サイズ調整

2020年11月11日

ブーツのサイズ調整。 あるあるじゃないよ篇

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この手のブーツは履きこなせるまでに数年かかるようですが、
なので皆さん履き始めの段階でギブアップされる方も多いようです。
履きこなせるというのはファッション的な話ではなく、
快適に足に馴染んで歩行ができるか、ということになります。

今回のブーツもアッパーの革が3.5mmとのことですが、
実際にはもっとあるように見えます。(一般的な靴は1.0から1.5mmくらい)
ソールも鬼厚ですのでほとんど曲がらないんじゃないかと思えます。
この手の靴に私はもうチャレンジする気力と体力はない感じです・・。

厚みのある良質な革が手に入らなくなったということで、この靴の
製造メーカーではすでに廃盤にされているモデルとのことでした。

牛が育つには餌となる飼料が必要で、飼料が育つには天候が
良くなくてはいけないのですが、近年の異常気象により穀物の成育不良や
不作により餌の値段が高騰し、その結果、牛に与える餌の質や量が制限され、
そうなると栄養が少なければ牛が健康に育たないので革の質も悪くなる、
ということで以前に比べ革の質は悪くなってきている、と革屋さんに
聞いたことがあります。
(といっても革はあくまでも食用で屠殺される際の副産物ではありますが)

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今回はこの手の靴のあるある、硬くて痛くて履けないのでなんとかならないか?
案件ではなく、すでにこの手の靴を履きこなされてきた
ブーツマスターなお客さん。
しかしワンサイズ大きいのを購入してしまったのでサイズ調整をとのこと。
確か廃盤になるので大きいけど買ってしまった・・とかだったと思います。

これはあるあるになりますが、この手のごついブーツに
「ミンクオイルを塗れば少しは柔らかくなりますかね?」
としばしば尋ねられますが、この手の靴以外でもそうですが、
私としては靴全般にミンクオイルはオススメしておりません。

ミンクオイルの油分は他のオイルに比べ浸透しやすい為、革の繊維深くまで
行き渡りその結果、適量を間違えると(だいたい多量に塗布してしまう)
革に含有するオイルが飽和状態になり、常にふやけた状態となってしまい
最悪、繊維がほぐれて革の表面が割れてきてしまう事もあります。
紙を水で濡らしているとほぐれていく感じと例えると分かりやすいでしょうか。

そして常に油分で湿っているので日本の高温多湿の環境では
カビの繁殖にはもってこいの状態となります。
それと湿っているので磨いても艶が出ないんです。
そしてこうなってしまうともう元の状態には戻せません・・・。

昔、ブーツが日本に紹介された際に一緒にミンクオイルも合わせて紹介された
ようで、そのイメージが強く今でもブーツといえばミンクオイルとなっている
ようですが、アメリカ大陸の乾燥した地域であれば適しているようですが、
日本のような高温多湿ではレザーローションや乳化性の靴クリームでの
メンテナンスで十分だと思います。

ブーツマスターにも伺ったところ、やはり昔ミンクオイルを使われていた頃に
カビだらけになって終了した靴があったとのことでした。

初回ご来店の際に通常のサイズ調整用のインソールで確認したのですが、
それだと甲の部分が余っているとのことで、
(通常は踏みつけあたりの屈曲部を嵩上げするので前側だけになっています)
新たに踏まずあたりから持ち上げるようにインソールを用意し
確認していただくと、
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いい感じということでインソールでの調整はOK。
全敷と調整用の革二枚合計で、つま先側はだいたい6.0mmぐらいの厚みに。
足囲にしたら計算上はEEEからEに2サイズダウンな感じです。
通常こんなに底上げしたら指先が上部に当てってしまうのですが
ごついブーツなのでもともとゆとりがあるのか指あたりは大丈夫との
ことでした。(もともと敷かれていた市販のスニーカータイプ系の
インソールが同じくらいの厚みでしたのでそれを目安にしました)

それと今回のブーツはヒールが高いので前側のインソールを6.0mmと
厚く入れても許容できる範囲ですが(もちろん初めの設定から変更しない
のがベストですし、許容できるかどうかご本人次第ではあります)
ヒールが低い靴の場合はつま先側をインソールで底上げすぎてしまうと
その分前後の高低差がなくなっていきバランスが悪くなってしまうので
靴によってそれぞれ限度はあります。

指周りの具合はOKなのですが、できれば踵部分をもう少し
左右からフィットさせたいとのこと(踵の横幅を窮屈にするイメージ)
通常の短靴の場合にも右足だけかかと内側に革を一枚追加して
補修されたことがあり、それでいつも丁度いいとのことでした。
こんな感じでかかとのパーツの形状に合わせて革を内側に追加する
イメージです。(黄色線)
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それではということでお預かりして型採りをして腰革を準備していたのですが
実際にこの革を手で持って筒に突っ込んでジャストな位置に皺なく綺麗に
貼り込められるのだろうか?という疑念が・・・。

しかも業務用の接着剤は貼る面と貼られる面の両側に接着剤を塗布して
貼ることで接着強度が高く仕上がるのですが、ブーツの内側の窪んだ部分に
適正な範囲で接着剤が塗布できるのか?
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しかも接着が強いので貼り直しはできずワンチャンス、まあ無理だろうな
ということでかかと中央部分で左右にパーツを分割し接着することに。
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しかしこの分割は結果的にはよかったんですが。
今回右足だけ緩いので右足だけかかと内側を狭めるのですが、
かかと部分にぐるっと革を回してしまうと、僅かですが右足だけ革の厚み分
かかとが前に押し出されます。

なので当初の予定では踵中央部分周辺の革を漉いて(斜線部)厚みを薄くする
予定でしたので、中央部分を薄く漉くというのは作業的にどの程度薄くなって
いるのか判断し難かったので、左右に分割したことで端を薄く漉くので
厚みの確認がし易く適正な厚みに加工できました。
こんなイメージです。
パーツ周囲を漉いているのは革の厚みがそのままだと足入れの際に
その段差で引っかかりめくれていきやすいので漉いています。
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そしてこれを内側に仮固定して履いていただくと、
踝下あたりをできればもう少し窮屈に・・ということですが
塩梅が難しいですがやってみましょうということに
(画像のこの面が靴本体との接着面になります)
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取り付けるとこんな感じになっています。
斜線部分に革を追加して踝下がフィットするようなイメージです。
イメージとしては斜線部分を出っ張らせることで歩行の際に踵が上に
抜けないようなイメージです。
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ファスナーがついていないブーツということは足がそのまま入るように
形状としてはくびれのない寸胴形状で、甲から足首周辺もゆったりできています。
ですので歩行の際には甲の部分が抑えられずに踵が靴から抜けがちです。
ソールも重く分厚く曲がらないので余計にそうなりがちです。

ただブーツに限らずですが、がっちりと作られた靴というのは馴染むまで
難儀ですが、追々、自分の足に馴染んできてしまうとその頑丈さが今度は
足をしっかりとホールドしてくれるということになります。
逆に初めからやわやわな靴というのは靴下のようにどこもアタリがなく
楽チンではあるのですが、その分へたりやすかったり足を支えてくれる
強度がないので足なりに靴も変形しやすかったりもします。

数年前のヤフーニュースで確かアメリカの論文で発表されたかで
「ビーチサンダルは足に悪い」というニュースがありました。
それはビーチサンダルはソールが柔らかいので、体重が重い人が履いていると
ソールが片側に潰れた状態で歩行することになるので、その結果、
骨格や筋肉に影響が生じる・・みたいな論文だったかと思います。

それと細いストラップで固定しているだけなので脱げないように
無意識に指先を掴むように曲げていたりする為に足底筋膜炎などに
なりやすいとのことでした。

これはビーチサンダルに限らずサイズが合っていない靴や
あまり足を支えない構造の靴は同じなんだと思います。
ただ柔らかい靴がダメかというとそうでもなくて、要は時と場合による
ということでもあると思います。
海水浴にブーツは履きたくないわけですし。

ちなみにサイズが合っていない場合ですが(そもそも試着して
店内をちょっと歩く程度で合う合わないがわかる訳もないのですが)
目安としては指周りが若干きついのであれば履いていくことである程度は
革の伸びと(革の種類と靴のデザインによってはあまり期待できない場合もある)
中底の沈下で後々アジャストしてくる可能性はありますし、緩いのであれば
今回のようにインソールで調整もある程度は可能です。

根本的にダメなのは靴の縦方向が長い場合、
「足が前に滑ってかかとに1.0cm隙間があるんですけど・・・」みたいな
お問い合わせがしばしばありますが、これは残念ながら当店では基本的に
ご対応不可となります。ローファーでよくありがちなのでご注意ください。




それと前に滑るからといってつま先にティッシュを詰めない方がいいです。
パンプスを修理していると時々指先に詰められたティッシュの塊が
落ちてくることがあります。おそらく足が前にずれてかかとがパカパカ
するので詰めているのだと思いますが、それだと指先がぶつかってしまい
靴内部で指が浮いている、折り曲がった状態で歩行することになるので
ハンマートゥなどの疾患になる場合もありますのでお気をつけください。

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最後にもともとある踵周辺の縫い目を利用して縫製できる部分は
縫製して内側に貼り付けた革を縫い留めて完成となります。
(縫い目に重ねて縫製しているの見栄えは変わりません)
履いていただくとブーツマスターから「いい感じです」いただけました。

今回のごつい靴に限らずですが、新しい靴は履き慣らし期間が必要だと思います。
しっかりと作られた靴は尚更ですが、すぐにギブアップせず靴に自分の足の形を
覚えさせる猶予を与えていただければと思います。
(もちろん炎症や激痛がある場合は違いますが)

ampersandand at 11:23|Permalink

2020年01月28日

ALDENと指二本とヒートテック靴下と。

先日メールにてお問い合わせ頂いた件。

某セレクトショップにてALDENを購入されたというお客様。
一日履いてみると指二本分以上の隙間が踵に開いてしまい困った。
ベロの部分にスポンジ宛てる補修でどうにかサイズ調整できませんか?
というお問い合わせを頂きました。

そもそも試着の際にすでに指が一本入る隙間が開いていたので、
お客さんも少し大きいかなと思われたそうなのですが、
某ショップスタッフ曰く、
「横幅があっているから大丈夫」
「同じくらい隙間が開いて履いている人もいる」
から大丈夫とのアドバイスを受けたので購入したとの事。

やられてしまいましたね…。
その某セレクトショップというのは、ほかのお客様からも
あまりいい噂は聞いていませんでしたので。

伝聞にはなりますがそのお店の売り方は、
お客さんにそのサイズが合っているかどうかより、
そのお店で在庫が多いサイズや売りたいサイズを売りつけるらしいと…。

そもそもですが、試着の際に踵に指が入る隙間が開いているという
試着の仕方自体が間違っているのではないかと思います。
隙間が開いている状態で横幅が合っているとは?と。

靴の履き方についてはこちらを参照願います。


隙間が開いている状態で横幅が仮に合っていても、その履き方では
歩けば足は靴の中で前後してしまいますので、おのずと合っていたとされる
横幅の位置はずれてしまいますので。

なので靴を履く際にはまず踵をぴったりと密着させ、
靴紐を締め付けていくのが基本です。
踵基準なのでこの場合ちゃんと踵で合わせて試着していれば
靴の横幅が一番広いところより実際は指二本分、足は後方にずれる
はずなので横幅すら合っていない事が分かったかと思います。

仮に少し大きい具合であれば、今回の靴は特に編み上げのブーツでしたので
踵にちゃんとホールドさせて紐を編み上げれば踵と足首と甲の三点で
足が固定されるので履けない事もないのですが、
今回は大き過ぎたようで紐をかなりきつく締め上げても緩く、
仕舞いには脛も痛みだす始末に…ということです。

ではサイズ調整ですが、残念ながら指が入る程度ゆるゆるですと
合わせようがありません。
ベロにスポンジを入れる方法というのは、サイズがある程度合っているが
甲の部分が緩く、靴紐を締めても羽が閉じてしまってそれ以上
絞める事ができない場合に有効な手段となります。

今回の様に大きすぎる場合の方法としては、秋冬であれば
ユニクロのヒートテック靴下が有効かもしれません。
厚手で何度洗濯してもへたり難いですしなにより暖かいですので。
靴下を厚手にすると簡単にワンサイズ程度は足が大きくなります。

そして厚手の靴下がクッション代わりになって紐の締め上げの
痛みが軽減できるかもしれません。
実際、私も秋冬の冷える季節には、ヒートテック靴下でも履けるように、
ワンサイズ大きめの靴を作って合わせていますので。

ちなみに、リブソックスよりヒートテックパイルソックスのほうが
厚手でいいかもしれません。
ソックス
ユニクロHPより

サイズ調整ですが郵送でのご依頼は原則受付しておりません。
実際に靴を履いて頂いて、その場でクッションなどを仮に宛てた状態で
具合を見ながら素材や厚みを調整する必要がありますので。

ですのでベロ裏のクッションであれば市販品でも
貼付けるタイプ(タンパッド)があるので、短靴の場合はそのほうが
費用的にも抑えられるので宜しいかともいます。



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ampersandand at 20:06|Permalink

2019年04月29日

ローファーを購入する人が失敗するサイズ選びあるある。

サイズ調整して下さいというお問い合わせがありますが
「かかとに1.0cmくらいの隙間ができてぱかぱかしています」
この場合はサイズ調整というか、外で履いていなければ返品交換を
お勧め致します。
そもそも選択されたサイズが大幅に間違っている状態です。

ぱかぱかシューズに多い靴種は主にローファー。
ローファーは紐靴と同じような感覚で購入してしまうと
だいたいサイズを間違ってしまいます。

パターンとしては、甲の部分がきつく感じるのでワンサイズ、ツーサイズ
大きめを購入してしまうというあるある。
その結果、歩くたびに靴の中で足が前に滑るし、蹴り上げると
かかとが付いてこずぱかぱか…。
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そもそも紐靴と違って足を入れるだけの構造なので
甲の部分で抑えるだけで基本的にはスリッパと同じように
つっかけて履いているような状態です。
更に、足入れがし易いように履き口周りもあまり内側に倒されておらず
トップラインが低めに設定されています。

ではそのつっかけて履いている状態で脱げないようにするには
どうすればいいでしょうか?
紐靴であれば紐を縛れば抑えられますが、ローファーの場合は
調節が出来ません。
ですので、そもそも甲の部分を窮屈に設定してあります。
甲の部分でのみで足が抜けないように押さえつけているわけです。
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*黄色点線部分が絞ってあり、紐靴の靴型より甲も低く設定されています。

なので紐靴と同じ感覚で試着してしまうと、甲の部分はきつく感じるでしょう。
きつく感じないワンサイズ大きめを購入してしまうと甲は楽にはなりますが…。
歩いてみると、甲で抑えられずワンサイズ大きめなので
縦方向にも緩くなっているので足が前に滑ってしまうというわけです。
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紐靴と比べて足を覆う部分の少なさ、この少ない面積で
抑えなければならない靴なのでそもそもが窮屈な設定なわけです。

この逆なパターンもあります。
窮屈だけどかかとがぱかぱかならないので購入して履いてみたけど
甲の部分がきつくてしばらくすると足がしびれる…。

「甲の部分を広げてほしいのですが…」

ローファーは甲の部分にだいたいベルト状のパーツが付いていますが
この部分を伸ばす事はできません。
この部分で抑える為にしっかりと作られておりますし
伸ばそうとすると、ベルトパーツの付根部分の縫製や革に負荷が掛かって
裂けてしまいますので。

ベルト状のパーツがなく、甲からベロまで繋がってるタイプのモデルは
反り上がる付根部分でそもそも裂け易いデザインなので走ったり、
階段を駆け降りたり、しゃがんだり、立った状態で履こうとしない方が
宜しいかと思います。

ローファーの壊れ易い箇所あるあるでは、甲の付根以外だと
かかと部分内側になります。
紐靴のように甲の部分とかかとの芯材で足と靴を固定できないので
歩行の際にかかとが浮かび上がり履き口でひっかかるという動きを
繰り返す結果、内側部分が擦れ易い傾向にあります。
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こんな感じで擦れていきます。
ローファーは履き口部分にはイタリアンテープが施されていて
トップラインに縫い目がない場合がほとんどです。

その場合、内側に革を宛てて縫製する際にトップラインに縫い目がないので、
新たに縫い目が出来てしまいます。
縁取りのイタリアンテープを分解して行なえば、
元通りに補修は可能だと思いますがあまり現実的ではありません。

ですので擦れているようであれば、レザーローションで保湿しておくことで
擦れの進行を遅らせる事が出来ると思います。
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ちなみに女性が履くパンプスでは、ほぼ指先のみで脱げないように
なっていますので、その指周りの窮屈さはローファーでひいひい云っている
男性には耐えられないでしょう。
解剖学の先生が云うには、女性は子供を産む時の痛みに耐えられるように
男性より痛みには強くできている、ということを聞いた事がありますが
それはパンプスを履くのにも役立っているのかもしれません。

高校生になって学校指定でローファーを履かなければならない
学生は多いようですが、それまで革靴を余り履いた事がない子供が
初めて履く革靴がローファーというのは酷な事のように思います。
学生ローファーは主に、ガラス加工された硬い革で出来ていますので
なおさら履きづらいでしょうに…。

初めての革靴でそれまで履いていたスニーカーのような柔らかなフィット感で
サイズ選びを行なえば、おのずとサイズオーバーに陥り易いかと思います。
そして日常の脱ぎ履きでは、かかとを踏んづけてしまう生徒も多いでしょう…。
(かかとを踏み潰してしまうと靴としてはお役目終了です)

ローファーではなく外羽の紐靴が初めての革靴には、
また骨格形成される成長期の子供には健康にもいいのではないかと思います。

ちなみに私の高校は学ランでしたが、靴は自由でしたので
「学ランにエンジニアブーツを履く」という謎の高校生でした。
下駄箱には入っていたのでしょうか?記憶にありません…。
その後、エンジニアブーツを履いた事は無く、
特別エンジニアブーツが好きだったわけでもなさそうですので、
若気の至りというやつだったのでしょうか…。

ローファーに関連して以前ユニークな修理をした事がありましたので
宜しければこちらもどうぞ。
「ALDENのリジェクト品を正規品に…。」

次回、
「ウェルテッド製法の靴を半年後に後悔しない為のサイズ選び篇」
になります。


ampersandand at 21:58|Permalink

2018年05月05日

効果の無いサイズ調整。

靴のサイズが緩いということで、ほかのお店でサイズ調整された
靴の再サイズ調整を行うことがときどきあります。

今回の靴も他のお店ですでにサイズ調整が行われています。
サイズが大きく足が前に滑ってしまうということでの
調整ということでしたが、何故か、かかと部分にスポンジが
挿入されています…。

黄色の部分に挿入されています。
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サイズが緩い場合というのは状態として
縦方向のサイズは合っているが、指周りが緩い。
縦方向も緩く踵に隙間が出来ているし、指周りも緩い。
だいたい合ってはいるが、甲の部分が緩い(羽が閉じきってしまう)

などがあるかと思います。
一つの原因なのか、または複合的な原因なのかで
ぞれぞれで対処の仕方が異なります。

ただ、店頭で履いて頂くとそもそもサイズうんぬんというより
靴の履き方が間違っている方が多々いらっしゃいます。
そして履き方が間違っていれば、靴を購入する時点で購入したサイズが
間違っていると云うことになります。

履き方が間違っていると、いくら調整しても合いませんし
実際ちゃんと履けば調整が必要ない場合もありますので
まずは履き方からご案内となります。
分かり難くなりますので基本の紐靴という前提で。

よく紐を結びっぱなしで脱ぎ履きされている方がいらっしゃいますが
これは論外となりますのであしからず。

ちなみに結びっぱなしで脱ぎ履きされていますと履き口周辺が
裂けてきますし、かかと内側も擦れ易くなってしまいます。
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履く時は立ったままではなく、框などに腰掛け、紐を解いた状態で
靴べらを使って足を入れます。
そして足を靴のかかと部分に(水色点線部分)ぴったりと密着させます。
つま先を上げて地面に踵をこんこんすればいいでしょう。

そして密着させましたら紐を下の穴から順々に絞めていきます。
そうすることで、甲部/履き口/踵の三点で足と靴を固定することができます。
この状態ができれば多少指周りに余裕があっても
足が前後に泳いでしまうことが予防できます。

指周りが緩いということで足が前滑りしてしまう方の場合、
甲とかかとでしっかりと靴と足を固定すれば、指周りに多少の余裕があっても
インソールを入れずに改善できる場合があります。

またかえって、指周りに余裕があるので足がむくんできた場合などにも
対応できるかもしれません。
私の考えとしては100%合っている靴というよりは、
80%ぐらい合っている靴の方が(靴紐やベルト等で調整できる靴種の場合)
一日を通して、また年間を通して使い勝手がいいのではないかと思います。

一日のうちでもむくんだりして足のサイズは変わりますし、
夏と冬でも足のサイズは異なります。
またもちろん靴下の厚みも変わるでしょうし。

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かかと部分にはカウンター(月型)といわれる芯材が入っています。
つま先に入っている先芯は、つま先の形状を維持する為の芯材ですが
(安全靴などではスチールが入っていてつま先を保護する役目がありますが)
かかと部分の芯材は、先程の足と靴をホールドする時に
しっかりと包み込むように踵を支える役割を担っています。

ですので、「かかとを踏みつけてしまっては靴の戦闘力が50%に」と
ときどきお伝えしているのはこの為です。
この部分がへにゃへにゃだったり変形してしまっては
ホールド感が失われてしまうからですので、
急いで履く時も決して踏まないでください。

まだ書きたいことはありますが、ここのままいくと今回は「履き方」で
終わってしまいそうなのでそろそろサイズ調整に入りたいと思います。

今回のご依頼主さんは、指周りが緩い、
足が前に動いてしまうという状態でした。
まず状態を確認する為に靴を履いて頂くと羽が完全に
閉じてしまっている状態です。
閉じきっても履き口ラインがパカパカで指が入るぐらい
隙間が出来ています。

履き口のトップライン
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羽が閉じきった状態
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羽が開いている状態
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これもサイズが緩い方に良くあるのですが、靴を購入される時点で
今回の内羽の靴だったり、外羽の靴だったりは羽が閉じきった状態の
サイズ感で購入してしまいますと、のちのち必ず緩くなってしまいます。


それはアッパーの革が足に馴染んで伸びてゆきますし
ウェルテッド製法の靴であれば、中もののコルクが荷重により沈んでいきます。
ですので、靴内部の容積としては徐々に増加していく訳です。

この時に羽の開きがある程度あれば、紐を絞めれば容積は減らせますが
(きつく出来ますが)すでに羽が完全に閉じきった状態であれば
なんら調整することが出来ない状態ということです。

ですので、欲しいサイズが売り切れているからといって
ワンサイズ上ならばなんとか…というのは後々のリスクが高くなります。
ワンサイズと思いきや、後々ツーサイズアップなんてことに…
では羽が閉じきっているこの状態だと救済処置はないのか…

その場合は「タンパッド」という方法があります。
ベロ裏部分にスポンジを施行する方法です。
これによって甲の部分が窮屈になりますので、
その分閉じていた羽が広がるという訳です。
詳しくはこちらの記事を参照ください。
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スポンジを宛てがいライニングと同じ色の革で覆うことで
脱いでもサイズ調整していることは分からない仕上りになります。
スポンジの厚みは実際にスポンジを宛てがって履いて頂き
厚みや硬さを調整することが出来ます。

ただこの方法ですと見栄えも変わらず綺麗に仕上るのですが、
費用がそれなりに掛かってしまいます。

しかし探してみると便利な商品があるもので、
既製品で「タンパッド」という商品が展開されています。
そちらでしたら両面テープで座布団状のパッドをベロ裏に
取付けるだけですのでお手軽にDIY調整が可能です。

貼るだけですので途中で剥離したりなどの面倒はあるかもしれませんが
1.000円程度でフィット感が向上するならば試してみる価値は
あるかもしれません。
[クラブヴィンテージ・シープレザー] 痛み軽減・サイズ調整用パッド レザータンパッド 6424 BR ブラウン 男女兼用フリーサイズ


今回のご依頼主さんの状態としては履いて頂くと
指周りが緩い/甲の部分が緩い(羽が閉じきっている)/履き口も緩い
という、そもそも購入してはいけないサイズ感となります。

この場合の処置としては、まずは前側にコルク4.0mmを入れてみて(黄色部分)
どんな感じか確認してみます。
これで指周りのサイズ感としては1.5から2.0サイズダウンという感じです。
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ときどきサイズ調整のお問い合わせで、「2サイズダウンにしてください」
というサイズ指定がありますが、あくまでも感覚的な数値ですので
ダウン率を指定しては行えません、実際に履いて頂いて具合を見る調整です。
これはサイズを広げるストレッチ調整でも同様です。

コルクの他にサイズ調整に使用する素材は低反発スポンジ、
軟質スポンジ、レザーを状態に合わせて複数枚、
または組み合わせて使用致します。
端の部分は薄く漉いて底面に段差がでないようになっています。
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状態を確認してみますと、指周りはややタイトな感じ。
コルクは徐々に荷重で足のかたちに凹んでいきますので
始めはややタイトな感じくらいがいいのです…。
甲の部分はまだ羽が閉じきっていて履き口にも隙間が見られました。
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ですのでタンパッドと合わせ技もありですが、とりあえず指周りがフィットし、
前滑りも収まりましたので甲の部分は今回はそのままで
ということになりました。
*タンパッドは2018.05.05日現在、店頭にて販売はしておりません。

後日、一日履いているとタイト過ぎて厳しい…
コルクが沈むかも知れないけど無理です〜、ということでコルクではなく
スポンジに素材変更を行い再調整となりました。

難しいですねフィッティングは…
足は一日のうちでサイズが変化していきますのでなかなか…。

サイズは感覚的な部分なので、私が触診してちょうどいい具合と思っていても、
それがお客様的にきつい、ゆるいと感じられればそういうことになります。

そして「ややタイト」というのが私が思っているややタイト感と
お客様が感じているややタイト感は、必ずしも一致はしていません。
ですので、サイズ調整の時は「お客様の感覚頼み」ですので
こちらのアドバイスは上の空でもいいので、
足先の感覚に神経を研ぎ澄ませて頂ければと思います。

また具合を確認する為に、インソールを仮入れした状態で
実際に路上にでて商店街の道を歩いて頂いて確認も出来ます。
店内でちょこちょこ足踏みしただけでは分かりませんし。

201804280372018042803420180428036
紳士靴の場合は、だいたいが踵の半敷きですのでインソールを挿入する場合は
オリジナルの半敷きはそのままで、前側に中敷を追加し連結して製作もできます。
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今回はすでにロゴも擦り消え、革も痛んでおりましたし、
前のお店で取付けたスポンジがぼこぼこ残っていたので、ご相談に結果、
あたらに全敷きにて施行致しました。

ちなみにタイトルの「効果の無いサイズ調整」ですが、
前の修理店にて、前滑りを抑える為にかかとスポンジを入れた訳ですが、
これでは逆効果な感じかと思います。
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踵にスポンジを入れたことで足が上に上昇すると、
靴に覆われている部分は少なくなります、
履き口が浅くなっているのと同じ状態です。

ですので、履き口が緩い上に浅くなってしまうと余計に踵が
脱げ易い状態になってしまいます。
また踵から踏まずに掛けての傾斜もスポンジ厚分きつくなるので
余計足が前に滑ってしまうという訳です。

踵にスポンジを入れる場合としては、例えば踝が履き口に当たって痛い
という場合には、スポンジを入れて足が上昇すれば必然的に
踝が当たらなくなります。
履き口が浅くなりますが、踝の当り以外にサイズ感に問題が無ければ
靴ひもを絞めれば甲で抑えが利くのでそれによって脱げ易くなる確率は
低いかと思います。

だいぶ長文になってきましたので簡単に触れますが、
婦人靴で行っている方が多いのですが、ハイヒールで足が前に滑るということで
つま先にティッシュを詰め込んで、指がそれ以上前に行かないように
されている方がいらっしゃいます。
リフト交換の際にはそれがぽろっと落ちてくる訳ですが。

靴には通常、指先が靴に当たらないように「捨て寸」という
何も入らないスペースを設けています。
このスペースを詰め物で埋めてしまうと、指先が突き当たり
靴の中で常に関節が押し曲げられている状態になってしまいます。

これによって「ハンマートゥ」(画像検索してみてください)などの
指先の変形症状を生じてしまう場合がありますのでお気をつけ下さい。
(ハンマートゥになってしまう原因はそれだけではありませんが)

<状態別サイズ調整方法まとめ>

指周りが緩い、革がダブつく場合 → 前側にインソール
指周りが緩い、羽が閉じる場合 → 前側にインソール+タンパッド
指周りは◎、羽が閉じきってしまう、履き口が緩い場合 → タンパッド
甲の部分がなんか痛い場合 → タンパッド

ちなみに短靴の場合は、全敷きのインソールですと
指周りと甲の部分も窮屈にできるのですが、同時にかかと部分も
浅くなってしまうのでお勧め致しませんが、
ロングブーツやくるぶし丈のブーツですと全敷きも有効かと思います。

以上になります。
市販のアイテムも最近は色々と展開されていますので、
その状態に合わせて適したアイテムを用いることで
ある程度のDIY調整は可能かと思います。

ただ、
私は片側に傾く癖があるからこちら側に傾斜のインンソールを入れて…
ハンマートゥ気味だからこのアタッチメントを指にはめて…
などなど、使い方によっては逆効果になってしまったり、
すでに疾患レベルに達している状態の場合もありますので
安易にパッケージの説明を鵜呑みにせずに、医師に相談された方が
宜しい場合もありますのでお気をつけください。

風邪気味だからとりあえず風邪薬を服用するのと違い、
足の場合はその結果、徐々に変形、歪みとなって現れてしまいますので。

HPアイコンロゴアウトライン

ampersandand at 13:57|Permalink

2018年01月17日

痛いのと、きついの。 Don't think. Feel! 篇

きついので履かずじまいだったけど、新婚旅行で訪れたイタリア?で
購入した靴なので棄てるには忍びない…。
どうにかならないかということでご来店。
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革はトカゲ柄の型押しの革。
表面が硬めの革に型押ししているので、伸びも少ない堅い革に仕上っています。
きついと感じられる部分は、親指部分。

履いて頂いてどこがきついのか触診。
アッパー自体に浮きもあり、そんなにきつきつの感じでもない。
でもきついと。

「きついのはここじゃありませんか?」

「そうです」

これは、「きつい」のではなく「痛い」という状態でした。
一緒ではないのかと思われそうですが、痛い場合は改善できない場合が
しばしばあります。

きつい、と云う状態は、足に対して革の容積が足りていないので
革を伸ばしてやれば改善の見込みがあるのですが、
痛い、と云う状態は締め付けられているのではなく
何かが当たっていたいと云う状態になります。
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主な原因としては、何重も重なった革の継ぎ目や縫い目や飾り部分、
履き口部分、金具部分などなど。
これらの部分はコリコリだったりと堅い状態になっています。

ですので、それらの箇所が皮膚の薄い間接の骨に当たってしまう位置に
該当してしまうと「痛い」となってしまいます。
革が幾重にも縫い合わさったり、履き口だったり留め金具だったりというのは
取り除いたりという事はできません。

今回は親指の間接部分に、履き口の境目(トップライン)が
丁度乗り上げている状態でした。

ですので、きついのではなくトップラインが骨にコリコリあたってしまって
痛いという状態ですので、革を伸ばしてもトップラインは
当たりますので改善されない可能性が高いのです。

革が柔らかければまだよかったのでしょうが、型押しの硬い革で
折り込み(フチが折り返され二重になり伸び留めテープも挟まっている)されて
いるのでなおさら堅い…。

この場合は、ストレッチ(機械で圧を掛ける)をやってみて…、
という感じでダメもとでお預かりするしかありません。

伸び易くなるようにストレッチャー液を散布し、該当の箇所にコブの
アタッチメントを付けてハンドルを回してじわじわと圧を掛けます。
伸び難いので小指側も伸ばして全体的に広げるようにします。
数日この状態で放置して様子を見ます。
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例えば今回のような「痛い」ではなく、サイズがきつい場合でも
ストレッチを行い革を延ばすと、今まで狭い部分(指周り)が広がるので
ハイヒールの場合は、ずるずると足が前に前につま先の狭い部分に
入り込んでしまい、またきつい…という繰り返しになってしまう場合もあります。

パンプスなどの甲に抑えがないデザインは、そもそも靴が脱げないように
実際の足の容積より12%とか小さく作って脱げないようにしていますので
きつくて当たり前の履物なのです。

靴を購入される際には、どうか感じてください。
それが「痛い」のか「きつい」のかを。

きついのであれば履いていくうちに多少伸びていきますし、
ストレッチで改善できる場合もあります。
「痛い」場合は、残念そこまで…ということにもなってしまいますので。

売り場スタッフの営業トークに惑わされず、
「Don't think. Feel!」
by Bruce Lee

追記
ストレッチ後に履いて頂くと、とりあえず大丈夫そうですと。
まずは履けるようにさえなれば、今回の靴は履き込みつつなんとか、
と云う感じでしょうか。
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ampersandand at 11:30|Permalink