修理
2020年11月19日
TUMIの3wayリュックの持ち手が傘をさしても雨に濡れる案件。
今回のご依頼はいつも通り現行品のTUMIの持ち手が痛んでいるので
旧モデルの丈夫な仕様に変更のご依頼でしたが、実は傘をさしても
持ち手が庇からはみ出て雨に濡れるのでどうにかなりませんか?
というお題も追加された案件となります。
そもそも飛び出ている持ち手については常々私も思っていた次第でした。
雨に濡れる、ではなく何かに引っ掛けて転倒しないのだろうか?と
安全面での心配でしたが。
それにデザイン的にもどうなんでしょう、自分では見えないのでそこまで
気にならないのかもしれませんが。
それに持ち手が飛び出て雨に濡れてしまいやすい状態であれば
革は濡れて乾いてを繰り返し、乾燥、硬化、擦り切れという
悪循環にまっしぐら、それに芯材のスポンジも劣化してしまいますので
悪く考えれば、持ち手の寿命を縮めて買い替えてもらおうキャンペーン
設定なのかもしれませんね。
この考えは、TUMIが旧モデルの丈夫な持ち手から現行品の柔な持ち手へと
仕様変更した時点で私はそうなんだろうなと思っていましたが。
本体のバリスティックナイロンは軍事用に開発されたナイロンなので
摩擦や引裂にとても強いのでなかなか痛まない、ということは
なかなか新しいカバンに買い替えてくれないということです。
旧モデルのナイロンベルトに革が巻いてある仕様であれば傷んだ革だけ
巻き変えれば使えてしまうので、じゃあ持ち手ごとしか交換できないように
すれば、という感じだったのでしょうか。
といっても当店みたいなお店が交換していってしまうのですが。
ちなみに、TUMIのリュックで使用されているナイロンはそれを踏まえて
裂けやすい設定になっているかもしれません。
ナイロン生地が裂けた、というお問い合わせがしばしばありますので。
とりあえず今の持ち手の状態で収まるのか試してみました。
正面の持ち手は内側に倒すとすんなり収納できました。
で、ここには隠しマグネットが仕込まれているのでこれが抑えになって
飛び出してこない感じです。
親指先端あたりにマグネットがあります。
では背面の持ち手はどうなんでしょうか。
付け根の連結金具がポケットの外側についているので縁が邪魔をして
内側に折りたためない状態です。
それにこれはもう交換する持ち手なので無理やり折り曲げていますが
新しい状態でこのようにするのは気が引けますね、付け根が折れるので。
なのでオリジナルの持ち手では収納することができない、ということになります。
3wayリュックを企画した時にTUMI社のデザイン会議でこの点は問題に
ならなかったのでしょうかね?
リュックのストラップは収納できるようになっているのだから
持ち手は?と誰も気づかなかったのでしょうか。
ではまずはいつも通り旧モデルのナイロン革巻き仕様の持ち手を製作し
取り付けから。
現行品の持ち手は芯材にスポンジを使っていて、スポンジを革で包んでいる
だけですので使っていくうちに手のグリップで雑巾を絞るようにどんどん
捻れていきます。
最終的には革も擦り切れてスポンジも破断して終了・・・。
丈夫な旧モデルの持ち手仕様の場合は、ナイロンベルトに革を縫製し
巻き込んでいるので、持ち手が伸びることもなくまた握り部分は
二つ折りにしているのでナイロンと革が4重に重なり適度な硬さもあり
ヘタリにくく変形もし難い仕様になります。
TUMIの重い鞄にはこのくらいでないと釣り合わないと思います。
本体の連結金具に固定して持ち手完成です。
持ち手の長さはそれぞれの鞄で設定が異なるのでオリジナルの
設定に倣って製作しています。
この鞄は一番長い設定になっていました。私が統計を採ったところ
TUMIの持ち手の長さはだいたい3パターンあるようです。
ただどうみても伸びたにしては中途半端な長さの持ち手もあったりするので
設定として6パターン用意しています。
当店でTUMIの持ち手巻き革交換(旧モデル)、または現行品から旧モデルへの
仕様変更で使用する革はタンニン鞣しの革で適度にオイルを含ませた革を
使用しているので乾燥しにくくなっています。
(それでも定期的にはレザーローションで保湿して頂くと寿命が伸びます)
そして握りにくくならない程度にオリジナルより革の厚みも増して
耐久性を高めています。革の質はオリジナルより上等ではないかと思います。
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では追加のお題の持ち手の収納の件ですがこんな感じです。
これが・・
こうなって
背面ももちろんスッキリ。
ナイロンベルトは負荷が掛かる連結金具部分は耐久性を増すために二重に
重ねて通しているので固いのですが、ちょうどポケットの淵の部分では
折り曲がるのですんなり内側に倒すことができます。
これはわざわざ今回の為の仕様ではなく通常の設定でこうなりますので
以前当店で同様の交換をされたお客様の鞄は同じように収納できるように
なっています。
正面は隠しマグネットでポケットを抑えていましたが背面のポケットには
それがありません。背負うと背中と鞄で抑えられ収納した持ち手は
出てこなそうですが確約はできません。
ですのでポケットを抑える留パーツが必要でしたが、もともとの持ち手に
ついていた両手の持ち手を纏めるループが巧いこと再利用できましたので
追加の製作費用を抑えることができました。
もともとついていたオリジナルのパーツだけあって
馴染んでいるな〜と思う今日この頃・・・。
ampersandand at 11:30|Permalink│
2019年10月26日
ミルフィーユな持ち手。 グッチの持ち手交換篇
貼り合わせのみで作られた持ち手というのはいずれバラバラに
剥離してきてしまうのでご購入の際はお気をつけ下さい。
持ち手は手に触れて汗ばみますし、手の部分は屈曲します。
その部分が縫い合わされずに貼り合わされているだけであれば
必ず剥離してきてしまいます。
今回の持ち手は厚みが5.0mmぐらいありますが、実際の革の厚みというのは
表と裏に使われている1.0mmずつとなり、間に挟まれている部分は
紙を圧縮したボール紙のような合成素材になります。
GOYARDの持ち手も同じ作りですのがこちらは縫製してありますので
剥離してはきませんが、付根部分が使用により捻られてしまい
芯材のボール紙が割れて付根で千切れがちです。
この圧縮素材はしばしば鞄に使われていますがとても厄介…。
経年劣化してくると、ミルフィーユのように表層が剥離し始めてきます。
ですので剥がれた部分を接着しても、その下層の層が引っ張られて
また剥離してきますので補修が不可となります。
ですのでこのような仕様の持ち手は作り直しになってしまいます。
ちなみに腰に巻くベルトも同様に接着のみで作られている製品がありますが
その場合もやはり同じ症状が起ります。
表と裏で貼り合わせ、それを曲げて使用する製品は構造に無理があるので
そもそも剥がれてしまいます。
貼り合わせたものを曲げると内側に皺が寄りますが
皺がよるという事は裏面のほうが長さが余っている状態です。
使い込んでいくと表側の革は伸ばされ内側の革は弛んでいきますので
最終的に元々は同じ長さであった表と裏の革の長さが異なってしまい
接着では固定できずに剥離してきてしまうという事です。
新たに作成する場合はもちろん縫製した仕様でお作りします。
そして合成素材は使わずすべて革で構成します。
1.6mmのオイルヌメ革を両面に使用し、間の芯材には2.5mmのヌメ革の
床革を挟み込みます。
合計6.0mm弱の厚みに重ね合わせてから革包丁で仕上げの幅に裁断します。
断面はグラインダーで滑らかに削り、角ばったエッジも落とし
手触りを良くしておきます。
断面は毛羽立ちますのでコバ(断面)に目留め液を塗布し落ち着かせます。
最後はコバ用の塗料でブラックにコーティングします。
ミシンで縫製し本体にセッティングして完成。
セッティングはオリジナルと同じ仕様で手縫いにてステッチを掛けます。
縫わない持ち手の剥離というのは、そもそもブランドは承知していて
そのような仕様にしているので、たちが悪いのか、長く使うモノではない、
という考えという事なのか…。
なかなか値段と質が合わない世の中だな、と思う今日この頃…。
剥離してきてしまうのでご購入の際はお気をつけ下さい。
持ち手は手に触れて汗ばみますし、手の部分は屈曲します。
その部分が縫い合わされずに貼り合わされているだけであれば
必ず剥離してきてしまいます。
今回の持ち手は厚みが5.0mmぐらいありますが、実際の革の厚みというのは
表と裏に使われている1.0mmずつとなり、間に挟まれている部分は
紙を圧縮したボール紙のような合成素材になります。
GOYARDの持ち手も同じ作りですのがこちらは縫製してありますので
剥離してはきませんが、付根部分が使用により捻られてしまい
芯材のボール紙が割れて付根で千切れがちです。
この圧縮素材はしばしば鞄に使われていますがとても厄介…。
経年劣化してくると、ミルフィーユのように表層が剥離し始めてきます。
ですので剥がれた部分を接着しても、その下層の層が引っ張られて
また剥離してきますので補修が不可となります。
ですのでこのような仕様の持ち手は作り直しになってしまいます。
ちなみに腰に巻くベルトも同様に接着のみで作られている製品がありますが
その場合もやはり同じ症状が起ります。
表と裏で貼り合わせ、それを曲げて使用する製品は構造に無理があるので
そもそも剥がれてしまいます。
貼り合わせたものを曲げると内側に皺が寄りますが
皺がよるという事は裏面のほうが長さが余っている状態です。
使い込んでいくと表側の革は伸ばされ内側の革は弛んでいきますので
最終的に元々は同じ長さであった表と裏の革の長さが異なってしまい
接着では固定できずに剥離してきてしまうという事です。
新たに作成する場合はもちろん縫製した仕様でお作りします。
そして合成素材は使わずすべて革で構成します。
1.6mmのオイルヌメ革を両面に使用し、間の芯材には2.5mmのヌメ革の
床革を挟み込みます。
合計6.0mm弱の厚みに重ね合わせてから革包丁で仕上げの幅に裁断します。
断面はグラインダーで滑らかに削り、角ばったエッジも落とし
手触りを良くしておきます。
断面は毛羽立ちますのでコバ(断面)に目留め液を塗布し落ち着かせます。
最後はコバ用の塗料でブラックにコーティングします。
ミシンで縫製し本体にセッティングして完成。
セッティングはオリジナルと同じ仕様で手縫いにてステッチを掛けます。
縫わない持ち手の剥離というのは、そもそもブランドは承知していて
そのような仕様にしているので、たちが悪いのか、長く使うモノではない、
という考えという事なのか…。
なかなか値段と質が合わない世の中だな、と思う今日この頃…。
ampersandand at 19:30|Permalink│