ALDEN

2020年01月28日

ALDENと指二本とヒートテック靴下と。

先日メールにてお問い合わせ頂いた件。

某セレクトショップにてALDENを購入されたというお客様。
一日履いてみると指二本分以上の隙間が踵に開いてしまい困った。
ベロの部分にスポンジ宛てる補修でどうにかサイズ調整できませんか?
というお問い合わせを頂きました。

そもそも試着の際にすでに指が一本入る隙間が開いていたので、
お客さんも少し大きいかなと思われたそうなのですが、
某ショップスタッフ曰く、
「横幅があっているから大丈夫」
「同じくらい隙間が開いて履いている人もいる」
から大丈夫とのアドバイスを受けたので購入したとの事。

やられてしまいましたね…。
その某セレクトショップというのは、ほかのお客様からも
あまりいい噂は聞いていませんでしたので。

伝聞にはなりますがそのお店の売り方は、
お客さんにそのサイズが合っているかどうかより、
そのお店で在庫が多いサイズや売りたいサイズを売りつけるらしいと…。

そもそもですが、試着の際に踵に指が入る隙間が開いているという
試着の仕方自体が間違っているのではないかと思います。
隙間が開いている状態で横幅が合っているとは?と。

靴の履き方についてはこちらを参照願います。


隙間が開いている状態で横幅が仮に合っていても、その履き方では
歩けば足は靴の中で前後してしまいますので、おのずと合っていたとされる
横幅の位置はずれてしまいますので。

なので靴を履く際にはまず踵をぴったりと密着させ、
靴紐を締め付けていくのが基本です。
踵基準なのでこの場合ちゃんと踵で合わせて試着していれば
靴の横幅が一番広いところより実際は指二本分、足は後方にずれる
はずなので横幅すら合っていない事が分かったかと思います。

仮に少し大きい具合であれば、今回の靴は特に編み上げのブーツでしたので
踵にちゃんとホールドさせて紐を編み上げれば踵と足首と甲の三点で
足が固定されるので履けない事もないのですが、
今回は大き過ぎたようで紐をかなりきつく締め上げても緩く、
仕舞いには脛も痛みだす始末に…ということです。

ではサイズ調整ですが、残念ながら指が入る程度ゆるゆるですと
合わせようがありません。
ベロにスポンジを入れる方法というのは、サイズがある程度合っているが
甲の部分が緩く、靴紐を締めても羽が閉じてしまってそれ以上
絞める事ができない場合に有効な手段となります。

今回の様に大きすぎる場合の方法としては、秋冬であれば
ユニクロのヒートテック靴下が有効かもしれません。
厚手で何度洗濯してもへたり難いですしなにより暖かいですので。
靴下を厚手にすると簡単にワンサイズ程度は足が大きくなります。

そして厚手の靴下がクッション代わりになって紐の締め上げの
痛みが軽減できるかもしれません。
実際、私も秋冬の冷える季節には、ヒートテック靴下でも履けるように、
ワンサイズ大きめの靴を作って合わせていますので。

ちなみに、リブソックスよりヒートテックパイルソックスのほうが
厚手でいいかもしれません。
ソックス
ユニクロHPより

サイズ調整ですが郵送でのご依頼は原則受付しておりません。
実際に靴を履いて頂いて、その場でクッションなどを仮に宛てた状態で
具合を見ながら素材や厚みを調整する必要がありますので。

ですのでベロ裏のクッションであれば市販品でも
貼付けるタイプ(タンパッド)があるので、短靴の場合はそのほうが
費用的にも抑えられるので宜しいかともいます。



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ampersandand at 20:06|Permalink

2018年11月25日

壊れすぎていないオールデンを治してみる。 ハーフソールかオールソール、どちらにするか問題。

前回のオールデンの修理と比較するとだいぶ軽症ですが
軽症なのでオールソールするか、部分補修(ハーフラバーソール)とするべきか
判断に悩む状態の今回のオールデン。
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前回のオールデンはこちら
「壊れすぎたオールデンを治してみる。 分解篇」
「壊れすぎたオールデンを治してみる。 裂け補修篇」

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悩みどころは革底が剥がれてこないかどうか。
特にウェルテッド製法の場合は特にそうなのですが
底縫いの糸が切れていると革底が剥がれてき易い場合があります。

ウェルテッド製法の場合は、中央にはコルクが充填されており
この部分は接着強度は求められません。
ですので革底との接着されている部分は実質
ウェルト部分の幅、1.0cm幅程度の面積となっているのが
剥がれ易いその理由となります。
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つま先はすでに他店でラバー補修されていましが、
ダブルソールのオールデンですので、履き始めは特に靴底が返らず
つま先が極端に摩耗したので早々修理されていたのでしょう。
貼られていたラバーを取り除くと…
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糸も完全に擦り切れていますので、ぱっくりと。

当店で底縫いの糸が擦り切れた状態でラバーや革素材で
つま先の補修をする場合は、補修部材を取り付ける前や、または
補修部材と一緒にビスでベース部分に固定するようにしています。
糸が完全に切れた状態の土台に補修部材を貼付けても
ベースになる部分がウェルトから剥がれてしまえば意味がありませんので。
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つま先部分の糸切れについては、ビスで固定できるので切れていても
部分補修という手段はとれるのですが、それ以外の部分、
特に屈曲部分の糸切れについては判断に悩みます。
上画像では周囲に縫われている糸目が擦り切れて見えなくなっています。

下画像はちょうど接地する部分の境目に糸が
擦り切れてなくなっているのが分かるかと思います。
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この状態からハーフラバーソールを取り付けるとなると
糸が切れている状態ですので、徐々にだったり何かのタイミングで
貼付けた土台となる革底が、先程のつま先部分のように
本体(ウェルト)から浮いてきてしまう場合があります。

ハーフラバーソールを貼付けたから剥がれたというよりは、
すでにある程度履き込まれている状態(糸が切れている)ですので、
貼っても貼らなくてもその時期だったという感じでしょうか。

また後ほど触れますが、オールデンの場合は新品の状態でも
本底、ミッドソール、ウェルトとの間が浮いてきている(ずれている)
場合が多く、底縫いでそれぞれを固定し、接着は底縫いを行なう際の
仮固定という位置づけの仕上げのようです。

では底縫いの糸が切れているからすぐに剥がれてくるかというと、
剥がれてくるものもあればこないものもあったりなかったり…。
また底縫いが擦り切れて、糸の断面がまだあるような状態ですと
その状態でハーフソールを貼付けると、糸の断面がハーフソールの
接着面に固定されますので、案外そのまま固定できるという場合もあります。

いずれにしても、このような場合によくお客様に尋ねられるのは
「どうですかね、剥がれてしまいますかね?」と。

店主の答えとしては、
「糸のみぞ知る…」
とはぼけられませんが、「どうでしょうかね〜」としか
お答えができません。

で、今回は…
まだまだ履き続けたいので「確実なオールソールで。」
ということになりました。
その場合は革底で行なうと、今回のように悩ましい経過を辿ってしまうので
ハーフソールビンテージスチール併用仕様(現役最強仕様)で
始めから万全の体制を敷くことになった次第であります。

それでは分解。
前回の瀕死のオールデンと違い、イレギュラーな事故も起こらず
いつもの手順とおりに。
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トップリフト(ダヴリフト)を外して
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積上げと下ハチマキを外して革底がでてきましたが、
ほぼ接着剤は塗布されていない状態です。
その代わりに、それぞれの段階で数種類の釘が使用され固定されています。
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老舗のメーカーの靴に多いのですが、ウェルテッド製法という作りは
そもそもオールソールし易いように考案された作り方ですので、
なのでオールソールの際にばらし易いように仮固定程度の
接着で済ませるという考えもあるかと思います。

また、昔は接着剤の効果が低くそれだけではそもそも固定できないので
革底は底縫いで固定し、かかとの部分は釘(木釘)で一段一段
固定するという考えがメーカーのよっては現代でも脈々と受け継がれて
いっているのかもしれません。

1884年にオールデンが誕生した頃のような路上が土ではなく
アスファルトで舗装された現代の路面では、底縫いの糸も
擦り切れ易いので、そろそろそんなメーカーは接着剤の使い方については
再考の余地はあるのではないでしょうか。

本底を剥がすとダブルソールですのでミッドソールがあります。
本底とミッドソールもほとんど接着されていない状態です。
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ミッドソールを剥がすと充填されたコルクが見えてきます。
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前回の瀕死のオールデンと異なり雨水の侵入も見られず
シャンクも錆びておらず鈍色の綺麗なままです。
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この後は、底縫いの糸を一目一目抜き、コルクを入れ直し、
ミッドソール、革底を取付けて出し縫いし、かかとを積上げていきましたら…

三分クッキング的な感じですが、完成となります。
AFTER
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ハーフソールビンテージスチール併用仕様で
リフトもVIBRAMラバーリフトですので
耐久性とランニングコストを踏まえた現代最強仕様となっております。
この仕様であれば、底縫い糸が擦り切れると云う事は無いので
革底が剥がれてくる事もありません。

摩耗した段階でそれぞれ、ハーフソール、スチール、ラバーリフトを
部分交換していって頂きますと、オールソールの必要は今後ないかと思います。

オールソールの段階だけではなく、新品の段階で
ハーフソールスチール併用仕様を行なえば同様の仕様になります。

今回はアッパーの状態もよく、履き皺の割れや小指部分の裂けなどは
見受けられませんでした。
(かかと内側の擦り切れはありましたが、補修対応で改善)
例えば、履き皺のひび割れ、革の硬化などアッパーの痛みが見られた場合は
オールソールはあまりお勧め致しません。
(なので前回のオールデンはお勧めしなかった訳のですが…)

底周りをオールソールで新品状態に戻しても、後に
アッパーが裂けたりしてしまうと、補修できても縫目が目立つところに
出来たりと見栄えが悪くなりますし、修理できない場合もあります。

ですのでそのようなアッパーの状態が悪い場合には、
オールソールではなく、部分補修で応急処置し、
「履けるところまで履く」というアドバイスになると思います。

ということは末永く愛用するには、日々のアッパー(本体の革)の
お手入れが重要と云う事なのですが(履き始めの時から)。
面倒であれば、屈曲部分(指回り)だけでもいいので、定期的に
保湿を行なってみて頂ければと思います(雨で濡れて乾いた後には特に)
*保湿といってもミンクオイルは使用しないでください。

面倒くさがりやさんにはレザーローションがおすすめです。
無色なので色を気にせず使用できます。

当店でも乾燥気味の修理靴には、乳化性クリーム(色付き)で磨く前に
こちらで保湿を行なってから磨いています。
この製品のみの使用でも、乾拭きすると程よく艶がでますのでいい商品です。

汚れ落としと保湿が同時にできるので面倒くさがりやさんには
もってこいです。
*使用には説明書をよくお読みになってお使いください。

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2018年11月17日

壊れすぎたオールデンを治してみる。 裂け補修篇

前回までのあらすじはこちら。
「壊れすぎたオールデンを治してみる。 分解篇」

今回は本体の裂け補修を行ないます。
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閂(かんぬき)部分から小指側面にかけての裂け…

閂の部分は負荷が掛かる部分ではありますが、
履く際には靴ひもが下段部分に通っておりますので
緩めていたとしても完全に羽が開ききるような状態にはならないはず。

ですので壊れるとすれば靴ひもを緩めて
立った状態でつっかけるように足を入れて履こうとする状態ですと
ベロの部分がぐっと爪先側へ倒されるので、閂部分に
一点集中で加重が加わり壊れてしまう場合があります。

靴を履く際には靴ひもを緩め、腰を掛けて履いて頂く事を
お勧め致します。
また立った状態で突っかけて履こうとすると、
かかとを踏んづけて潰してしまいがちですし。
今回のオールデンも軽く潰れています。

今回のように完全に断裂してしまうと、裂け目を合わせながら
縫製することはこの状態のままではできません。
元の位置に状態を固定したいのですが、固定するべき土台がありません。
また靴底の反発もあるので、ぐっと手で靴底を曲げていれば
合わさり目は近づくのですが、手を離してしまうと遠ざかってしまいます。

まずは比較的柔らかい裏革のみを手縫いで縢りながら
元の位置(状態)に縫合していきます。
アッパーのコートバンを押し広げ、その隙間から見える裏革のみを
たぐり寄せながら縫合します。

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隙間から指を突っ込み縫製しているので綺麗に縫えませんが
この縫製は表革のコードバンを元の位置関係に貼り合わせる為の
仮固定という具合です。
最終的にこの痛んでいる周辺には内側から革を宛てがい
それぞれ縫製し固定します。

これでベースとなる土台ができました。
アッパーを貼り合わせる前に、裏革と表革の間にナイロンを挟み込みます。
閂部分から裂け目に掛かるようにセットします。
ナイロンを挟み込みまとめて縫製する事で伸び止めの効果が期待できます。
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次にかんぬき部分を補修します。
かんぬき部分は、爪先側とかかと側のパーツの交差点です。
爪先側の表と裏革、かかと側の羽の表と裏革の合計四枚が
それぞれ互い違いに重なり合って縫製されています。

今回はそれに加えてナイロンなどの補強材も新たに挟み込んでいますので
スクランブル交差点状態です。

まずは下層のベロとのつながり部分をかがり縫い合わせ固定致します。
そして部分的に分解しておいた羽の付根を合わせ、仮固定しておきます。
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最後に内側から革を宛てがい補強致します。
小指側面部分から閂までを覆うようにセットし、
裂け目と閂と羽部分をそれぞれ縫製致します。
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加わる荷重をそれぞれの点ではなく、
革で補強した側面全体で受け止められるようなイメージです。

次にかかと内側の擦れ補修。
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かかとにはカウンター(月形)という芯材が固められて入っています。
(婦人靴では柔らかい芯材のもの、または入っていないものもあります)
これは不安定なかかと部分をホールドし、左右のぶれなどを制御してくれます。

ですので、かかと部分を踏みつけて潰してしまったり、
今回のように擦り切れて割れてしまう状態になってしまうと、
靴のホールド感は40%ぐらい低下してしまうことでしょう…。

わたし的には「かかとを踏んづけてしまう」というのは
あり得ない行為なのですが…。
iPhone Xを購入した日に、わざわざ軽く画面を割るような感じでしょうか。
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程度によって補修方法や使用する素材は異なります。
今回は摩耗が酷いのでえぐれている部分にまずは革を一枚宛てがいます。
状態によっては部分的に芯材を追加する場合もあります。

補強革でえぐれを補修し、このブーツのかかとの反りに合うように
型採りして作成した腰革で覆います。
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当店ではかかとの内側補修の際は通常履き口部分の縫い目は
見えなくなるように仕上げています。
かかとの内側を擦り切ってしまう方ですので、
縫い目は擦り切れないように隠してしまったほうがいいのでは?
という考えです。

画像は次回ご案内する予定の「壊れすぎていないオールデン」の
かかと補修のBEFORE/AFTER画像になります。
こちらは短靴ですので縫い目が見えない補修方法で行なっています。
BEFORE
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AFTER
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ブーツの場合は履き口部分が擦れる事は無いので、
また縫い目を隠す方法ですと、裏返しに縫製した革を
ひっくり返して内側に倒すので、ブーツでこの方法をとってしまうと
覆う面積が広く、内外の関係でひっくり返した内側に
皺がたくさんよってしまいます…って云われても??
と云う感じかと思います、その状態の画像があるはずなのですが行方不明…。

ですので今回は、少し仕上りの位置から革をはみ出しておいて、
縫製後にあまった革を縫い目の1.0mm隣りで、いちきりという道具で
さらう(切り落とす)方法で行ないました。

AFTER
レザーソール/レザーミッドソール/チャネル仕様/積上げ/ダヴリフト
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側面部分の補強革は黄色の範囲で取付け、かかとの補修は水色の範囲に
なっています。
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裂けていた部分はこんな感じ、ややピンぼけ。
黒い被写体は難しいです、ピントや露出が合わないな…。
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傷口は極力目立たないように塞がったのではないでしょうか。
遠目にはあまり目立ちませんし、日頃こまめに磨いて頂ければ
コートバン特有の照りで、補修の縫い目より輝く履き皺の艶が
先に目に入りますので。

裂け目は部分的に黒いコートバンで覆う方法も考えたのですが、
画像では分かり難いのですが、微妙にダークブラウン的な色合いにも
見える時があり、エイジングとお手入れのしなさ過ぎにより
色が不思議な感じに変化しています。
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ですので、仮にブラックのコートバンで被せても色がちぐはぐに
なってしまうかなというのと、今回はチャッカブーツですので
周辺にパーツを固定するのに利用できる縫い目がないので、
貼り合わせたそのパーツを囲うような縫い目がぐるっとできてしまいます。
そもそもブラックの在庫がないし、用意しても補修費用は
ぐっと跳ね上がってしまいます。
ボルドーのコートバンなら在庫はあるのですが。
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ソールはダブルソールですので、靴底が返り難く爪先が
摩耗し易くなりますので、ビンテージスチールをお勧め致しましたが、
「レザーで。」ということで。
リフトも当然耐久性の高いvibramラバーリフトではなくダヴリフトに。

当店としては持ち込まれた際の瀕死の状態からして、
日頃のメンテナンスを考えますと、ハーフソールスチール併用仕様で
VIBRAMラバーリフトをお勧めしたいところですが…。

ちなみにお渡しの際に履いて頂き、具合を確認して頂いたところ
とてもフィットして履き易くなったとのことで
そのまま履かれてお帰りになられました。

すくい縫いが切れたり緩んでいた状態でしたので、
裂けが無くても、それらの影響で外側へと広がっている状態
だったのだろうと思われます。

次回「壊れすぎていないオールデンを治してみる」篇に続く…。

ampersandand at 18:35|Permalink

2018年11月16日

壊れすぎたオールデンを治してみる。 分解篇

今回の患者さんはこちら。

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ざっくりと…。
ソールもコルクが流出し始めていて瀕死の状態…。
コルクが流出している状態で履いてしまうと、
中底が陥没、そして割れが発生してしまいますのでご注意を。
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かかと内側部分もだいぶやられていますね。
(修理された箇所がまた擦り切れて壊れていますね…)

修理店を渡り歩いてすでに三度オールソールをされているとのこと。
あと10年ぐらいは履きたいということですが…。

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かんぬきから小指側面への裂けは、革の硬化が原因です。
履き皺が段々によっていますが、あまり伸びずにこの状態で硬化しています。
(シューキーパーを使われていないとこのように皺が深くなってしまいます)

ということは、歩行の際の屈曲に革の収縮が追いつかないので
結果、羽の付根部分の閂に負荷が掛かりますので、
そこを軸に硬化し弱っていた小指側面部分にかけて
裂けてしまったのかと推測されます。
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コートバン(馬のお尻の革)は繊維の密度が高く強靭といわれていますが、
牛革と違い繊維方向が一定方向のようで
その方向へ負荷が掛かった際には裂け易いという傾向があるようです。
また革の仕上げ行程により水に弱いのですが…

今回は水に濡れて、乾燥してを繰り返し硬化してしまった革なので
余計に裂け易い状態にあったかと思います。
他にも定番の小指の腹部分と先芯との境目にも
亀裂が入っている部分がちらほら…。
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このような状態ですので、修理はあまりお勧めできない事と、
修理しても、今後アッパーの何れかの部分で再度壊れてきてしまう
可能性もありますとお伝え…諦められるかと思いきや
悩まれるご様子もなくご依頼頂いた次第であります。

まずは靴底を分解していきます。
底縫いの糸をグラインダーで削り切り、ソールを剥がしていきます。
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ウェルトとソールのあいだからナイフを入れ、出し縫いを切って
剥がすやり方が職人ぽいのですが、そのやり方ですと
出し縫いがすくい縫いの糸を貫通してしまっている場合が
既製品でちょくちょくありますので、カットしてはいけない
すくい縫いの糸も一緒にカットしてしまう危険性があるので、
底面を削って出し縫いの糸を削り切ってしまったほうが確実です。

コルクから中底まで水が侵入してしまっています。
中底まで濡れてしまうと中底の割れにも繋がってしまうので
コルクが見える前にソール交換が必須です。
(コルクはウェルテッド製法の靴にしか基本入っていません)
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シャンクも浸水してしまい錆び始めています。
スチールのシャンクですとだいたいオールソール時期の靴では
錆びているものが多いのですが、錆びて折れているものというのは
1割程度でしょうか。

クロケットジョーンズなどの老舗の靴で多いのですが、
木材のシャンクを使っている場合が多く、内部まで浸水していると
木材ですので腐ったりして6割くらいは折れています。
(浸水していなくてもやはり折れてはいますが)

浸水と云っても、水たまりにずっぽり浸らなくても、
革は繊維構造ですので、路面の水を毛細管現象で
内部まで吸い上げてしまいます。

またこれがひどいとアッパー側面まで水を吸い上げてしまい
小指側面あたりに雨シミ跡が日本刀の刃文のように
波波にでてしまったり致します(この部分で革が割れ易くなります)
ハーフラバーソールを施行する事で底面からの
雨水の吸い上げを予防できます。

昔の国産の靴ですと、竹を使っていた時期もあるようですが
竹は撓りもあり丈夫で適材ではないかと思いますが、
木材のシャンクはあきらかに強度不足な気がします。
折れている場合は、丈夫なスチールシャンクに交換しています。

ちなみにこのシャンクですが、どういいった役割があるのかというと、
土踏まずの部分を支えるように取り付けられています。
ヒールに少し載っていて、土踏まずの浮いている部分を
上に持ち上げるようなイメージでしょうか。
別のオールデンですがこんな感じで入っています。
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ソールを剥がすと、ここで新たに損傷箇所を発見…。
すくい縫いが前側ほぼ切れていました…。
そして一緒に縫い付けられているアッパーの革も縫い穴部分までも
硬化していて割れてしまい、糸が外れてしまっている状態です…。
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こうなってしまうと、すくい縫いもやり直さなければなりません…。
何度かオールソールをされているとの事ですので、
出し縫いをする段階で、その都度すくい縫いの糸を貫通してしまい
糸が徐々に切れてきてしまったのかと。

また、かかと部分もだいぶ斜めに摩耗した状態で履かれていたので、
外側へ靴が傾斜する格好になり、体重が外側に掛かりすぎて、
ウェルトが押し出されるような感じになったのも糸切れの
要因の一つかと思われます。
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すくい縫いとは中底部分に貼付けられたリブの段差から
(グットイヤーウェルテッド製法の場合)外側に付いているウェルトに
すくい上げるように針を通すのですが(上画像)、

この靴にはウェルト部分にボコボコとなにやら跡が多数ついています…。

恐らく以前の修理店でもオールソールの際に同様に
すくい縫いの糸が切れていたので、縫い直したようですが、
針をウェルト側(下画像)から差し込んでいたようです。
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ですので針で押し付けられた跡がぼこぼことウェルト部分に
凹みを作ってしまい、ソールを貼り直した際にコバ断面に
この隙間が影響しやしないかと心配です。

恐らく、残ったコルクかすなどで中底側から針を通す穴位置が
分かり難かったので、ウェルト側から針を指してしまったのだと思われます…。
針の跡がついてしまっているけどー。
こういう事されると困るんだけどー。

とほほ…の状態から気持ちを切り替えて、まずは針の加工。
すくい針の曲がりに合わせて針をライターであぶってなまし、
同じ曲がりに加工します。
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次に9本撚りの麻糸を一本ずつにより戻し、その一本ずつの
毛先を細く漉き、4本と5本のグループにまとめたのを、
またもとの9本組の一本に撚りまとめます。
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そうしますと毛先がうんと細く加工できます。
細く加工する事で、針に繋げた部分が針と同じ太さに絡み付けれるので
小さな穴を通す際に、針の付根が穴にひかかってイライラせずに縫えるのです。

すくい縫いが出る位置と出し縫いの穴の位置が近すぎるー。
しかしすくい縫いの穴をずらす事はできないので(元の穴を通しているので)
出し縫いの際に可能であれば少し外側を縫えれば…という感じでしょうか。
もともとのメーカーの設定が悪し。

すくい縫いの位置と出し縫いの位置の設定が宜しくない靴は
既製品でもちょくちょくあります。
値段に関係なく10万円クラスの靴でもちらほら見かけます。
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中底面からの画像。
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この段差部分から外側のウェルト側にすくいあげて縫っています。
縫い終わったので、中底部分にコルクを充填。
コルクは板コルクを使用しています。
粒コルクを練って充填する方法もありますが、それですと充填具合に
ムラができ易いので、板状に圧縮成形されたコルクを敷き詰めた方が
全体に均一の密度で敷き詰める事ができます。

またコルクの粒も細かな番手を使用する事で、履き込んでいった際の
中底面の沈下を適度に抑える事ができるのではないかと思います。

オールソールですので履き込まれてすでに中底面は
充分に足の形に凹んでいますので、これ以上の中底面の沈下は
必要無いかと思われます。

ウェルテッド製法の靴は、特にグットイヤーウェルテッド製法の場合
コルクが5.0mm厚程度、中底と本底の間に充填されています。
履き込んでいくと中底面からの加重で敷き詰められたコルクが
徐々に自分の足型に押し潰されることで
いわゆる「足に馴染んでくる」のひとつの要素にもなっています。

ただその場合、中底面が押し下がり靴内部の容積が
広がるということですので、サイズも必然的に緩くなって
しまうということです。

ですので羽ものの靴を購入する時には、
羽がある程度開いた状態のフィッティングで購入しないと、
後々に紐をそれ以上絞める事ができず、ゆるゆるに
なってしまいますのでご注意を。
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コルクを敷き詰める際も厚めに盛ってから、高い部分を基準面まで
削り落としていきます。
そうする事で、すでに中底面に記憶された足型をあまり損なわずに
その凹凸を再現する事ができるのではないかと思います。
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ウェルト面に針の跡(前回の修理店の仕業です)、
ぼこぼこ… まったく…。
仕上りに影響しそうなので軽く削って修正しておきます。

次回、「コートバンの裂け補修篇」へと続く…。

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