ビンテージスチール

2020年03月20日

コロナの影響でイタリアから材料が入ってこない?件。

イタリアやヨーロッパに感染が広がって外出禁止になったので
そうなるかなとは思っていましたが…

当店で主に使用している部材は主にイタリアやフランス、ドイツに
イギリスからの輸入品です。
ですので感染状況が悪化し製造業がストップしてしまうとまずいかなと
思っていたところ材料問屋からご案内が…。

イタリアのvibram社の工場が1週間稼働が停まると。
再稼働予定が読めない状態と。
他の国の工場は今のところ稼働しているが稼働停止の想定ですと。

ただ急ぎ注文していた材料を先上げで空輸して入荷させるとの事なので
夏頃までの在庫はあるので安心して下さいと…
なんだかこのアナウンスが買いだめを促しているような気もしますが
わたし的には今月はいつもの注文分プラス1ヶ月分程度で注文を
しておきましたがどうなるのでしょうかねこの先…。

仮に材料が無くなってしまった場合は、vibram社の製品にこだわらなければ
同程度の性能の国産品の調達は問題ないと思いますので、
お客様が問題なければそちらで凌げるのですが、または無いものは
仕様が無いということで、しばらく鞄修理専門で営業するか、
という選択肢もあるのかなと。

ちなみにわたし的には今回の靴材料の入荷危機よりは
コロナと関係はないのですが、LULU社がビンテージスチールの製造を終了
というほうが痛かったですね…。

これは問屋からアナウンスがあった直後に買い占めされてしまったようで
すぐに手に入らなくなってしまいましたね。
ただ当店はもともと在庫である程度ストックしていたので当面は大丈夫ですし、
オールデンでよく使うサイズ#70に限っては別ルートから2年分くらいを
入手できたのでとりあえず安心です。

問屋さんの方で国内で代替品を製造するとのことなので
今後、ビンテージスチールが無くなるという事はないのですが、そもそも
LULU社のスチールはネジ穴が小さ過ぎたり形状がロットで少し違っていたりと
海外あるあるの製品だったので、国内製造で品質の良いものが出来上がった方が
結果的によいものになりそうですが、後は価格次第と云うところでしょうか。

ちなみにつま先用のスチールで扇状のトライアンフスチールというのも
あるのですが、これは当店では取り扱っていません。
取り付けた感じはかっこいいのですが、必要以上につま先がスチールで覆われる
範囲が広いので(加工面積が広い)音鳴りの懸念と、
他店で取り付けられた靴でしばしば外れてしまっている事が多いという理由です。
外れてしまっている原因は、形状の理由というよりはビスの長さが短すぎるのが
理由なのですが。

今日のニュースでは、イタリアは医療崩壊が始まっているので、
80歳以上の感染者は集中治療を行なわないとするガイドラインを作成し
今後実施するということにまでなってしまったようです…。
「誰を生かし誰を死なせるかは患者の年齢と健康状態で決まる」
とイタリアの医師。

日本は今のところ感染爆発は大丈夫なんじゃない?という雰囲気が
何となくありますが、あるボーダーラインを超えてしまうと感染は
抑えきれずにすぐにイタリアのようになってしまうのだろうと思います。

イタリアの感染者数は2/21日は3人だったのに、3/19日の時点で35.713人…
人口比率だと医師の数はイタリアより日本の方が少ないらしいので
同様の推移で感染していってしまうと日本も医療崩壊なのでしょう…

個人でできることは自己免疫力を高めて、
(とりあえずみかんを毎日食べてみています)
手洗いしてマスクして、なんとか日々を凌いでいくしかないのでしょう。

そして何より月6億枚製産されているという噂のマスクはいずこに…
と思う今日この頃…。

・東京都コロナウィルス感染症対策サイト
・神奈川県コロナウィルス感染症対策サイト
・山中伸弥先生の新型コロナウイルス情報発信サイト
・新型コロナウイルス国内感染の状況



ampersandand at 17:56|Permalink

2019年11月22日

手を抜いてオールソールをするお店。 ウェルト交換篇

ウェルテッド製法のオールソールというのは、通常は
摩耗した革底(ヒールを含む)を取り外し、縫われていた古い糸を
すべて抜き、新しい革底を取り付けて再度元の穴に出し縫いを
行なえばいいのですが、手を抜いて、いい加減に修理するお店で
オールソールしてしまうととても面倒なことに巻込まれてしまいます。

こちらの靴。
革底はラバーソールとつま先補修ですでに部分補修されていますが
それ以外は特に痛んでいるところはない感じですが、
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お客様曰く、ここが…と。
踏まず部分がソールが分離してしまっています。
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踏まず部分のすくい縫いの糸が切れてしまっています。
すでに一度オールソールしてあるとのこと…。
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画像では分かり難いのですが、狭いコバの幅に縫い目が二列できています。
二列のところもあれば重なってしまっている部分もあります。

ウェスコなどのワークブーツ系のコバ幅が広い靴の場合では
出し縫いをもともと二列行なう仕様の靴もありますが、
(その場合一列はステッチダウン製法の縫い目)ビジネスシューズで
しかもこのコバの張り出しで二列縫うというのはあり得ませんので、
とうことはどういうことでしょうか…。

そうです、古い革底を剥がしたら元々ある縫い目の糸は抜かずに、
そのまま新しい革底を取り付け、元の縫い目はすでに糸で埋まっているので、
すこしずらしてもう一列縫ってしまっているという事になります…。

このような悪質な修理をされた靴というのは年に数足は
持込まれますが、このパターンもよくある事例です。
では分解。
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残っている出し縫いを擦り切って革底を剥がしていくと
むむっ、かかとの部分で革底が分離…。
革底が継いでありますね、これは話で聞いた事はありましたが
実際に行なっているところがあるとは…
もしかしたら70歳くらいの職人さんが修理した靴かもしれません。

というのは靴学校で教わっていた際の戦後の靴職人さんの授業で、
革底の長さが足りなかった場合には、このように継ぎ足す方法もあります、と。

その時はそれはないだろう、と作業を観ていましたし、
そもそもそんな手間の掛かることをわざわざしないし
長さが足りないってどういうこと?と思いつつ授業は
進行していきましたが。

恐らく戦後だと革底は充分に流通していないとか、
オーダーの革靴の需要が高く次から次へと依頼があり、
とても儲かった時代という話でしたので、材料が間に合わず
足りなかったからか?なんでしょうか。

しかし今は革底が枯渇している時代でもありませんし(年々高騰していますが)
革底問屋にネットで注文すればすぐに届きますし。

恐らくどのお店でも令和の時代にはしていないと思います(今回のお店以外)。
先程も云いましたが、わざわざ継ぐ加工を行なう方が手間ですし
かかとのちょっとを継いだからといってコストも変わりませんしね。

または出し縫いの感じからすると、かかとの継いでいる部分は
そもそも交換していず、古い革底をカットして残しているか可能性もありますね。
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継いでいたからか?とも疑いたくもありますが恐らく関係は
ないでしょうが金属製のシャンクが折れていました。
シャンクとは浮いている踏まず部分を支える為にヒール部分から
踏まず部分にかけて取り付けられている靴の背骨のようなパーツです。
靴によっては入っていないものもありますし、木材だったり樹脂だったり
と素材も色々です。
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踏まず部分以外でもすくい縫いの糸がやはり切れていますね。
二列、しかも元の縫い目より内側に縫っていましたので、
そうなると完全にすく縫いの糸を出し縫いで貫通してしまいますから。
赤矢印は元々の縫い目で黄色矢印が新しい(縫い足した)縫い目。
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そもそもウェルテッド製法という靴の構造が分からないと
この話の意味が伝わらないと思いますので以前の記事でも使用した
概略図を。
ウェルテッド製法2
ウェルテッド製法
今回の靴状態はというと、古い革底は剥がしたのですが、その際に
古い出し縫い(みどり部分)の糸を抜かずに新しい革底を貼付け、
古い縫い目より内側(本体側)に抜い足しているので、
本体とウェルトを縫い付けているすくい縫い(赤い部分)を貫通してしまい、
すくい縫いの糸が切れてしまっているという状態になっています。
通常は、もとの出し縫いの糸を抜いて同じ穴に縫い直す事になっています。

結局そのお店では糸を抜くのをめんどくさがり、しかし縫う場所がないので
外側にははみ出してしまうので縫えないので内側に寄せて
縫ってしまっているという事です。
場所によっては内側に縫う事もできず逆に外側に膨らんでしまったり
同じ位置に重なって縫ってしまったりなんですが、ひどいものです。
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ウェルトを外した状態。
中底面から開けられたすくい縫いの穴が見えます。
この穴に新たにウェルトをすくい縫いして取り付けていきます。
すくい縫いですので、名前の通りすくい針でそれぞれのパーツをすくうように
針を刺して縫製していきます。
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つま先部分は穴の間隔が寄るので糸が食い込みすぎないように
別の糸を縫い目に絡ませて締め付けていきます。
今回の靴はミシンでも縫製できるように開発された
グットイヤーウェルテッド製法の構造になっていますが、
なぜだか手縫いですくい縫いが行なわれています。
そして一般的なすくい縫いの縫い目のピッチよりなぜか
細かく縫われているので、縫い直す時間も1.5倍くらい掛かります…くぅ〜。
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かなりの力で糸を締め付けていくので麻糸が指に食い込んで
皮が裂かれてしまうので革サックを要装着です。
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かかと周りのウェルトはオリジナル通りにアルミの釘でカシメて固定しています。
ウェルトをが付いたので、後は通常のオールソールの手順と同じになります。
今回はシャンクが折れていたので焼きの入った硬い金属のシャンクに交換し、
コルクも詰め直して革底を取り付けて出し縫いを行い完成となります。
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ウェルト交換というのは今回のようにすくい縫いが切れてしまっている
靴の場合に必要になる補修行程ですので通常のウェルテッド製法の靴では
革底の交換のみ(ヒール部分も含みます)ですので必要はありません。

ウェルトも交換した場合はオールソールの倍ぐらいの費用が
掛かりますので、お見積もり後のご依頼率は65%ぐらいでしょうか。
なにせもう少し費やせば新しい靴も買えてしまいますので。

今回の靴は確か彼女に買ってもらった靴ということでしたので
特別思い入れもあったということでした。
本体の革も特に履き皺が痛んでいるとかダメージも無く、
底周りが新しくなればまったく問題なく履き続けられますし。
*本体の革が劣化して亀裂が複数入っているなどの場合はお勧めしません。

ちなみに今回の靴のようにコバがあるような靴が、全部ウェルテッド製法の
靴ではないのでご注意ください。
マッケイ製法やセメンテッド製法でも飾り押渕といって、飾りで同様のコバが
付いている靴もありますので。
AFTER
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ハーフソール・ビンテージスチール併用仕様になります。
持込まれた際の靴の状態は、オールソール後に靴底(つま先)が摩耗し
ハーフソールが取り付けられたのですが、つま先だけ早い段階でラバーが摩耗し
その後つま先だけ再度補修していると思われる状態でした。

であれば、そもそもオールソールの時点でハーフソールスチール併用仕様に
しておけば革底は摩耗しませんし、底縫いの糸も切れません。

ですので、当店で革底でのオールソールをご依頼される90%の方は、
オールソールの際には、ハーフソール・ビンテージスチール併用仕様を
オプションで装着されております。
初期投資はかかりますが、長い目で見るとランニングコストは抑えられます。

ハーフソールが取り付けらているので、底縫いの糸は擦り切れませんし
土台の革底も擦り減る事はありません。
(路面の雨水を吸い上げてのアッパーに雨シミもでき難いのです)
それぞれ摩耗した段階でハーフソールとスチールは部分的に交換できます。

基本的にこの仕様であれば今後はオールソールの必要は無くなります。
ですので長く履くのであればとても合理的な修理かと思います。

ちなみにですが今回のようなすくい縫いが切れてしまうというのは
縫い位置に問題が無くても通常の使用でも加重に耐えられず糸が
切れてしまうという事もあります。
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後ろの人にちらりと見え隠れする赤い靴底が憎いですね…。
かかとを革付きのダヴリフトなどにすると赤く染められますが、
耐久性重視でvibramのラバーリフト仕様になっています。
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ちなみにこちらもウェルト交換になってしまった靴。
ご依頼時点ではすくい縫いが切れている事が分からなかった靴です。
オールソールはまだ行なった事が無く既製品の状態です。
分かりますかこの異常な状態。
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出し縫いが漉い縫いの内側を縫ってしまっています。
黒い点々が出し縫いの断面で外側にある白い線状の縫い目がすくい縫い。
位置が逆転していました…、あり得ない状態です。

もちろんこの場合も革の中を通過しているすくい縫いの糸を
貫通してしまっているのでNGです。
貫通していると革底を剥がすまでは糸同士が噛み合っているので
逆に糸が緩まずにウェルトが外れて見えない場合があります。
ですので「ソール交換で」、と受付して革底を剥がしてみたら
ウェルト交換が必要なってしまうというパターンもときどきはあります。

といっても、すくい縫いに出し縫いが貫通していない靴を探す方が
難しいかもしれません。
ところどころでも貫通してしまっている靴は普通にあります。
部分的にすくい縫いが切れている場合は、サービスで勝手に縫い直しています。

これは靴の高い安いに関係なく、例えば10万前後するクロケットジョーンズ
なんかでもしばしば貫通しています。
ひどい場合は出し縫いが逆に外側を縫い過ぎてしまっており
コバからはみ出してしまっているクロケットなんかもありました。

その靴が検品を通って市場で販売されているというのも問題なのですが。
クロケット特有のウェルトに切れ込みを入れて出し縫いを行なっているのが
縫い目の位置が悪い要因の一つかもしれませんが。

または靴のデザイン的にしゅっとした感じなので、そうなるとコバの
張り出し具合が抑えられる傾向にあるので、そもそも出し縫いをする
スペースが限られしまい、すくい縫いを貫通するような位置で縫製する
ことになってしまっているのかもしれませんね…。


今回もソールを剥がすまで分からず、後になってウェルト交換の必要が
生じてしまったのですが、これは私としてはとても申し訳ない状態です。

「オールソールで依頼したのにウェルト交換も追加なんて聞いていないよ!」
とお客様は思うでしょうしきっと…。

それに摩耗した靴底の交換と違い、ウェルト交換しても
見た目の仕上がりとしては、お客様が仕上った靴を見ても違いは
分からないのも問題なのですが。
(もちろん分かる人が見れば分かりますが)

例えば私がブラック店主であれば、ウェルト(すくい縫い)が壊れていないのに
交換する必要がありますと云って、ウェルトは交換せず
ソールだけ交換してウェルト交換の費用も請求する事もできてしまいますから。

ですので今回もお電話で、こうこうこうでウェルト交換が必要になります。
で、メールで壊れている状態を画像で送りますので確認されてください…
と、本当に交換が必要なんですアピールをさせて頂こうとしていると、
(もちろん追加費用も掛かってしまいますし、このままキャンセル
ということもできますともお伝えしております)

お客様:
「画像は見なくて大丈夫です、前回依頼した靴の仕上がり具合で
 信用しているので、そのまま進めてください」と。

店主:
「あざーすっ!」

「信用する」ということがなかなか難しい時代に、
確認もせず信用して頂けるというのはとても有り難いことです。

こちらの靴はかかとにウェルトが無いシングル仕様。
ウェルトは革底を縫い付ける縫い代と考えて頂くと分かり易いと思います。
ウェルテッド製法というのは、直接本体に革底を縫い付けないので
ソール交換の際の靴本体へのダメージが少ない(交換が容易)という
考えにより考案された製法になります。

しかし今回の事例のように、ちゃんと設計しその設計通りに製造しないと
かえって手間の掛かる製法になってしまうという事にも。
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左はウェルト縫い付け前、右が縫い付け後。
靴の周囲の張り出したウェルト(コバ)に、底面に貼付けた
ソールを垂直方向に縫い付けて固定するのがウェルテッド製法の構造になります。
底縫い後、ウェルト共々ソールを削り込み、靴のアウトラインを仕上げます。
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完成。
こちらはダイナイトソール仕様。
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基本的に当店ではウェルト交換は受け付けていないのですが、
というのウェルト交換をするには、糸作りからはじまり色々とやる事が多く、
また他の修理のように同時進行で数足の靴のリフトの交換、ハーフソール等々を
進める事ができず、ひとり店主の私が一足に係っきりになってしまう為、
他の修理品の進捗に影響が出て来てしまうので基本的にお断りしておりますが、
作業の途中で発覚!なんてことになると、途中で投げ出すというのは
あり得ませんので付きっきりで仕上げております。

ですので当店ではお時間が掛かってしまうので、ウェルト交換が
必要な方はスタッフが大勢いる規模の大きなお店でご依頼された方が
宜しいかと思う次第な今日この頃…。

ampersandand at 16:37|Permalink

2019年06月20日

エルメスだからって作りが良い訳ではないのか…。オールソール篇

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エルメスの紳士靴。
革底がべろーんと剥がれてしまっています。
セメント製法(接着)かと思いきや一層目のソールは本体に底縫いされています。
二層目の革底のみを接着で固定。

ソールが剥がれてしまうとやりがちなのが、自分でDIYをして
この状態から接着剤をどばっと塗布して、むぎゅっと貼り合わせてたら
接着剤が隙間からはみ出してきて、焦ってはみ出た接着剤を
指でこすりとって、その指で靴を持ち替えた時に革を触ってしまって、
べたべたベたと接着剤の指紋の跡…という感じかと思います。
で二、三日したらソールが剥がれてきて…なんやねんと。

ソールの接着ってなにげにかなり面倒で厄介なのです。
基本的には古い接着剤はすべて削り取る、両面とも。
なのでこのべろんとした状態からではグラインダーで削る事はできません。
(紙ヤスリで擦り擦りやっても業務用の接着剤はとれません)

仮にソールを手で押し広げてグラインダーの回転している面に
接着面を宛てることが出来たとしてもソール面側は凹湾曲しているので
端の部分ばかりにグラインダーがあたってしまい縁がガタガタ、
結局貼り合わせたら隙間が開いている…なんてオチです。

そしてヒールがついているのでソールを完全に分離する事も出来ません。
ヒールは通常、本体に向けて釘が10数本打ち込まれていますので
綺麗に外す事も出来ませんしそれを再固定するというのは不可となります。

また欧州で作られた靴ですと接着剤の配合が国内のモノと異なり
削るとねちゃねちゃと溶けてしまい素材にへばりついてこれまた厄介。
結局は削ってからねちゃねの表面を溶剤でコーティングしないと接着剤すら
つかない始末だったりします。

なので一般の方が思われている以上に再接着って難易度高し!なのです。
今回はそのような事情もあるのですが、そもそも靴底中央が
ぺこぺこでもうじき穴が開いてしまう交換目安の時期でしたし、
仮に接着できたとしても接着のみですのでまた剥がれてくる可能性は残ります。
基本的に革底を接着だけで固定するというのは私の考えではNGなのです。

婦人靴の革底はほぼ接着だけで固定されていますが、あれは革が薄く
柔らかいので歩行の際には靴に合わせて革底も一緒に曲がってくれますので
比較的、接着のみでも剥がれ難かったりします。
といっても革は繊維素材ですので、雨に濡れてしまうと毛細管現象で
内部まで雨水を吸い上げ接着面をふやかしてしまい剥がれてしまいがちです。

紳士靴の場合ですと5.0mm前後ある硬めの革底(ベンズ)を使用しているので
曲がり難く、また今回のように二層になっている場合ですと、
屈曲の際に一層目と二層目では二層目の方がより距離を曲がらなくてはならず
その距離のギャップで剥がれやすかったりもします。
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ちなみにかかとはまだ一度もリフト交換していない段階。
かかとを一度も交換していないのに革底はすでにぺこぺこで
薄くなって交換時期となると…ランニングコスト悪し!ですね。

エルメスの肩を持つ訳ではないのですが、二層目を接着だけで
仕上げている今回の仕様というのは分からない訳ではありません。
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今回の製法はボロネーゼ製法という作りになっています。
ボロネーゼ製法は、屈曲する前側に中底を取り付けずに
本体の革で包まれている状態になっています。

分かりやすく云うと靴下に革底が付いている状態です。
ですので画像のように手で軽く曲げただけで簡単に屈曲します。
ということは歩行の際には靴の屈曲性良いという仕様になります。
(逆に考えると底が薄いので疲れるとも云えますが)

で、二層めのソールも底縫いで本体に縫い付けてしまうと
厚みは変わらないのですが二層を縫製することで、層と層が結束し
少し曲がり難くなるので接着だけにしたのだろうと思われます。

といっても一般的な紳士靴は中底があり、底縫いもしているのですから
それに比べるとまだ底縫いしても屈曲性はいいのですが。
「ある程度履くと剥がれてきてしまう仕様」と比べ、
どちらがよいかという判断になる訳ですが。

ご来店は奥さまがお持ちになられたので以上の内容をご説明して
どのような仕様にするかご相談させて頂いた結果、
底縫いを掛けてハーフソールスチール併用仕様という設定で
交換する事になりました。

ちなみにレザーソールでオールソールする場合、当店では
このハーフソールスチール併用仕様を選択される場合が一番多いです。
手前から Church's・Hermes・JALAN SRIWIJAYA
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この仕様ですとレザーソールと本体を縫い付けている底縫いの糸は
ハーフソールを取り付けていますので擦り切れず保護できます。
そして一番摩耗しやすいつま先もスチールで保護されています。

ハーフソールは底面の保護と滑り留め効果の他に、雨の日に路上からの
雨水の吸い上げを防ぎ、靴側面にできる雨シミ予防にも効果があります。
これは結果的に濡れと乾燥から生じる革の硬化からの履き皺の割れ予防にも
関係してくるかと思います。

基本的にこの仕様であればハーフソール、スチール、リフトを
摩耗した段階でそれぞれ交換して頂ければ、以後オールソールする必要は
ないという訳です。
AFTER
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靴底はエルメスオレンジ風に染色。

エルメスのブランドカラーがオレンジというのは元々は違っていたそうで
戦争で徐々に梱包資材が無くなり、最後に残った派手な包装紙の
オレンジをしぶしぶ使用しなければならない状況に。
戦後、物資が整い元のゴールドや象牙色の梱包に戻したところ、
お客様からオレンジが良いという声で今のエルメスオレンジに
なったというらしいです。

出来過ぎているストーリーに疑いを抱いてしまいますが素敵なお話です。
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始めに初期投資のハーフソールスチール併用仕様のコストは
掛かりますが、それを回収できるだけの耐久性はあると思います。
今回のエルメスのようにリフトを一度も交換する前に
オールソールなんてかなり費用対効果が悪いです。
といってもそのような靴はしばしばありますが。

ですので、新品の靴も履く前にハーフソールスチール併用仕様がおすすめです。
ウェルテッド製法の靴で、すでに製品の段階でウェルトを削り過ぎていて
オールソールの際にはそのままでは交換できない製品もあったりしますので。
「ビンテージスチールを取り付ける」まとめ記事はこちら

ampersandand at 21:26|Permalink

2018年11月25日

壊れすぎていないオールデンを治してみる。 ハーフソールかオールソール、どちらにするか問題。

前回のオールデンの修理と比較するとだいぶ軽症ですが
軽症なのでオールソールするか、部分補修(ハーフラバーソール)とするべきか
判断に悩む状態の今回のオールデン。
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前回のオールデンはこちら
「壊れすぎたオールデンを治してみる。 分解篇」
「壊れすぎたオールデンを治してみる。 裂け補修篇」

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悩みどころは革底が剥がれてこないかどうか。
特にウェルテッド製法の場合は特にそうなのですが
底縫いの糸が切れていると革底が剥がれてき易い場合があります。

ウェルテッド製法の場合は、中央にはコルクが充填されており
この部分は接着強度は求められません。
ですので革底との接着されている部分は実質
ウェルト部分の幅、1.0cm幅程度の面積となっているのが
剥がれ易いその理由となります。
181105blog75

つま先はすでに他店でラバー補修されていましが、
ダブルソールのオールデンですので、履き始めは特に靴底が返らず
つま先が極端に摩耗したので早々修理されていたのでしょう。
貼られていたラバーを取り除くと…
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181105blog85
糸も完全に擦り切れていますので、ぱっくりと。

当店で底縫いの糸が擦り切れた状態でラバーや革素材で
つま先の補修をする場合は、補修部材を取り付ける前や、または
補修部材と一緒にビスでベース部分に固定するようにしています。
糸が完全に切れた状態の土台に補修部材を貼付けても
ベースになる部分がウェルトから剥がれてしまえば意味がありませんので。
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つま先部分の糸切れについては、ビスで固定できるので切れていても
部分補修という手段はとれるのですが、それ以外の部分、
特に屈曲部分の糸切れについては判断に悩みます。
上画像では周囲に縫われている糸目が擦り切れて見えなくなっています。

下画像はちょうど接地する部分の境目に糸が
擦り切れてなくなっているのが分かるかと思います。
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この状態からハーフラバーソールを取り付けるとなると
糸が切れている状態ですので、徐々にだったり何かのタイミングで
貼付けた土台となる革底が、先程のつま先部分のように
本体(ウェルト)から浮いてきてしまう場合があります。

ハーフラバーソールを貼付けたから剥がれたというよりは、
すでにある程度履き込まれている状態(糸が切れている)ですので、
貼っても貼らなくてもその時期だったという感じでしょうか。

また後ほど触れますが、オールデンの場合は新品の状態でも
本底、ミッドソール、ウェルトとの間が浮いてきている(ずれている)
場合が多く、底縫いでそれぞれを固定し、接着は底縫いを行なう際の
仮固定という位置づけの仕上げのようです。

では底縫いの糸が切れているからすぐに剥がれてくるかというと、
剥がれてくるものもあればこないものもあったりなかったり…。
また底縫いが擦り切れて、糸の断面がまだあるような状態ですと
その状態でハーフソールを貼付けると、糸の断面がハーフソールの
接着面に固定されますので、案外そのまま固定できるという場合もあります。

いずれにしても、このような場合によくお客様に尋ねられるのは
「どうですかね、剥がれてしまいますかね?」と。

店主の答えとしては、
「糸のみぞ知る…」
とはぼけられませんが、「どうでしょうかね〜」としか
お答えができません。

で、今回は…
まだまだ履き続けたいので「確実なオールソールで。」
ということになりました。
その場合は革底で行なうと、今回のように悩ましい経過を辿ってしまうので
ハーフソールビンテージスチール併用仕様(現役最強仕様)で
始めから万全の体制を敷くことになった次第であります。

それでは分解。
前回の瀕死のオールデンと違い、イレギュラーな事故も起こらず
いつもの手順とおりに。
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トップリフト(ダヴリフト)を外して
181105blog82
積上げと下ハチマキを外して革底がでてきましたが、
ほぼ接着剤は塗布されていない状態です。
その代わりに、それぞれの段階で数種類の釘が使用され固定されています。
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老舗のメーカーの靴に多いのですが、ウェルテッド製法という作りは
そもそもオールソールし易いように考案された作り方ですので、
なのでオールソールの際にばらし易いように仮固定程度の
接着で済ませるという考えもあるかと思います。

また、昔は接着剤の効果が低くそれだけではそもそも固定できないので
革底は底縫いで固定し、かかとの部分は釘(木釘)で一段一段
固定するという考えがメーカーのよっては現代でも脈々と受け継がれて
いっているのかもしれません。

1884年にオールデンが誕生した頃のような路上が土ではなく
アスファルトで舗装された現代の路面では、底縫いの糸も
擦り切れ易いので、そろそろそんなメーカーは接着剤の使い方については
再考の余地はあるのではないでしょうか。

本底を剥がすとダブルソールですのでミッドソールがあります。
本底とミッドソールもほとんど接着されていない状態です。
181105blog88
ミッドソールを剥がすと充填されたコルクが見えてきます。
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前回の瀕死のオールデンと異なり雨水の侵入も見られず
シャンクも錆びておらず鈍色の綺麗なままです。
181105blog90181105blog92
この後は、底縫いの糸を一目一目抜き、コルクを入れ直し、
ミッドソール、革底を取付けて出し縫いし、かかとを積上げていきましたら…

三分クッキング的な感じですが、完成となります。
AFTER
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ハーフソールビンテージスチール併用仕様で
リフトもVIBRAMラバーリフトですので
耐久性とランニングコストを踏まえた現代最強仕様となっております。
この仕様であれば、底縫い糸が擦り切れると云う事は無いので
革底が剥がれてくる事もありません。

摩耗した段階でそれぞれ、ハーフソール、スチール、ラバーリフトを
部分交換していって頂きますと、オールソールの必要は今後ないかと思います。

オールソールの段階だけではなく、新品の段階で
ハーフソールスチール併用仕様を行なえば同様の仕様になります。

今回はアッパーの状態もよく、履き皺の割れや小指部分の裂けなどは
見受けられませんでした。
(かかと内側の擦り切れはありましたが、補修対応で改善)
例えば、履き皺のひび割れ、革の硬化などアッパーの痛みが見られた場合は
オールソールはあまりお勧め致しません。
(なので前回のオールデンはお勧めしなかった訳のですが…)

底周りをオールソールで新品状態に戻しても、後に
アッパーが裂けたりしてしまうと、補修できても縫目が目立つところに
出来たりと見栄えが悪くなりますし、修理できない場合もあります。

ですのでそのようなアッパーの状態が悪い場合には、
オールソールではなく、部分補修で応急処置し、
「履けるところまで履く」というアドバイスになると思います。

ということは末永く愛用するには、日々のアッパー(本体の革)の
お手入れが重要と云う事なのですが(履き始めの時から)。
面倒であれば、屈曲部分(指回り)だけでもいいので、定期的に
保湿を行なってみて頂ければと思います(雨で濡れて乾いた後には特に)
*保湿といってもミンクオイルは使用しないでください。

面倒くさがりやさんにはレザーローションがおすすめです。
無色なので色を気にせず使用できます。

当店でも乾燥気味の修理靴には、乳化性クリーム(色付き)で磨く前に
こちらで保湿を行なってから磨いています。
この製品のみの使用でも、乾拭きすると程よく艶がでますのでいい商品です。

汚れ落としと保湿が同時にできるので面倒くさがりやさんには
もってこいです。
*使用には説明書をよくお読みになってお使いください。

[サフィール] SAPHIR ユニバーサルレザーローション 150ml 汚れ落とし 保湿 ツヤ 靴磨き バッグ 無色 レザー クリーム 9550904002 (Free)


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ampersandand at 23:26|Permalink

2018年03月27日

効果が薄いと思われるスチールの取付け方。 某ショップ篇

オールデンの輸入代理店で購入されたとのこと。
その際に、そのショップで取付けたオリジナルのスチールが頼りない、
効果が薄い気がするということで、改めてのビンテージスチール取付け依頼が
ときどきやってきます。
2018032703
ショップで取付けてそのまま一度も履かずに持ち込まれたオールデンも
ありましたので、ショップでどのように取付けるか
説明を承けていないのだろうか…。

恐らく取付けた状態をみれば、これではつま先が擦り減っちゃうけど…
と誰しも気づくはずですし。
20180327012018032702
そのまま底面から出っ張るので、履き心地に違和感が
でないように?スチールの厚みも薄めです。
素材はスチールというか、もう少し柔らかい合金だと思います。
ネジではなく釘を打ち込んで固定するタイプです。

しかし位置が悪いですね。
つま先の摩耗を防ぐ為に取付けるのに、肝心の先っぽが
隠れていないので革底が擦り減ってしまっています。

取付けるならスチールは端にぴったりと合わせないと、ダメよ〜ダメダメ〜。
日本エレキテル連合は消えてしまいましたね…。
0327
恐らく端にぴったり合わせてしまうと、釘の穴位置が端ぎりぎりなので
釘を打ち込んだ際に、コバに影響が出てしまう心配もあったのかもしれません。
または、片側は底縫いの糸の上に釘を打ってしまっていますが、
糸の上に穴位置が掛かってしまうのでわざとずらしたのか。

短い釘で固定していますので、釘を糸に打ってもまさに糠に釘。
ですので、交換の際もマイナスドライバーを下に差し込めば
簡単に外れてしまいました。

ちなみに、同じように靴底に乗っけるタイプのスチールで
JELLY FISH/ジェリーフィッシュというタイプもあります。
2018032704
これはほとんど取付けたことがありません。
つま先が異常に幅広い靴で、通常のビンテージスチールの最大サイズの
#90でも横幅が足りない際に、それでも保護されたいということで
取付けたことがあります。

ビンテージスチールのように底面と同じレベルで埋め込まれるのと違い、
底面にそのまま乗っけるので出っ張り、それだけ歩行の際に
違和感が生じ易くなる場合があるので、あまりお店では大々的に
ジェリーフィッシュタイプはご案内しておりません。

ちなみにですが、ときどき埋め込みタイプのビンテージスチールを
乗っけるタイプと同じように靴底に乗っけて取付けているお店がありますが、
わざとなのか間違えちゃっているのか…。

台形タイプの大きなスチールのお問い合わせもときどきありますが、
靴底の加工に手間が掛かるので、それだけ取付け費用が高くなってしまいます。
耐久性が高い、材料コストが高いという理由でなくて、
単純に手間賃で高くなってしまうので、

「なんでこちらが高いの?」、とお客様に尋ねられた時に、

「そのご質問にはお答えを差し控えさせて頂きます」 店主

としか答えようがありません。
またスチールが取付けられる範囲がかなり広くなりますので
取付ける際によく尋ねられる、「音がしませんか?」という質問に

「刑事訴追の恐れがあるので、証言を控えさせていただきます」店主

としか…
すみません、証人喚問ジョークです。
0327-2
スチールが大きくなればそれだけ音が鳴る可能性は高くなりますので、
以上の観点から、通常のかまぼこ状のビンテージスチールを
当店の通常仕様としてご案内させて頂いている次第であります。

ちなみにですが、先程の「音が鳴りませんか?」というお尋ねの件ですが
今まで取付けたスチールで、音が気になるから取り外してほしいという
お客さんはまだいませんので、

「問題ないかと思います。」店主

こちらが通常のビンテージスチールとなります。
2017122600
こちらはハーフソール併用仕様(NO MORE AII SOLE 仕様)
2017122907

詳しくはこちらを合わせてお読み頂ければと思います。
0327-5
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ampersandand at 20:01|Permalink

2015年01月12日

ヴィンテージスチールを取付ける まとめ篇

ビンテージスチールやハーフソールについて何度か記事を書いていますが
今読み返しますとなかなか分かり難い部分や、要領を得ない部分もあります。
また、ご依頼の際にしばしば尋ねられるFAQも踏まえ、
まとめてみましたのでご参考にして頂ければと思います。

1231-3

まず、はなしがややこしくなってしまいますので、
前提条件としまして、「新品の革底の靴の場合」を条件としたお話となります。
*ラバーソールには取付けられません。
1231-51231-7

新品の靴底の補強方法として、3通りあります。

1.ハーフソール 2.500円
2.ヴィンテージスチール 3.500円
3.ハーフソール/ヴィンテージスチールの併用仕様 5.000円
*価格は予告無く変更する場合があります。

それぞれの補修方法のご紹介の前に、何も処置せずそのまま履き始めた場合、
徐々にどのような経過を辿るのかご紹介したいと思います。
1231-22


<ステップ1>

新品の靴の場合は、靴の返り、癖がついていないので
歩行の際に靴底が返らずに、つま先が擦れ易く真っ先に著しく減ってしまう。
歩き方により個人差はありますので一概には云えませんが、
ロングノーズ、ローファーは減り易い傾向にあるようです。

この段階でウェルトまで摩耗してしまっている方も…。
ダブルソールやスペードソールなど、革底が厚い場合は、
より靴が返り難いのでつま先が減り易いです。

例靴
トリッカーズ、オールデンなどのダブルソールなど

0927-28

→この段階で「つま先やばっ!」と思われて、スチールやハーフソールを
 検討される場合がよくあります。
 *ある程度摩耗した状態からのスチールの取付けは、追加費用がかかります。

革底は基本的に底縫いが掛かっております。
底縫いは、本体(ウェルトや中底)とソールを縫い付けておりますので、
底縫いが擦切れますと、革底は剥がれ易くなります。
(ウェルトとの隙間が開くなども起り易いです)

メーカーによっては、ウェルテッド製法の場合などは特に、
革底の接着は弱かったりしますので(ソール交換し易いように?)、
底縫いが擦切れると簡単に剥がれてしまったり致します。

*ですので、ある意味セメンテッド製法(接着のみ)の靴の場合は、
 縫っていない分、しっかりと接着している可能性が高いので
 剥がれ難いとも考えられます。

<ステップ2>

雨降りにより、路上に溜まった汚れた水を革の繊維組織ゆえに
毛細管現象で徐々にアッパーまで吸い上げてしまい、
屈曲部側面あたりまで到達しその部分に雨シミ(白く塩分)が発生!
その部分の革は放置すると徐々に硬化しひび割れし易くなります。

→底縫いが擦切れている状態で、びっしょりと濡れたりしますと
 なんとか固定している接着剤も水分で弛んでしまい、剥がれの原因に。

<ステップ3>
ようやく足に馴染んできて、とても履き易くなってきた矢先…
革底が摩耗しきって、ソール中央部分に穴が開いてしまい、
中もののコルクが欠落してしまい、中底の割れや変形を引き起こしてしまう。

→このまま履き潰すか、でも履き易いから安く治せるのなら
 お気に入りだし治そうか…と、ようやく修理を検討される方も…。
1231-24

と、ここまでがよくある革底の痛みの経過となります。
以上を踏まえまして、それぞれの補修についてのご案内となります。

1.ハーフソールのメリット

1231-30(画像はTOPY 3.5mm/通常はvibram2.0mm)
履き始めの著しいつま先の摩耗予防になる/滑り留めになる/
靴底からの吸い上げによる雨シミの予防になる/
底縫いの糸が摩耗により切れないので革底が剥がれない。
(摩耗したハーフソールは繰り返し貼り替え可能です)

デメリットではありませんが、つま先部分のゴムが
他の部分に比べ減り易い(それだけつま先部分が摩耗し易いということです)。
1231-6
ハーフソールの際に、ときどき尋ねられるのですが、削るんですよね?と。
恐らくハーフソールが収まる厚み分を、凹ますと思われているようなのですが
凹ますのでも削るのでもなく、「荒らす」という表現が
適しているかと思います。

靴底は仕上げのワックスや染料で表面がコーティングされておりますので
そのままですと接着剤が効きません。
ザラザラ面に塗布する事ではじめてそれぞれの素材に食い付き固定します。
1231-14
1231-11

ですので、表面のワックスや染料を取り除くことと、
表面をザラザラにする意味で表面を荒らしてハーフソールを取付けております。
荒らしているので厚みはほとんど変わりないかと思います。
荒らす際も底縫いの糸に触れないように注意しています。

なお、革底は繊維素材ですので、接着剤の一回の塗布では
接着剤が染み込んでしまいますので、必ず時間をおいて二度塗りを
行ってから取り付けとなります。
そうすることで表面に接着剤が残り接着効果が高まります。
逆に厚塗りになってしまうとかえって剥がれ易くなるので注意ですが。

2.ヴィンテージスチールのメリット
2017122600
摩耗し易いつま先部分の減りが、ハーフソールに比べ長期間保護できる。

こちらもデメリットではありませんが、つま先以外はそのままですので、
底縫いの糸が擦切れる事や、革底なので滑り易いなどがあります。

1231-19
一般的にはビンテージスチールを取付ける際は、スチールが収まる厚み分を
革底を凹ませて削りますので、必然的に底縫いの糸を切ってしまいます。
当店では、なるべく糸を切らない深さに微調整しながら取付を行っております。


3.ハーフソール・ヴィンテージスチール併用仕様のメリット
0214-11

摩耗し易いつま先は、ヴィンテージスチールで保護、
その他の部分はハーフソールで保護できますので…最強です。


ハーフソールだけですと、摩耗し易いつま先部分のラバーが、
どんどん減ってしまうので、その部分をスチールで保護します。
(つま先があまり減らない方もいらっしゃいますので、その方は
ハーフソールの選択でも宜しいかと思います)

ハーフソールのつま先部分以外は、比較的なかなか減りませんので、
併用ですと、初期投資は掛かりますが費用対効果やランニングコストを
鑑みますと、ベストの補強かと思います。

この仕様も、適時部分交換することで、オールソールは今後必要ありません。
0214-5
なお、併用ですと画像でも分かるように、ラバーソール厚で
スチールが収まる凹み厚を確保できますので、革底は凹ます(削る)ことなく
取付を行うことが可能です。

***********************************
以上がそれぞれの補修概要となります。

こういった補修は、履いて摩耗してからでいいかな、
と思いがちですが、あとで補修するつもりであれば、履き始めに
補修(補強)をすることをお勧め致します。

底縫いの糸が擦切れてしまったり、底に穴が開く程擦り減ってしまってから
補修するんであれば、底の厚みが目減りしていない状態で保護したほうが
快適ですし、余計な補修費等も掛かりませんし、綺麗に仕上ります。
スマホを購入してから3ヶ月後に、画面の保護シールは貼りませんよね。

以上、長文になりまして失礼致しました。
1231-33
HPアイコンロゴアウトライン

ampersandand at 15:03|Permalink