注文靴

2020年04月09日

ボタンブーツが出来るまで… 製甲からの完成篇。

前回で細かいところまで決まったのでようやく本番です。
それぞれ型紙に合わしてパーツを裁断し、組み立てる際に
革が重なる部分は漉き加工を行い製甲の下準備を。

製甲とは裁断したパーツを縫製して組み立てていく作業になります。
靴の製作はいくつか行程に分かれていまして、
デザイン、型紙、裁断、漉き、製甲、釣り込み、底付け、仕上げ
という感じでしょうか。
0408
20200330000
20200330015
型紙は靴型にデザインを描いてそれを平面に落とし込む作業になります。
三次曲面の立体を平面に落とし込むので矛盾が生じますが、
足したり引いたりと色々と駆け引きをして平面にしていきます。

例えばサッカーボールを想像してもらえると分かり易いかも知れませんが
あれって球体にするのに革パーツをパズルの様に組み合せていますよね。
昔ながらの黒白のデザインだと五角形や六角形のパーツ
を組み合せて球体にしてます。

靴型の場合は三次曲面なのでピースは複雑です。
単一の球体と違い、膨らんでいるところもあれば凹んでいる形状もあるので
ややこしや、ややこしや〜。

その型紙が合っているかどうかは革で試作をし、靴型に釣り込んでみて
正解かどうか分かるのですが、釣り込んだ結果、変な皺がでてしまったり
靴型に添わずに浮いてしまったりして何度やってもうまくいかない…
と、今回のようなほとんど余りやらないボタンブーツの型紙の場合は
どつぼに嵌る場合も多々あります。

ただ使用する革や釣り込む時の革の伸びをイメージし、
どの部分に面積をプラスしてどの部分をマイナスにして…
と右脳で想像しながら型紙を起こし、釣り込んだ際にぴたっと
一発でうまくいく時はなぞなぞの答えが閃いた時のような
気持ち良さがありますね。

ちなみにですが今回はボタンブーツということもあり、
縫製するミシンの構造(腕ミシン)の都合で、その順番で組み立てると
後々にこの部分が縫製できなくなる…
と、製甲途中で気づく事も今回は何度かあり精神的ダメージが甚大でした…。

パイピングの縫製。
パイピングはあまりやらないので緊張します。
202003300012020033000220200330003
ライニングの縫製。
はみ出ている部分は縫製後に市切りという道具で浚います。
20200330004
ボタンホール縫製。
今回はシンプルにぐるっと縫製。
20200330005
つま革縫製。
筒の部分と胴体部分を縫製していきますが、ミシンの構造により
今回のボタンブーツではそのままぐるっと一周縫製するのは厳しいので
何かと工夫が必要でした。
20200330006
製甲完成。
20200330007
釣り込みをして底付け途中まで。
20200330008
20200330013
底はマッケイ製法で底縫いを行ないました。
あとは前側にハーフラバーソールを取付け、踵周りは積上げとリフトの
取付けをし、底面をオールブラックに染めて完成となります。

ちなみに前回の最終確認の際に念の為、底周りの確認をとったところ…。
当初の打ち合わせではメンズライクにコバを張り出させて
靴底もボリュームのある感じでということでしたが、
最終的にはコバを出さずにすっきりとした感じ、ということになりました。

なので前回の試し履き靴ではコバありになっていますが、
最終ではコバ無し(丸コバ)になっています。

コバ無しになり底周りが華奢な雰囲気になるので、それではヒールも
寸胴(垂直)ではなくピッチドヒールというのもありますよ、とご提案。
ピッチドヒールというのは地面に向かって少しずつすぼめていく仕様に
なりますが、その方が今回のようなコバ無しのシングルソールの華奢な
雰囲気には相性がよいです。

完成。
200303
202003300112020033001020200330009
黒革は表面が平滑なスムースレザーを用い、白革は表面に皺柄のあるシボ革を。
シボ革を用いる事で表面に陰影の表情が生まれるので、スムース同士の
白黒の対比より白革と黒革のコントラストが少し和らいで雰囲気が
宜しいかと思います。

ちなみに黒色と白色で出来た靴を撮影するというのは難しいですね。
白飛びしてしまうか、影が潰れてしまうか…。
ホワイトバランスはどう調整したらいいのやら。

確かイギリスではインスタ映えしないので(巧く映せないので)
黒猫がたくさん捨てられてしまうというニュースがありましたが…
そんな奴は猫を飼うんじゃない!
と思う今日この頃…。



その他のボタンブーツの記事(カスタムリメイク篇)



ampersandand at 12:00|Permalink

2020年04月08日

ボタンブーツが出来るまで… パターン確認篇。

前回のサイズ確認で甲の部分が緩いので筒の部分の立ち上がりで
調整するということでパターンを調整して試作して履いてみて頂くと…
立ち上がりの位置が誤ってしまったようで…
前側がユルユルじゃぁないですか…。
190801002
ボタンブーツのオーダーに際してご希望としてはアンティークの
ボタンブーツのように筒部分は脚にぴたっと足袋の様にフィットした感じで
内側にはファスナー仕様というお題になっています。

まず脚にぴたっとフィットした、というのはなかなか難題で
しかもボタンブーツ…。

通常のブーツであればぐるっと革が一周しているので採寸した
寸法で塩梅を調節すればいいと思うのですが、ボタンブーツですと
ボタンを留める部分でパーツが載り合うのでその距離の調整分と
ボタンで固定するのでその分のボタンの足の遊び寸法などなど…
解決しなければならない部分が多過ぎますね。

で二回目のパターン確認。
190801001190801000
なぜだかどうしてぴったり…。
これは私の腕というよりはたまたまなんですね、完全に。
私としてはもう一回作って合うだろうなと思っていたので。
といってもこれを作る前には3回ほど作り直してシルエットを
調整してはいるのですが…。

逆にジャストサイズ過ぎて、内側のファスナーにテンションが
掛かり過ぎてしまいそうでちょっと不安でしたので少し緩めませんか?
とご相談してみると、このフィット感のままがいいということでしたので
どうしようかと思案…。

パターンがこれで仮決まりしましたのであとは微調整となります。
懸念部分のジャストサイズ過ぎてファスナーにテンションが
掛かり過ぎるのでは案件ですが、これはボタン部分の固定を糸ではなく
ゴムにすることで脚に合わせて距離が伸縮してよいのではないか?

ということで三回目試作ではその仕様で履いてみて頂くと、
すべてのボタンの固定をゴムにした事で、甲部分の押さえ付けが弱く
なってしまったということで、上から三個分のボタンのみを
ゴム固定にすれば脚(ふくらはぎ)に合わせてアジャストされ
ファスナーへの負担が軽減されるという解決法になりました。

それとボタンホールですが一般的にはボタンホールは穴は
糸で縁を縢るのですが、それだと今回は本番の白いシボ革では穴の部分が
主張し過ぎるということで、シンプルに縁にぐるっとステッチを施すのみ
ということになりました。

ようやくこれで本番の製作に入ります。
次回、製甲からの完成篇になります。

ampersandand at 15:06|Permalink

2020年04月03日

ボタンブーツが出来るまで… 自称 23.5cm・サイズ確認篇。

当初、短靴でということで承ったのはずなのですが、製作まで長らく
お待ち頂いている間にボタンブーツでということになってしまい…。
だいぶお待ち頂いていましたので今更ボタンブーツは作っておりませんよと
云うわけにもいかず…
ということで今回はボタンブーツを作ります。
*今回はデザインは自由でサイズはサイズオーダーにてご注文です。

まだ婦人靴では使っていない靴型を使用することになりましたので、
まずはサイズ確認用に幾つかサイズサンプルを製作。
order1668order1769
製甲している間に掛かってきた電話を取ったりしていたら…
すっかり裏鳩目を入れるのを忘れてしまいそのまま、トップラインを縫製して
しまったので仕方なく表鳩目にする事に…。

サイズを確認する用の靴なので表でも裏でもどちらでもいいのですが
一足だけ表というのもあれなのですべてのサイズを表鳩目にしてしまいます。
order1971
order2173order2274
order2577
製甲ができましたので次は釣り込み。
先芯や月型をセットしてアッパーを釣り込んで靴の形にしていきます。
order2476
order2982
order3083
採寸しても結局はその値は数字でしかないので、こちらでこの数字だと
これが丁度いいですね、と云ったところで最終的には履いた人が
どう感じるか、ですので実際に幾つかサイズサンプルを履いて頂いて
これとこれでは?と既製品と同じ様に比較して確認して
頂いた方が分かり易いです。

加えて、狭い店内を歩いても分からないので、サンプルの靴を履いて
お店周辺を歩かれて具合を確認して頂くとより安心です。

靴というのは洋服などとは違い、静止している状態でいくら合っていても
歩いてみたら、季節が変わったら、靴下の厚みによっては…
革が延びたら…と状態によって如何様にも変わっていってしまいますので
寸法というよりはぶつ合わせ、したほうがその誤差は
少なくなるんだと思います。

今回も普段は23.5を履かれているということでしたが採寸してみると
22.0か22.5ぐらいでした。
まず23.5を履いて頂くとこれぐらいかな…とお客様。
しかし触診してみると指周りの革はダブついていますし踵に隙間も、
23.0を履いてみて頂き、22.5…22.0…
190801003
結局はこの靴型ですと22.0が適正サイズでした。
この場合の適正サイズというのは、私がこれぐらいでいいですよ、
というのではなく、サイズ違いを履いて頂いてこれが一番気持ちがいい、
とご本人が思われたサイズになります。

サイズが合っているかどうかというのは難しいところで、
例えば洋服でもジャストサイズというよりは緩めの着心地が心地よいと
云う方もいらっしゃいます。
靴も寸法からこのサイズがジャストサイズ、と私が思ってもご本人が
窮屈または緩いと思われてしまうと、それは合っていないということになります。

ですので主観的な履き心地と、こちらの経験値的な部分を
擦り合わせてバランスがいいところが落としどころなのかと思います。

既製品の靴のサイズ調整でお持ちになられる方で、しばしば
おっしゃられるのが、私は少し大きいと感じたのだけど
お店の人にこれぐらいが丁度いいと云われたので…と。
それではダメです、もう少し自分の感覚を信じてみてください。

そう、あのブルースリーも云っています。
「 Don't Think. Feel!」
(靴を履く時は)考えるな、感じろ!と。
200403

こんなに小さくても履けるんだと、いつもと違うフィット感に
お客さまもちょっと驚いた感じでしたが、知らず知らずのうちに
「私は23.5cm」という思い込みでいつも23.5近辺の既製品を
購入されていたのだと思います。

そもそもこの靴のサイズ表記なんてあってないようなものなので
あまり信じないでいいかと思います、必ず前後の幾つかを試し履き
してみてください。

22.0で指周りの締め付けと踵のフィットも丁度いい感じでしたが
少し外反母趾気味な親指の付根が窮屈ということでしたので
この部分はのせ甲(靴型に革を盛って修正)で調節すれば
いい具合になりそうです。

ただ今の状態ですと、羽が完全に閉じているので甲の部分が緩いのですが
今回製作するのはブーツですので、それはシャフトの立ち上がりの
位置の調節でカバーする事にします。

次回はパターン確認篇になります。

ampersandand at 21:59|Permalink

2018年10月01日

修理製作のお店…というけれど。 注文靴篇

当店の屋号は、「靴と鞄の修理製作のお店 アンパサンド」
になりますが「修理」業務が忙しく、いっこうに
「製作」が行えていない現状であります。

また合間をみて製作してはいても、日々の業務でそのまま月日が
流れてしまい撮影した画像が行方不明で記事を書けず
そのままお蔵入り…ということも。

開業当初の目論みでは、修理依頼はそんなにこないだろうし、
ほそぼそと日用品などを製作して食い繋いでいこうかな
なんていう計画でしたが、
有り難いことに近隣や全国、はたまたときどき海外からも
郵送にてご依頼頂いている次第であります、感謝、感謝。

で、そんなこんなで製作も一応しているよアピールを兼ね、
忘れないうちに、最近の仕上った品を記事にしておこうと。
最近のといっても随分前にご依頼頂いた品になる訳ですが。

まずはデザイン。
デザインと云っても今回は店頭にあるサンプルをベースに
パターンオーダーにて製作となりました。
使用する革や飾り穴や鳩目の有無やソールなどなど
細々と選択して頂くという感じです。

サイズサンプルを幾つか履いて頂きサイズを確認。
店内でちょろちょろ歩いても感じは分からないので
そのままご近所を歩かれて確認して頂いてもらいます。
パターンオーダーでも、履き口が当たる場合など大掛かりな
修正でなければ足に合わせて調整可能です。
order0052
order0254
靴型にデザイン線を描きまして型紙を製作します。
靴型は三次曲面なので、これをパーツごとに平面に置き換える作業は
面白くもあり難しくもありという感じです。

立体を平面に起こし直したら、仮アッパーを製作し
つり込んでバランスを確認します。
羽の長さやキャップの大きさなどをミリ単位で調整を行います。
今回は二回ほど仮アッパーを製作して本番となります。

なかなか決まらない時は、型紙を直して仮アッパーというのを
何度も繰り返したりします。
で、だんだん目が慣れてしまいどれがいいのか分からなくなるので
一晩置いて翌日の朝に見てみると、初回に作った型紙が
よかったりなんていうこともしばしば。
こねくりまわすより、直感が大事という感じでしょうか。
ただ、他の人から見ればどれも同じ、と見えるかもしれませんが…。
order0153order0658
表革、裏革を裁断しまして組み立ててゆきます。
例えば今回の定番の外羽のデザインでも、裏革のパターンていうのは
生産国やパタンナーによってそのライン取りは結構違っています。

修理品の靴の内側を観察してよく勉強させて頂いています。
スペインのコストパフォーマンスのいい靴などは
とても効率的なパターン採りをしていたりします。

効率的な、というのは美しさというよりは革一枚からどう無駄なく
たくさんパーツを採れるか、縫製作業で手間の掛かる行程を減らせるかなどを
考えられているかという感じです。

私の場合は量産する訳でも、一刻を争うこともないので、
状態の良い部分の革を使い、基本に忠実にそしてちょっとずつ
創意工夫を重ねていくという感じです。
order0860
アッパーを組み立てる前に、中底の準備もしておきます。
中底は既製品ですと、圧縮したパルプ(紙を圧縮成形したもの)が
多く用いられていますが、当店ではじっくりと時間をかけて作られた
5.0mほどあるタンニン鞣しのショルダー部分の革を用います。
order0355order0456order0557
平らな中底を水に浸けて柔らかくし靴型に固定します。
癖付けにタイヤチューブを用いて靴型にぐるぐる巻きです。
タンニン鞣しの革はその可塑性により、形を記憶しながら乾燥していきます。

「可塑性」とは
固体に外力を加えて変形させ、力を取り去ってももとに戻らない性質。
国語辞典より


order0961
平らだった中底がこんな感じで靴底の形状を覚えます。
そして履き込んでいくと、徐々に自分の足型を覚えていくという訳です。
よくコップ一杯の汗が一日で靴の中に蒸発すると聞きますが、
革はその吸排性によりこの湿気を吸い込み、夜脱いでいる時に
今度は排出していくという訳です。

わたしのイメージでは、吸い込んだ湿気が革を柔らかくし
日中の歩行の際の荷重がゴムチューブ代わりに中底を癖付けし
夜の間に中底が、自身の足型を記憶していくという感じなのかなと思っています。
それは本体の革も同じことなのですが。

ちなみに「革底から湿気が抜ける説」という都市伝説については
以前も書きましたが、東京都の皮革機関のレポートにも、
靴内部の湿気の60%は靴の履き口から蒸発、残り40%は
靴内部に残っているとあります。
order0759
内部に残った40%は、革中底や革のライニング(裏革)に
一時的に吸収され、脱いでいる夜のうちに排出されるという
イメージでしょうか。

ですので蒸れる蒸れないに重要なのは、
革底かどうかではなく中底が革であるか、そしてライニングが
革であるか(顔料べったり仕上げではない革)かどうかが重要
ではないかと思います。

靴は何足かローテーションした方がいいというのは、
靴内部に溜め込んだ湿気を排出しきる前に、また履いてしまうと
室内干しの生乾きタオルを、毎日繰り返し使い込むようなもの
という感じですので。

アッパーが完成しましたら続いて靴型につり込みという行程に
なる訳ですが、作業風景の写真を撮り忘れたか、
または行方不明で見つからないので、途中の行程は
割愛しましてここで完成となります。

今回使用した革は、イタリアの伝統的な製造方法のバケッタ製法で
作られたショルダー部分の革になります。
いい具合にナチュラルシボがでていて、履き込む前からすでに
数年履き込んだ風格が醸し出されています。

同様の製法で作られた栃木レザー社のダークブラウンの革と
かなり悩まれておりましたが、こちらの赤味を帯びたブラウンが
手持ちの靴の顔ぶれと被らないというこでお決めなられました。
ソールはリッジウェイソール(ブラウン)仕様となります。

order1163order1567

オーダー品の記事を書いておきながらあれですが、
新規の靴の注文製作は現在は受付を行っておりません。
靴の注文製作自体なかなか修理業務と平行して1人で行うのは
難しいのではないかとここ数年感じております。

ですので、違う形態でどうにかできないかと
日々モヤモヤしている今日この頃…。
鞄も作りたいし、小物も作りたいし、できれば椅子も作りたい…。
今年もそんなモヤモヤさまぁ〜ずな夏でございました。

ampersandand at 18:00|Permalink