タンパッド

2018年05月05日

効果の無いサイズ調整。

靴のサイズが緩いということで、ほかのお店でサイズ調整された
靴の再サイズ調整を行うことがときどきあります。

今回の靴も他のお店ですでにサイズ調整が行われています。
サイズが大きく足が前に滑ってしまうということでの
調整ということでしたが、何故か、かかと部分にスポンジが
挿入されています…。

黄色の部分に挿入されています。
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サイズが緩い場合というのは状態として
縦方向のサイズは合っているが、指周りが緩い。
縦方向も緩く踵に隙間が出来ているし、指周りも緩い。
だいたい合ってはいるが、甲の部分が緩い(羽が閉じきってしまう)

などがあるかと思います。
一つの原因なのか、または複合的な原因なのかで
ぞれぞれで対処の仕方が異なります。

ただ、店頭で履いて頂くとそもそもサイズうんぬんというより
靴の履き方が間違っている方が多々いらっしゃいます。
そして履き方が間違っていれば、靴を購入する時点で購入したサイズが
間違っていると云うことになります。

履き方が間違っていると、いくら調整しても合いませんし
実際ちゃんと履けば調整が必要ない場合もありますので
まずは履き方からご案内となります。
分かり難くなりますので基本の紐靴という前提で。

よく紐を結びっぱなしで脱ぎ履きされている方がいらっしゃいますが
これは論外となりますのであしからず。

ちなみに結びっぱなしで脱ぎ履きされていますと履き口周辺が
裂けてきますし、かかと内側も擦れ易くなってしまいます。
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履く時は立ったままではなく、框などに腰掛け、紐を解いた状態で
靴べらを使って足を入れます。
そして足を靴のかかと部分に(水色点線部分)ぴったりと密着させます。
つま先を上げて地面に踵をこんこんすればいいでしょう。

そして密着させましたら紐を下の穴から順々に絞めていきます。
そうすることで、甲部/履き口/踵の三点で足と靴を固定することができます。
この状態ができれば多少指周りに余裕があっても
足が前後に泳いでしまうことが予防できます。

指周りが緩いということで足が前滑りしてしまう方の場合、
甲とかかとでしっかりと靴と足を固定すれば、指周りに多少の余裕があっても
インソールを入れずに改善できる場合があります。

またかえって、指周りに余裕があるので足がむくんできた場合などにも
対応できるかもしれません。
私の考えとしては100%合っている靴というよりは、
80%ぐらい合っている靴の方が(靴紐やベルト等で調整できる靴種の場合)
一日を通して、また年間を通して使い勝手がいいのではないかと思います。

一日のうちでもむくんだりして足のサイズは変わりますし、
夏と冬でも足のサイズは異なります。
またもちろん靴下の厚みも変わるでしょうし。

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かかと部分にはカウンター(月型)といわれる芯材が入っています。
つま先に入っている先芯は、つま先の形状を維持する為の芯材ですが
(安全靴などではスチールが入っていてつま先を保護する役目がありますが)
かかと部分の芯材は、先程の足と靴をホールドする時に
しっかりと包み込むように踵を支える役割を担っています。

ですので、「かかとを踏みつけてしまっては靴の戦闘力が50%に」と
ときどきお伝えしているのはこの為です。
この部分がへにゃへにゃだったり変形してしまっては
ホールド感が失われてしまうからですので、
急いで履く時も決して踏まないでください。

まだ書きたいことはありますが、ここのままいくと今回は「履き方」で
終わってしまいそうなのでそろそろサイズ調整に入りたいと思います。

今回のご依頼主さんは、指周りが緩い、
足が前に動いてしまうという状態でした。
まず状態を確認する為に靴を履いて頂くと羽が完全に
閉じてしまっている状態です。
閉じきっても履き口ラインがパカパカで指が入るぐらい
隙間が出来ています。

履き口のトップライン
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羽が閉じきった状態
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羽が開いている状態
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これもサイズが緩い方に良くあるのですが、靴を購入される時点で
今回の内羽の靴だったり、外羽の靴だったりは羽が閉じきった状態の
サイズ感で購入してしまいますと、のちのち必ず緩くなってしまいます。


それはアッパーの革が足に馴染んで伸びてゆきますし
ウェルテッド製法の靴であれば、中もののコルクが荷重により沈んでいきます。
ですので、靴内部の容積としては徐々に増加していく訳です。

この時に羽の開きがある程度あれば、紐を絞めれば容積は減らせますが
(きつく出来ますが)すでに羽が完全に閉じきった状態であれば
なんら調整することが出来ない状態ということです。

ですので、欲しいサイズが売り切れているからといって
ワンサイズ上ならばなんとか…というのは後々のリスクが高くなります。
ワンサイズと思いきや、後々ツーサイズアップなんてことに…
では羽が閉じきっているこの状態だと救済処置はないのか…

その場合は「タンパッド」という方法があります。
ベロ裏部分にスポンジを施行する方法です。
これによって甲の部分が窮屈になりますので、
その分閉じていた羽が広がるという訳です。
詳しくはこちらの記事を参照ください。
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スポンジを宛てがいライニングと同じ色の革で覆うことで
脱いでもサイズ調整していることは分からない仕上りになります。
スポンジの厚みは実際にスポンジを宛てがって履いて頂き
厚みや硬さを調整することが出来ます。

ただこの方法ですと見栄えも変わらず綺麗に仕上るのですが、
費用がそれなりに掛かってしまいます。

しかし探してみると便利な商品があるもので、
既製品で「タンパッド」という商品が展開されています。
そちらでしたら両面テープで座布団状のパッドをベロ裏に
取付けるだけですのでお手軽にDIY調整が可能です。

貼るだけですので途中で剥離したりなどの面倒はあるかもしれませんが
1.000円程度でフィット感が向上するならば試してみる価値は
あるかもしれません。
[クラブヴィンテージ・シープレザー] 痛み軽減・サイズ調整用パッド レザータンパッド 6424 BR ブラウン 男女兼用フリーサイズ


今回のご依頼主さんの状態としては履いて頂くと
指周りが緩い/甲の部分が緩い(羽が閉じきっている)/履き口も緩い
という、そもそも購入してはいけないサイズ感となります。

この場合の処置としては、まずは前側にコルク4.0mmを入れてみて(黄色部分)
どんな感じか確認してみます。
これで指周りのサイズ感としては1.5から2.0サイズダウンという感じです。
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ときどきサイズ調整のお問い合わせで、「2サイズダウンにしてください」
というサイズ指定がありますが、あくまでも感覚的な数値ですので
ダウン率を指定しては行えません、実際に履いて頂いて具合を見る調整です。
これはサイズを広げるストレッチ調整でも同様です。

コルクの他にサイズ調整に使用する素材は低反発スポンジ、
軟質スポンジ、レザーを状態に合わせて複数枚、
または組み合わせて使用致します。
端の部分は薄く漉いて底面に段差がでないようになっています。
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状態を確認してみますと、指周りはややタイトな感じ。
コルクは徐々に荷重で足のかたちに凹んでいきますので
始めはややタイトな感じくらいがいいのです…。
甲の部分はまだ羽が閉じきっていて履き口にも隙間が見られました。
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ですのでタンパッドと合わせ技もありですが、とりあえず指周りがフィットし、
前滑りも収まりましたので甲の部分は今回はそのままで
ということになりました。
*タンパッドは2018.05.05日現在、店頭にて販売はしておりません。

後日、一日履いているとタイト過ぎて厳しい…
コルクが沈むかも知れないけど無理です〜、ということでコルクではなく
スポンジに素材変更を行い再調整となりました。

難しいですねフィッティングは…
足は一日のうちでサイズが変化していきますのでなかなか…。

サイズは感覚的な部分なので、私が触診してちょうどいい具合と思っていても、
それがお客様的にきつい、ゆるいと感じられればそういうことになります。

そして「ややタイト」というのが私が思っているややタイト感と
お客様が感じているややタイト感は、必ずしも一致はしていません。
ですので、サイズ調整の時は「お客様の感覚頼み」ですので
こちらのアドバイスは上の空でもいいので、
足先の感覚に神経を研ぎ澄ませて頂ければと思います。

また具合を確認する為に、インソールを仮入れした状態で
実際に路上にでて商店街の道を歩いて頂いて確認も出来ます。
店内でちょこちょこ足踏みしただけでは分かりませんし。

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紳士靴の場合は、だいたいが踵の半敷きですのでインソールを挿入する場合は
オリジナルの半敷きはそのままで、前側に中敷を追加し連結して製作もできます。
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今回はすでにロゴも擦り消え、革も痛んでおりましたし、
前のお店で取付けたスポンジがぼこぼこ残っていたので、ご相談に結果、
あたらに全敷きにて施行致しました。

ちなみにタイトルの「効果の無いサイズ調整」ですが、
前の修理店にて、前滑りを抑える為にかかとスポンジを入れた訳ですが、
これでは逆効果な感じかと思います。
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踵にスポンジを入れたことで足が上に上昇すると、
靴に覆われている部分は少なくなります、
履き口が浅くなっているのと同じ状態です。

ですので、履き口が緩い上に浅くなってしまうと余計に踵が
脱げ易い状態になってしまいます。
また踵から踏まずに掛けての傾斜もスポンジ厚分きつくなるので
余計足が前に滑ってしまうという訳です。

踵にスポンジを入れる場合としては、例えば踝が履き口に当たって痛い
という場合には、スポンジを入れて足が上昇すれば必然的に
踝が当たらなくなります。
履き口が浅くなりますが、踝の当り以外にサイズ感に問題が無ければ
靴ひもを絞めれば甲で抑えが利くのでそれによって脱げ易くなる確率は
低いかと思います。

だいぶ長文になってきましたので簡単に触れますが、
婦人靴で行っている方が多いのですが、ハイヒールで足が前に滑るということで
つま先にティッシュを詰め込んで、指がそれ以上前に行かないように
されている方がいらっしゃいます。
リフト交換の際にはそれがぽろっと落ちてくる訳ですが。

靴には通常、指先が靴に当たらないように「捨て寸」という
何も入らないスペースを設けています。
このスペースを詰め物で埋めてしまうと、指先が突き当たり
靴の中で常に関節が押し曲げられている状態になってしまいます。

これによって「ハンマートゥ」(画像検索してみてください)などの
指先の変形症状を生じてしまう場合がありますのでお気をつけ下さい。
(ハンマートゥになってしまう原因はそれだけではありませんが)

<状態別サイズ調整方法まとめ>

指周りが緩い、革がダブつく場合 → 前側にインソール
指周りが緩い、羽が閉じる場合 → 前側にインソール+タンパッド
指周りは◎、羽が閉じきってしまう、履き口が緩い場合 → タンパッド
甲の部分がなんか痛い場合 → タンパッド

ちなみに短靴の場合は、全敷きのインソールですと
指周りと甲の部分も窮屈にできるのですが、同時にかかと部分も
浅くなってしまうのでお勧め致しませんが、
ロングブーツやくるぶし丈のブーツですと全敷きも有効かと思います。

以上になります。
市販のアイテムも最近は色々と展開されていますので、
その状態に合わせて適したアイテムを用いることで
ある程度のDIY調整は可能かと思います。

ただ、
私は片側に傾く癖があるからこちら側に傾斜のインンソールを入れて…
ハンマートゥ気味だからこのアタッチメントを指にはめて…
などなど、使い方によっては逆効果になってしまったり、
すでに疾患レベルに達している状態の場合もありますので
安易にパッケージの説明を鵜呑みにせずに、医師に相談された方が
宜しい場合もありますのでお気をつけください。

風邪気味だからとりあえず風邪薬を服用するのと違い、
足の場合はその結果、徐々に変形、歪みとなって現れてしまいますので。

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