る為にカットした革を貼り戻すことで
 段差を埋め戻すこともできます)

ですので本来、沈んで馴染むというのは、中底の革自体が足の形に
踏み固められ馴染むという事で、このコルクが沈んで馴染む
というのは二次的なことではなかったかとも思います。

既製品の殆どのウェルテッドは、グットイヤー製法ですので、
厚く入ったコルクが沈む説が主流になったのかもしれません。
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なお、グットイヤーウェルテッド製法とは、手製のハンドソーンを
工場生産でミシン縫製できるように改良された仕様になります。
(手でグットイヤー(リブ付き)を行ってる方もいるみたいですが)

なお、グットイヤーですとリブを取付ける分、
靴底の返りはハンドソーンの中底より、別パーツのリブを取付けた分
返りが硬くなるということも聞いた事があります。
確かめた事はないので定かではありませんが。

それではコルクも詰め直しましたので本底の取付になります。
その前に、まずは邪道な革底加工。
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前回のボナッフェの時も行いましたが、革底を取付ける前に
踏まず部分のどぶ起こし作業。
ヒドゥンチャネル仕様ですので、底縫いが隠れるように
1.0から1.5mm厚程度で革を漉いて起こします。

本来は革底を本体に取付けてから行うのですが、踏まず部分は
マッケイ製法ですので、コバの迫り出しがない分、この行程を行う際に
手が本体に当たってしまい、思うような角度で包丁を入れることが難しいので
わたしはこの段階で行います。

この靴を作ったイタリア人は、いとも簡単に次から次へと行うのでしょうが
わたしはこの一足を綺麗に出来ればいいので、間違いない方法で行うとします。
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そして本体と取付けましたら前側のウェルト部分もどぶ起こし。
起こした部分には糸が収まるように溝を掘ります。
つま先部分は、今回はビンテージスチール仕様ですので
この段階でスチール分を凹ませておきます。
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底縫いを掛けました。
前側の赤矢印までは出し縫い、黒矢印の踏まず部分は
マッケイ(アンズ)縫いです。
縫い目のピッチも異なるのが分かるかと思います。

縫い終えましたら、どぶに接着剤を付けて閉じます。
つま先部分はビンテージスチールが収まるので、
その段差が残ります。
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因に左がヒドゥンチャネル(hidden channel)仕様、右がチャネル仕様。
チャネル仕様は底面に直接溝を掘って底縫いを行います。
hidden channelとは、「隠された溝」と云う意味になろうかと思います。
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両方ともビンテージスチール仕様になります。
ビンテージスチールを取付ける前提でオールソールを行いますと
底縫いを下がった位置に縫製出来ますので、糸を全く切らずに
取付けられるのが分かるかと思います。

どぶを閉じた後は、ビンテージスチールを取付け、
カカト周りを組み立てまして
最後にコバや底面を染めて磨きあげたら完成となります。

AFTER
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踏まずの部分のウェルトが無くマッケイ仕様になっておりますので
コバの張り出しが抑えられ、すっきりした印象に。
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ヒドゥンチャネル仕様は、ヒドゥンにする分、それだけ手間が掛かります。
ですので、チャネル仕様で行い、ハーフソール/ビンテージスチール併用仕様の
修理費用の方が割安になりますし、耐久性もあがりますので
その都度お勧めはするのですが、やはり靴をアモーレの方は
もとと同じ仕様でと、ご依頼を頂く事もあります。

といっても愛し方には色々あるかと思いますので、
今回はビンテージスチールも無しでという当初、
ご依頼でしたが、スチールぐらいは過保護に付けてあげてもいいのでは?
ということでお勧め致しまして付けさせて頂きました。

なお、レザーソールのつま先は過保護にしたい程、
摩耗し易いので、オールソールの際は強化ラバーでのつま先補強は
サービス仕様となっております。
サービスでさせて頂くほど、減り易い部分ですので。

ampersandand at 18:48|Permalink

2016年03月12日

春のイメチェン。 VIBRAM # 2668 の装い

部屋の模様替えは家具などを移動したり買い替えたりするより
床の色を変えるだけで、印象ががらっと変わるということを
なにかで読んだ気が…。

オールソールの場合も同様に床ならぬソールの色を
変更する事でイメチャンが可能です。
あまりソールが痛んでいなくても、イメチャンがしたくて
交換される方もしばしばいらっしゃいます。
BEFORE
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でも勿体ないので、とりあえずある程度摩耗してからが
良いかとも思います。

そんな場合は、こんな印象にしたい!だったり、
スマホで画像を見せて頂いたりと、ご依頼主さんのイメージは
決まっている場合が殆どです。

ただ、今回のような前後が一体型のユニットソールの場合は
ヒールの高さの設定が靴それぞれありますので
ご希望のソールがご依頼品に合わない場合もあります。

ヒールの高さというと、カカトの部分に定規を宛てて測った長さ?
とだいたい思われます。
それは見た目のヒールの高さであって実際のヒールの高さではありません。
ここでいうヒール高は前後の落差ということになります。
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画像のように、「前側の踏付け部分厚」−「カカト部分厚」の差が
ヒールの高さになります。

今回のご依頼品は、前側が10.0mmでカカトが25.0mmですので、
ヒール高は15.0mmとなります。

ここで問題になるのが、ソールに埋まっている仕様の場合です。
こんな感じ(カンペール特殊モデル)
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10.0mm埋まっています。
埋まっていた部分を隠す問題の他に、ソールの厚みの印象を
どうするかがあります。
埋まっていた場合と同じソールの厚みの印象にしようとすると
ソール交換の際には、実際のソールの厚みより、10.0mmソールを
厚くしなければなりません…

または前側だけ5.0mm埋まっていたら…などなど
なかなか文章ではどうゆうことなのかあまり伝わらないとかと…。

話が反れましたので今回のお話に戻します。
例えば、今回VIBRAM#4014ソールがご希望だった場合、
#4014は、ヒール高10.0mmの設定ですので5.0mm足りません。
ですのでカカト部分(踏まずから)に5.0mmほど盛らなくてはなりません。

数ミリ高くなる分には、個人差はありますが許容範囲だったり致します。
ただし、低くなってしまう場合は、後ろに倒れるような設定に
なってしまいますので、当店では基本行っておりません。

ただし以前,、スマホでご希望の靴の画像を見せて頂いた際に、
そのような狂っている設定でオールソール交換されている靴も
あるようですので、あとはご依頼主さんが許容出来るかどうかですが、
確認するにはやってみるしかありません。
AFTER
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もともとは接着のみのセメンテッド製法でしたが、
縫い目付きの飾り押渕を周囲に取り付け、レザーミッドソールを施工し、
本体とマッケイ縫いを行っております。
そしてその土台に、vibram#2668をしっかりと取付けております。
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もとのブラックカラーに比べますと軽やかな印象に。
ソールのvibram#2668は、ガムライト素材というものになり、
ラバー素材に比べると40%軽量な素材となります。
弾力があり、摩耗にも強いのでとても履き易いかと思います。
カラーはアイボリー/ブラック/ダークブラウンのご用意があります。
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以上、春の装いオールソール篇でした。

ampersandand at 19:17|Permalink

2015年10月08日

重すぎて、すぐに廃盤になってしまう靴。 ライザップ篇

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婦人靴です。
摩耗して891gですから900gはあったでしょうか…。
ここまでよくがんばられました、お疲れ様です。
欧米人で体格のがっしりされた方ならばいけるのか?もしれませんが
ご依頼頂いたお客様は通常サイズの日本人の女性ですので
まずこの靴を履きこなすのは無理でしょうと思います。

で、軽量化出来ないかとご来店。
同じブランドのサイドゴアと同じぐらいなれば、
なんとか履けるのでと。
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で、サイドゴアはというと、688gとなります。
688gでも女性の靴ですとかなり重いですが。
vibram#2021のスポンジソール仕様です。
ちなみにこのサイドゴアはゴム交換でご依頼となっております。

それでは分解してゆきます。
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あれ?底縫いの縫い目は飾りでした。
そしてなにやらまた縫い目が??
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左右で縫い目のあるのとないのと??
なに製法かが不明ですので、恐る恐るソールを剥がしてゆきます。
必要のある底縫いやソールを剥がしてしまうとまずいので。

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しかし結局すべて剥がす事になりました。
中底に縫い目がないのでマッケイではないし、ウェルテッド製法にしては
アウトステッチの位置が内側過ぎるので???
なんだろうと思っておりましたが、
結果、なに製法かといいますと、「ビスで固定しました製法」とでも
いうのでしょうか、正式な名前は分かりません。

以前雑誌で、ウェルトを縫わずにペイス(木釘)で固定している画像を
見た事がありますが、これは本底からミッドソールまですべて
釘で固定しております。

ドイツのメーカーでウェルテッド製法にミッドソールを出し縫いして
そこに本底を釘で固定するメーカーがあったような気が致します。
それはオールソールを行いやすくする為だという事ですが、
今回の「ビスで固定しました製法」は、
完全にビスのみで固定する(接着もなし)アメリカンな製法
と云う感じです(確か、アメリカのメーカーだったか)。
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ウェルテッド製法の場合は、ウェルトの厚みでソールが厚く見えますが、
それは周囲だけで、中はコルクが充填されておりますので
見た目よりは実際の厚みはないのですが、
今回は、完全に無垢材の厚みですのでかなりやばいソールでした。
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ビスはスクリュー加工されておりますので、抜けない様になっています。
ですのでネールピンサーという電圧でビスを加熱する機械で
焦がしまして抜いてゆきます。

中底面にはビスの頭は全く見えていないので、
製作の際に靴型の底面に鉄板が施されている靴型を使用し、
尚かつ貫通しない様に設定されたビスを、機械でガシガシと
数十本打ち込みまくっております。
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全部集められていないのですが、恐らくビスだけで100gはあります。
スポンジソールだと一枚分ぐらいに値しますね。
全周金属のビスで固定しておりますので、底はかなり屈曲し難くかったのでは
ないかと思います。
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本体片足だけでは300gなので、片足のソールだけで600gあったということです。
たしかALDENのダブルソールモデルが片足で総重量600gだったので
ソールだけでALDEN片足分ということになります。

vibram#2021は、220gでここから靴のサイズに合わせて削り込みますので
もっと軽くなります。
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直接はつけられないので、レザーミッドソール3.5mmを底縫いで取付けます。
ヒールの高さが5.0mm足りないので、ヒールを一段追加致します。
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目標重量は688g以下ですので、計算上は間に合うということですが
はたしてその結果は…
AFTER(ここで、ライザップの効果音が欲しいですね)
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616g。
結果にコミット!!
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靴の重さというのは軽ければ良いという訳ではないのですが、
サイズが合っていれば、ある程度の重量があったほうが
振り子運動が働き、その重量が逆に歩行を助けてくれますので良いのですが、
ここまで重量が重く、ソールの返りも期待出来ない仕様ですと…。

ご依頼の方は、セレクトショップ?の方で
お店で販売されている靴を購入されたということでしたが
やはりこの重さではすぐに廃盤になってしまったということでした。
そうでしょう、そうでしょう… 履けないですこの仕様では。

で、こちらが重量サンプルのサイドゴア、ゴム交換です。
before
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縫い付けている部分で裂けはじめております。
原因は、重さもさることながら、仕様がまずいかと思います。
通常は、サイドゴアのゴムは、表と裏革の間に挟まれて縫製されておりますが
今回のモデルですと、裏革がなく剥き出しで縫製されております。
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ですので、加重が掛かりゴムが引き延ばされますと
縫製の糸がゴムに食込んでいきますので、裂けてしまったかと思います。
補修にはこの状態から裏革を新調する事はできませんので、
(周辺であれば出来ない事も無いですが、費用が高くなります)
必要な部分のみ革を宛てがいましてゴムを交換して縫製致します。
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新しいゴムに革をポイントで補強します。
加重が掛かり伸ばされるのはこの部分ですので必要最低限に行い
補修費用も抑えます(他にオールソールもありましたし)
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長文、最後までお読み頂きましてありがとうございます。
最後に靴の重さですが、ソールが軽くても例えば何層も薄いソールを
重ねたような仕様ですと、軽くても曲がり難くなりますので
結果、靴が重く感じられることもあります。

また、靴が重くてもサイズ、フィッティングがよければ
その重さはあまり感じられないということもあります。
ただ、靴は履き始めは本体の革、ソールともに癖がついておりませんので
なかなか試着でコミットするのは難しいかとも思います。

ampersandand at 00:21|Permalink

2015年07月20日

Crockett&Jonesのシャンクは折れ易いのか? オールソール篇

Crockett&Jonesのオールソール。
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この状態まで履いてしまうのはNGです。
あまり宜しくありません…。
ベストな交換時期は、靴底中央部分が指で押すとぺこぺこするぐらいです。
画像でも分かる様に、側面で厚みがあるように見えていても
中央部分の減りが一番早いので中央部分で判断してください。
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穴がいて見えている部分は、中底です。
実際に足の裏が乗っている部分です。
よく見ますと横スジが見えると思います。
これは靴の屈曲を容易にする為に入れてあります。
お肉料理の際に、叩いたりスジをいれるのと同じでしょうか。

ただ、この加工も善くも悪くもな気が致します。
というのも、このスジがきっかけで中底が割れてしまっている
場合もありましたので。

特に今回のように、中底まで浸水しているような履き方ですと
中底が濡れて乾燥してを繰り返し、屈曲、屈曲を繰り返しますと…
割れてしまいますから…。
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底縫いをすべて切断しまして革底を剥がしてゆきます。
そうしますと…なにやら割れている木片が見えてきました。
これが今回のタイトルにあります、シャンクになります。
シャンクも雨シミができ、浸水しているのが分かります。
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ちなみ左右ともぱきっと。
木片シャンクが使用されている靴は、当店調べですと
50%以上の確率で割れている様な気が致します。

穴が開いていた部分、横スジ部分も確認出来るかと思います。
その部分だけ、小島のようにでておりますが、これはソールに穴が開いた
状態で履いてしまったものですから、そこに詰めてあったコルクが外へ
放出された結果、空洞になったその部分を踏みしめますので、
押し出された中底面が凸状に出っ張ってしまっております。

これは靴の中からみますと、その部分だけ凹と陥没してしまっている
状態となっておりますので、決して宜しい状態ではありません。
ですので、穴が開く前のソール交換が重要となります。
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で、今回の主題のシャンクとは、
靴の踏まず部分を支えているパーツを差します。
画像の黄色の線部分に施されております。
(ローヒールの靴の場合、入っていない靴もあります)

婦人靴やカジュアルな靴ですと、パルプの中底に封入されております。
カカトから踏付ける手前までの、ちょうど浮いている部分に
取付けられております。
これによって、浮いている土踏まず部分が下がらない様に、
サポートしているという訳です。

ですので割れてしまいますと、踏まず部分が下がってきてしまいますので
サイズ感、フィット感などが変わってくる筈です。
しかし、毎日履いておりますと案外気がつかないかもしれませんが。

ハイヒールの場合は、シャンクが折れますとヒールがぐらつきます。
この場合は、中底に封入されておりますので交換ができません。
ですので、中敷きをめくってその下にスチールのプレートを
靴底に貫通するようにビスで固定する方法となります。

ハイヒールで走ったり(よくあれで走れるな〜と思いますが)、
ヒールを軸に、地面にぐりぐりするのは、
シャンクが折れる原因の一つとなりますのでご注意下さい。

シャンクは、現在は殆どが鉄製のものになっております。
または、樹脂製のものが主流でしょうか。
ほかグラスファイバーなどのものもあります。
画像はJOHNSTON&MURPHYの樹脂製シャンクになります。
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ほか、竹を使用している方も居られるようです。
Edward Greenなんかですと、鉄製のシャンクにベンズ(革)を
山形に加工したものを併せて使用していたりします。
これは踏まず部分の膨らみを見せる為の装飾的な要素になります。

シャンクの素材はなにがよいのかは、それぞれ考え方となるのかと思います。
ただ昔ながらなのか、こだわりか、この木片シャンクは
経験的(割れている頻度的に)にどうなのだろうかと思ってしまいます。
私が靴を作る際は、竹にそそられた頃もありましたが、
鉄製のヤキが入ったものを使用しております。

シャンク繋がりで話は逸れますが、
フェラガモは戦争中に鉄が不足しシャンクが調達出来なくなったものですから、
困ってしまって、では踏まず部分が埋まっていれば必要無いという発想で
ウェッジソールの靴を開発したそうです、確か…。
(現在のウェッジソールは、それでもシャンクは入っておりますが)
AFTER
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*レザーソール/積上げ/vibramアリエルリフト/ビンテージスチール仕様

折れていたシャンクは鉄製のものに変更しております。
木片シャンクは耐久性に信用がありませんし、またご用意もありませんので。
なお、コルクも隙間無く新しく装填し治してあります。

踵内側も擦れ補修で革を当てて縫製してあります。
履き口部分のフチ折込も裂けておりましたので、縁取り補修を行ってあります。
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ちなみにですが、まれにシャンクが靴底を突き破って出てきて
しまている症状があります。

足は、後部足長比と云うのがありまして、踵から踏付ける部分まで、
そこから指先まで(前部)のそれぞれの比率があります。
平均しまして、64から71%近辺で分布しているようです。

たとえば同じE/25.0サイズのひとでも、足の指が長い人と短い人では
それぞれ靴が曲がる、踏付ける部分が前後致します。

指が長い人ですと、本来靴が曲がるべき位置より後方(踵側)で
屈曲してしまう場合があります。
(靴の一番幅が広い部分と、足のその部分の位置が合っていない)
そうしますと、シャンクが長く入っている場合、そのシャンクの
端を踏付けてしまう為、結果シャンクが靴底を突き破ってしまいます。
以下の画像がシャンク突き破り事例となります。
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参考記事「いい加減なAldenのオールソール」
この突き破りですが、婦人靴で起っている場合が多いような気がします。

婦人靴ですと、もともとパンプスなどは脱げないように
踏みつけ部分の設定は、実寸より10%前後ぐらい絞っております。
ですのでキツくて当たり前なのですが、でもキツいので
サイズが大きいのを履いたりします。
(大きいと云う自覚は無いのかもしれませんが)

そうしますと、サイズが合っておりませんので、
(大きいサイズを履いている場合、靴が曲がらなければならない位置より
 その手前を踏付けている可能性があります)
実際に靴が曲がるべき部分で履けていない状態となりますので…
そのような事が起るかと推測されます。
(もともとソールが薄いので、突き破り易いというのも要因です)

なかなか足に合った靴というのは見つけるのが難しいとは思います。
合っていると思っている靴は、単に弛いだけかも知れませんし。
(修理品を見ておりますと、この傾向が強いような気がします)

仮に、始めは合っていたとしても、履いておりますと
革は伸びてゆきますし、靴底は沈みます。
それが馴染むということかもしれませんし、
弛んでいるということかもしれません。
または最初はキツくても、履いていくと丁度良くなるというのもあります。

なんだかシャンクの話から遠ざかりそうですし、
まとめられそうにありませんので、今日はこの辺りでで失礼致します。

ampersandand at 16:19|Permalink