フチ巻き

2017年10月23日

だいたい折れるのはオロビアンコ 持ち手交換とフチの擦れ篇

持ち手が折れるというのは、オロビアンコ以外あまり
依頼されることはないのですが、それにはやはり理由があります。
BEFORE
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持ち手中央部分で中の芯材が折れてしまっております。
その影響により、芯材が片側へと移動してしまい、
付け根部分では芯材が不足しフニャフニャ状態…。

オロビアンコの芯材がすべてこの素材と云う訳ではないのですが、
分解してみますとやはりこの樹脂系のパイプの芯材が入っておりました。
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樹脂素材ですので、例えば鋭角に曲げられたりしますと
パキッといってしまうことがあるかと思います。
また経年劣化により、ポキッといくこともしばしばあるかと思います。
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芯材の付け根部分は、本体に添うように断面は
斜めにカットされているのですが、断面が鋭角にカットされたままの
芯材の場合、徐々にその角が革に刺さって突き破るという事例もありました。

今回の芯材が、角が落としてありましたので
その点は改善されてきているようです。
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持ち手交換の際の、縫製取付けですが、
直に鞄本体に縫製する方法の方が費用は抑えられます。

直というのは、付け根部分を縫製する際に、
外装と内装を一緒に縫ってしまうので内装部分にも
縫い目できるということです。
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ただ直接縫い付ける場合でも、付け根部分の縫製する位置の内装部分に
ポケットやファスナーがある場合ですと、その部分が一緒に縫われてしまい
使用できなくなってしまいます。
その場合は、内装を一部分解し間で縫製する方法となります。

製品の場合、付け根部分の縫い目というのは、まず外装のみに縫い付けられ、
その後、内装が本体にセットされてからトップラインなどで縫製されます。

内装とは別に付け根部分を縫製するには、
内装の一部を分解するか、またはトップラインを分解し、
外装と内装の間にミシンを指し込んで縫製する方法になります。
ですので、分解縫製する手間が増えますので、
その分費用が割増しになります。

それでは、まずは持ち手を製作します。
芯材には、堅く編まれたロープを用います。

ちなみに、樹脂系の芯材を用いれば、芯材のみの交換も
可能な場合はありますが、結局は同様に劣化し折れてしまいますので、
当店では樹脂系の芯材を用いた補修は現在行っておりません。

持ち手の修理経験から、今回のようなカチカチの
丸芯の持ち手の場合には、ロープが最適かと思います。

樹脂系の芯材同様に堅い仕上げにもできますし、
劣化による割れの心配もなく、屈曲にも柔軟に対応できます。
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なお、柔らかい感触のにしたい場合はフェルト芯など、
仕上げたい感触により芯材はそれぞれ異なります。
持ち手が堅いので、柔らかなフェルト芯へ変更(作り替え)
されたいという事案も稀にあります。

ロープを巻き込むので、今回はあまり関係ありませんが
革も縦横と伸び易い方向がありますので、なるべく繊維が伸び難い方向で、
型入れするようにしております。
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付け根部分は革を二重にし補強します。
この部分が本体と持ち手の境目の部分ですので
加重が一番加わりますので補強は重要となります。
また、芯材が左右に移動しないようにポケットの役割にもなっています。
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革が二重の部分は革の段差が表面にでないように
なだらかに漉き加工を施します。
コバ部分も綺麗に削り上げ、表面を堅く絞めます。
その後、染料を入れて持ち手を仕上げます。

そうしまして次に本体に縫い付けてゆきます。
先程お伝えしましたように、内装部分とは別に縫製しますので
今回はファスナーポケットの中の内装を一部分解しまして
ミシンを差し込み縫製してゆきます。
(分解したところは付け根縫製後に再度縫製致します)
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ファスナーポケットのサイド部分を分解し、そこからミシンの腕を
差し込んで縫製する訳ですが、関係ない内装生地を一緒に巻き込んで
縫製してしまわぬように、手探りで寄せておきまして、
外装と持ち手を縫製してゆきます。
外装にも、ポケットが被さっていますので、その部分も持ち上げ縫ってゆきます。

黄色の部分はマスキングテープになります。
このテープで持ち手を固定している訳ではなく、付け根部分が
本体に垂直に固定されているのかを確認する為の目印になります。

かなり無茶な体制で縫製してゆきますので、接着にて仮固定していても
縫製している間に、徐々に付け根が傾いてしまう可能性もありますので
念の為、ズレてしまったら分かるように、
ガイドライン的な感じで貼ってあります。
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こんな感じで、外装の裏面に貼ってある芯材の部分に縫製されています。
といっても、ミシンを差し込んで…というくだりは、
なかなか文章では伝わらないかと思います。

例えて云うならば、内視鏡手術みたいな感じです。
本来の手術部分とは離れた部分に切り込みを小さく入れて、
なるべく傷口は小さく的な雰囲気です。

ちなみに、もう片側面には内装面に縫い目ができております。
今回の鞄は、内装の側面底部分が、外装部分と一緒に縫製されていた関係で
片面部分の付け根付近には、内装の間からミシンが
届かない状態となっておりました。

幸い、その片面にはなにも収納機能などはありませんでしたので
直に縫い付けても問題はありませんでした。

ルイヴィトンのモノグラムなどでは、
内装部分に縫い目が出来ているかと思います。
これは外装の生地と内装の生地が貼り合わさっているので、
間で縫製することができないので、直に縫製されている為になります。
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AFTER
オリジナルの革より、質の良いものを使用しておりますので、
付け根部分の膨らみ形状が綺麗に表現できました。
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丸みもぱつぱつでいい感じです。
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今回はここで終了ではなく、続いてフチの擦り切れ補修になります。
外縫いのパイピングは宿命的にこのように擦り切れてしまいます。
ただ最近思ったのですが、この仕様ですと交換や補修にて
元通りに修理が出来るので、そう考えますと悪くない仕様なのかもしれません。
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前回のCOACHのようにフチ部分を交換すれば新品と
同じ状態に戻る訳ですし、今回のように補強でも見た目の影響は無く
補修は可能です。

これが、内縫いの仕様ですと擦り切れた場合には、
デザインを変更し、角にレザーパーツを宛てがったりしませんと
補修が出来ない訳です。
ですので、この縁取り仕様も悪くはないのではないかと思うのであります。
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底角の擦れもありますが、このようなブリーフ鞄ですと、
上部のフチも痛み易かったりします。
というのは、本体にはポケットなどが付いていますので、
その部分の素材もフチ巻きで一緒に覆っております。

ですので、何重にも素材が重なっている部分というのは
フチが堅くなり曲がりません。
それにより、堅くなっている部分が支点になり、曲がり易くなります。
そうしますと、支点部分は尖りますのでぶつかり易く、
擦れ易くなり、フチ巻きも痛み易くなっております。

ですので当初、底角部分と上部の折れ部分と云う感じで
離ればなれでフチ巻きを補修補強する予定でしたが、
画像/赤括弧底部分   画像/赤括弧屈曲部分
(*画像は補修後のものになります)
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観察していくうちに、痛んでいる部分が意外に広く点在している状態が判明し、
離ればなれで補強を行うと綺麗じゃない…ということで
結局は、上部の黄色から黄色矢印までをまつめてフチ巻きすれば
繫ぎ目は目立たないだろうということで、
側面ぐるっとをまとめて補強することに。
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フチ巻きをあたらに巻き付けてミシンでカタカタカタ…。
と云う感じで完成です。

繋いでいるのは先程の黄色矢印部分になります。
繫ぎ目は段差なく漉いていますので、
連結部分はあまり分からないかと思います。
AFTER
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フチ補強することで、使い込まれてややへたり気味の鞄に
しゃきっと感がでまして、怪我の功名といった感じでしょうか。
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2017年10月20日

昔のCOACHが好きなんです。 擦り切れと補色篇

先日「コーチ」が、社名を「タペストリー」に変更するというニュースが
ありましたが、ブランドも生存競争が大変なようです。
「COACH」という名前は残りますが。

今回のご依頼品はそんなコーチの鞄になります。
母親の鞄だったものを、娘さんが新たに使い始めるにあたって
綺麗にしたいとのこと。

BEFORE
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ご覧のように、今のコーチとは違いレザーレザーしております。
80年代に製造されていたグローブレザーの鞄になります。
内装の生地もなく、革のみで製作されています。

COACHは、もともとこのような肉厚のグローブレザーを
用いた、革製品の製造から始まったブランドのようです。

創設者のマイルス・カーン、リリアン・カーン夫妻は、
野球のグローブが、使えば使い込むほど味が出て、
かつ丈夫なので、そんなグローブを参考にして
革製品を作り始めたらしいのです。
*ただし、ブランド名のCOACHは、野球などのコーチとは関係が無いとのこと。

いまでは、モノグラム生地を使った鞄などをよく見かけますが
80年代の、このグローブレザーを用いていた頃の
COACHの鞄がお好きな方が、ご依頼にしばしばご来店されます。

そして皆さん口を揃えて
「今のCOACHは、好きではないのです」と。
確かにこの当時と、今のCOACHとではテイストが異なっておりますし。

そんな昔のコーチがお好きな方々の鞄は、
革の乾燥、色褪せやフチの擦り切れ補修が定番となっております。
製造から3、40年近く経過しておりますので、その間
一切お手入れを行っていなければ、しょうがない感は否めませんが。

使用されているグローブレザーは、今時の婦人鞄に使われているような
表面を厚く顔料で塗装されている革と違い、染料で軽く自然な感じで
仕上げられているので、お手入れしないでおりますと、
色褪せ乾燥は生じ易いかと思います。
その分、ナチュラルな「革らしさ」に富んでいる訳ですが。

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「野球のグローブが、使えば使い込むほど味が出て、かつ丈夫なので…」
と、カーン夫妻のブランド創設話がありますが、
これはお手入れしてのことですので、何もお手入れしなければ…。

ご依頼品もご多分に漏れず表面はカサカサで色褪せています。
そして、外縫いの鞄には宿命的な症状になりますが、
フチが擦り切れております。
擦り切れも、結局はお手入れ不足に起因するところも大きいです。

人の皮膚も、冬の乾燥時期にはカサカサと乾燥しますと
粉が吹いてあかぎれしてしまうと思います。
乳液や保湿剤にて皮膚に潤いを与えることで
擦れてもカサカサし難くなります。

革も皮膚と同じく乾燥しますと同様です。
ただ皮膚のように新陳代謝がないので、痛み初めてから
お手入れを行っても完全には元通りになることは難しくなります。
ですので、「痛んでから」というよりは日々のお手入れが重要となります。

ちなみに、レザーの場合は、「皮」ではなく「革」の表記かと思います。
雑誌などでも、レザーに関して書かれている文章で
しばしば、「皮」の文字が何度も使われていたりしますと、
「校閲さ〜ん、どうした〜」と思ってみたりしています。

そんな記事を読んでおりますと、私の頭の中では
皮膚で出来た、鞄や靴が無意識に想像されてしまいますので…。
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内側の革部分は、やや乾燥しておりましたが
昔のままに近い色合いででキープされていました。
染料仕上げの革は、紫外線により色褪せが生じ易いので
内側部分はそれを免れていた感じです。
この部分を参考に補色は行いたいと思います。

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擦り切れているフチ部分は巻き直すしかありません。
今回の場合は、全体的に擦り切れている箇所がいくつか
点在しておりますので、全周交換となります。

巻き直す際には、耐久性を考えてオリジナルより
気持ち厚めの革で巻き直すことにします。
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「赤」といっても、カーディナル、ワインレッド、スカーレット、
マゼンタなどなどと、いろんな赤色がありますので
色合わせが難しい色のひとつです。

今回は、ちょうど同じ色味の赤色の革の在庫がありましたので
そのまま使用できそうです。
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まずはフチ巻きから補修してゆきます。
長年の使用により、鞄のフチはイレギュラーに変形していて、
均等にフチを巻き付けていくのには梃子摺ります。

製品の段階では、このように手作業で巻いているにではなく
ダダダダっと縫製と同時に自動で巻き付けながらできるのですが
補修の場合は、アナログでちまちまとひと辺ずつ巻いてゆきます。

巻き付けながら縫製するアタッチメントを
以前注文しようと思い、治具メーカーに問い合わせたのですが、
巻き付ける素材や厚み、縁取りの幅によって、
ひとつひとつオーダー製作となるとのこと。

修理では依頼品によって、その都度設定が異なりますので、
オーダーなんてしてられないということで
地道に手作業となっています。
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縫製、補色を行い保湿ケアも幾度か繰り返しまして
完成となります。

AFTER
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製造からおよそ30年ぐらい経過しておりますが、
表面の痛みはありましたが、補色と保湿も行い
これからも十分活躍できる状態となりました。

母親が使い、その後、娘に受け継がれてまた数十年…。
30年後に私がまだ生きておりましたら、
ふたたび、フチ巻き交換で孫の方にご依頼を受ける日も
くるのでしょうか…。

その時は、すでに隠居しているかと思いますが、
ご依頼とあらばお受け致します。
ただ、恐らくその頃には手は震えているでしょうし、
目がかすんで、針に糸が通せるかも怪しいかなと思います
今日この頃…。
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ampersandand at 22:12|Permalink