持ち手

2020年11月19日

TUMIの3wayリュックの持ち手が傘をさしても雨に濡れる案件。

20201022000
20201022001
今回のご依頼はいつも通り現行品のTUMIの持ち手が痛んでいるので
旧モデルの丈夫な仕様に変更のご依頼でしたが、実は傘をさしても
持ち手が庇からはみ出て雨に濡れるのでどうにかなりませんか?
というお題も追加された案件となります。

そもそも飛び出ている持ち手については常々私も思っていた次第でした。
雨に濡れる、ではなく何かに引っ掛けて転倒しないのだろうか?と
安全面での心配でしたが。
それにデザイン的にもどうなんでしょう、自分では見えないのでそこまで
気にならないのかもしれませんが。

それに持ち手が飛び出て雨に濡れてしまいやすい状態であれば
革は濡れて乾いてを繰り返し、乾燥、硬化、擦り切れという
悪循環にまっしぐら、それに芯材のスポンジも劣化してしまいますので
悪く考えれば、持ち手の寿命を縮めて買い替えてもらおうキャンペーン
設定なのかもしれませんね。

この考えは、TUMIが旧モデルの丈夫な持ち手から現行品の柔な持ち手へと
仕様変更した時点で私はそうなんだろうなと思っていましたが。
本体のバリスティックナイロンは軍事用に開発されたナイロンなので
摩擦や引裂にとても強いのでなかなか痛まない、ということは
なかなか新しいカバンに買い替えてくれないということです。

旧モデルのナイロンベルトに革が巻いてある仕様であれば傷んだ革だけ
巻き変えれば使えてしまうので、じゃあ持ち手ごとしか交換できないように
すれば、という感じだったのでしょうか。
といっても当店みたいなお店が交換していってしまうのですが。

ちなみに、TUMIのリュックで使用されているナイロンはそれを踏まえて
裂けやすい設定になっているかもしれません。
ナイロン生地が裂けた、というお問い合わせがしばしばありますので。

とりあえず今の持ち手の状態で収まるのか試してみました。
20201022003
20201022005
正面の持ち手は内側に倒すとすんなり収納できました。
で、ここには隠しマグネットが仕込まれているのでこれが抑えになって
飛び出してこない感じです。
親指先端あたりにマグネットがあります。
20201022004
では背面の持ち手はどうなんでしょうか。
20201022006
付け根の連結金具がポケットの外側についているので縁が邪魔をして
内側に折りたためない状態です。
それにこれはもう交換する持ち手なので無理やり折り曲げていますが
新しい状態でこのようにするのは気が引けますね、付け根が折れるので。
なのでオリジナルの持ち手では収納することができない、ということになります。

3wayリュックを企画した時にTUMI社のデザイン会議でこの点は問題に
ならなかったのでしょうかね?
20201022008
リュックのストラップは収納できるようになっているのだから
持ち手は?と誰も気づかなかったのでしょうか。

ではまずはいつも通り旧モデルのナイロン革巻き仕様の持ち手を製作し
取り付けから。
現行品の持ち手は芯材にスポンジを使っていて、スポンジを革で包んでいる
だけですので使っていくうちに手のグリップで雑巾を絞るようにどんどん
捻れていきます。
最終的には革も擦り切れてスポンジも破断して終了・・・。

丈夫な旧モデルの持ち手仕様の場合は、ナイロンベルトに革を縫製し
巻き込んでいるので、持ち手が伸びることもなくまた握り部分は
二つ折りにしているのでナイロンと革が4重に重なり適度な硬さもあり
ヘタリにくく変形もし難い仕様になります。
TUMIの重い鞄にはこのくらいでないと釣り合わないと思います。
20201022012
本体の連結金具に固定して持ち手完成です。
20201022013
20201022021
持ち手の長さはそれぞれの鞄で設定が異なるのでオリジナルの
設定に倣って製作しています。
この鞄は一番長い設定になっていました。私が統計を採ったところ
TUMIの持ち手の長さはだいたい3パターンあるようです。
ただどうみても伸びたにしては中途半端な長さの持ち手もあったりするので
設定として6パターン用意しています。

当店でTUMIの持ち手巻き革交換(旧モデル)、または現行品から旧モデルへの
仕様変更で使用する革はタンニン鞣しの革で適度にオイルを含ませた革を
使用しているので乾燥しにくくなっています。
(それでも定期的にはレザーローションで保湿して頂くと寿命が伸びます)
そして握りにくくならない程度にオリジナルより革の厚みも増して
耐久性を高めています。革の質はオリジナルより上等ではないかと思います。



[サフィール] スムースレザーにしっとり潤いを与える ユニバーサルレザーローション 保湿 ツヤ 汚れ落とし 靴磨き バッグ 無色 レザークリーム メンズ free 150ml


では追加のお題の持ち手の収納の件ですがこんな感じです。
これが・・
20201022017
こうなって
20201022019
背面ももちろんスッキリ。
20201022018
ナイロンベルトは負荷が掛かる連結金具部分は耐久性を増すために二重に
重ねて通しているので固いのですが、ちょうどポケットの淵の部分では
折り曲がるのですんなり内側に倒すことができます。

これはわざわざ今回の為の仕様ではなく通常の設定でこうなりますので
以前当店で同様の交換をされたお客様の鞄は同じように収納できるように
なっています。
20201022015
20201022016
正面は隠しマグネットでポケットを抑えていましたが背面のポケットには
それがありません。背負うと背中と鞄で抑えられ収納した持ち手は
出てこなそうですが確約はできません。

ですのでポケットを抑える留パーツが必要でしたが、もともとの持ち手に
ついていた両手の持ち手を纏めるループが巧いこと再利用できましたので
追加の製作費用を抑えることができました。
20201022020
もともとついていたオリジナルのパーツだけあって
馴染んでいるな〜と思う今日この頃・・・。

ampersandand at 11:30|Permalink

2020年05月24日

在宅勤務中にTUMIの鞄を修理する方が増加していました。

明日から自粛解除となりそうですがリモートワークも終了という
感じなのでしょうか?
2020オリンピックの際の電車の混雑緩和の目的で、
政府はリモートワークを盛んに推奨していましたが導入はいまいち、
しかしこんな形で導入されることになるとはです。

ただ実際にはそこまで導入もされていない、という報道もあるようですが。
ちなみに私の仕事は全く在宅ではできないので日々通いでしたが。

さて日頃は毎日毎日持ち歩いている鞄なので、ほころびが気になってはいたけど
なかなか修理に出せなかった鞄。
在宅勤務中に治してしまおうとする方が多いようで、自粛期間中には
鞄の修理が急増したように思います。

持ち手革交換
202004200039
202004200040202004200043
補修後
202004200037
革はタンニン鞣しのオイルレザーを使用していますので、使用により徐々に
しっとりと手に馴染んでいき、オリジナルの革よりは乾燥し難くい仕上がりに
なっています。といっても革なので時々は保湿クリームでメンテナンスして
頂くと宜しいかと思います。

こちらのモデルは持ち手仕様変更補修。
202004200035
この現行モデルのスポンジ入りの持ち手は、芯材がスポンジなので使っていくと
持ち手が徐々に捻れ始めて伸びていき、最終的には破断してしまうという
改悪モデルとなっております。
ですので補修の際は、旧モデル仕様のナイロンベースの持ち手に付根から変更し
巻き革もTUMI定番の三角モデルでの仕上げとなっています。
202004200036
補修後
202004200044
現行モデルのスポンジ入りの持ち手は、長さが三段階あるようなので
ご依頼品の持ち手の長さに合わせてそれぞれ製作しています。
182

他にも色々と修理は可能です。
こちらもよくある肩掛けストラップの金具を固定している革パーツの破断。
9
補修後
6
使用する革を少し厚めにしナイロンを内側に貼り付けて縫製したパーツを
使用することで、荷重が加わった際に革が伸び難くなるように考慮して
補修しています。

こちらは肩当て合皮面の交換。
TUMIの七不思議の一つ、なぜか裏面に合皮素材を用いています。
ですので劣化してくるとスーツに黒い粉が拡散されてしまいます。
交換の際はもちろん革を使用し、封入されているへたったスポンジも入れ替えて
パンパンにしています。
874

とりあえずコロナ第一波はこのまま落ち着いてくれるといいのですが、
秋冬はインフルにコロナと、かなりカオスな状態になるという
専門家の方の意見もあるようです。
なのでなるべく引き篭もれるよう秋冬に向けて在宅ワーク環境を検討するか、
もしくは多摩川超えの自転車通勤にすれば、誰とも濃厚接触はしないので
電動自転車導入も要検討かなと思う今日この頃…。


ampersandand at 21:19|Permalink

2020年01月30日

GUCCIの持ち手交換とコバの塗装剥離。

鞄の修理のご相談でしばしばあるのですが、コバ部分の塗装の剥離。
コバというのは断面部分になります。
その部分は革の断面になるので色がついていません。
なので製品ですと通常は塗装がされています。
余白30
012820000

革の断面は裁断したり削ったりしているので毛羽立っています。
ですのでそのまま塗料を載せても綺麗なつるっとした塗膜になりません。
ですのでクロム鞣しの革の場合は削った後には毛羽立ちを抑える溶剤を施し、
乾燥させて表面を硬化させ、また削る。

その後、また塗料を塗布し削り、また塗料を塗布し…。
と既製品では量産しなければいけないので、
こんな手間が掛かる事はしていられません。
なので毛羽立ちも貼り合わせた革の段差も何もかも一度で覆ってしまえる様に
分厚い樹脂性の塗料をこんもりとコバに一度塗布させて仕上げています。

で、そのような仕上げの持ち手やストラップを使用していると
どうなるか…
ご想像がつくと思うのですがやはり剥離してきてしまいます。

分かり易く云うとかさぶたのような感じで塗料がコバにくっ付いているので
持ち手のように手で常に触れる部分でぐりぐりされたり、
屈曲している部分というのはより剥離してき易いと云えます。

この塗料が剥離してくると大変見苦しい感じになります。
色が徐々に剥げてくるのではなく、ぼろっとかさぶたが取れる様に
部分的に色のかさぶたがこそげ落ちてしまいます。

かさぶたであればある意味快感かもしれませんが、
こちらはとても不快感でしょう、剥離してきた部分はささくれ立って
見苦しいですし。
012820001
012820002
で、今回のご依頼品ですが一見問題がなさそうですが、
コバの塗膜が剥離していたり、その部分をDIYされたようで黒いボンドのような
樹脂がコバにぐにゅぐにゅと塗布されています。
012820005
でよくご相談されるのですが、この塗装を綺麗に治して欲しいと。
残念ながら当店ではそのような補修は行なっておりません。

その理由としては幾つかあるのですが、そもそも同じような
剥離してきてしまう樹脂塗料を使用していないという点でしょうか。

仮に補修するとしても塗装をやり直すには、持ち手を本体から外して
グラインダーでコバの樹脂塗料をすべて削り落とす必要があります。
(部分的に補修を行なったとしても、あちこちいずれ剥離してきてしまうので)
しかし形状によって残らず削り落とせなかったり分解する際に
分厚い塗料が剥がれずに革にダメージが生じる場合もあります。

綺麗に落とせたとして同じ塗料で仕上げてしまうと意味が無いので
地道に下地を仕上げて塗料を載せて仕上げていく方法になりますが、
既製品のように樹脂塗料でコバを仕上げている製品というのは
そもそも芯材などに樹脂塗料で仕上げないとコバが綺麗にまとまらない
生地や不織布などの素材が挟み込まれている場合がありますので
その点でも補修不可となってしまいます。

ですので当店で出来る事といえば持ち手を作り直すという事になります。
で、今回も作り直しです。
012820003
途中経過を撮影するのを忘れてしまって3分クッキング的な流れになりますが
オリジナルは中心にやや硬めのスポンジが配されていましたが、
少し頼りないので硬めのヌメ革を用いて中央を同様にこんもり
するように仕上げています。
この方が使用していても持ち手がへたる事もありません。
柔らかくへなへなとへたってくると、それだけコバ部分も捩れて
痛み易くなりますので。

持ち手がかちっとしてより高級感が出たのではないかと思います。
AFTER
012820004012820006
コバの仕上げも下地から仕上げまで地味な作業になりますが
塗装しては削りを繰り返して表面は綺麗になるように仕上げました。
この仕上げ方法では使用していても樹脂塗料のようにごそっと
剥離してくることはありません。

ただどうしても革製品ですので経年で擦れたり色褪せてくる事はありますが
その場合は部分的にもコバの再塗装は可能ですのでご安心ください。

その他の持ち手補修事例はこちら
持ち手

ampersandand at 19:30|Permalink

2019年10月26日

ミルフィーユな持ち手。 グッチの持ち手交換篇

貼り合わせのみで作られた持ち手というのはいずれバラバラに
剥離してきてしまうのでご購入の際はお気をつけ下さい。
102219009
102219011

持ち手は手に触れて汗ばみますし、手の部分は屈曲します。
その部分が縫い合わされずに貼り合わされているだけであれば
必ず剥離してきてしまいます。

今回の持ち手は厚みが5.0mmぐらいありますが、実際の革の厚みというのは
表と裏に使われている1.0mmずつとなり、間に挟まれている部分は
紙を圧縮したボール紙のような合成素材になります。
GOYARDの持ち手も同じ作りですのがこちらは縫製してありますので
剥離してはきませんが、付根部分が使用により捻られてしまい
芯材のボール紙が割れて付根で千切れがちです。

この圧縮素材はしばしば鞄に使われていますがとても厄介…。
経年劣化してくると、ミルフィーユのように表層が剥離し始めてきます。
ですので剥がれた部分を接着しても、その下層の層が引っ張られて
また剥離してきますので補修が不可となります。

ですのでこのような仕様の持ち手は作り直しになってしまいます。
ちなみに腰に巻くベルトも同様に接着のみで作られている製品がありますが
その場合もやはり同じ症状が起ります。

表と裏で貼り合わせ、それを曲げて使用する製品は構造に無理があるので
そもそも剥がれてしまいます。
貼り合わせたものを曲げると内側に皺が寄りますが
皺がよるという事は裏面のほうが長さが余っている状態です。
使い込んでいくと表側の革は伸ばされ内側の革は弛んでいきますので
最終的に元々は同じ長さであった表と裏の革の長さが異なってしまい
接着では固定できずに剥離してきてしまうという事です。
102219016
新たに作成する場合はもちろん縫製した仕様でお作りします。
そして合成素材は使わずすべて革で構成します。
102219013
1.6mmのオイルヌメ革を両面に使用し、間の芯材には2.5mmのヌメ革の
床革を挟み込みます。
合計6.0mm弱の厚みに重ね合わせてから革包丁で仕上げの幅に裁断します。
102219014
102219015
断面はグラインダーで滑らかに削り、角ばったエッジも落とし
手触りを良くしておきます。
断面は毛羽立ちますのでコバ(断面)に目留め液を塗布し落ち着かせます。
最後はコバ用の塗料でブラックにコーティングします。
102219017
ミシンで縫製し本体にセッティングして完成。
セッティングはオリジナルと同じ仕様で手縫いにてステッチを掛けます。
102219018102219019
縫わない持ち手の剥離というのは、そもそもブランドは承知していて
そのような仕様にしているので、たちが悪いのか、長く使うモノではない、
という考えという事なのか…。

なかなか値段と質が合わない世の中だな、と思う今日この頃…。

ampersandand at 19:30|Permalink

2019年01月15日

120kgまで持てる鞄。 オロビアンコ篇

鞄の持ち手の芯が途中で折れる修理ってだいたいオロビアンコ。
ほかのメーカーでも樹脂製の芯材って使っているところはあるのでしょうが
持ち込まれる鞄はオロビアンコなんです。

オロビアンコ000
持ち手の芯材はいくつか種類がありまして大きく分けて
ロープ、ガラ紡、、樹脂系のパイプなどがあります。
ガラ紡っていうのはフェルトみたいな柔らかい素材を
細長く裁断してそれを糸でぐるぐるとまとめたもと。
こんな感じのもの。
オロビアンコ100
なのでこの芯材を使用すると感触がふにゃっとした感じに仕上ります。
(巻く革の厚みによって異なりますが)

紳士鞄の場合は、荷物も重たくなりますし柔らかい芯材では耐えられませんので
だいたいがロープや樹脂系の芯材が用いられています。

樹脂系の芯材と云うのは劣化してくると今回のように
割れてしまいますし、また鋭角に曲がるとパキッと割れてしまうと思います。
オロビアンコ008
あとはエンド部分の処理が鋭角な加工で処理されていると
革を突き破ってしまうという壊れ方もありました。

ですので当店では間違いのないロープ素材を芯材に用いております。
ロープと云っても編み方や素材でまた色々とあります。
私のお気に入りのロープは金剛打ロープというもの。

これも同じ名称でもメーカーによって編み方や硬さが異なるので
毎回無くなった際には最寄りのホームセンターを何店舗かはしごして
お気に入りのロープを探しています。

AMAZONでも検索するとたくさんでてくるのですが、
画像では編み目や硬さが確認できないのですし、
20メートルとかの玉で購入するので、違っていると他に使い道がないので
無駄になってしまいます。

今回購入のロープはラベルを捨てずにとっておいたので、
次回からはアマゾンで購入できそうです。
オロビアンコ001
手で持つ部分で折れてしまっています。
劣化により曲がった部分でぽきっと…。

持ち手が壊れる原因としては芯材の偏りもあります。
偏りとは、端から端まで左右均等に芯材が入っているはずなのですが、
使用するにつれて、どちらかに芯材がずれてきてしまう現象です。
パーカーの紐が片側にビヨーンという感じでしょうか。
オロビアンコ009
片側に芯材がずれてきてしまうと、持ち手付根部分のもっとも
負荷の掛かる箇所に芯材が無く空洞になってしまうので
その部分で縒れて裂けてきてしまいます。

これは制作の際に端から端まで芯材を封入していないのが原因かと思います。
またはそもそも芯材の長さが足りていない仕様書になっているかと思います。
量産であれば必要な尺で芯材はまとめて裁断されているのでしょうから。

樹脂製の芯材の場合は、表面がつるつるしているので長さが足りていないと
内部でずるずるとずれ易いのかもしれません。
ロープですと表面の凹凸で摩擦が起こりずれていき難いような気がします。
Felisi の持ち手もロープが使われていますが、付根裏革が
付いていないので、ロープが時々ずれてきてしまっているものも見受けられます。

付根裏革というのはこの部分
オロビアンコ010
オロビアンコ011
丸い部分は芯材を革で巻きますので一枚ですが、付根部分も
そのままでは一枚になってしまいます。
ですので付根部分は裏革を付けて二重にし、負荷の掛かる部分の
補強の意味合いと、芯材がずれてこないよう蓋の役目を担っています。

持ち手のこの部分には負荷が一番掛かりますので、
鞄の大きさや形状によってはナイロンを挟み込んだりして
強度を持たせたりもします。
ちなみに使用している革の厚みが2.0mm以上ある製品などは
この部分の裏革を付けていない仕様もたくさんあります。

ただ裏革を付けていないと、芯材が寄ってきた際に
付根からちょろちょろとでてきてしまう事もあります。

今回は付根部分のステッチが入る部分までロープを入れ込み
裏革も施しているので強度や芯材の問題は生じません。
オロビアンコ012オロビアンコ013
ご返却の際にはお客様から、
「また折れたりしませんか?」とお尋ねがありましたが、

「このロープは120kgまで耐えられるので、
 千切れたり折れる前に鞄の底が抜けますよ」と店主。

持ち手の交換の際に少し問題になるのが内装部分。
製品の段階では外装に持ち手を縫い付けてから内装を取り付けているので
いいのですが、交換の際には内装がすでに付いているので
どうしましょう…。

持ち手の縫製箇所の内装部分にポケットやファスナーがなければ
そのまま内装側に縫い目がでるようにしたほうが費用は安く仕上ります。
製品でも内装側に縫い目がでているものもたくさんありますので
基本的にはそのまま縫い付けで良いかと思います。

ただファスナーがあったりするとその部分が縫い付けられてしまうので
分解したりする必要が生じる場合もあります。
今回は片面は何もなし
オロビアンコ005
片側はファスナーがあります
オロビアンコ004
なのでファスナー側はどうするかというと、ファスナーの内部のポケットを
一部分解して内装と外装の間にミシンを突っ込み縫製し、
内装部分に縫い目がでないように仕上げています。
もちろんポケットの分解したところは再度縫製して仕上げています。

今回のようなポケット内部を分解してできる程度であればいいのですが、
外観を縫製している部分を大掛かりに分解しないといけないとか、
縁取りしている部分を分解しなければならない場合などは、
分解費用だけでもそこそこ掛かってしまうので、補修方法は要相談になります。

AFTER
縫い目がでています。
オロビアンコ019
縫い目が隠れています。
オロビアンコ018
オロビアンコ022オロビアンコ020
オロビアンコ021
修理するとオリジナルよりは品質が悪くなっている?と思われそうですが
使用している革はオリジナルより質のいい革を使用していますし、
持ち手の仕様もより壊れ難い設定で制作しています。

ただ、すでに完成している状態から部分的にお治しするとなると
今回のように一部縫い目が新たにできてしまうなどはあります。

続いて併せてご依頼の補修箇所ですが
鞄の宿命、角擦れ補修になります。
オロビアンコ002オロビアンコ003
鞄の縫製方法として内縫いと外縫いがあります。
内縫いというのは、縫製してひっくり返して縫い目が内側になっていて
外側にはでない縫製。
外縫いというのは外観に縫い目が見える縫製となります。

今回の鞄は外縫いですべての素材をまとめて縫製しています。
そしてその部分を革で縁取り縫製しています。
以前はこの方法って必ず今回のように擦り切れてしまうので
余り良い方法ではないな、と思っていました。

しかし考えようではとても良い仕様なんじゃないかと最近は思っております。
ヨーロッパでは縦列駐車する時には、前後に駐車している車に
こつこつとバンパーを当てて車を動かして自分の駐車スペースを
確保したりもします、わたしも旅行で訪れた際に目撃しました。
そもそもバンパーはいわゆる車の膝宛てのような
傷がついてもいい装備という考えらしいのです。

同じようにこの縁取りも鞄のバンパーといって
いいんじゃないかと思うのです。
地面の擦れから本体を守り、擦り切れたら交換すればいいのです。
この縁取りも今回のように部分交換もできますし、
最終的には全周を交換する事も可能ですので。

今回は底部分周辺をコの字で部分交換します。
まずは擦り切れている部分の縁取りを取り除きます。
オロビアンコ007
で、新たに革で縁取りを行い縫製致します。
既製品の縁取りは0.5から0.8mmくらいの厚みが主流です。
交換の際には、0.8mmの場合ならば、少し厚みを増やして1.0mmくらいで
巻き直しています。
あまり厚くするとぼてっとなってしまい印象が悪くなってしまうので
少しだけ厚みを増やして耐久性を高めるようにしています。

既製品の場合は、バインダーなどのアタッチメントを使用する事で
ミシンで縫製しながら自動的に縁取りできるのですが、
修理の際にはそのようなアタッチメントを厚みや素材ごとに用意できませんし、
また鞄自体も使用により癖がついたりしていびつに変形しているので、
恐らくアタッチメントを使用しても、両面綺麗に針が落ちずに
縫製することは難しいのではないかと思います。
オロビアンコ014
ですのでまずは革を巻き付けてから縫製し、余分な部分の革を
カットするという手間を掛けて綺麗に仕上るように工夫しています。

AFTER
オロビアンコ015オロビアンコ016オロビアンコ017
ご覧のようにしっかりした底鋲が付いていてもやはり角は擦れてしまいがちです。
今回の鞄ですと荷物を入れた際には端の角の部分が垂れ重さで下がってしまい
擦れてしまっているというのも考えられます。
底鋲をあと15mmくらい外側へ取り付けると、端の部分は下がらずに
擦れ難くなるのではと考察できます。
オロビアンコ023
繫ぎ目も新しく巻き付ける革の端を薄く漉いているので段差が目立たずに
違和感無く補修できているかと思います。
この補修も、逆に角の補強パーツのようにあえて革の段差を残して
補修する方法もあります。
それぞれ鞄のデザインや補修度合いによって調整して補修しています。

以上、「鞄のバンパー」篇でした。

ampersandand at 11:30|Permalink

2018年07月01日

TUIMI 祭り(トゥミフェス) 2018 梅雨明篇

180521013

TUMIの持ち手革交換は何かの法則なのか、急にまとめて
どさっとご依頼が集中することがしばしばございます。
わたしはそれを「トゥミフェス」としてひとり盛り上がっている
次第であります。

TUMIのナイロンは防弾チョッキの素材だけあってか
通常であれば持ち手がこんな状態になっていれば底の角は
おのずと擦り切れているのが通常ですが、いまのところ毛羽立っている
鞄はよくありますが、擦り切れて解れている状態のTUMIは
まだお目にかかっておりません。

BEFORE
ナイロンのベースに革を巻いているタイプ。
ベースのナイロン部分は、時代によって織り目が異なっているみたいです。
180526005
180526001180526002
180526014180519012


BEFORE
革に革巻きタイプ
手に触れる部分がカリカリに変質ってしまうのは分かるのですが
付根部分までどうしてカリカリになってしまうのでしょうか…。
汗がじわじわ浸透してしまっているのでしょうか。
180526016
180519001180519000
180526000180526004
革に革を巻いているので剥がしても革がでてきます。
革に革巻きタイプは、ナイロンベースに比べて革に革を巻いているので
その分、手に持つ部分の厚みはかなりしっかりとしています。
180519004
180526018
分解して新たな革を縫い付けていきます。
鞄が重いのでTUMIの革巻き交換は指先がつりそうです。
180519016
180529004

* * * * * * * * * * * * * * * * * * 

AFTER

TUMIの持ち手交換で使用している革は、タンニン鞣しの革を用いております。
ですので、使い込む程にしっとりと手に馴染み艶が増していきます。
厚みはオリジナルより若干厚めの革を用い、適度にオイルを含んでおりますので
通常より乾燥し難くなっています。

ナイロンに革巻き
180526015
革に革巻き
180521003
革に革巻き
180529002180529003180529000


冒頭でナイロン生地のTUMIは持ち手がボロボロでも底の角は
まだ問題がない事が多いとお伝え致しましたが、
それではオールレザーのTUMIではどうかといいますと…
BEFORE
180519002180519003
そこはTUMIでも革は革ですので、他の革製品同様に擦り切れております。
そして本体も擦れが目立つ鞄が多いです。
持ち手交換の際には、角や全体の色褪せなどを確認されてみてください。

全周パイピングを交換するという方法もありますが
痛んでいるのは底の角部分だけですので、部分的に交換致します。
TUMI以外でもそうですが、このようなブリーフタイプのパイピングは
革が何重にも重なっている部分があったりしてフチの厚みが
変化しているのでちょっと厄介です。
180519006180519005180519007
上から二重に被せてしまう方法もありますが、今回は痛んでいる部分を
切除して巻き直します。
180519009
巻き直すと擦れて色褪せている周囲と新しく巻き直した黒革で
色の差が出てしまうので、境目や周辺は補色をして色も馴染ませておきます。
全体的な補色については別途補色費用が掛かります。
180519010180519011
AFTER
180521004180521005180521009
底の角を痛めない為には、なるべくざらざらした路上には
置かないぐらいの対処法しかありません。

それとなにより日頃からのメンテナンスがとても重要になります。
持ち手部分はどうしても、手汗や手垢で革自体が変質しやすいので
仕方がありませんが、底の角部分や全体の乾燥は日頃の保湿ケアで
かなり寿命が違ってきますのでぜひ行ってみてください。

と、毎回力説しておりますが恐らくほとんどの方は
やらないんでしょうね…。
それでも一応メンテナンス商品をご紹介しておきます。
お勧めのクリームは、コロンブス社のブリオクリームです。

保湿成分には化粧品にも添加されている、ホホバオイルが配合され、
ビーズワックスとヒマワリワックス天然成分も配合され表面の
保護も行えます。
有機溶剤は使われていませんので安心してお使い頂けると思います。
使い方はいたって簡単、薄く塗布してから軽く
乾拭きするとほどよく艶がでます。

完全に白くしらっちゃけてるような擦れは別途補色が必要ですが、
軽く擦れた程度であれば、このクリームで保湿することでしっとりと
目立たなくなります。

*店頭でも僅かではありますが販売しております。

[コロンブス] columbus ブリオクリーム BRILLO (ムショク)



付属のコットンを使用するより、Tシャツの端切れなどの生地を
使用した方が、塗布し易くクリームも無駄にならないかと思います。
HPアイコンロゴアウトライン

ampersandand at 22:58|Permalink

2018年06月30日

しびれる手縫い。

ときどき業者の方から外注を受ける事があるのですが、
こちらは家具や文化財などを修理されている方からのご依頼品。
180606007
100年とか200年とか前の?古い木製のトランクに付いていた
持ち手の製作になります。
両サイドの窪んだところに金具や革ベルトでトランクに固定される
仕様となっています。

歪んだ形状からもとの寸法を推測し製作していきます。
厚みが8.0mm程度あるので、このような持ち手は裏表に銀付き革を用い
間には床革などが用いられております。
現在販売されているトランクや厚手の持ち手のものは、
芯材には圧縮した紙を用いられていることが多いいようです。

今回は私が持ち手を製作し、取付ける際には本体の経年変化に合わせて
ご依頼の職人さんがエイジングを行うという段取りになっていますので
紙の芯材を用いてしまうと、エイジング処理の際に始末が悪くなりそうなので
すべて革を用いて製作する事にしました。

まずは失敗…。
180606009
何年か前に他の業者さんからこのタイプも持ち手の製作を30本ほど
ご依頼頂いた事があったので
、製作に当たって問題点は
特になかったのですが…製作してみるとなんだか柔らかい…。
こんな硬さだったかしら?と。

その時の持ち手30本
180626

使えなくもないのですが、トランクの大きさが浴槽ぐらいあるので
ちょっと頼りない感じも致します。
で、作り直しです。

作り直しでの仕様は、裏表の革は変えずに
栃木レザーさんのタンニン鞣しのオイルレザーを用い
芯材には靴底に使うベンズを採用する事にしました。

ベンズは牛のお尻部分の革で一番繊維が詰まっている部分になり
靴底用ですのでプレスを掛けて硬く仕上っています。

この組み合わせが採算を考えなければ、最硬なんじゃないかと思われます。
オイルレザー裏表/3.2mm
芯材ベンズ/5.2mm
合計8.4mm

しかし最硬なだけに縫うのが大変なことに。
以前30本製作した際は、厚みは10mmでしたが八方ミシンでぎりぎり縫えたので
今回もミシンでさくさくと…。
しかし縫ってみると縫えない…、縫えないというか針は貫通するのですが
繊維がつまり過ぎていて、針が革に挟まったまま抜けないという状態に。

そんな時はこのミシン。
0727-13
あまり出番のないこのドイツのミシンで縫ってみると、表面のオイルレザーに
ミシンの抑えの跡がくっきりと残ってしまうので見栄えが悪く断念…。

このミシンは、サドルレザーとかベンズなどの表面が硬い革や
抑え跡が目立たない革を縫製するのに適しているのかもしれません。
表面にオイルレザーを貼り合わせている今回の革の縫製には
不向きなようです。
しかし靴底を縫うミシンではこの不定形は綺麗に縫えないので
残すは手縫いということに。
180606002
まずは穴開け。
菱目打ちでは8.0mm以上ある厚みは当然貫通できないので
一目一目菱切りで貫通してゆきます。

不定形なので穴あけの際は、左手で持ち手を抑えながら
裏面に垂直に針がでるようにちらちら裏面を確認しながら
右手で菱切りをくりくりと貫通していきます。
二本目を穴開けし終える頃にはおのずと手や腕がじんじん…。
逆に硬過ぎて取付けが心配になります。

これは以前製作した別の持ち手の試作品の画像になりますが
こんな感じで少し中央をたわませて取付けます。
180630

穴開けし終えたところをひと穴ずつ麻糸で縫っていきます。
縫いの行程は同じテンポと力加減で、
ひたすらシュルシュルとシュルシュルと…。
180606001180606000

縫い終わる頃には程よいだるさがありますが、
手縫いには達成感があるので嫌いではないのです。
180606006180606005180606004
手縫いだと糸を引く強さで縫い目の締り具合がかわり、
それによって縫い目のぽこぽこ感が違って見えます。
強く引けば縫い目がよりぽこぽこしていきます。

今回は適度な力加減で縫った感じですが、
最後に糸目を叩くかどうかしばし悩みます。

糸目がふっくらとしている感じもレトロな感じでいいかなとも思うのですが、
ちょっと主張し過ぎかなとも。
100年経過した持ち手なら、糸目も落ち着いて見えてきているはずでは、
ということで糸目を軽く木づちで叩いてふっくら感を
落ち着かせて完成となります。
180609-00009

今回はトランクの内装交換もご依頼頂いたのですが、
その過程はご依頼主さんのご希望により、今回は公開NGとなっております。
外注でご依頼頂く案件は面白いものが多いのですが、
しばしば大人の事情で公開NGがつきものです。

こちらは先程の30本の持ち手をご依頼頂いた際に、
実際に使用されているところの画像提供して頂いたものとなります。
(もちろん許可は頂いております)
UNITED ARROWS 京都店にて。
鞄の持ち手ではなく店舗の什器の引き出し?の引手として使用されております。
6年前なのでそれから改装されていなければまだあると思いますが…。
180626-2
「外注 その後…」 UNITED ARROWS 京都店にて。

ちなみに外注だとこんなものも以前製作していました。
ナイフケースの製作依頼です。
一般のお客さんからは流石にご依頼はない事例です。
ご家庭でこんなナイフは使わないですからね。
これは確か工場でタイヤだったか、なにかゴムをカットするナイフと
伺った記憶があります。
sheath knife case
180630-3
180630-2
作れそうなものは承っておりますので
ご依頼お待ちしております。
HPアイコンロゴアウトライン






ampersandand at 11:46|Permalink

2018年06月26日

このタイプのTUMIも持ち手交換できます。

毎月毎月カンペールのオールソール同様に、コンスタントに
持ち手の革交換を行っているTUMIですが、このようなモデルのTUMIの
持ち手も作成可能です。
180526007
TUMIのHPを見てみますと現行品のブリーフタイプの鞄は
すべてこの持ち手仕様でした…厄介ですね。
TUMI
TUMI HPより
これまでの定番のこのモデルは、ナイロンベルトや革ベルトに
被さっている革の部分のみを交換すれば良かったのですが
現行品のタイプですと付根から新たにすべて製作する必要があります。
•今までのモデルはこちらタイプ
180519012
シンプルな形状であれば別段、交換費用は変わりはしなかったのですが
この特殊な形状ですとおのずと費用は高騰してしまいます、約1.5倍程度…。
180526009180526008
持つ部分にはスポンジが封入されていて膨らみ、付根部分は平になっています。
芯に入っているスポンジがすこし片側に寄ってしまっていています。
そして本体との連結パーツとの隙間はきちきちです。
果たしてミシンで縫えるのでしょうか…。
180526010
手に触れていた部分の革はカリカリな無惨な状態で
中のスポンジも潰れて変形しています。

膨らんでいるところと、平らなところ、スポンジが途中まで入っているなど
どこまでオリジナル通りに再現できるかというところが面白くもあり、
難しいところになります。

へたっているスポンジを入れ替えるので、弾力や膨らみ具合や素材の厚みや
革と合わさった時の合計の厚みなど検証する点がいくつかあります。
180608002
オリジナルの持ち手幅と同じに設定したいのですが、その場合に
スポンジをくるんだ際に必要な革の距離と、オリジナルの幅とのバランスで
スポンジの幅を14mmにするか、13mmだと膨らみが物足りないし
15mmだとぱつぱつで縫えないか…など1.0mm単位で組み合わせを試して
一番再現性が高い組み合わせはどれか試作し検証していきます。
180608001
それと持ち手が本体の連結パーツと組合わさっている部分が
きつきつでそもそも縫製できるのかも懸念点でしたのでそれも
試作品を通してみて、縫製位置を確認していきます。

「そもそも製品が縫われているのだから縫えるでしょうに」と
思われると思いますが、まず縫製するミシンというのはいろんな種類があり、
またその抑え部分のアタッチメントというのも無数にあります。
ご家庭のミシンでもボタンホールを縫う際に交換する部分のあれです。

ですので、メーカーなどはその製品に合わせてアタッチメントを
オーダーして製作していたりするので、同じ縫製手順や縫い位置をとると
縫えない場合があります。

また製造工程では、持ち手は本体と組み上がっている状態で
縫製している訳でなく、持ち手単体または持ち手と連結パーツとの
組み合わせのみで縫製しています。

修理の場合は、重い鞄本体がぶら下がった状態で
持ち手を組んでいかなくてはなりませんので、いくつかの物理的な制約も、
試作の段階で手順や仕様を調整、確認していきます。
で、できたのがこの型紙。
しかしこの後にまた修正が必要になるのですが…。
180526013
180608003
早速裁断していきます。
革はタンニン鞣しのオイルレザーを用います。
オリジナルより耐久性は高いのではないでしょうか。
タンニン鞣しですので使い込む程に艶が増してしっとりとしていきます。
適度なオイルレザーですので乾燥も通常よりはし難いかと思います。
*でも定期的なメンテナンスは行ってください、寿命が伸びますので。

パズルのようにスポンジ、芯材、ナイロンなどを配置していきます。
負荷が掛かるループ部分には伸び止めのナイロンと裏革を宛てがい
補強を行っています。
180608004
で、一旦この状態まで仕上げます。
部分的にコバの部分はこの段階で仕上げておきます。
180608005
付根部分は本体の連結パーツと組み合わせてから縫製を行います。
ですので持ち手部分を縫製する時も、何処まで縫製し、
この部分の縫い目の三つ分を後で縫い重ねて付根の縫い目と繋げていくなど、
縫い目の数も試作の段階で決めておきます。

そうしてようやく完成となります。
AFTER
180609006180609007
オリジナルの付根の平らな部分にはナイロン柄の型押しがしてありました。
折り返した裏面にはなかったので、わざわざあの状態にしてから
表面に型押しを行っているようです。
このような金型を用いての部分的な型押しまでは残念ながら再現はできません。

この型押しはデザイン的の役割だけではなく、膨らんだスポンジと
付根の平らな部分との境目を、くっきりと際立たせる為の表現になっていて、
また封入されたスポンジが型押し加工により、それ以上に下がってこないように
する為の役割があったようです。
しかし実際はずれて下がって(片寄って)きておりましたが…。

持ち手に封入されたものが片側によってしまうと、
その部分は空洞になってしまい強度が弱くなるので仕様の
改善が必要かと思います。
180609008180609009
ですので今回の製作においては、スポンジとの境目部分には
ステッチを追加することで、平らな部分との境目をくっきりとさせ
尚かつスポンジが下がってこないような縫製を行いました。
追加の縫製もオリジナルの縫製ラインから自然に繋げて縫製しているので
そう云われてもどこのことなのか分からない知れません。
180609010180609011
付根の型押しの柄部分以外はほぼ再現できているのではないでしょうか。
TUMIのこの持ち手の仕様が、これからの定番になってしまうと
ちょっと大変だな〜と思う今日この頃。

旧モデルの持ち手の仕様の方が(ナイロンや革ベルトに革を巻いている仕様)
重いTUMIの鞄には、耐久性の観点から適しているかもしれません。
•今までのモデルの補修事例
180603000
こんなことを書くと、今回の現行モデルに旧モデルの持ち手の仕様で
製作できませんか?と問い合わせがきそうですが、それもできなくはないです。

靴をオールソールする際に、レザーソールからラバーソールにしたりと
自分仕様にカスタムするように、鞄も自分の使い勝手に合わせて
カスタムというのもあると思います!

2019年追記
→結局予想通り、現行モデルから旧モデル仕様へのご依頼が集中しております。


ampersandand at 17:52|Permalink

2018年01月16日

赤は嫌い。 余儀なくされる持ち手の色変更篇

プレゼントした鞄ですが、赤は嫌っ。ということで
赤い革のパーツを茶色に変更をご希望。

BEFORE
20171226792017122680
変更はできるのですが、補修費用ももったいないですし
新品ですので、これはこれで使われてみてはとご案内しましたが
構わないという事で製作となりました。

ただ、持ち手の取付け方法が縫い割りという仕様で
交換後、同じように縫製するには本体部分を広範囲に一度分解しないと
できないですし、ナイロン素材ですと分解すると縫い目が解れてきます。
使えるようになれば大丈夫という事で、外縫いになる事でご了解頂きました。
2017122681
赤い引手や根革も交換しないとです。

プレゼントというのは何を貰うかというよりは、
贈ってくれた人が、あれやこれやと自分の為に考えてくれて、
作ってくれたり探してくれたり、そういう自分の事を思ってくれた時間を
贈られるもの、とはいいますが…

しかし、そんなことはいってられません。
モノより思い出、いや、現代は思い出よりモノでありますっ。
AFTER
201712266620171226592017122657201712265820171226562017122655
そんな間違いを犯せない婚約結婚指輪を贈る方法として、
最近は、まずダミーの指輪を渡し、相手にOKをもらってから
女性が気に入ったデザインの指輪を作るというサービスもあるようです。
プロポーズはOKだけど、この指輪は嫌っ、なんて困っちゃいますしね。
HPアイコンロゴアウトライン

ampersandand at 11:30|Permalink

2017年11月03日

TUMIの持ち手修理と、痛み軽減についての考察。

毎月毎月コンスタントに、TUMIの持ち手革交換を行っておりますと、
その痛み具合の状態にはパターンがありまして、
持ち主さんが、右利きなのか左利きなのかが分かるような気がします。
(郵送依頼品なので実際はどうかは分かりませんが)。
102301610230121023015
TUMIのかばんは、デザイン的に鞄の裏表があります。
正面は、ポケットがあったりロゴが付いていたりする面です。

通常はそのような鞄の場合は、人は正面を外側にして持つかと思われます。
次に、矢印部分の痛んでいる箇所ですが、これは二本ある持ち手の
片側だけにできています。

そして、巻き付けられた革を取り外して開いてみますと
それぞれの二つ折の裏表(右半分左半分)で痛み具合が異なっております。
102300910230081023010
ひび割れて痛んでいる面は、日常的に手に触れている面と云う事が分かります。
手あかや手汗により、革が変質しひび割れが生じたかと。

開いた革を観察してみますと、それぞれ裏表の四面で
二面ずつで、痛んでいる面と痛んでいない面があります。
痛んでない面というのは、面同士が重なっていて、
手に触れていないと推測できます。

手に持った時はこんな感じかと。
恐らくこの痛み具合だと右利きかなと推測。
1023014-2
矢印01部分が当たっていて、革が次第に擦り切れたのでは?と。
矢印02の重なり合う面同士は、手に触れないのであまり痛まなかった部分かと。

しかし、鞄の正面を外側に向けないで使う人もいるのでは?
という意見もあるかと思います。

しかしそれは、裏面にできたナイロンの擦れ具合で判断が出来ます。
裏面、つまりズボン側の持ち手付け根部分は、歩行の際にズボンに当たり
擦れることで、画像のような位置が、白く毛羽立っているのが確認できています。
この位置での、そして片側の擦れは外側では起こり難いかと思われます。
1023013
と、持ち主さんの利き手を推測しつつ、巻き革の型紙を作ります。
これはいくら推測を立てても、毎回微妙に長さが異なっています。

私の計測ブレもあるでしょうし、ナイロンが微妙に伸びている?
のではないかとも思うのであります。

2.0mmとかなので、型紙を再利用してもいいかなとも思うのですが、
補修の際には、すでに鞄に縫製されて湾曲している持ち手に
革を巻き付けてゆくので、その微妙な誤差が仕上りに影響を及ぼしますので
毎回型紙を製作し、革を裁断しております。

しかし、それでも淡い期待を捨てきれず、時々使えそうな数値の型紙は
捨てずに取っておいたりもしています。
1023007102300510230041023003
ではではタイトルの「痛みの軽減について」ですが、
日頃のお手入れはもちろんなのですが、
痛んでいる箇所の比較パターンから推測されることは…。

予想1.
持ち手は定期的に上下を変えて使用する(重なり方を逆にする)。
そうする事で、手に触れる面(痛む面)が偏らず、
ひび割れの進行を遅らせられるか。

予想2.
左右の手で毎日交互に持ってみる。
同じ位置に手が触れる事を防ぐ事で、部分的な
擦り切れの進行を遅らせられるか。
(同じ側で鞄を持ち続けると、骨格も傾いて歪むらしいですし)

と云うような感じでしょうか。
AFTER
102300210230011023000

しかし、こちらのTUMIの場合のように、先程の推測からは外れ、
手に持つ部分全体から痛んでいる方もいらっしゃいます。

靴もそうですが、同じものでも使用環境や使い方は
人それぞれですので、すべて同じように痛むということはやはりありません。
(これが修理の難しいいところです)
1103200
1103100
擦れなどの痛みは、どうしても使用により生じてきてしまいますが、
定期的に皮革用のトリートメントにてお手入れして頂ければ
保湿や、表面の保護もでき、痛みの進行を和らげますので
行って頂ければと思います。

「乾燥からの擦れ」を繰り返す事で、革はささくれて
ひび割れてきてしまいます。

以下ミシン掛けは、八方ミシンで行っておりますが
左手の指先のみで鞄全体を支えているので、重いTUMIの鞄は、
時々指先が耐えきれず、ツル時があります…。
(右手は車輪を回して針を動かしています)

もっと大きな鞄をミシン掛けする時には、左ひざで鞄を支えたりと
かなりアクロバティックな姿勢になります。
ですので、その時は股関節のあたりがツルわけですが…。

以前テレビで、海上に流れ出した油の流出を防ぐ巨大な
ネットみたいなものを縫製している高齢の職人さんが、
やはり同じように膝を使って巨大なネットを押し出しながら
必死にミシン掛けしている様子を見まして、ミシン掛けの大変さよりも
いつツルか、ツってしまうのか、ドキドキしながら見ていたのを思い出します。
11031011103102
11031041103103

ツッて作業に支障がでないように、
鉄分を多めに摂取しなければと思う今日この頃…。
明日はレバニラ、食べようかな。
HPアイコンロゴアウトライン

ampersandand at 11:23|Permalink