VIBRAM

2019年06月24日

クラークス、それぞれのソール交換。ソールどれにするか問題。

先日ご来店されたお客様が、(他の修理店でソール交換した際に)
靴の形が変わって戻ってきたんですが、治せますか?
という方がいらっしゃいました。
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こちらはもう廃盤になっているクラークスの短靴ということ。
(現在販売されているのはデザートブーツでチャッカブーツ仕様になります)

ブラウンはオリジナルのままでベージュのものがソール交換されて
形が変わって戻ってきたという靴。
比べると指の付根辺りからつま先にかけて細くなってしまっております。
小指が痛くて履けなくなったと云う事です。
で、このソール交換されて形が変わった靴を、
元の形に戻してオールソールできないかとのご相談。

お客様曰く、色違いのブラウン(同サイズ)の形状を参考に、
形が変わってしまったベージュを元の形状に戻す事は出来ないか…
ということでした。

これをお読みになられている方は、「それはできないでしょ」と
思われていると思いますが、クラークスのこのステッチダウン製法の
靴の場合に限りできてしまうのです(戻せる可能性はある)。

ただその場合、ブラウンの靴も一緒にオールソールしなければなりません。
ブラウンの中底面型が必要になりますがそれは分解しないと
採ることが出来ない為です。

ブラウンは(他店にて)かかとのクレープソールを部分補修された
ばかりでしたので今の時点でソール交換されるのはもったいないので、
ブラウンのクレープソールが摩耗した段階で二足ともソール交換されたら
いかがでしょうか?ということで、ではその時にということになりました。

ですので今回はこちらの靴のお話ではないのですが、
以前も確かクラークスで同様のお話を伺った事がありましたので、
オールソールをご依頼される場合は、どのように治すのかをちゃんと
お店に尋ねられた方がよいですよ、というご報告でした。

クラークスのソール交換については以前も何度か
記事を書いた事がありましたのでそちらも合わせてご参考に
されて頂ければと思います。

参考記事
「クラークスの修理専門店ではないのだけれど…」

クラークスのステッチダウン製法の場合だと、靴を元の形状に
戻せるかもしれないという理由は、本体とソール(中底)が完全に
バラバラにできるからであります。
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一般的な靴の場合、例えばセメンテッド製法、マッケイ製法、ウェルテッド製法
などは本体の形状は中底に固定されているのでソールを分解しても
本体は元の形状を維持しています。
ですのでそれらの仕様の場合は、本体の形が変わったクラークスのように
靴の形状が変わってしまうという事はあり得ないのです。

画像でも分かるように、ソールを分解すると本体は抜け殻のように
なってしまいますので、本体の形状というのはソールの外形に依存している
関係となっています。
ですのでソールの形状を元通りに製作しないと靴の形状、サイズ感が
変わってしまうという事になります。

恐らく前回ご依頼された修理店では中底の型採りを行なわずに
手持ちの似ている(似ていませんが)靴型を使ってしまい
結局はその違う形の靴に合わせてソール交換をしてしまった
ということだろうと思います。

工場などではいちいち一足ずつ底面を型採りしては
やっていられないという事でしょう。
そもそも、そうであるならばそれを事前に説明して受注しなければ
ならないと思うのですが、その点もお客様はとてもお怒りでした。
「靴の形が変わってしまいますよ」と云われれば頼まないですよね、と。

しかもクラークスの場合は靴の左右でも形状にブレがありますので
左右とも型採りする必要があるので余計手間がかかります。

ちなみにですが例えばクラークスのオリジナルの靴型があったとしても
それを使って履き込んだ靴をソール交換した場合、やはり形状やサイズが
少し変わってしまうとも考えられます。

ですので現状の履き込んだ靴の状態に合わせてソールを作成した方が
よいのではないか、と現時点では思っています。
履き込んで自分の足の形に変形している(させた)のだし、
わざわざ自分の足とは違う靴型の形状に矯正し直さなくてもいいのでは、と。

クラークスの場合、裏革が無い革一枚で作られているので
オールソールするくらいまで履き込んでいると革がかなり伸びています。
そしてソールも、底材のなかで一番柔らかいクレープソールが
用いられているので、中底がかなりの勢いで沈んでいますし、
アッパーを縫い付けている中底兼ミッドソールもフェルトのような生地
ですので前後左右にアウトラインも歪んでいます。

新品だとこのぐらいの中底面の凹みが
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ソール交換の時期だとこのぐらい足の形に凹んでいます。
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これだけ沈むと2とか3サイズくらい大きくなっているのではないでしょうか。
中底の凹み方は指先が特に凹む人、踏みつける部分が凹む人
ひとそれぞれ歩き方によって凹み方は違っています。
早歩きの方は指先が凹みやすいかもしれないですね。
こちらの方は親指のところが極端にぼこっと陥没しています。
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中底面の型採りする際は、指の凹みや足裏のの凹みまでは完全には
トレースすることは物理的に無理ですし、採れても足の凹みを
新しい中底で再現することもできません。
ですので、ソール交換した場合には足型に凹みがついていない
新品時点の先程の画像のような中底面に戻ります。

ただ皆さん革が延びて中底も深く沈んでサイズが緩くなった状態で
履かれているので、ソール交換するとちょうど良くなったということで
結果的にサイズ感は常々いい感じのようです。

そして厚みのある革中底を使用していますので、履き込んでいくと
足裏の負荷の掛かり具合で繊維が圧縮され、その中底には新たな
自分の足裏の形が記憶されていきます。

ではまずはこちらの事例からご紹介。
経年劣化によりクレープソールがねちょねちょ状態でごみが付着し放題…。
クラークスではよくあるクレープソールが嫌われる原因のパターンです。
BEFORE
デザートブーツ・クロムエクセルモデル
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底縫いの糸はボルドーカラーはないので麻糸を染めて糸作りから。
手縫いでちくちく…。
アッパーに開いている元の縫い目通りにミッドソールに
穴をあけ、その穴をひとつひとつ拾いながら縫っていきます。
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ミッドソール(中底)は耐久性のあるレザー(ショルダー)を用いております。
アウトソールは悩まれた結果、VIBRAM # 4014のブラックカラーをご選択

AFTER
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ミッドソールはソールと同色のブラックに染めずブラウンカラーに染め付け。
ブラックに染めた場合は、まとまりがでますが少し重い印象にもなります。
ブラウンカラーに染める事でアッパーのボルドーとの相性もよく
クラシック感もでていい感じです。
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こちらはデザートトレック。
同じくVIBRAM # 4014を用い、こちらはアイボリーカラーをご選択
クラークスのソール交換で一番選ばれているソールは#4014ソールになります。
ラバーとスポンジが混合されたような素材感で適度な弾力があります。
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こちらは三足同時依頼のデザートブーツの三種盛り。
それぞれ異なるソールで履き比べでしょうか。
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ちくちくちくちく…。
三足ぶっ続けで縫うと、知らない筋肉が痛みだします…。
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AFTER
まずはレザーソール仕様。
こちらはステッチダウン製法とマッケイ製法を併用しています。
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VIBRAM #2060 brown
こちらの素材はスポンジソール(同じような形状で#2021もあります)
とても軽量なので重いクレープソールからの交換ですと、
持った瞬間「軽っ!」と皆さんつい言葉がでてしまいます。
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VIBRAM #1136 black
トレッキングブーツなどにもよく使われているタンクソール。
硬質なラバー素材ですが凹凸でブロックが別れているので屈曲性は良好です。
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こちらは記事を書いていて見つけた蔵出しクラークス画像。
VIBRAM #2668 black
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日々修繕写真を撮っていますが、どんどん溜まっていくので
埋没してしまった熟成AFTER画像はわんさかございます。
ガムライトというVIBRAMオリジナル素材。
ラバー素材に比べ40%軽量ですが耐久性は変わらないという
スポンジ系素材です。
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カメラにぜひ付けてほしい機能なのですが、撮影の際に声で
タグ付けできるようにならないものでしょうか。

例えば、「クラークス」と云って撮影を始めると一連の撮影の画像には
(音声タグが有効な時間(撮影の期間)を設定できるようにすればいい)
「クラークス」というタグがついているので、ソフトで画像検索する際に
「クラークス」で検索すれば撮影したすべてのクラークス関連の画像が
表示されるようになれば、修繕の際のBEFOREとAFTER画像が行方不明に
ならなくて済むのですが。

スマホならば音声入力ができるのでアプリでできそうなんですが、
すでにあったりするのでしょうか。

できればその機能を、PENTAXの一眼レフに搭載して欲しいなと。
パソコンで画像を探しているうちに目が疲れてしまい、
記事を書く前に私の眼がシャットダウンな今日この頃…。

「Hey!PENTAX、クラークスの画像をだして」

ampersandand at 10:52|Permalink

2018年11月25日

壊れすぎていないオールデンを治してみる。 ハーフソールかオールソール、どちらにするか問題。

前回のオールデンの修理と比較するとだいぶ軽症ですが
軽症なのでオールソールするか、部分補修(ハーフラバーソール)とするべきか
判断に悩む状態の今回のオールデン。
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前回のオールデンはこちら
「壊れすぎたオールデンを治してみる。 分解篇」
「壊れすぎたオールデンを治してみる。 裂け補修篇」

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悩みどころは革底が剥がれてこないかどうか。
特にウェルテッド製法の場合は特にそうなのですが
底縫いの糸が切れていると革底が剥がれてき易い場合があります。

ウェルテッド製法の場合は、中央にはコルクが充填されており
この部分は接着強度は求められません。
ですので革底との接着されている部分は実質
ウェルト部分の幅、1.0cm幅程度の面積となっているのが
剥がれ易いその理由となります。
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つま先はすでに他店でラバー補修されていましが、
ダブルソールのオールデンですので、履き始めは特に靴底が返らず
つま先が極端に摩耗したので早々修理されていたのでしょう。
貼られていたラバーを取り除くと…
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糸も完全に擦り切れていますので、ぱっくりと。

当店で底縫いの糸が擦り切れた状態でラバーや革素材で
つま先の補修をする場合は、補修部材を取り付ける前や、または
補修部材と一緒にビスでベース部分に固定するようにしています。
糸が完全に切れた状態の土台に補修部材を貼付けても
ベースになる部分がウェルトから剥がれてしまえば意味がありませんので。
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つま先部分の糸切れについては、ビスで固定できるので切れていても
部分補修という手段はとれるのですが、それ以外の部分、
特に屈曲部分の糸切れについては判断に悩みます。
上画像では周囲に縫われている糸目が擦り切れて見えなくなっています。

下画像はちょうど接地する部分の境目に糸が
擦り切れてなくなっているのが分かるかと思います。
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この状態からハーフラバーソールを取り付けるとなると
糸が切れている状態ですので、徐々にだったり何かのタイミングで
貼付けた土台となる革底が、先程のつま先部分のように
本体(ウェルト)から浮いてきてしまう場合があります。

ハーフラバーソールを貼付けたから剥がれたというよりは、
すでにある程度履き込まれている状態(糸が切れている)ですので、
貼っても貼らなくてもその時期だったという感じでしょうか。

また後ほど触れますが、オールデンの場合は新品の状態でも
本底、ミッドソール、ウェルトとの間が浮いてきている(ずれている)
場合が多く、底縫いでそれぞれを固定し、接着は底縫いを行なう際の
仮固定という位置づけの仕上げのようです。

では底縫いの糸が切れているからすぐに剥がれてくるかというと、
剥がれてくるものもあればこないものもあったりなかったり…。
また底縫いが擦り切れて、糸の断面がまだあるような状態ですと
その状態でハーフソールを貼付けると、糸の断面がハーフソールの
接着面に固定されますので、案外そのまま固定できるという場合もあります。

いずれにしても、このような場合によくお客様に尋ねられるのは
「どうですかね、剥がれてしまいますかね?」と。

店主の答えとしては、
「糸のみぞ知る…」
とはぼけられませんが、「どうでしょうかね〜」としか
お答えができません。

で、今回は…
まだまだ履き続けたいので「確実なオールソールで。」
ということになりました。
その場合は革底で行なうと、今回のように悩ましい経過を辿ってしまうので
ハーフソールビンテージスチール併用仕様(現役最強仕様)で
始めから万全の体制を敷くことになった次第であります。

それでは分解。
前回の瀕死のオールデンと違い、イレギュラーな事故も起こらず
いつもの手順とおりに。
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トップリフト(ダヴリフト)を外して
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積上げと下ハチマキを外して革底がでてきましたが、
ほぼ接着剤は塗布されていない状態です。
その代わりに、それぞれの段階で数種類の釘が使用され固定されています。
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老舗のメーカーの靴に多いのですが、ウェルテッド製法という作りは
そもそもオールソールし易いように考案された作り方ですので、
なのでオールソールの際にばらし易いように仮固定程度の
接着で済ませるという考えもあるかと思います。

また、昔は接着剤の効果が低くそれだけではそもそも固定できないので
革底は底縫いで固定し、かかとの部分は釘(木釘)で一段一段
固定するという考えがメーカーのよっては現代でも脈々と受け継がれて
いっているのかもしれません。

1884年にオールデンが誕生した頃のような路上が土ではなく
アスファルトで舗装された現代の路面では、底縫いの糸も
擦り切れ易いので、そろそろそんなメーカーは接着剤の使い方については
再考の余地はあるのではないでしょうか。

本底を剥がすとダブルソールですのでミッドソールがあります。
本底とミッドソールもほとんど接着されていない状態です。
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ミッドソールを剥がすと充填されたコルクが見えてきます。
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前回の瀕死のオールデンと異なり雨水の侵入も見られず
シャンクも錆びておらず鈍色の綺麗なままです。
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この後は、底縫いの糸を一目一目抜き、コルクを入れ直し、
ミッドソール、革底を取付けて出し縫いし、かかとを積上げていきましたら…

三分クッキング的な感じですが、完成となります。
AFTER
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ハーフソールビンテージスチール併用仕様で
リフトもVIBRAMラバーリフトですので
耐久性とランニングコストを踏まえた現代最強仕様となっております。
この仕様であれば、底縫い糸が擦り切れると云う事は無いので
革底が剥がれてくる事もありません。

摩耗した段階でそれぞれ、ハーフソール、スチール、ラバーリフトを
部分交換していって頂きますと、オールソールの必要は今後ないかと思います。

オールソールの段階だけではなく、新品の段階で
ハーフソールスチール併用仕様を行なえば同様の仕様になります。

今回はアッパーの状態もよく、履き皺の割れや小指部分の裂けなどは
見受けられませんでした。
(かかと内側の擦り切れはありましたが、補修対応で改善)
例えば、履き皺のひび割れ、革の硬化などアッパーの痛みが見られた場合は
オールソールはあまりお勧め致しません。
(なので前回のオールデンはお勧めしなかった訳のですが…)

底周りをオールソールで新品状態に戻しても、後に
アッパーが裂けたりしてしまうと、補修できても縫目が目立つところに
出来たりと見栄えが悪くなりますし、修理できない場合もあります。

ですのでそのようなアッパーの状態が悪い場合には、
オールソールではなく、部分補修で応急処置し、
「履けるところまで履く」というアドバイスになると思います。

ということは末永く愛用するには、日々のアッパー(本体の革)の
お手入れが重要と云う事なのですが(履き始めの時から)。
面倒であれば、屈曲部分(指回り)だけでもいいので、定期的に
保湿を行なってみて頂ければと思います(雨で濡れて乾いた後には特に)
*保湿といってもミンクオイルは使用しないでください。

面倒くさがりやさんにはレザーローションがおすすめです。
無色なので色を気にせず使用できます。

当店でも乾燥気味の修理靴には、乳化性クリーム(色付き)で磨く前に
こちらで保湿を行なってから磨いています。
この製品のみの使用でも、乾拭きすると程よく艶がでますのでいい商品です。

汚れ落としと保湿が同時にできるので面倒くさがりやさんには
もってこいです。
*使用には説明書をよくお読みになってお使いください。

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ampersandand at 23:26|Permalink