バンパー

2019年01月15日

120kgまで持てる鞄。 オロビアンコ篇

鞄の持ち手の芯が途中で折れる修理ってだいたいオロビアンコ。
ほかのメーカーでも樹脂製の芯材って使っているところはあるのでしょうが
持ち込まれる鞄はオロビアンコなんです。

オロビアンコ000
持ち手の芯材はいくつか種類がありまして大きく分けて
ロープ、ガラ紡、、樹脂系のパイプなどがあります。
ガラ紡っていうのはフェルトみたいな柔らかい素材を
細長く裁断してそれを糸でぐるぐるとまとめたもと。
こんな感じのもの。
オロビアンコ100
なのでこの芯材を使用すると感触がふにゃっとした感じに仕上ります。
(巻く革の厚みによって異なりますが)

紳士鞄の場合は、荷物も重たくなりますし柔らかい芯材では耐えられませんので
だいたいがロープや樹脂系の芯材が用いられています。

樹脂系の芯材と云うのは劣化してくると今回のように
割れてしまいますし、また鋭角に曲がるとパキッと割れてしまうと思います。
オロビアンコ008
あとはエンド部分の処理が鋭角な加工で処理されていると
革を突き破ってしまうという壊れ方もありました。

ですので当店では間違いのないロープ素材を芯材に用いております。
ロープと云っても編み方や素材でまた色々とあります。
私のお気に入りのロープは金剛打ロープというもの。

これも同じ名称でもメーカーによって編み方や硬さが異なるので
毎回無くなった際には最寄りのホームセンターを何店舗かはしごして
お気に入りのロープを探しています。

AMAZONでも検索するとたくさんでてくるのですが、
画像では編み目や硬さが確認できないのですし、
20メートルとかの玉で購入するので、違っていると他に使い道がないので
無駄になってしまいます。

今回購入のロープはラベルを捨てずにとっておいたので、
次回からはアマゾンで購入できそうです。
オロビアンコ001
手で持つ部分で折れてしまっています。
劣化により曲がった部分でぽきっと…。

持ち手が壊れる原因としては芯材の偏りもあります。
偏りとは、端から端まで左右均等に芯材が入っているはずなのですが、
使用するにつれて、どちらかに芯材がずれてきてしまう現象です。
パーカーの紐が片側にビヨーンという感じでしょうか。
オロビアンコ009
片側に芯材がずれてきてしまうと、持ち手付根部分のもっとも
負荷の掛かる箇所に芯材が無く空洞になってしまうので
その部分で縒れて裂けてきてしまいます。

これは制作の際に端から端まで芯材を封入していないのが原因かと思います。
またはそもそも芯材の長さが足りていない仕様書になっているかと思います。
量産であれば必要な尺で芯材はまとめて裁断されているのでしょうから。

樹脂製の芯材の場合は、表面がつるつるしているので長さが足りていないと
内部でずるずるとずれ易いのかもしれません。
ロープですと表面の凹凸で摩擦が起こりずれていき難いような気がします。
Felisi の持ち手もロープが使われていますが、付根裏革が
付いていないので、ロープが時々ずれてきてしまっているものも見受けられます。

付根裏革というのはこの部分
オロビアンコ010
オロビアンコ011
丸い部分は芯材を革で巻きますので一枚ですが、付根部分も
そのままでは一枚になってしまいます。
ですので付根部分は裏革を付けて二重にし、負荷の掛かる部分の
補強の意味合いと、芯材がずれてこないよう蓋の役目を担っています。

持ち手のこの部分には負荷が一番掛かりますので、
鞄の大きさや形状によってはナイロンを挟み込んだりして
強度を持たせたりもします。
ちなみに使用している革の厚みが2.0mm以上ある製品などは
この部分の裏革を付けていない仕様もたくさんあります。

ただ裏革を付けていないと、芯材が寄ってきた際に
付根からちょろちょろとでてきてしまう事もあります。

今回は付根部分のステッチが入る部分までロープを入れ込み
裏革も施しているので強度や芯材の問題は生じません。
オロビアンコ012オロビアンコ013
ご返却の際にはお客様から、
「また折れたりしませんか?」とお尋ねがありましたが、

「このロープは120kgまで耐えられるので、
 千切れたり折れる前に鞄の底が抜けますよ」と店主。

持ち手の交換の際に少し問題になるのが内装部分。
製品の段階では外装に持ち手を縫い付けてから内装を取り付けているので
いいのですが、交換の際には内装がすでに付いているので
どうしましょう…。

持ち手の縫製箇所の内装部分にポケットやファスナーがなければ
そのまま内装側に縫い目がでるようにしたほうが費用は安く仕上ります。
製品でも内装側に縫い目がでているものもたくさんありますので
基本的にはそのまま縫い付けで良いかと思います。

ただファスナーがあったりするとその部分が縫い付けられてしまうので
分解したりする必要が生じる場合もあります。
今回は片面は何もなし
オロビアンコ005
片側はファスナーがあります
オロビアンコ004
なのでファスナー側はどうするかというと、ファスナーの内部のポケットを
一部分解して内装と外装の間にミシンを突っ込み縫製し、
内装部分に縫い目がでないように仕上げています。
もちろんポケットの分解したところは再度縫製して仕上げています。

今回のようなポケット内部を分解してできる程度であればいいのですが、
外観を縫製している部分を大掛かりに分解しないといけないとか、
縁取りしている部分を分解しなければならない場合などは、
分解費用だけでもそこそこ掛かってしまうので、補修方法は要相談になります。

AFTER
縫い目がでています。
オロビアンコ019
縫い目が隠れています。
オロビアンコ018
オロビアンコ022オロビアンコ020
オロビアンコ021
修理するとオリジナルよりは品質が悪くなっている?と思われそうですが
使用している革はオリジナルより質のいい革を使用していますし、
持ち手の仕様もより壊れ難い設定で制作しています。

ただ、すでに完成している状態から部分的にお治しするとなると
今回のように一部縫い目が新たにできてしまうなどはあります。

続いて併せてご依頼の補修箇所ですが
鞄の宿命、角擦れ補修になります。
オロビアンコ002オロビアンコ003
鞄の縫製方法として内縫いと外縫いがあります。
内縫いというのは、縫製してひっくり返して縫い目が内側になっていて
外側にはでない縫製。
外縫いというのは外観に縫い目が見える縫製となります。

今回の鞄は外縫いですべての素材をまとめて縫製しています。
そしてその部分を革で縁取り縫製しています。
以前はこの方法って必ず今回のように擦り切れてしまうので
余り良い方法ではないな、と思っていました。

しかし考えようではとても良い仕様なんじゃないかと最近は思っております。
ヨーロッパでは縦列駐車する時には、前後に駐車している車に
こつこつとバンパーを当てて車を動かして自分の駐車スペースを
確保したりもします、わたしも旅行で訪れた際に目撃しました。
そもそもバンパーはいわゆる車の膝宛てのような
傷がついてもいい装備という考えらしいのです。

同じようにこの縁取りも鞄のバンパーといって
いいんじゃないかと思うのです。
地面の擦れから本体を守り、擦り切れたら交換すればいいのです。
この縁取りも今回のように部分交換もできますし、
最終的には全周を交換する事も可能ですので。

今回は底部分周辺をコの字で部分交換します。
まずは擦り切れている部分の縁取りを取り除きます。
オロビアンコ007
で、新たに革で縁取りを行い縫製致します。
既製品の縁取りは0.5から0.8mmくらいの厚みが主流です。
交換の際には、0.8mmの場合ならば、少し厚みを増やして1.0mmくらいで
巻き直しています。
あまり厚くするとぼてっとなってしまい印象が悪くなってしまうので
少しだけ厚みを増やして耐久性を高めるようにしています。

既製品の場合は、バインダーなどのアタッチメントを使用する事で
ミシンで縫製しながら自動的に縁取りできるのですが、
修理の際にはそのようなアタッチメントを厚みや素材ごとに用意できませんし、
また鞄自体も使用により癖がついたりしていびつに変形しているので、
恐らくアタッチメントを使用しても、両面綺麗に針が落ちずに
縫製することは難しいのではないかと思います。
オロビアンコ014
ですのでまずは革を巻き付けてから縫製し、余分な部分の革を
カットするという手間を掛けて綺麗に仕上るように工夫しています。

AFTER
オロビアンコ015オロビアンコ016オロビアンコ017
ご覧のようにしっかりした底鋲が付いていてもやはり角は擦れてしまいがちです。
今回の鞄ですと荷物を入れた際には端の角の部分が垂れ重さで下がってしまい
擦れてしまっているというのも考えられます。
底鋲をあと15mmくらい外側へ取り付けると、端の部分は下がらずに
擦れ難くなるのではと考察できます。
オロビアンコ023
繫ぎ目も新しく巻き付ける革の端を薄く漉いているので段差が目立たずに
違和感無く補修できているかと思います。
この補修も、逆に角の補強パーツのようにあえて革の段差を残して
補修する方法もあります。
それぞれ鞄のデザインや補修度合いによって調整して補修しています。

以上、「鞄のバンパー」篇でした。

ampersandand at 11:30|Permalink